イソップの宙返り・22
    
女とメン鶏
毎日卵を飼っていたのに、もっと卵を産まそうとして、餌を沢山やりました。
鶏はブクブク太って、卵をまったく産まなくなってしまいましたとサ。
         
寓意・人はどん欲さから余計なものまで欲しがって、現にあるものまで失ってしまうことがある。
       
極東の凡俗は、これとは直接の関係のないことまで連想してしまいました。
野依さんがノーベル賞をお受けになったのは、鏡像異性体ですね。
            
鏡像異性体って言っても、わかりづらいので、サリドマイドの話からはじめます。
サリドマイド事件が発生したのは、40年前です。
妊娠中に鎮静剤としてサリドマイドを投与されたお母さんから、奇形児が生まれました。サリドマイドは人工的に合成された薬剤です。
人工的に合成されたサリドマイドにはR体とS体と呼ばれる左右対称の有機化合物があったそうです。
R体とS体は鏡像異性体。左手と右手のように、ちょうど対称する形。
人工的に合成すると、確率から半々に右手と左手にあたる対称型が出来るようです。
まあ、そうでしょうね。サイコロを振れば丁半(奇数偶数)はんはんになりましょうね。
         
R体サリドマイドは優れた鎮静剤。S体は恐ろしい奇形児を生み出す悪魔。
S体の恐ろしさを検査しないで投与した無責任。
        
人工的に合成すると、左右半々になるのは、サイコロを振ればわかりますね。
この半々をラセミ体(等量混合物)といって、合成化学の古典的な常識だったようです。
だったら、サリドマイドに優れた鎮静作用があることがわかっても、これがR体とまでわからなくても、鏡像異性体があることはわかっていたはず。
悪魔のS体の検査をしないで、薬剤として売ったヤツらの無責任。
             
ところが、合成化学ではラセミ体(等量混合物)しか出来ないとの常識を覆そうとした天才がいらっしゃったんですね。
1966年当時、京都大学の助手であった野依さん。
先ほどのサリドマイドで言えば、R体だけを合成しようとする不斉合成の糸口をつかんだんですね。
まあ、偶然と言えば偶然らしいのですが、別の反応機構解明の実験として不斉銅触媒の反応をしていたところ、左右の差が半々ではなく、55対45ぐらいの差がでたらしい。
これは糸口ですよね。
            
この反応を無限大に繰り返せば、100対0になるんでしょうね。
これには、優れた触媒が必要です。
まず、ハッカ油成分メントールの合成。
触媒として、BINAP配位ロジウム触媒が選ばれたらしい。
これから先は、コツコツと不斉合成の繰り返し、次は触媒の開発だったそうです。
              
それにしても、糸口を掴んだのが京大時代だったからと言って、京大、キョウダイなんて騒ぐところが、いじましい。
一番大事な「コツコツ」は名古屋大でだったのにねぇ。
それに、ボクとは京大卒以外なんの関係もないのにね。
      
それにしても、東大からはノーベル賞はでてなんいんだからね。
いえ、来年ぐらいは出るかも知れないようだけど。
           
さらに、更に、それにしても、イソップにかこつけて何を言い出したんかなぁ。