ノイローゼ完治の実践技術、12.段階的に治してゆくて 18.目次 11.個々の症状に対する具体的な対処法 13.創造的な生活が心の健康を保つ等          

どの症状から実践する

 神経症の根底には、神経質のエネルギーがあり、それがいろんな形で噴出したものであるから、ひと りで何種類もの症状をもっている場合が多い。
 ではいったいどの症状から実践していけばよいであろうか、それはその人が最も強く出るものから実践すればよい。そしてだんだんすべての症状に対して実践していけばよい。
          

最初の実践は意味が大きい

 最初の実践は自分の感情の動きに関心を持ち続けながら、症状が出るまでまたなくてはならないのでなかなかつらいことである。そしてなんとか忍耐して症状が出た時に全力で切り替え精神集中を行う。
 最初の実践がうまくいくと、患者はその最初の一回で、ノイローゼが治るということを信じるのではないかと思う。そのくらい最初の実践は意味がある。
          

野球の守備にたとえてみると

 切り替え精神集中の実践は、野球の守備みたいなものである。ゴロがくる。フライがくる。ライナー がくることもある。右側にくることもあれば左側にくることもある。しかし野球選手はそのほとんどを 上手にさばいてしまう(これも繰り返しの実践の成果である)。
 神経質症状は、電車の中で出る時もあれば歩いていて出る時もある。家でゆっくりしている時にでる時もある。しかしいつでもきっちりとらえて自在に実践することだ。(繰り返し、繰り返し実践するこ とによって、上手に実践できるようになる)
 しかし、なかなか初めのころは実践がうまくいかないことも多い。それでも何度でも実践しなければならない。
 キャッチボールをする場合、最初はうまく捕球することができなくても練習しだいでうまく捕球でき るようになる。自分の症状のでるところをとらえての心の切り替え精神集中の実践要領もこれと同じで ある。
          

症状の出始めた時に実践する

 倒れかかった壁は傾きが小さいうちはささえられるというが、実践のコツとして神経症の感情が出始 めた時に、すぐ切り替え精神集中行動をするのが良い。症状がたくさん出てしまうとなかなか止まらな いという性質をもっている。
          

意識が無意識につながる

 実践を続けていると、症状がでた時に、ひとりでに切り替え精神集中行動が出てくる。つまり、意識 的実践が無意識につながったわけで、こうなると実践が容易になってくる。
 切り替え精神集中行動がひとりでにでてくるということは、心の中に、マイナス状態から、プラス状態への心の交換器がつくられたようなものである。
          

心の切り替え精神集中法の原理

 このノイローゼ治療法というのは、心の中にエネルギーというものがあり、そのエネルギーの流れる 回路があるとする。心を切り替えたり、切り替え精神集中を行うのは、心のエネルギーの流れをたえず 正しい方向へ修正するわけである。
 そうして正しい回路を流れるようにするわけである。
 また心のエネルギーは流さなければ溜まってしまう、そうすると正しい方向へ流れずにとんでもない ところから流れ出す。(これがクセである)切り替え精神集中は、エネルギーの流れの修正と、その修 正したエネルギーを、勢いよく流すことを同時に行っているのである。
            

症状が大きくみえてくる

 実践を続け、心のエネルギーというものがわかってくると、症状というものがどういうものかはっき りわかってきて、症状が拡大して見えてくる時期がくる。この時期は完治する一歩手前である。この苦 しい時に確実に実践し、壁をのり越えて、はじめて治るのである。
         

実践は自在に

 強く出た時は強く精神集中し、弱ければそれなりに精神集中する。
だんだん実践を積み重ねていけば、症状は弱まってくる。さらに実践を積み重ねれば、症状は情動を伴わず、かすかに出てくる感情が神経質のエネルギーから出てくるものだなと、わかる程度になってくる。(そうなってくると精神集中しなくとも、心の切り替えだけで充分である。)
 そういうものも、それなりに確実につかんで実践できるようになると、もうあなたの心は、実践を始めた時からみると、大きく成長しているに違いない。こうなると、実践を重ねたことによって、切り替え精神集中の実践技術の熟練者となったのである。
 すべての神経質症状に対して、精神集中行動によって対応するということは、創造的行為である。そこに創造の喜びが伴う。つまりこの方法は、創造的ノイローゼ治療法であるともいえる。
            

神経症者の心は細いゴム

 神経症者の心は、細いゴムの管のようなものである。刺激がそこを通過しようとしてもひっかかって しまう。その時はからったり、もがいたりするとますますひっかかってしまう。しかし、はからわず、 さからわず、あるがまま、通過するのを耐えていれば、何とか通過する。
 しかしこの細いゴムの管には、だれでも知っているもう一つの性質がある。それは忙しい時、また心 が活発に動いている時は、ふくらむという性質である。だから忙しい時やなにかに没頭している時は、 刺激がきてもひっかからず、すんなり通過してしまうことが多い。忙しくする、心をたえず活動的にす るというのは、多くのノイローゼ治療法にもみられる。この方法も例外ではない。
 しかしこの方法はそれだけではない。自分の心の動きに関心を持ち続け、刺激がくるたびに細いゴム の管をふくらます、すなわち刺激がくるたびにゴムの管をひろげ通過させるのである。何回も実践する と、精神集中がひとりでに始まってゴムの管がひとりでにふくらむようになる。
            

実践を徹底しよう

 高等数学は素人にとってみれば難解な世界だが専門家にしてみればそれは明晰な世界だといわれてい る。心のエネルギー、心のクセの世界も同じである。そしてそれは高等数学ほど難解ではない。
 心のエネルギー、心のクセをはっきりつかんで理論どおり実践すればノイローゼは100%冶ること になる。
 この方法で治した場合、再発も転移も有り得ないというのはある意味では再発や転移を利用して治してゆくのであるから、もし問題があるとすれば患者がどこまで実践を続けるかである。
 この実践をしてある程度治ってくると症状の悪かった時の事を忘れてしまう。そうして心の切り替え の実践やエネルギーを流す工夫を忘れる。そこに問題が出てくる。実践を続ければ、間違いなく完全完治するということである。
 したがって、なんといっても大切なことは実践を徹底すること、早く治るか完全完治するかも、確実に実践を行うかどうかによって決ってくる。
            

実践を継続しよう

 生きている限り、神経質のエネルギーは出続けるのであるから、ノイローゼを短い時間で完治させる ことはむずかしい。したがって、完治する方法を学んで実践するのである。
 たとえば精神科、神経科の病院で何力月か、入院して治ったように見えても、心を進化させる具体的な実践がなかったら、再発してしまう危険がある。しかし、技術をマスターし、その技術を継続して実践すれば、重症であってもいつかは治ってしまう。
 この方法は、この療法の理論と実践法の基本を完全に身につけ、ノイローゼ症状という大きな心のクセを治すものであるが、しかし短い期間だけで、かすかに出てくる小さい神経症的心のクセまで完全になくすことはむずかしい。そういうものは、いろいろ工夫したりして実践し、深く追求して治してゆくものである。
     

技術であるため体系づけることができ、段階的に成長できる

           

この方法は技術である

 この心の切り替え精神集中法は技術である。一つの法則に従って実践する。法則が示されたおかげで、

1法則に合わせた具体的な実践ができる
2法則に照らし合わせて確かめたり反省することができる
3段階的に成長できる

 この方法は技術であると述べたが、それは実践することによって、だれでも同じ結果が出るといいたいのである。
 その方法によって治る人と治らない人がいたら、それは技術ではない。実践の進み具合で早い人おそい人の違いがあっても、法則に従って実践すれば、だれでも治るということである。

          

できればこのように成長したい

1最初の実践 2強いノイローゼ症状にたいしての、切り替え精神集中の実践
3計画的な創造的生活 4他のノイロ一ゼ症状に対しても実践
5無意識から実践の指示が出るようになり、安定した実践
6症状が出ることが少なくなり、かすかに出ている症状に対してのそれに応じた自在な実践 
7計画と状況に応じた創造的生活
8技術に熟練し自己の内面から発する意志による実践 9自在な創造的生活