イソップの宙返り・35
      
二匹の犬
犬を二匹飼う人がいて、一匹は猟犬。もう一匹は番犬でした。
猟犬が獲物を捕ると、主人は番犬にも分け与えてやりました。
猟犬は、苦労して捕った獲物を何もしない番犬がひとの稼ぎで贅沢三昧をするのが許せませんでした。
番犬が言うには「ボクじゃあなく主人に言ってくれ。ボクを働かせないようにしているのは主人なんだから」と。
寓意・このように子供でも両親のせいで怠け者に育てられたのは非難されるべきではない。
      
極東の凡俗が考えまするに・・・
番犬がなぜ、怠け者なのかはよくわかりません。
まあ、これで思いつきますのは、会社の総務部門。
特に審査部門なんかは、営業からは不労者と考えられますね。
でも、審査とかの総務部門って大事なんですのにね。
        
14億もの金を横領された青森県の公社がありましたね。
あれ、審査部門を軽視していたんでしょうね。
     
審査部門の軽視といえば、商事会社での相場の失敗事件がありましたね。
ボクが商社勤めをしていたのは半世紀前の話になりますが、審査部が何時も注視することになっていたのは、シンガポール支店のゴム相場。
          
タイヤ会社なんて半年、一年先の材料仕入れが必要です。
これの買予約を受けるのは現在価格で受けることになります。
ですから、商事会社としては、危険回避(リスクヘッジ)に先物買いが必要なんです。
そりゃあ、当然の商行為。
ですが、相場の動きを見て、これの先物買いを延ばして相場が安くなると、注文主は安く材料を仕入れることになりますから、営業担当者には絶大な信頼が寄せられます。
この信頼関係は営業にとってはオイシイ。取引が永くつながっていきますもんね。
でも、相場の読みが違うと、大変なことになる。
これは会社員としては、何とか挽回して得意先には損害を与えないで行きたいですよね。焦るよ。
焦って、もっと危険な相場に深入りしてしまう。
そりゃあ、誠実な人ほど焦ってしまう。
なにしろ、ゴム相場なんて酷いときには1時間で倍とか半額なんてことになりましたからね。
        
金融相場に手を出して大きな穴をあける事故が近年は増えましたね。
経営者にすれば、直接カネを産まない総務部門はできるだけスリムにしたい誘惑に駆られるものでしょうしね。
相場に関わる営業担当者は我欲から出ていなくても、何時もそんな誘惑の中にいるんですものね。
この誘惑から踏みとどまらせるのが審査部門の役割なんですよ。
人間ってお互いに弱いですもんね。
それに、営業部門は自分がお前らを食わせてやっている、なんて自負がありますしね。
        
相場に失敗して大きな損をだして、背任とか横領とかで逮捕されるのがいるけど、あれは担当者だけに責任を帰するのは可哀想な気がする。
       
番犬を、ただの怠け者としか認識しなかった経営者の責任。
誘惑から引き離してやらなかったシステムの責任だと思う。
        
人間って弱いものだとしても、14億も女につぎ込んだヤツはすごいことをするなぁ。
それにしても、ババッチい女にねぇ。