コラム・81 進取の気性と守旧派(2008/5)
      
NHKの衛星放送・BS3に、「Cool Japan」って番組があります。ああ、見ておられます?
各国の若者十人ばかりをゲストにして、日本の珍しい物を次々見せるんです。
新製品の番組では、「ボクも欲しい」から、「そんな物は必要ない」までいろいろの反応がでます。
その中に一人、スペイン人の若者がいまして、ことごとに「そんな物は必要ない」と決まったようにののしるんです。ええ、新しい物は、全部反対。メチャクチャな保守派。
いやー、保守派を通り越して、頑固な守旧派。
あれを聞いている内に、こんな話を思い出しました。
むかし、スペインのトレドは水運を利用した交易の中心だったそうです。
ところが、水運のかなめのタホ川が洪水の土石でうずまってしまい、町の人達は長年にわたるスッタモンダのすえ、川を浚渫して水運を確保することにしました。
反対派は、最後の切り札に「宗教会議の承諾をえるべきだ」と言い出して、意見を聴いたら、「土石でうずまったのは神の意思である。神の意志に背いてはならない」ってことになったらしい。その結果、トレドは通商の中心からはずれて、ただの古都になったとか。
     
トレドは、マドリードに近く、スペイン中央部にありますが、この中央高原のレオン地方とカスティーリヤ地方は自尊心が強く保守的なことで有名。
同じ、スペインでも、東のカタルーニャは、進取の気性の土地柄。中心都市はバルセロナ。ええ、ガウディの奇抜な教会・サグラダファミリアのあるところ。
気風のちがいから、カタルーニャには闘牛もフラメンコもないそうです。
地域特性をステロタイプ(ステレオ‐タイプとも。紋切り型な規格判断)に区別するのも気が引けますが、カスティーリヤ人とカタルーニャ人は、守旧と進取のそれぞれのステロタイプ的な典型だそうですね。
だから、「Cool Japan」のムチャクチャな守旧派のスペイン青年は、カスティーリヤ人だと思う。
    
日本には、こんな極端な地域特性はないように思いますが、個人レベルでは、進取派と守旧派ってのがありますね。進取派を通り越して、「珍し物狂い」がね。
新しい電気製品が出ると買わないとおれない人がいますね。守旧派の極は、電気掃除機では掃除した気分にならないとばかりに、ホウキ・ハタキ(箒・叩き)をいまだに使いつづけている人があります。
法律家は離婚原因として性格の不一致なんて言うけど、夫婦の性格が一致して、二人共が「珍し物狂い」だと世帯がもたないし、守旧派同志だと暮らしが不便でしようがないことになるだろうなぁ。
あんまり極端な反対どうしも、いさかいがたえないだろうけど、一方が「珍し物狂い」で他方が適当な守旧派っていうのがいい連れ合いになるように思えますね。まあ、夫婦は適当に性格の不一致が理想的。
それにしても、頑固なカスティーリヤ人とカタルーニャ人の夫婦はこまるだろうなぁ。
まあ、よそのことなんて、どうでもいいんだけど。