イソップの宙返り・59
         
肉を運ぶ犬
犬が肉をくわえて川の上の橋を渡っていました。
水に映る自分の影を見て、他の犬が肉をくわえているのだと思いました。
吠えて脅そうとしたとたんに、自分のくわえていた肉を落としてしまいました。
相手だと思った犬も、同じように落としてしまいました。
肉は川を流れて行ってしまいましたとサ。
寓意・欲どうしい人は、すべてを失うことがある。
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極東の凡俗が考えまするに・・・
この話は、伊曾保物語に載っていることもあり、昔から有名ですね。
たしか、子供の絵本では、犬は丸ごとのハムを銜えていました。
犬が丸ごとのハムを銜えているのも不自然ですが、まあ絵に描きやすかったせいでしょうかね。でも、丸ごとのハムなんて見たことのなかったボクには、何なのかわからなかったけどね。
ところで、昔の絵本って、超一流の絵描きが描いていました。
ですから、復刻版の昔の絵本が、今も人気がありますね。
今時、超一流の絵描きに挿絵を描いてもらったら、子供の小遣いでは買えないような高価なものになるでしょうね。
絵描き、イコール貧乏なんて昔の話になってしまったらくし、超一流クラスは金満長者ですね。
でも、若い駆け出しの人達は、やっぱり貧乏なのにね。
金満絵描きが出てくるのは、みんな絵を見るのも、自分の目で見ないで、新聞やテレビが囃し立てるのに、従いていっているように感じるのはボクだけかなぁ。
        
余談はさておき、寓意の本論のことだけど、欲深いのは、このイソップの犬だけではありませんよね?
人間みんな、程度の差はあっても欲深いですよ。
で、ワルはこの人間のゴウにつけいる。
「一年で倍になる」なんて甘言で、金を集めてドロンなんてヤツが後を絶たない。
もっと、巧妙になると、「一年で倍」では疑われるから、「年に2割増」なんて、いじましい騙しようをするのまで、出てくる。
            
「あんなのに、騙されるのは欲深いからヤ」なんて嗤う人がいるけど、ボクはそうは思っていないんですがね。
人がいいのよ。人を信じやすい善人。
         
と、言いますのは、こんなことが昔ありました。
20年も前の土地ブームの始めに、北海道の原野を売る商売がありまして、「原野商法」って呼ばれました。
まったく経済的価値のない原野を分筆登記して売ったんですから、明らかな詐欺商売。
            
ところが、この「原野商法」の被害者の名簿が高値で取引されたんですよ。
何に使ったかと言いますと、この「原野商法」の被害者を訪問して「売ってあげるから、測量費用を出せ」って釣った連中が出てきました。
           
ボクらは、いっぺん騙された人って、用心深くなっているから、もう騙されないと思うでしょう?
そうじゃあない。
詐欺商法の被害者って、騙しやすいお人好しのリストなんですねぇ。
この測量費詐欺で40万円を巻き上げられた人が多発しました。
           
でもねぇ、最近の詐欺商法の被害者って、欲深いって嗤えないんですよ。
内職商法ってヤツ。
子供を抱えて、外へパートにも出て行けない主婦をめがけて、一ヶ月5万円の内職になるから、って器具を売りつける詐欺があるでしょう?
それも、サラ金で借りさせてね。
あれ、詐欺の被害が30万円以下だと、泣き寝入りしてしまう人が多いんですよ。
何しろ、子供が居て外に出られない人達相手でしょう?
被害が表に出ないで、業者は大手を振って商売する。
         
これの救済をしてもらうのは、都道府県の消費生活センターがいい。
それも、わざわざ出向かなくても、電話を掛けるだけで、受け付けてくれます。
この救済は意外に強力でして、業者が解決の斡旋に応じないと、「公表」って処分があります。
業者にすれば、公表されると商売が出来難くなりますから、解決に応じます。
でも、業者が店仕舞い寸前だと、効果がありませんので、様子を見ないで、出来るだけ早くセンターに電話すること。
まわりで、こんな事を聞いたら教えてあげて!
         
でも、だまされる人は、人が良いから、最後まで騙されたことに気がつかないんですよね。ここが難しいところ。