イソップの宙返り・156
       
ウサギと亀
ウサギが亀に、「亀さん、君はのろいね。なんでそんなにのろいの?」と、からかいました。亀は怒って、「じゃあ、向こうの山の頂上まで競争しよう。どっちが先に着くか勝負だ!」と試合を申し込みました。
ウサギは笑って「よし!」と飛び出し、たちまち山の麓まで走って振り返りましたが、遙かに遅れた亀の姿は見えませんでした。
そこでウサギは横になって休んでいるうちに、寝こんでしまいました。
その間に亀は長い時間をかけて追いつき、寝ていたウサギを追い抜いて、山頂近くまで登りました。
気が付いたウサギは大急ぎで追いましたが間に合わず、一足違いで亀が勝ちましたとサ。
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この話はイソップ寓話のなかでも有名な話ですねぇ。
イソップ寓話は当然のことに教訓話。始めてから気がついたのですが、ボクはひとに教訓を垂れるほどの大物でもなければ、思い上がりもありませんで、何やら纏まりのないことを毎週ホザいております。
そこで今週は教訓らしいことを申し上げようと一念発起しました。
教訓といいましても、読者よりこの世に少々永くとどまっていただけのことですがね。
           
で、ウサギと亀の教訓。
読者からのメールから学生諸君が多いように思いますので勉強の話でもはじめますか。
ボクは親に授業料の負担を掛けまいとしまして、今とは違って当時は授業料がタダ同然だった旧制国立大学へ行きまして、さらにタダどころか給料までくれる司法修習をおえたのですから、まあ貧乏学生のガリ勉コース。
      
ですから、周りの友人知人は、まあ、エリート・コースの人達。だのに、実務につくと勉強をしないこと。
社会に出てからは、本をよむだけではなく、経験で成長することが多いのですが、よほど運がよくないと、そんなに貴重な経験には恵まれないですねぇ。
一人の人間が経験で得る知識って限られたものですから、沢山の先人の智恵を能率良く得るには本を読むのが最善。
こんなことは、みんなわかっているはずなのに読書をまったくしない人の、何と多いこと。
        
ボクは先輩からこんなことを教えてもらいました。
「人生はマラソン。全力疾走しなくても、ポタポタ走っていると上位2割にはいける。8割のヤツは寝コロんで走らなくなるからなア」って。
これホント。
大学4年間で得る知識なんて、どんなにガンバッテもしれたもの。
何しろ、4年だけですからね。
それに、知識って空でおぼえようとしても、なかなか頭に入らないし、意味がわからないものですよ。空でおぼえるのは退屈なだけ。
退屈に耐え得るバカ秀才でも4年間ではシレたもの。
             
勉強だけで、チャンスを掴めるわけではありませんが、人生のうちには幸運を掴むチャンスが何度か訪れますよ。
このチャンスを掴むためにも普段から勉強をしておくのは貴重。
人は掴んだチャンスから、貴重な経験をして成長してゆくもの。
チャンスを掴むには社交も必要。人間どんなにガンバッテも、自分だけでやっていけるものではありませんからね。
でも、どんなに気分のいいヤツでも、勉強もしないヤツだと先輩としてチャンスの与えようがないもんねぇ。
引き上げてやって、自分が恥をかくようなヤツだと引き上げたくないよ。
      
よく「わたしは大学をでていないから・・・」なんて嘆きを聞くけど、大学の4年間なんて短いあいだに得る知識なんてシレたもの。
実務についてからの何十年の方が何十倍も貴重。
だのに、学校秀才の8割は、ウサギのように走るどころか、ポタポタ歩きまでやめてしまって寝コロがってしまうんだから、大学をでていなくっても、三流大学出だって、あきらめないでポタポタ歩き続けていると、気がつくと上位2割に出ることは可能。
ホントウに人生はウサギと亀。・・だと、この歳になって思っています。やや後悔もこめて。