イソップの宙返り・109
       
蝸牛
農夫がカタツムリを食べようと炙っていました。
カタツムリがパチパチと音を立てました。
「どうしようもないヤツらだ。家が焼けているというのに、歌なんかうたいやがって」
寓意・時にあわない行為は非難される。
☆     ☆
ええー、よくわからない寓意なので、極東の凡俗といたしましては、食べ物のエスカルゴの話から・・・
エスカルゴ(カタツムリ)っていうとフランス東部のディジョンのあたりの名物料理ですね。
名物料理って言うと、まあ贅沢な料理と早とちりしてしまいますが、カタツムリをエスカルゴと呼んでもらっても、大して贅沢なゴチソウってイメージではありませんよね。
何か、あの辺りでは雨上がりには、ブドウ畑からニョキニョキ這い出すくるんだそうですね。
ええ、土地の人間は、これを食べてきたそうですよ。
まあ、名物料理としてレストランで出す時には、付加価値をつけるために、閉じこめて蜂蜜を食べさせるそうですがね。
      
まだあれよりは、蜂の子の方が食べ物って感じがしますよね。外見だけでもね?
フランスでも海岸近いところ、まあ西海岸地方では、小さなニナみたいな貝も食べますね。唐辛子の辛みをつけて煮たのを、料理ができるまでの突き出しにします。
なぜか、マチ針が付いてきて、ほじくります。
       
ニナ貝の話から、世に言う珍味の話に移りますが、まずはフグ。
あれを最初に食べた人って、どんな人だったのかなあ、と思いません?
勇敢なヤツもいたんだなあ、と思う。
でもねぇ、最初に食べたヤツなんて、いたようで、いなかったらしい。
何故かと言うと、狩猟採集生活では、口に入れられそうなものは、何でもたべたらしい。
まあ、そうでしょうねぇ。
で、何万人か何十万人かはわからないけれど、フグを食っての死人がでてきたと考えられる。
             
狩猟採集生活では、見るからに毒々しいものは、さすがに食べなかったでしょうねぇ。
これは動物的本能としてね。
毒蛇でもないのに、毒蛇の模様をしているのが、いるそうで・・・
蛇の天敵でも、毒蛇は避けるでしょうから、毒蛇の模様をした毒蛇モドキも、生きながらえる確率は上がったでしょうねぇ。
でまあ、捕食者も、本能的には外見で餌を選別したと考えられますね。生きながらえるためにね。
          
ところが、ところがですよ。
今のボク達は、この本能で食品を選別しようにも、外見で選別できないものが増えましたよね?
例えば、狂牛病の肉。
これなんか、潜伏期にある狂牛病の肉なんて、肉屋のショーケースにあるものを、外見では選別できないですよね。
            
でまあ、庶民は値段で選別してきました。
ええ、狂牛病パニックになって、安物の肉はアブナイ、って識別。
で、精肉の売り上げが、一番低下したのが、安い輸入肉だったらしい。
輸入肉は安いからヤバイってことになっても、高価な和牛を買うのには懐勘定があるから、まあ、手頃な値段の国産牛で、って事になってきたらしい。
でも、これはわからないなぁ。
       
むかし石油が不足するのではないかとの噂が流れたときに、トイレット・ペーパー、パニックが起こりましてね。
今から考えても、何で、石油不足とトイレット・ペーパーが関係があるのか、サッパリわからないけど、何しろパニックになったなぁ。
狂牛病が心配で、国産牛が売れなくなるのはわかるけど、安全な輸入肉が売れなくなるのは、わからない。
        
ところで、国産牛って、主として乳牛のオスのこと。
乳牛の仔牛は、母親の乳は商品ですから、代用乳で育てられるとか。
この代用乳には、廃牛の乾燥粉末も一部使われてきたらしい。
狂牛病プリオンに汚染された代用乳を飲まされた仔牛は、潜伏期間の5年間は外見では識別できないんでしょうねぇ。
             
この乾燥粉末にした廃牛の出所がヒドイ。
話は、1988年、イギリスではサウスウッド委員会勧告で、市価の5割で買い上げる政策をしたそうですが、買い上げを求めたのは少なかったらしいですねぇ。
ええ、廃牛からとる乾燥粉末飼料業者が高値でで買い取ったらしい。
で、その方に廃牛が流れたらしい。
流れながれて、日本に大量に輸入されたとか。
        
それまで、頬被りして、知らんフリしてきた農水省が、やっと臓物飼料禁止令を出したのは2001年でしたか?
まあ、あの禁止令からは、代用乳にも乾燥粉末が一切使われなかったと仮定し、狂牛病の潜伏期間も5年は越えない、と二重に仮定すると、2006年頃には国産牛も、ほぼ安全になるのかもしれない。
        
見てもわからない毒なんだから、安全な輸入牛を食べるのが、本能に代わる、現代人の智恵のような気がするんですが。