UIVERSITY学習生物の進化と多様性   / 第 1 室
 

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    1.生物多様性 / 2.分子レベルの進化 /    

             ここでは、テキストを読み、講義を聴いた私が、私自身の見解をまとめて行きます。  

                       なお、テキストの本文を引用する時は、そのつど明記します。

       

トップページHot SpotMenu最新のアップロード            担当 : 堀内 秀男

 

< 第 1 室 >

  <1>  多様性の風景  1999.11. 1
   <2>  分子レベルの進化 / 中立説 ...  1999.11. 1

 

 

 

<1> 生物多様性と生物の進化     

  

多様性の風景

 

  地球上には、現在約150万種の生物が認知されているようです。しかし、実際に

は1000万種を越えるかもしれないとも言われます。また、研究によっては、億の単

位になると推計している人もいます。つまり、地球生命圏全体としては、現在でも分

かっているのはごく一部だという事です。それにしても、この生命圏の全体像とは、

膨大な謎の塊のようです。しかも、確実にあるベクトル(力と方向)を持って推移しているよ

うです。いったいこの我々の命は、何処へ向かって、どのように流れているのでしょう

か...この巨大な疑問は、このホームページ全体のテーマとも深くかかわっている

ように思います。

 

  さてと...植物については、これまでに25万種弱が認知されているようです。し

かし、実際には、30万種から50万種が現存していると推定されています。この差

は、まだ全く見たことのない未知の植物が大量に残っているといった意味のもので

はありません。種というものの実態の解析や精密な分類によって、このぐらいの多さ

に再分類されるのではないかという推計です。むろん、まだ未知の植物はあります

し、生態系の推移からして、これからも新種がどんどん生まれてくるのは間違いあり

ません。

 

  ま、ともかく...比較的よく分かっているのは、魚類以外の脊椎動物と維管束植

物です。一方、広い未知の領域が予測されるのは、昆虫類や線虫類です。これらは

ともかく種数が多い。また、周囲を見まわしても分かるように、数量も多いようです。

 

  ところで、この膨大な生態系の多様性は、単元的なのでしょうか、多元的なので

しょうか。つまり、最初にたった一つの型があり、それから増大したのか、それとも同

時多発的に発生してきたのかという問題です。これに関しては、このホームページの

“My Workstation/生命体・命のリズム(第2ステージ、生命の発生)でも考察していま

す。どうぞ、そちらの方もご覧下さい。しかし、最新の研究成果でも、まだ結論には

至ったていないようです。

 

 

<分子系統学の進歩>

  さて、現在150万種ほどが分かっているという生物種は、いったいどのように分類

されているのでしょうか。また、それが数千万種といったスケールまで拡大して行くと

したら、どのような学術的手段があるのでしょうか。

  ご存知のように20世紀の後半から、生物の研究は細胞レベルからDNAレベルへ

と深化してきました。そこで、この生物の多様性を扱う学門分野でも、分子系統学と

いうものが進歩してきました。例えば、“染色体突然変異をきっかけとする種の分化”

においては、細胞遺伝学的な解析が用いられるようになってきというわけです。

  さらに、分子進化の“中立説”や、DNAのオートシーケンサーの進歩、化石資料の

増大等、相互補完的な研究成果もあいまって、いよいよ21世紀が楽しみな研究領

域になっているようです。それにしても、生物は何故このような多様化の道を歩んで

きたのでしょうか。まさに、この多様性こそが、生命圏の恒常性や安定性をもたらし

ているのでしょうか...

 

 

 

 <2> 分子レベルの進化と中立説        

 

  分子レベルの進化とは、どのようなものでしょうか...

  これは、生物体にとっては当然その設計図であるDNA領域の進化メカニズムを指

しています。つまり、DNAにおける塩基の置換、あるいは欠失、挿入、重複、変換、

組替え等々...こうした現象の地道な観察から、DNAレベルでの進化の実態が見

えてきます。

 

  さて、ここはかなり専門的な話になっています。しかし、見落としにできないポイン

トも含まれていますので、その要点を説明しておきます。

 

  まず、個体レベル、集団レベルでの主要な進化のメカニズムは、“自然選択”“遺

伝的浮動”であるということです。“自然選択”については、ダーウィン的な自然淘汰

の事であり、すでにおなじみの概念だと思います。突然変異は無方向的に起こるも

のであり、進化や適応は環境によって選択されていくというわけです。

  では、“遺伝的浮動”という進化のメカニズムとは、どのようなものなのでしょうか。

テキストでは、このように説明しています。

 

  “中立説は、(遺伝的)浮動という進化機構を主張する。浮動は各個体の子孫の数

が遺伝的要因とは無関係に、かつ偶然性に支配されている場合に生じる。すべての

個体が、同一数の子を残す場合には、浮動は起こらない。”

 

“浮動”とは、ひと所に定まらないで、揺れ動く事を言います。例えば“浮動

票”といえば、選挙でその投票動向がはっきりしていない票のことを言いま

す。したがってここでは、偶然性に支配されていると理解してください。

 

 

<遺伝的多様度/分子進化速度/分子進化の特徴と中立説>

 

  ここもかなり専門的な領域になります。したがってここでは、言葉の解説に留めて

おきます。ここから、いったいどのような事が研究されているのかが見えてきます。

 

 “遺伝子座”、“置換数”、“多様度”、“塩基座位”、“同義的座位/非同義的座位”

 

  “遺伝子座”とは、ゲノム(全遺伝子)の中の遺伝子の座標のことでしょうか。言い換え

れば、DNAの中の当該する塩基配列...

  “置換数”とは、

塩基やアミノ酸の置換された数量...DNAにおける塩基の置換、あるい

は欠失、挿入、重複、変換、組替え等により進化が発現して行くわけです

が、それを数値化したものです。

  “多様度”とは、置換数を、比較している座位の総数で割った量...

  “同義的座位/非同義的座位”とは、

遺伝暗号表に従って、アミノ酸に変化を及ぼさない塩基座位...これを

“同義的座位”といいます。また逆に、変化を及ぼす塩基座位...これを

“非同義的座位”といいます。

 

  ま...これだけでは何のことかよく分からないと思いますが、テキストの方も似た

ようなものです。とりあえず、聞き流しておいてください。そのうちに、何度もこうした

言葉を目にするようになると思います。それから、分子進化の速度に関しては、次の

1節をテキストから抜粋しておきます。

 

  “現在では、分子進化について多くの観測データが得られているが、その中で特

に注目に値する事実は、各タンパク質分子ごとに年あたりの進化速度が一様なこと

と、機能的な制約の少ないと考えられている分子または分子内の部分で進化速度

が相対的に高い事実である。

 (傍線は私が引きました。これらの事から、“分子進化時計”というものが成立してきま

す。系統樹の中に、強力な時計という道具が導入されてくるわけです。うーむ...)

 

  学問的には、非常に重要な所ですが、きわめて専門的です。つまり、そうしたレベ

ルでの、安定した分子進化があるという事を頭に入れておいてください。そして、そ

れほど重要でなく、活発でないタンパク質では、相対的に進化速度が高いということ

です。ま、暇な連中なら、多少冒険をしても、命という本質に影響が少ないからでしょ

うか...それにしても、目に見えない所で、きわめてダイナミックなシステムが、リア

ルタイムで進行しているわけです。つまり、これが生命圏なのです。