イソップの宙返り・148
      
ミダス王のお話
ミダス王が「太陽神アポロンは太陽を牽いているしか能がなく、黄金の光を振り撒く浪費家だ」と悪口を言いました。
それを聞いたアポロンは、「では何でも望む事を言いなさい。そうなるようにしてあげよう」と言いました。
強欲なミダス王は「触れるものは何でも金になるようにして下さい」と頼みました。
アポロンが、その願いを聞きいれました。
そうすると、王が娘に触ったとたん娘は金に変わってしまい、食べ物を食べようとすると金に変わってしまいました。
水も飲めないようになってしまいましたとサ。
☆     ☆
「娘に触ったとたん娘は金に変わってしまう」と大変ですねぇ。
ボクの知人に、次期頭取との評判の銀行の専務さんがいましてね。この人に(当時の)大蔵省のキャリアーになっているクラスメートへの縁談の世話をするように、迫られたことがありました。もう昔話になりましたが。
ええ、娘さんの意思なんて無視してですよ。
適当にいなしていたら、わざわざやって来てまで執拗に迫られはじめましてね。
ボクにしたら「娘まで出世の手段にするか?」って不愉快になったから、交際をたちましたがね。
ええ、世の中にはいるもんですよ。娘まで金に変えようなんて人がね。
         
こんな風に思い出すと、ボクもろくでもない友人知人に囲まれて生きてきたように思えるんですが、こんな考えで生きている人って、世の中に多いんではない?
こんな風に生きてきて、さいきん絶望を味わっている人がありますね。
一昔前、娘を会社のオーナーのところへ嫁入りさせて、「これで、わが家も安泰だ」って喜んでいたのに、嫁入り荷物が少なかったの、嫁の実家が貧相なのと肩身の狭い思いにたえてきたのに、今や、その会社が時代遅れになって、死に態。
      
今になると「何のために、あんなところへ嫁にやったのか?」と嘆いています。
まあ、実家の親は金蔓にならなかった嘆きでしょうが、嫁にいって肩身の狭い思いで苦労した娘さんの一生はどうなるの?
ヤッパリ、気の合う相手と一生を暮らす人が最高だと思う。
でもまあ、親にすれば娘を一生食うに困らないところへ嫁がせようとした愛情もわからないこともありませんがね。
       
ところで、「気の合う相手」といいましたが、相性って不思議ですよね?
ええー? あんな美人美男なのに、どうしてあんなブサイクなのと連れ添っているの、なんて夫婦があるでしょう?
   
人間が遺伝子に支配されているなんて考えたくないけど、こんな説もあるんですよ。
クラウス・ヴエーダーキントとサンドラ・フューリーって学者の調査なんですが、二日間洗わないで着たシャツをいろんな人に嗅がせたんだそうです。
たいていの人は、変態でないかぎり、人の体臭なんて嫌いでしょう?
でも、人によっては、好きとまではいかなくても、気にならない相手があるんだそうですよ。これが人さまざま、「蓼食う虫も好きずき」との結果がでたらしい。
男も女も、自分と最もかけ離れた遺伝子を持つ異性の体臭に惹かれる傾向があるもんだそうです。
         
で、最もつよく惹かれる対極にある遺伝子は、第6染色体上にあるMHC遺伝子群だそうで。この遺伝子群は、寄生体の侵入を検知するセンサー。
まあ、素人風に言うと、免疫システムの遺伝子が対極にある異性に惹かれる傾向にあるらしい。子供は免疫システムの対極にある両親から染色体をもらって生まれてくると寄生体に対して強いでしょうねぇ。
      
でも、相手を好もしく思うとか、ホレるなんてのは、本能の遺伝子の問題ではなく、性格とかの他の要素のほうが強いですよね?
「ヒトは遺伝子に支配されてのみ生きるにはあらず」ですよね?
体臭が好きになるのは、ホレてから後のような気がするんですがね?
それとも、第6染色体のMHC遺伝子群に支配されてホレるのかなぁ。
遺伝子は利己的だと言う説もありますねぇ。
それに「ユー・アー・マイディスティニイ」なんて歌の文句があったけど、遺伝子群がディスティニイ(運命)だなんて寂しすぎる。
金に惹かれて結婚するのと同じほどに寂しすぎる。