イソップの宙返り・41
       
エルメスと職人
ゼウスはエルメスに命じて、すべての職人に嘘つきになる薬をふりかけさせることにしました。
エルメスは薬を当量に分けて振りかけましたが、最後に靴職人だけという時になって、薬が余ってしまいました。
残った薬を靴職人に丸ごとぶちまけました。
職人は嘘つきになったが、特に靴職人は嘘つきになりましたとサ。
寓意・靴職人が、とりわけ嘘つきになったのは、こんな訳からである。
        
極東の凡俗が考えまするに・・・
日本にも「紺屋の明後日(こんやノあさって)」って言葉があります。
これは、紺屋の「あさってには、出来上がります」って言う約束が、アテにならないことの意味。
ですが、これには同情すべきワケがあるのでして、藍染め作業は天候湿度によるのですよね。
だから、藍染め職人にすれば、明後日には出来上がると段取りにしていても、天候しだいでは遅れることがあるそうです。
でも、客のほうにすれば、アテにならないってことになりますねぇ。
それで、アテにならない典型として 「紺屋のあさって」って諺ができたものらしい。
だから、一概に「職人がエエカゲンな口をきく」っていう非難の意味だけではないみたいですよね。
    
ところで、又余談をしてしまいますが、あさっては明後日と書くように翌日の翌日で2日後のことで、これは紛らわしいところはありません。これは全国共通。
ですが、その更に翌日の「しあさって」になると、ややこしくなります。
          
東京から西では「しあさって」の「し」は強調の「更に」の意味ですから、3日後を意味しますが、この「し」を「4」にとると4日後を意味してしまうらしい。
そこで北関東以北では「しあさって」は4日後になるそうですね。
で、こうなると5日後の意味で「ごあさって」って言葉が成立してしまうことは容易に理解できますよね。
        
紺屋でなくても、約束の「しあさって」は、言ってる意味が土地、人によって違うんだから、はなからアテになりません。
          
何度も言ったことですが、「迄」にその日が入るのかどうかも、人によって違いますから、こんな曖昧語は約束事には使わない方が無難ですね。
         
イソップが言う話に戻りますが、エルメスは商業とか職人の神だそうで。
フィレンツェのエルメスは元々馬具屋だそうで、あそこの鞍は定評があります。
なんて、知ったかぶりを言いますが、ボクは昔馬術クラブに入っていたことがあるんです。ですが、ボク自身は、そんなに大層な道具を持つところまでは行っていませんでして。
まあ、オリンピック選手レベルの人達が使っているのを見ていただけ。
           
ところで、又、馬術の話に脱線深入りしてしまいますが、あれは危険な遊びなんですよ。
怪我をすると難儀。
下手はお尻から落ちます。尾底骨をタタキますから下半身不随。上手は頭から落ちますから、首の骨を折って全身不随。
どっちみち介護を要する状態になりますから、周りの人達に迷惑をかけます。
遊園地牧場なんかで、貸し馬がありますが、馬丁さんが轡を握っていてくれても、暴走することがあります。
暴走されることを「つっかける」って言いますが、乗っていてつっかけられると馬はやっぱり畜生だナァ、と思いますよ。
       
またまた、脱線していますので、元に戻しますと、このイソップ寓話が出来たところでは、商業者、職人をさげすんでいたようですね。
商人、職人を蔑むのは農業社会です。
でも、農業社会だったと言われる日本の江戸時代では「日本一の大工」「日本一の焼き物師」って称号までありましたね。
農業社会なのに、商人、職人をさげすんでいませんでした。
            
で、どうも江戸時代は農業社会とは言えなかったらしい、ってことになる。
江戸時代は人口の8割が農民だったって事になっているけど、実は農業従事者は5割程度であったらしい。
人口の8割が農民だったとの根拠は江戸時代の人別帳では8割が「百姓」と記載されていることから、そう言うらしい。
もともと百姓と農民とは別の分類語ですよね。
百姓は100のかばね(姓)ですから、農民だけどは限らない。
それに、商人でも、職人でも少しばかりの田畑の名義を持って、お代官様に鼻薬を効かせれば羽織を着られる身分になれたんですものね。
だから、8割という百姓の中にはたっぷり商人、職人が入っていたらしい。
           
明治政府はこれに悪乗りして、文明開化のお陰で、農業者の割合が減ったって統計をでっちあげたらしい。
もともと、統計なんて、愚民を愚弄する数字の魔術ですもんね。
          
ところで、世界を誤魔化す話になりますが、日本の失業率も、そうらしいですね。
失業率の分母には失業のない公務員数は入れないことになっているのに、日本の統計では入れているらしい。
4人に1人は公務員ですから、失業率5.5%を世界的な統計に引き直すと7.3%になることになりますね。(5.5%÷0.75=7.3%)
           
失業率が10%になると社会不安が出てくる、っていいますから日本の現状は危ないところまでいってしまっているらしい。
中高校卒の就職率が6割そこそこらしいから、何とかしなければならないレベルまで来てしまっているんですね。
        
エルメスの神さま、何とかしてぇ。