イソップの宙返り・2
        
鷲とカラスと羊飼
「ワシが岩場から舞い降りて、子羊をひっ攫いました。これを見ていたカラスは、これの真似をしようとばかりに、急降下して、襲いかかったのですが、これが大きな親羊。
ふさふさとした毛に爪が食い込み、引き抜くこともできないで、バタバタしていると、羊飼に捕まえられました。
羊飼は子供への土産に持って帰って言いました。
『このカラスは、自分がワシのつもりのようだ』って」
で、寓意(中世用語では下心)。
「優れたものと張り合うと、ひどい目にあった上、物笑いの種になる。
        
極東の凡俗の下心(寓意)の解釈。
ベラ釣りの仕掛けでサメを釣りに行くな。
でも、ベラ釣りの仕掛けだと糸が切れるだけで、どうってことないか?
巡航ミサイルで、テロ征伐に行くな。
これも関係ないか?
いや、関係あるかも知れない。
ハッチントンは「文明の衝突」で言っていた。世界は二極化する。
第三の波に乗って、超近代化する国と、中世の宗教国家に戻る国とに。
                  
湾岸戦争でイラクに楽勝したからといって、中世の宗教国家に戻ろうとする人たちのゲリラ戦闘に、近代兵器を持ち出して戦争を始めると、「ふさふさとした毛に爪が食い込み、引き抜くこともできないで、バタバタ」するはめに陥らないかなぁ。
         
国の中でも、IT革命化するグループと、ついて行けない階層とに二極分化するって説もある。
そして、落ちこぼれた階層は暴力的になって対立が始まる、って。
        
こんどの「ゆとり教育」は、子供の「ゆとり」ではなく、先生の「ゆとり」だけだと思えるから、学校の教育サボリで、教育を受けるチャンスから、はみだすわ、塾の月謝の払えない階層は、落ちこぼれて、ただただ暴力的になることになるように思える。
           
学校で教育を受けないでも、優れて創造力に恵まれるワシの真似をカラスにさせようとするのは、「優れたものと張り合うと、ひどい目にあった上、物笑いの種になる。」って教えるイソップの知恵から学ぶこともできない教育専門家でなければ、いいがなぁ。
              
鷲とセンチコガネ(虫)
「あるとき、ワシに追われた兎が、コガネムシに救いをもとめました。
コガネ虫はワシに、兎を助けてくれるように頼みましたが、ワシは聞き入れてくれずに、目の前で兎を食べてしまいました。
怒ったコガネムシはワシの巣に入って卵を落として割ってしまいました。
どこへ行って巣を作っても、やられるので鷲はゼウスのところへ助けをもとめました。
ゼウスは自分の懐でワシが卵をかえすことを許しました。
ところが、コガネムシは、飛んでいってゼウスにウンコをかけました。
ゼウスはウンコを避けようと立ち上がった拍子に、ワシの卵を落として割ってしまいました。
寓意。
「踏みつけにすれば、コガネムシでも仇うちをする。一寸の虫だとて侮るものではない。」
        
極東の凡俗の感想。
それにしても、しつこいなぁ。
ワシはコガネムシをいじめたわけではないんでしょう?
「兎を助けてくれ」との頼みを聴かなかっただけでしょう。
だのに、この復讐のしつこさ、凄まじさ。
            
相手のワシの立場も思いやって、慈悲と和を考える極東の倭人には理解できないですねぇ。
なにやら、今度のニューヨークのテロ攻撃を連想してしまう。
アラブの土地に軍隊を駐留させたことが、コガネムシに仇うちする原因を作ったって言うけど。
でも、アメリカのCIAはコガネムシが仇うちするのを予想できなかったの?
CIAは何兆円もの予算を遣っている世界一の諜報機関ではないの?
そういえば、CIA長官って、テレビにも出てこないなぁ。
       
ところで、ゼウスってギリシャの万能の神。
預かっている卵を落とすなよ。
頼りないなぁ。
           
そう言えば、最近はギリシャの神さん、人気ないよね。
マキュリーの神なんて、失業して、渡し守をしているそうだけど、頼りないと、そうなるのはしょうがないかなぁ。