イソップの宙返り・12
       
ロマンスグレーと二人の愛人
ロマンスグレーの男が若い女と、年をとった女の二人の愛人を持っていました。
ばあさん愛人は、男が自分より若く見えるのがいやで、黒い髪の毛を寝るたびに引き抜きました。
若い愛人は、男が年寄りに見えるのがいやで、白髪を引き抜きました。
両方から引き抜かれたので、男はハゲになりましたとサ。
寓意・不釣り合いは怪我の元。
         
極東の凡俗の考えまするに・・・
この話は、たしか落語のフリ(前咄し)で聞いたことがあります。
           
それにしても、せっかく愛人をつくるなら、ちょうどいいくらいのにしたらエエのになぁ。両方から、金をせびられるわ、毛まで抜かれるわ、ではかなわんなぁ。
         
ところで、言葉の意味だけど、「愛人、情婦、二号」って言い方がありますね。
小遣い程度をやるのが愛人で、情婦は貢いでくれるのん、二号は丸抱え。
って、ことになっているらしい。
ボクは二号を持っている人に出会うと「ご苦労さん」ってねぎらうことにしている。
だって、ご苦労さんでしょう。
まあ、福祉事業のうちかなぁ。
          
モスレム(イスラム教徒)は複数の本妻を持つことが許されている、だけでなく経済的余裕があれば、持つのが宗教的な義務でもあるらしい。
「あるらしい」なんて現在形で書いたけど、今では稀だっていいますね。
コーランで複数の妻を養う義務を言ったのは、内戦で男が払底して寡婦が増えすぎたのを救済する社会福祉政策であったらしい。
       
それにしても、今になっては、えげつない社会福祉事業よね。
日本でも、ついこの間まで二号を持つのは「男の甲斐性」ってことになっていました。
だから、ボクの先輩の中には「男の甲斐性」を発揮して、今になって弱っているのがいますけどね。
       
そと子がいると、死んだ後の相続で揉めるのよ。
よく友達が「そと子があるから、死んだあとのもめ事を纏めてくれ」って頼まれるけど、円満に話し合いが出来るようには努力はするけど、いざ裁判沙汰になると弁護士は死んだ人(これを被相続人という)の顧問だった場合、外子もこの顧問だった人の子供さんですから本妻さんの側にだけつく代理人にはなれないんですよ。
まあ、行儀の悪い弁護士は平気で金のもらえる方につく人もあるけどね。
弁護士倫理では微妙。だから、ここでは「行儀が悪い」とだけ言っておきます。
で、もめる原因ですが男は二号さんにせびられて、二号本人にか、二号の子にかハッキリしない形で、若いうちに現金で渡しているんですね。
現金で渡しているから、ハッキリとした証拠がまったくない。
生前贈与があると相続の時には差し引かれて平等がはかられることになっているんだけど、ハッキリした証拠がないから、二号さんの子供が二重取りするケースが多くなるんです。
「婚姻外子の相続分が2分の1は、法の下の平等に反する」って言うけど、ここら辺がむつかしいところなんヨ。
        
これとは直接の関係のない話かも知れないけど、ドイツでは「複数当事者の連帯責任」って法制がありましてね。
一人の女が同時に複数の男と性的関係があって子供が生まれると、ハッキリしない場合、関係した男全員が子供の養育費を連帯して払わされることになっていました。
そりゃあ、父親は多いほうが、手厚く保護されるもんねぇ。
いかにも、ドイツ的合理主義でしょう。
         
まあ、「ハッキリしない場合」ってのは、今までは血液型だけでの鑑定しかなかったから、生まれた子供と同じ血液型の男全員が扶養義務を負ったし、子供が母親と同じ血液型だと、文句なしに男全員ってことになっていた。
ところが、DNA鑑定がでてきてからは、この手厚い保護がなくなったでしょうね。
だって、一発で父親が特定されるもんね。
なんとも、味気ないことになったなぁ。