緊急特集...第2次イラク危機
第1回特別編集: 高杉 光一
これは、第2次イラク攻撃の可能性ということになりますが、国連決議による
第1次攻撃とは様相を異にしています。いったい、そこで何が起っているのか。
私の視野で構成する、第2次イラク危機をレポートします。
“砂漠の雷鳴”作戦が刻々と迫っています。しかし、作戦が発動される前に、
イラクが譲歩することを望みます。結局、軍事作戦の後に残るものは、双方の
空しさだけです。そして、話が再び振り出しへ戻るだけです。
この軍事作戦は、今のところアメリカ軍が主体で、イギリス軍が同調、それにオー
ストラリア軍の特殊部隊がすでに現地入りし、臨戦態勢を整えつつあります。また、
NATO新規加盟候補国の中で、ハンガリーが医療チーム、ポーランドは対化学戦
部隊、ルーマニアは汚染除去等の技術支援チームの派遣を決定しています。短期
決戦とはいっても、アメリカはできるだけ多くの国々を巻き込み、多数派工作に出て
くるはずです。
さて、ここで、日本の対応はどうなるのでしょうか。現内閣は、景気対策のように、
再び兵力の小出しを始めるのでしょうか。いずれにしても“顔の無い国”と言われて
きた日本ですが、まさに何らかの決断を下さなければならない所に来ています。
たしか、哲学者の故田中満太郎氏だったと思いますが、氏は遺稿の中で、“日本
は普通の国になるべきである”と書いていました。その“普通の国”とは、ごく普通の
国のことだと私は理解しました。普通に自国で作り上げた憲法を持ち、普通の国防
軍を持ち、普通の議会制民主主義国家といったところでしょうか。将来的な人類社
会の展望はともかく、現時点では、この普通の国になるという意見に、私は賛成で
す。
つまり、日本は、こうした普通の国家として、国際社会の中へ大きな一歩を踏み
出していくべきだと言うことです。日本は、軍隊は出さずとも、経済面で国際社会に
貢献すべきだというような意見が多々ありますが、私は反対です。汚れた仕事、危
険な仕事を、全て他の国に任せるというようなことが、実際に通用するはずがありま
せん。一緒に血を流し、一緒に汗を流すことによって、友情や信頼が生れるので
す。その場面で、金だけを出していたらどうでしょうか。確かに喜ばれはしますが、
友情は生れません。また、信頼もされませんし、軽蔑だけが残ります。しかし、第1
次湾岸戦争では、日本はまさにこの様な立ち回りをしていたのです。いったい誰
が、こんなトンチンカンな、臆病者の役回りをする日本を演出したのでしょうか。
国際社会は、むろん大量の資金を必要としています。この面では、日本はよく貢
献していると思います。しかし、現体制下で大国となっている日本は、資金に加え
て、率先してこの国際社会を統率していく義務があります。私は、何もここでアメリカ
に荷担して、イラクに巡洋艦を差し向けろと言っているわけではありません。そうで
はなく、普通の国として、何が正しいかを判断し、国家として果敢に行動してもら
いたいと言うことです。フランスやロシアのように、あくまでも外交努力で問題解決を
計ろうというのか...あるいは、アメリカやイギリスのように、国際社会のルールを
明確にさせるのか...それとも、日本独自の、第3の強力な選択肢があるのかと
いうことです。
ところが、政府から国民に、何の説明も問いかけもありません。マスコミも、川向
こうの火事のような報道が目立ちます。第1次湾岸戦争の時の教訓が、どこに活か
されているのでしょうか。国会も、ただ時間を浪費し、自分たちの株取引の是非で大
騒ぎです。いったい誰が、このイラク問題を真剣に考えているのでしょうか。
まあ...放置できるはずもなく、何らかの形で、第一歩が踏み出されると思いま
すが.....
アナン国連事務総長の調停により、イラクは譲歩の兆しを見せています。しかし、
楽観は禁物です。しかも、国際世論の動向もあり、全てがイラクのフセイン大統領に
振り回されつつあるようにも見えます。これをアメリカが座視するでしょうか。アメリカ
は、世論に押さえられつつ、譲歩を重ねていくでしょうか。もし、そうだとすれば、こ
れまでの因縁の経緯からも、フセイン大統領は1歩も2歩も踏み込んでくると思い
ますが.....
このページを作成している最中に、イラクが大幅に譲歩し、アナン事務総長と話
がまとまりました。しかし、事態はまだ予断を許しません。だいたい、それでは何
故、イラクはそれほどまでに査察を拒否してきたのでしょうか。あまりにも、あっさり
と譲歩し過ぎです。しかし、それにしても、フセイン大統領の望みは何なのでしょう
か。アラブ諸国の盟主になることなのでしょうか.....
いずれにせよ、まだ当分アメリカは、臨戦態勢を解くことはないでしょう。いや、こ
れから、本格的な駆け引きが始まるといってもいいのかも知れません。この、当“軍
事問題コーナー”のページでも、まだまだ学ぶことが多くありそうです。
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