イソップの宙返り・167
     
犬とムラサキ貝 
ある犬がムラサキ貝を見て卵だと思って、貝殻ごとガブリと呑み込んでしまいました。
おなかが重くなって、苦しみながら言いました。
「私がこんな目に遭っているのも、円いものは皆卵だと信じていたのだから当然の結果だ」と
        
寓意・見境もなく物事に近づいていく人は、慣れないもので我が身を苦しめる。
☆     ☆
ムラサキガイ(紫貝)と呼ばれる物には二枚貝と巻き貝があるんだそうですね。
ええ、まったくの別種だそうですが。
まったくの別種にムラサキイガイ(紫貽貝)があります。フランス料理で出てくるムールガイのこと。
二枚貝の方のムラサキガイ(紫貝)は泥の中にもぐって住みますが、ムールガイ(紫貽貝・ムラサキイガイ)は養殖筏に付着しますし、火力発電所の取水口をふさぐので養殖場や海浜工業では嫌われているそうですね。
でも、ムールガイ(紫貽貝・ムラサキイガイ)は水質浄化作用があるそうで、最近は見直されているそうですね。
でも、日本の海浜は汚れていますから、水質浄化作用があると聞くと、汚れを吸い込んでいるようで、貝を食べるのは何やら気持ちがわるいですよね。
でも、レストランで出してくるのは水質のいいところで、養殖したものらしい。
          
日本では、ムールガイって人気がわるいようで、魚屋でも置いているところは希なようですね。どうも、泥の中に居るムラサキガイ(紫貝)と混同されているのではないかと思いますがね。
ムラサキガイ(紫貝)は泥の臭いがして、美味しいものではありませんねぇ。
ええ、オカネを払って食べるほどのものではない。
       
ムールガイは冬のフランスではゴチソウです。牡蠣と並んでね。
貝料理はプルニエとかの魚料理屋で食べることになりますが、貝料理屋は表に貝を売る魚屋が屋台をだしていまして、持ち帰ることもできるし、店先で選んで奥のレストランで食べることもできます。
だから、フランス語のメニュー(カルテ)が読めなくても現物を見て選べますから、それなりに便利。
        
いやー、料理の名前がわからないで、わかった振りして注文したら「初めから終いまでスープばかりが出てきた」なんて悲喜劇にはなるでしょう?
エヘッ、わかった振りして注文すると、「それはシェフの名前です」なんてことになりますしね。
ええ、落語にあるでしょう? お品書きの最後のを注文したら、「店主敬白」だったりしてね。
        
旅行案内書には、フランスのレストランで料理の内容がわからなかったら、ギヤルソンに訊くと、「懇切丁寧に教えてくれます」なんて書いてあるけど、料理の懇切丁寧説明が理解できるほどの語学力がある人ってまれではない?
あなたが大学でフランス語の秀才であったとしても、給仕人の料理の説明なんてわかりっこないよ!
あんな時には「日本式の蝋細工サンプルがあったらなぁ」なんて口惜しい。
パリのレストランのメニュー(カルテ)がわからないのはフランス人でも、そうらしいですよ。
まあ、フランスは中央集権国家ですが、料理は地方色豊かな国ですもんねぇ。
メニュー(カルテ)を見て説明してもらっても地方の、例えばブルトン人にはサッパリわからないものらしい。
          
でまあ、フランスでもファミレス・クラスだと料理の写真を表に出していたり、「本日の定食」ぐらいはメニューに写真を貼り付けていますね。
ところで、もし貴方が、ボクみたいにフランス語オンチなら、観光地のファミレスでは、こんな方法があります。
他のお客さんが食べている皿を覗いてまわって、美味しそうなのを訊く方法。
「その料理、何ですか?」なんてフランス語を覚えて行くより、メニューを持ってまわって、指で「それ、どれ?」って訊く方が完全。
まあ、自信があったら「デリシェ(美味しい)?」なんて訊くのも方法だけど、フランスの田舎のオバハンがウマイといっても、あなたの舌にあうかどうかは保証の限りではありません。
「美味しい?」のジェスチャーは、ほっぺたに人差し指をつけてこねるんだそうですが、ボクがやってみたら、欲しがっているのかと思われたらしく、フォークで突き刺してくれた人があった。
       
こんなことから、定食(プラ・ドジュール)だけを覚えていって注文するのが無難なんでしょうが、フランス人ってシツコイから、「お任せ定食」はなくて、サラダからアントレ、デザートまで、それぞれ4、5種のチョイスがついているんですよ。
邪魔くさくなって、チョイスの一番上を指さすでしょう?
そうすると、フランス名物のチーズ漬け、バター泳ぎになってしまうんですねぇ。
エヘッ、フランス旅行には太田胃散をお忘れなく!