My Assistant Desk旅シリーズ /特別企画鹿村へ空の旅

        鹿村へ・空の旅          wpeA6.jpg (14454 バイト)    wpe89.jpg (15483 バイト)  

              2001年・秋/ヘリコプターで鹿村へ  
 
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                                                                                                                                 航空・宇宙基地“赤い稲妻”

トップページHot SpotMenu最新のアップロード/                                    担当 : 折原 マチコ

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No.1  ヘリコ君/高度1000メートルへ上昇 2001.10.30
No.2  涸沢へ 2001.10.30
No.3  鹿村へ             2001.11.15
No.4  到着・・・清安寺の境内         2001.11.15
No.5  夕 餉 (ゆうげ) 2001.11.15
No.6  キノコ狩りと、露天風呂     ************

  

  航空・宇宙基地/赤い稲妻 wpe4F.jpg (12230 バイト)wpe75.jpg (13885 バイト)

 

 (1) ヘリコ君/高度1000メートルへ上昇             

                   

「ええ、こちらマチコ!管制センターどうぞ!」マチコは、シートの上で、ポンポンと、体

を跳ねながら、カメラに向かって言った。

「はい!こちら管制センター!出発準備はできたでしょうか?」支折は、大型スクリー

ンのモザイク画像の1つで、マチコの様子を見ながら言った。

「はい!準備が完了しました!ヘリコ君には、私と、ミミちゃんと、チーコちゃんが乗り

込みました。ブラッキーのジェットヘリには、ポンちゃんと、Pちゃんと、タマ...それ

から、復路の燃料を搭載しました。涸沢に届ける荷物も、積み込みが完了しました」

「了解しました!9時ジャストに出発を許可します!もう少々待ってください!」

「了解!」マチコは、窓から滑走路を眺めた。「ミミちゃんは、鹿村へ行くのは初め

て?」

「うん!」

「鹿村へ行くのは、みんな初めてよ」チーコちゃんが言った。「だって、行ったことがあ

るのは、響子さんと塾長と...あとは、ミケだけじゃないかしら」

「そうだったかしら、」

「今日は本当にいい天気ですね」ヘリコ君が言った。「秋の空が澄みわたっています」

「そうね、」

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  支折は、コーヒーカップを口に当て、管制センターのモザイク・スクリーンに映って

いる滑走路を眺めた。滑走路の端では、2機のヘリがローターを回転させている。赤

い方がヘリコ君で、銀色の大きい方が、ブラッキーの操縦するジェットヘリだった。

  いずれのヘリコプターも、スーパーコンピューターで最深度チェックが完了してい

る。エンジン、ローター、燃料系など、全てグリーンランプが点灯している。無線機

も、自動カメラも、GPSとリンクするナビゲーターもオーケイだった。

  支折は、ゆったりと管制官のシートに腰を沈めた。そして、もうひとくちコーヒーを飲

んだ。それから、大きく開け放たれた、管制室の窓を眺めた。遠くのススキの穂波を

渡ってくる風が、管制室のブラインドカーテンを揺らしている。

  この東京の西部丘陵にある航空宇宙基地“赤い稲妻”の標高だと、紅葉にはまだ

少し早かったしかし、上空の秋空は、まさに底が抜けたように青く、深い...

 

  ところで、ヘリコプターの点検に、スーパーコンピューターは必要なかった。しかし、

支折は、前回の“独自衛星打ち上げミッション”の、ロケット点検用ソフの転用を思い

ついたのだ。彼女は、前回のミッションでは、ロケット整備を担当していたからであ

る。そして、現在も、その膨大なコンピューター・システムが、管制センターの基幹部

分を形成しているからだ。

  しかし、実際にソフトをヘリコプターに転用するのには、意外と時間がかかった。ヘ

リコプターの方のデータ収集に、時間がかかってしまったのだ。それで、夏に予定し

ていた旅行計画が、とうとう秋の紅葉の季節になってしまった...

            

  支折は、スクリーンのメイン画像を、ジェットヘリのカメラに切り替えてみた。大型ス

クリーンの風景が、パッと、別の角度の滑走路の風景に切り替わった。彼女は、この

画像のままにした。後は、2機のヘリコプターのリアルタイムの位置を、人工衛星の

GPSで補足していけばいい...

  支折は、コーヒーを飲みほし、壁の時計を見上げた。8時56分...大型スクリー

ンのヘッドラインでも、カウントダウンが流れている...スーパーコンピューターの管

理になっているので、こっちの方もカウントダウンがそのまま表示されている。

  出発                                   

 

「9時になりました!出発してください!」支折の命令調の声が、ジェットヘリのスピー

カーから流れた。

「おう!」ポン助は、ヘリの窓から、管制センターを見上げた。

  ブラッキーは、ジェットヘリの機体を少し浮上させ、ゆっくりと滑空に入っていく。な

かなか慣れたものだった。ポン助は、操縦席の後ろに立って、ずっと操縦の様子を

見ていた。P公は窓にしがみつき、タマはシートに腰を落としている。

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             (昼食/おにぎりを ドッサリ...ポン助のビヤガーデンで作りました。)

「それじゃ、ポンちゃん、気をつけてね、」支折が言った。

「おう!ポン公は大丈夫だぜ!」ブラッキーが、ヘッドホン付きのマイクで言った。「こ

いつを誰だと思ってるんだい?宇宙飛行のミッション・スペシャリストだぜ!」

「うーん、そうだったわね...」支折の声が、スピーカーから流れた。「じゃ、ブラッキ

ー、お願いね。ええ...ヘリコ君、そちらの状況はどうでしょうか?」

「はい。万全です。私の方は心配いりません」

「そう。じゃ、マチコたちをお願いね」

「はい。任せてください!」

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       (昼食/コーラと、ハンバーガー...チーコちゃんとミミちゃんが用意しました。)

  2機のヘリは、航空宇宙基地“赤い稲妻”の滑走路上を、ゆっくりと上昇していっ

た。が、やがて、グングンと高度を上げて行き、高度500メートルで水平飛行に入っ

た。へりは、関東平野西部の山岳地帯を、ゆっくりと北上していった。山々はすでに

黄葉していて、柔らかな樹木のジュウタンが、朝の陽射しを受けて延々と広がってい

る...

 

「わあ、あのあたりの黄葉がきれいです!」チーコちゃんが言った。

「うん!」ミミちゃんも、窓をのぞいた。

「それじゃ、あのあたりへ降下します!」

「わーい!」マチコが言った。「行ってみよ!でも、大丈夫、ヘリコ君?」

「平気です!さあ、行きます!」

  ヘリコ君はゆるいカーブを切り、一面が黄色と赤に色づいた尾根の斜面に急降下

した。ブラッキーのヘリが、それに続いて、滑るように降下していく...

「マチコ...大丈夫?」支折の声が、スピーカーから流れた。「状況はどうかしら?」

「うーん...黄葉がきれい。尾根の上の青空が、澄みわたってる...」

「ええ...」支折が答えた。

「“天高く...”というのは、秋の季語(俳句の季語)よね。一句できないかしら?」

「考えておくわ、」

「ねえ、ヘリコ君、」マチコが言った。「窓を少し開けてくれない」

「いいですが、寒いですよ。上空は、気温が低いですから、」

「少しだけ、」

「はい!」

  ヘリコ君が、両サイドの小窓を開けた。ゴーッ、と風が入ってきた。ヘリのエンジン

音と、ローターの音も入った。風は、ゾクゾクするほど冷たかった。マチコは、ベストの

ファスナーを、首まで引き上げた。

「どうでしょうか?」ヘリコ君が言った。「気温が、数度下がります。片方の窓だけにし

ましょうか?」

「大丈夫。ミミちゃんたちは、どうかしら?チーコちゃん、大丈夫?」

「はーい!わたしは、寒いのは平気でーす!」

「ミミちゃんは?」

「大丈夫だもん!」

「そ...じゃ、このままでいいわ!」

「はい!黄葉は、今が真っ盛りでしょうか?」

「そうね!」

 (2) 涸沢へ                                            

 

  2機のヘリは、グングンと高度を上げて行き、黄葉した日本の中央山岳部を越えて

いった。秋空が青く、深く、下界の紅葉した山々が、のどかに輝いていた。

「こちら支折...マチコ、まもなく左前方に、大正池が見えてくるはずです」

「了解...あ、見えてきました。水面が輝いているのが見えます!」

「はい。その先が、上高地です。着陸して、休憩してください。昼食をどうぞ。ええ、ブ

ラッキー、聞こえますか?」

「ああ...何だい?」ブラッキーは、黄葉した山の中に浮かぶ大正池を見下ろしなが

ら言った。大正池は、まるで鏡のように静かだった。

「ブラッキーのジェットヘリは、そのまま涸沢まで行ってください。涸沢で、予定の荷物

を下してください。涸沢まで、私がガイドします」

「おう、」ブラッキーは、タバコを吹かし、ナビゲーター画像を覗き込んだ。GPSが、赤

い点で現在位置を示している。「よう、ポン公!涸沢を打ち込んでくれ!」

「あいよ...このあたりだよな、」

「うむ、」ブラッキーは、くわえタバコで、首を回して覗き込んだ。

「穂高連邦の下だもんな...」

「うーむ...」ブラッキーが、うなづいた。

「大丈夫です」支折の声が入った。「私が、ちゃんとガイドします」

「ああ。頼むぜ、」

  ヘリコ君は、上高地より少し上流で、梓川へ降下して行った。そして、梓川沿い

に、さらに上流へ飛行して行く。川の周辺の黄葉が、ひときわ美しく、梓川の青が鮮

やかだった。

「こちら、支折...ブラッキー、梓川は分りますね?」

「ああ、もちろんだ。お...ヘリコの野郎、どこかに着陸したな...」

「ええ、その梓川の源流が、涸沢になります。これより、3000メートル級の、北アル

プスの山に向かいます。機体に異常はないでしょうか?こちらのチェックでは、オーケ

イですが、」

「ああ、大丈夫だ。このヘリなら心配ないぜ。ヘリコの野郎とは、パワーが違うから

よう」

「はい。ええ...それじゃ、ポンちゃん、Pちゃん、タマ、しっかり頼むわね!」

「おう!」ポン助が言った。

「うん!」P公が言った。

  ジェットヘリは、グングン高度を上げていった。抜けるような青空に聳える穂高連邦

の山頂を目指し、青い空の中に吸い込まれて行った。涸沢は、それらの山波の直下

にある。山頂付近が見えてくると、白い雪が見えた。残雪らしかった。が、すでに山頂

には初雪も降っている。その向こう側に見えるのは、槍ヶ岳の山頂だ。それから、北

穂高岳、こちら側の山は、常念岳だ...

「すごいよな!」ポン助が言った。

「寒いのう...」寒がりのタマが、体を震わせている。

「半纏(はんてん)を着ればいいじゃん」P公が言った。

「そうだのう...」タマが、のっそりとシートから下りた。「まあ、一杯やるかあ...」

「あのあたりが、涸沢だよな」ポン助が、ナビを見ながら言った。

「おお...あそこに、ロッジが見えるぜ!あそこだ!」ブラッキーが、すかさずヘリを

右旋回させながら、右の窓の方を嘴(くちばし)でしゃくった。「よし、風がない!降下する

ぜ!」

「おう!」

  ポン助は、ワイヤーで吊り上げた荷物に手をかけ、ドアをスライドした。冷たい風が

サーッと入り、エンジン音と、凄まじいローターの回転する音が混じった。機体が、

ググッ、と猛烈な横風に煽られた。ブラッキーが、必死でそれを押さえ込んだ。

「ポン公、乱気流がある!気を付けろ!体を確保しておけ!」

「あいよ!」

「素早くやるぜ!」

「おう!」

  ジェットヘリが降下していくと、山小屋からバラバラと人が出てきた。小さな子供の

姿もあった。青い防寒服を着た男の子と、それから、赤い防寒服を着た小さな女の

子も出て来た。その山小屋の下の方の涸沢の斜面にも、カラフルなテントが幾つか

見える。そのテントからも、人が出てきて手を振った。

  ブラッキーが巧みにヘリを操縦し、ポン助がロッジの庭に、ワイヤーでゆっくりと荷

物を下していった。

「お兄ちゃん!タヌキが乗ってるよ!」女の子が言った。

「そりゃ、ま...乗ってるよな...」ポン助は、猛烈な風に煽られ、接地面のあたりを

さぐりながら言った。

「あれ、ポン助だ!」男の子が言った。

「あ!ほんとだ!ポンちゃんだ!」女の子も言った。「ポンちゃんが乗ってるよ!」

「おーい、」ブラッキーが、操縦席から後ろを振り返って言った。「有名じゃねえかよ

う!」

「おう...」

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  ポン助は、地面近くで、荷物を切り落とした。梱包されたサイコロ形の荷物は、ト

ン、と少し揺れて、無事に着地した。大人の人が、“オーケイ!”と、手を上げた。

  ポン助は、子供達に手を振った。

「ありがとう、ポンちゃん!」女の子が、口に両手を当てて言った。ポニーテイルが風

になびいた。赤いアノラックの下に、白いセーターが見えた。

「ありがとう、ポン助!」男の子の方も、大声で言った。帽子を持った手を大きく振っ

た。

「オウ!」ポン助も、手を振り返した。P公も、ポン助の後ろで手を振った。

「さあ、行くぜ!」ブラッキーが言った。「強い乱気流がある!一刻も早く離脱したい

ぜ!」

「おう!」ポン助は、スライドのドアを、バン、と閉めた。

  ブラッキーは、機体を流されながら、ジェットヘリの頭をグンと上向きにした。それか

ら、一気に山の斜面から離脱した。紅葉した大地がグングンと遠くなり、視界が広く

なった。小さくなった山小屋の前で、子供達が手を振っていた。

  ブラッキーが涸沢の上空を一回りした。それから、次に山小屋が見えた時は、ヘリ

は深い谷の上空にいて、子供達は豆粒のように遠くなっていた。

                                                                          

                                                  (2001.11.15)

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 (3) 鹿村へ  wpe75.jpg (13885 バイト)          wpe75.jpg (13885 バイト)wpe75.jpg (13885 バイト)    

      

  冬化粧を始めた北アルプスの山波が遠くなっていく...2機のヘリは、ようやく日

本列島中央部の山岳地帯を越えていた。高い山々が離れていくと、やがてナビが拡

大表示になった。鹿村が近づいたのだ...

 

  ヘリコ君は、ナビの音声ガイドに従い、高度を下げ、巨大なカーブを切っていく。す

ると下界は、また黄葉の広がる晩秋の山々になってきた。そうした渓谷の中の1点

を、ナビの白い矢印が示している。そこが鹿村だった。その右手の方に、ダム湖の表

示がある。大きなダムではないが、しっかりと発電マークもあった。

「うーん...まず、そのダム湖が目標ね...」マチコが言った。

「ええと...GPSだと、2時の方向(右手前方)よ!」ミミちゃんが言った。

  双眼鏡を持っているチーコちゃんが、まず下界の黄葉の中に、目標のダム湖を探

し当てた。二本の川筋の流れ込むダムは、深い秋の空を映し、クッキリと青かっ

た。近づいていくと、水まわりの黄葉が、穏やかな秋の陽光を反射し、時間が止まっ

ている様だった。

  ヘリコ君は、高度を約100mまで降下した。そして、鹿村のある渓谷に沿って、ダ

ム湖を川上の方へ飛行した。ブラッキーのジェットヘリは、その後方上空を、高度

150メートルほどで追尾していく。ヘリコ君の赤い機体が、前方下の色づいた渓谷の

中を、ゆっくりと移動していくのを、しっかりと補足していく。空中戦なら、死角を取った

恰好だ。元・米海兵隊員のブラッキー軍曹としては、ごく自然にこの形をとっていた。

  所々に、流木やゴミの溜まった所が見える。そして、ダム湖がしだいに狭くなって

いく。澄みきった秋空と黄葉の中で、そうした川のゴミさえも、白く映えて美しかった。

「こちら支折!こちら支折!マチコ、聞こえますか?」

「あ、はい...ええ、こちらマチコ。どうぞ、」

「ええ...もうじき、二段滝が見えるはずです...」

「うーん...二段滝かあ...まだ、みえないわねえ...」

「はい...ええ、この二段滝は、地上からのアクセスは、登山道一本です。したがっ

て、ヘリからのアクセスが最適です。ええ、条件が最高ですので、ビデオ撮影を願い

します。

  それから...スポット天気予報で、急速に寒気が流れ込んでいる情報が入って

います。うーん...そのあたりの天候が、急速に崩れていく可能性があります」

「了解。ええと、支折...鹿村へは、あとどのぐらいでしょうか?」

「二段滝から、距離にして...約7Kmです。鹿村は、もうすぐそこです」

「了解!」

「天気が下り坂ですか?」ヘリコ君が、マチコに聞いた。

「うん!」と、ミミちゃんが答えた。

「鹿村に、響子がいないのが残念よねえ、」マチコが言った。

「そうか。響子はもう、鹿村にはいなかったわねえ、」支折が言った。「そう言えば、さ

っき、軽井沢基地から連絡があったのよ。マチコが、ヘリ君で鹿村へ向かっているっ

て言ったら、残念がってたわ。一緒に、キノコ狩りがしたかったって、」

「うーん...ハイパー・リンクで来れないのかしら?」

「無理ね。響子は、“ナノ・テクノロジーの荒野”で忙しそうよ。思っていたよりも、大き

な仕事になりそうだって言ってたもの」

「ふーん....そっかあ...そんなの、響子にしか出来ないものねえ、」

「あ!マチコさん!」ヘリコ君が言った。「二段滝が見えてきましたよ!」

「わあ!」双眼鏡をのぞいている、チーコちゃんが言った。「滝壷が広いですー!」

「じゃ、ミミちゃん!」マチコが言った。「ビデオカメラをまわして!」

「うん!」ミミちゃんが、ビデオカメラを構え、すぐに回し始めた。

「ヘリコ君」支折が言った。「滝壷の、低いアングルもお願いね」

「はい!任せてください!」

「ええ...ブラッキー、聞こえますか?」支折が言った。

「ああ、聞こえてるぜ。何だい?」

「撮影してるので、ブラッキーのヘリは、上空で待機していてください」

「了解...」ブラッキーは、灰皿にタバコの灰を落とした。

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    鹿村に入ると、ナビの音声ガイドに従い、2機のヘリは渓谷から離れた。ヘリは、

しだいに高度を上げながら、人家の散在する斜面を昇っていく。空が急速に曇ってき

ている。すでに、抜けるような青空は見えなくなっていた。

  鹿村は、渓谷に沿った南東向きの斜面に、人家がパラパラと散在していた。その

一帯の人家の周囲に、畑や水田が広がり、細い道路が見える。水田の方は、すでに

収穫が終わっていた。上空からも、取り入れの終わった水田は、一目で分った。

「茅葺(かやぶき)屋根の民家が、何軒もあるわね。ミミちゃん、しっかりと撮影してね」

「うん!」

「ええ、ヘリコ君...超低空で茅葺きの民家に接近してください。あの11時の方向

の、2本の杉の木のある民家がいいかしら、」

「はい!あの入母屋(下の絵のような造りの家)の民家ですね!」

「そう、南側から、道路に沿って接近してください」

「了解!」

  ヘリコ君は、カーブを切りながら、ギューン、と高度を下げた。晩秋の大地が、ぐん

と近くなった。紅葉(もみじ)やナナカマドの赤が、クッキリと見える高度になった。

                

 (4) 到着・・・清安寺の境内  wpe75.jpg (13885 バイト)   wpe75.jpg (13885 バイト)wpe75.jpg (13885 バイト)     

  マチコたちが鹿村の撮影で手間取っている間に、ジェットヘリは村の一番高台にあ

る、清安寺に到着した。ブラッキーが、支折の誘導に従い、境内より少し下の、外来

用の駐車場に降下していく...そこは、山の斜面を削って造られてあり、大型バスが

3台ほど入れるスペースがあった。

  ブラッキーが、ホバーリングからゆっくりとジェットヘリを降下させていくと、境内の

杉の大木が、ローターの風で激しく煽られた。黄葉したケヤキの枯葉が、太い枝から

むしり取られるように、飛び散っていく。さらに、ゆるい斜面を埋める雑木林全体が、4

枚ブレードの強力なローターの風に揉まれ、枯葉が高々と灰色の空に巻き上げられ

ていく...

「ヨウ!まるっきり、下が見えないぜ!」ブラッキーが言った。

「大丈夫です!」支折の声が、スピーカーでキッパリと言った。「そのまま降下してくだ

さい!駐車場の中央に降下しています!」

「ああ...」

「スーパーコンピューターが、GPSの情報と、直前の映像を解析しています。ヘリの

位置と着陸ポイントを正確に補足しています!問題は、降下スピードです...」

「了解...うーむ...しかし、現場の誘導システムが必要だぜ...」

「今後の対策として、考えておきます」

「そうしてくれ」

「あと、15メートル...ブラッキー、腕の見せ所よ!」

「ああ!」

  さらに、微速で10メートルほど降下すると、一帯に降り積もっていた落ち葉が、一

斉にうねるように動きだした。そして、その大量の落ち葉が、視界が利かなくなるほど

舞い上がり始めた。やがて、ゴツンと、地面にぶつかった感触がした。それから、ガ

タン、と全体が接地した。

 

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「フウーッ...やれやれ、」ブラッキーが、舌打ちした。「まあ、こんなもんか...」

「着いたよな、」ポン助が言った。

「うむ...」ブラッキーがうなづいた。ヘッドホンを外した。「到着だ...」

  ブラッキーは、天井のスイッチを幾つか切った。ローターの回転が落ち、パワーが

抜けていく。しかし、まだ、まわりは滝のような落ち葉が落ちてきている。

「この着陸が、一番厄介だった...」ブラッキーは、タバコを口にくわえ、横を向いて

ジッポのライターで火をつけた。

「ええ、こちら、支折。ブラッキー、異常はないでしょうか?」

「大丈夫だ...」ブラッキーは、タバコを吹かした。それから、ナビのディスプレイに表

示されている、支折の顔にうなづいた。

「そう。ご苦労様。ええ、データを取りますので、ローターは回転させておいてくださ

い。他のスイッチもそのままで、」

「了解、」ブラッキーは、タバコを嘴(くちばし)にはさみ、天井のスイッチを1つ入れた。

     db3542.jpg (1701 バイト)   wpe5.jpg (38338 バイト) wpe75.jpg (13885 バイト)    wpeA.jpg (42909 バイト)(ミケ)           

 

 ガガーッ、とポン助がドアをスライドさせた。そこから外を眺めた。ヘリは雑木林の

底に着陸していた。黄葉した雑木林を透かして、空はどんよりと曇っていた。ポン助

は、落ち葉の揺れ動く地面に降りた。ポン助の後から、P公とタマも下りた。プロペラ

がゆっくり回転しているので、落ち葉がザワザワと音を立てて浮き上がっている。そこ

を出て駐車場の端まで行くと、上の方の道から、落ち葉の中をミケが駆けて来た。

「おう...ミケかあ!」ポン助が言った。

「ミャー!ミャー!」ミケは、ポン助とP公の周りをグルグル回り、タマの手をペロペロ

なめた。

「ミケ...元気じゃったか?」タマが言い、ミケの頭をペロリとなめた。

「ミャー!」ミケは、ぐいぐいとタマに頭をこすりつけた。

  ミケの来た道の上の方から、小型三輪トラックが下りてきた。良安さんが運転して

いた。彼等の前で、キッ、と止まった。

「やあ、みんな!よく来たなあ!」紺色の作務衣を着た良安さんが、運転席から降り

てきた。

「お世話になります」年長のタマが、ポーズをとって、ペコリと頭を下げた。

「おお、タマだな。それから、ポン助と、P公か、」

「おう...」ポン助は、慣れない場面で、顔を赤くした。「ブ、ブラッキーが、中にいるよ

な、」

「ああ...操縦してきたブラッキー軍曹か、」良安さんは、落ち葉を巻き上げているヘ

リのローターの下へ歩いて行った。

 

  みんなで協力し、荷物を全部、小型三輪トラックに積み込み込んだ。それから、

が助手席と荷物の上に乗り、一段上の境内まで登った。境内は広々とし、落ち葉

が掃かれていた。松やケヤキの巨木が何本もあり、古い僧坊や鐘つき堂があった。

それから、本堂と庫裏がある。

  響子が住まいにしていたプレハブ小屋の基地は、僧坊の脇にあった。が、現在、

僧坊は内部の改築が進んでいて、いずれ基地は僧坊の方に移ることになっている。

僧坊は、古い建物だが、構造材は太くしっかりとしていて、かっての禅道場としての

清安寺がしのばれる。境内は、そうした全てをのみ込み、灰色の雨雲の下で、森閑

としていた。

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  ヘリコ君は、プレハブ基地の横の空き地に着陸した。すっかり空模様が怪しくなっ

ていて、今にもパラパラと雨が降ってきそうだった。が、本堂前の紅葉(もみじ)の大木

は、そんな雨空の中でも、今が盛りと真っ赤に色づき、その空間を魅了している。

「あの、私は中に入れないですか?」ヘリコ君が聞いた。

「入れるけどよ、プロペラを回すと、困るよな、」ポン助が言った。「風が、何でも巻き上

げちまうからよう、」

「ああ、それなら、大丈夫です。プロペラの代わりに、キャスターで移動しますから、」

「それなら、いいよな、」

  マチコは、インフォメーション・スクリーンを使い、本部の支折に報告を入れた。その

後、彼女は本堂の方へ、あいさつをしに出て行った。ミミちゃんとチーコちゃんがお茶

の用意をし、P公がそれを見ていた。タマとポン助は境内の散歩に出た。それから、

ヘリコ君は、部屋の隅の方で、おとなしく休息している。一日中操縦をしていたブラッ

キーも、ぐったりとし、座布団を枕にしてグウグウと眠り込んでしまっている。

 

(5)  夕 餉 (ゆうげ)           (ユキちゃん)    

 

  その夜、座禅会の後、彼等は玄信和尚に夕食に招待された。真ん中に、ブリキの

ストーブが赤々と焼けた囲炉裏があり、古ぼけた障子に赤い影が映っていた。和尚

と良安と一真の他に、事情があって預かっている女の子が一人いた。彼女も食事の

支度を手伝っていた。

「いらっしゃーい、ポンちゃん!」女の子が、囲炉裏端に座っているポン助に言った。

「よう、おれを知ってるのか?」

「うん。ミミちゃんたちも知ってる。あたし、ユキ...ユキちゃんて呼ばれてるわ。中学

2年生なの。お手玉が得意よ」

「ふーん、」

「ミミちゃん、後でアヤとりを教えてあげるね」

「うん!」

「アケビ食べる?」

「はい、食べたいです!」チーコちゃんが言った。

「うん。持ってくるね。柿と、山ぶどうも持ってくる。みんなが来るので、あたしが今日

裏山で取ってきたのよ」

「裏山にあるの?」P公が聞いた。

「うん。後で連れてってあげるよ」

「うん!」ミミちゃんが言った。

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  キノコ狩りと、露天風呂  wpeA6.jpg (14454 バイト)    wpe89.jpg (15483 バイト)       

    《ジャンプ》     ユキちゃんも一緒    

 

           

                     

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