イソップの宙返り・28
         
樫と葦
樫と葦が頑丈さを競い合いました。
嵐が吹いたときに、葦は柔らかく風に身を任せましたので、折れませんでした。
樫は抵抗して根っこから倒されてしまいました。
寓意・強いものには抵抗すべきではない。
       
極東の凡俗が考えまするに・・・
日本の諺にも「柳に風と受け流し・・」なんてのがありますね。
まあ、教訓話ばかりでも何ですから、植物の話。
        
木の幹も、枝もまっすぐ空を目指しますね。
あれ、引力に逆らうように遺伝子が組み込まれているんですってね。
だのに、柳の幹は天上を目指すのに、枝はしだれますね。
枝になると、幹とは違うようにしだれる遺伝子になっているんでしょうか。
見るたびに不思議な気がする。
      
しだれるっていえば、しだれ桜。
あれは品種改良で垂れるようにしたらしいですね。
引力に逆らって天上を目指すジベレリン遺伝子をノックアウトしてきたらしい。
枝だけを垂れさせることまでには、なっていないから、幹も垂れるらしいですね。
ですから、いい垂れ桜になるのは、実生の苗でも、フニャフニャと倒れるのを選ぶらしい。そういえば、植木を育てているところへ行くと、シッカリと幹に添え木をしたのがありますね。枝も出ていないのに。
あれが垂れ桜の苗ですって。
       
垂れる桜のなかでも、糸桜ってのがあります。
枝が細くて、柳のようにブラブラ垂れ下がっていますよね。
まことに風情があって、あのナヨナヨとした枝に小さな花がついているのが何とも言えないですね。
       
で、ここでとどめ置くのが風流人。
ところが無粋なボクは「地面についたら、その先どうなるんかなぁ?」なんて考えてしまう。
枝の先が地面に着くと、少しは立ち上がろうとするんですって。
重力に逆らうジベレリン遺伝子をノックアウトしたと云っても、少しの本能は残っているとか。
でも、数センチも立ち上がると、又下へ向いてしまうらしい。
地面に着いたら、根をつけるのかと云うと、そうでもなく、ウネウネと伸びていくことになるらしいけど、30センチも伸びると、腐ってしまうものらしい。
これ、ボクが実験したわけではなく植物学の先生の受け売り。
         
世の中には、臥竜松ってのがありますね。
横にばかり伸びていく松。
あれも、品種改良かなんかで、重力に逆らう遺伝子がノックアウトされたものなんでしょうね。
ところで、あの臥竜松って、横着して支えをなくして、地面に着いたら、どうなるんかなぁ。
      
ここで、天の声。「そんなくだらぬ詮索をせんで、無心に鑑賞するもンだ」
ごもっとも、ごもっとも。