イソップの宙返り・32
      
ミルテの茂みのツグミ
ツグミが茂みで甘い餌を見つけて、夢中でたべていましたので、鳥刺しに鳥黐で捕まえられてしまいました。
「ああ、情けない。餌の甘さのために、命を失うとは」と嘆きましたとサ。
寓意・贅沢ゆえに身を滅ぼす人がある。
      
極東の凡俗が考えまするに・・・
10年ほど前にバブルってのがありまして、まあ、たいていの人は憶えておられるところですが。
あの頃には、贅沢をすることが何かスティタスシンボルみたいになりましたね。
日本人は賢いから、贅沢の見栄は恥ずかしいことだと知りまして、やめてしまいました。贅沢は成金趣味ですからね。品のわるい趣味とされてきました。
日本の伝統では、質素が高級な嗜みですから。
         
これで思い出すのは、秀吉と利休の葛藤。
秀吉は黄金のキラキラ趣味。利休は侘び寂び。
と、ボク達は教えられてきましたが、こんなステレオタイプな分類は必ずしも、正確ではないらしいですね。
秀吉と利休の対立の直接の原因は、利休が大徳寺の山門に等身大の自分の立像を置いたことだといいますね。
なにしろ、大徳寺の山門は、訪れる貴人が、その下をくぐっるところですから、秀吉も利休の等身大の立像の股の下をくぐることになりますね。
そりゃあ、秀吉にすれば「思い上がるな!」って、ことになったでしょうね。
それで、切腹を命じた、とも言われています。
        
もう一つの原因は、利休が茶器に箱書きをして暴利を得たことにあるらしい。
今でも、茶器に宗家が箱書きをすると2倍以上の値段になるものらしいですね。
ボクみたいな凡俗には「宗家の箱書き」と侘び寂びとは、どんな関係があるのか理解できませんがね。
       
あの贅沢は大変にこみ入った、屈折した贅沢なんでしょうね。
それにしても、金ピカよりは趣味がいいよう。
         
金の卵を産む鵞鳥
エルメスの神を崇拝することが、ひとかたならぬ男があったので、神は褒美に金の卵を産むガチョウを授けました。
この男は強欲なので、鵞鳥の中身の金を一時に取り出そうとして、殺してしまいました。中身には金は入っていませんでした。
寓意・強欲は今以上のものを欲張って、今ある物も失ってしまう。
       
この寓話は「金の卵を産む鶏」って憶えていますね。
ところで、極東の凡俗が考えまするに・・・
一昔前の話になりますが、IT産業の始まる頃に、IBMがコンピューターを部品まで全て自家生産をしようとしました。
今で言う「囲い込み」。この囲い込み戦略は、その後成功しませんでしたね。
でも、当時には、ボクなんかは「すごい」なんて感心していました。
NECもそうでしたね。まあ、時期にあまり遅れずに囲い込み政策を転向して事なきを得ましたが。
        
そうかと思うと、囲い込みを徹底的に排除したDELのパソコンも、最近は調子が悪いようですね。
でも、同じように自家生産をまったくやらないアパレルのUNIQLOはすごい勢いですね。
ボクみたいな年寄りでも、今シーズンは覗いてみましたものね。
UNIQLOは中国製品なのかと思っていたら、最近の報道ではベトナムへ乗り換えているとか。
ボクの友達には、今第一線の経営者をやっているのがいるけど、出会って話を聞くだけで、気が遠くなる。
ボクだったら、経営戦略を考えるだけで、神経がおかしくなるように思えます。
        
イソップの金の卵を産む鵞鳥の話から、連想するものがなかったから、今回は退屈な話になってしまいました。
まあ、金の卵を産む「鶏」の話の元が「鵞鳥」だったってこと。