イソップの宙返り・131
       
雄牛の闘いに怯える蛙
ある日、一匹の蛙が池から顔を出して、少し離れた草原を眺めていました。
すると、二頭の雄牛が闘っているのを見つけて、仲間の蛙達に言いました。
「おーい、みんな。我々の身に危険が迫っているぞ」
「どうしたんだい? 何を恐れているの?」と一匹の蛙が尋ねました。
「雄牛達が闘ったからと言って、我々蛙には関係ないだろう? 奴らは群のボスになろうと闘っているだけだよ」
「その通りだ」さっきの蛙がこう答えました。
「それが正に、僕の恐れる理由なんだよ。だってね、この闘いに破れた方は、この沼地に逃げて来るに違いない、そうして我々を踏みつぶすんだよ」
そのあと、この突拍子もない空想と思われた彼の恐れは現実のものとなり、大勢の蛙の死骸が池に浮かび上がりました。
☆     ☆
はた迷惑な事って、世の中には沢山ありますよね?
闘う雄牛ならぬ、命にかかわる傍迷惑は、交差点・路地での出会い頭交通事故に巻き込まれて、歩行者が災難にあうこと。
衝突のとばっちりでね。
路地の四つ角では左右注視・徐行って決まっていますよね?
ええ、丁寧に路面に十字マークまで書いてある交差点までありますねぇ。
         
四つ角の通過車両を見ていると、通過してから左右をキョロキョロ見ている人っておおいですねぇ。
まあ、こんな人は、まだましですかねぇ。
四つ角手前での減速も左右注視もまったくやらないで、堂々と通過していく人まであります。
ボクは若い頃交通事故の専門家でしてね。まあ、モータリゼーションの始まりの頃でしたから、チョットした専門分野ではありましたが。
関与した交通事故件数は数千件に達しました。
           
これで知ったことは、出会い頭事故を起こした人に共通するのは、何時でも「相手が悪い」と考えていることでした。
考えてみると、何時でも「相手が悪い」、「相手だけが左右注視・徐行するもの」と信じていないと、恐くて減速もしないで四つ角に進入できないですわなぁ。
こんなノーテンキな人って、事故になっても、この「ひとが悪い。自分は悪くない」との主張を変えませんでしたねぇ。
        
もっと、すごいのは相手の車が四つ角から鼻先だけを出して一旦停止しているから、「早く通ってあげなければ」と心遣い(?)して加速進入する善意の猛者までありますねぇ。
何故か、こんな猛者は女性におおかったなぁ。
中には、相手の車のボンネットを見て、加速進入して事故になっても、「相手はわかっていた」なんて主張する人までいますねぇ。
運転席が蔭で、ボンネットだけが覗いているだけなのに、「相手はわかっていた」なんて、どうして考えられるのかなぁ。
でも、こんな考えの人でないと、四つ角に減速なし、左右注視なしで進入できないでしょうねぇ。
         
先日経験したこと。
巾4メートルばかりの道路に横断歩道がありまして、向こうには乳母車、こちらには車椅子が横断を待っていました。
そこへやってきた車、加速、猛進していきました。
ええ、中年の女性の運転。
「待っている人にわるいから、早く通ってあげよう」との心遣い(?)ありありの運転。
こんな心遣いは傍迷惑。
            
「車はすぐには止まれない」なんて標語を拡大解釈して、運転免許を持たない老人は交通事情に無知だから事故に遭う、ような言い方をするけど、常識では考えられないような人が車を運転しているんですよね?
ええ、家の廊下しか歩いたことがなくて、目の前に障害物さえなければ、左右から動いてくる人なんて考えないで、走り込もうとする猛女とかがね。