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   主な新興感染症    

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「響子です。この、ページは、SARS/ワクチン 抗ウイルス薬で編集した“主な新興

感染症の素描”を、再編集し、見やすくしたものです」

 エボラ出血熱  レジオネラ症(在郷軍人病)  日和見(ひよりみ)感染症
 病原性大腸菌/O-157  エイズ  免疫不全の仕組み
 BSE/牛海綿状脳症  C型肝炎  ハンタウイルス肺症候群
 インフルエンザ/ (新型)  脳炎(新型)  西ナイル熱

 

                                                        (2003.11.13) 

   ≪ エボラ出血熱 〜 エイズ 〜 新型肺炎・SARSまで ≫

                              <参考文献 : 広辞苑/現代用語の基礎知識>  

 

 1976年     “エボラ出血熱” / レジオネラ症(在郷軍人病)  

 

<エボラ出血熱>

「この年は、“エボラ出血熱”が流行しました。これは、アフリカのスーダンや

ザイールに常在する大型ウイルスの感染によって起こる、1種のウイルス

出血熱です。この1976年には、280人の犠牲者を出しました。

  しかし、この年、病原体のエボラ・ウイルスを確認しています。ただし、

原体の宿は分っていません。つまり、エボラ・ウイルスは、宿主となる生

物体の中で、おそらくは、あまり悪さをせずに、共生しているのではないで

しょうか...

  まあ、宿主は、カタツムリやナメクジのような生物かも知れないし、私た

ちが想像もしていないような生物なのかも知れません...」

「うーん...共生ですか?」

「そうです。例えば、ヒトの体内にも、ほとんど悪さをしない微生物がいます。

それから、人体にとって必要な微生物もいます。例えば、乳酸菌のように、

人体にとって必要であり、共生関係にある微生物もいるわけですね、」

「はい、」

「しかし、生物体の中でおとなしく隠れている微生物というのは、見つける

のは非常に困難です。この最強・最悪のエボラ・ウイルスでさえ、宿主の生

物体がいまだに特定されていないのです。しかも、宿主が、たった1種類

というように、限定されているわけでもないわけですね」

「はい...」

「この深遠で戦略的な悪知恵は、明らかにエボラ・ウイルス自身が考えた

ものではないでしょう。彼等には、核酸のRNAはあっても、脳ミソはないの

です。

  では、誰がいったい、この意味のあるエマージング感染症を展開してい

るかと言えば、それは“生態系がもつ知恵と戦略”ではないかと、私は考え

ています...

  高杉・塾長は、そうした辺りをまとめて、“36億年の彼”という人格を与え

ているようですが...塾長は、個々の動物などに見られる“睡眠”“無意

識”、あるいは“超個性”というものは、その“36億年の彼”の領域に入ると

見ているようですがね...」

「うーん...外山さんは、どう考えているのかしら?」

「私は、そこまでは拡張して考えていません。しかし、個体としての生物体

が、自らが生き延びる作戦を遂行しているように、“種のレベル”での“戦略

的意識”の発現があり、その実行があると見ています。それが生態系の中

でどのように階層化し、ネットワークを作っているのかは分りませんがね。

  まあ、高杉・塾長の言う“36億年の彼”は、その頂点に立つものでしょう

ね...」

「“睡眠”や“無意識”は分るのですが、“超個性”というのは何かしら?」

“超個性”というのは、例えば私という1個の個体の中で、私個人の領分

を超えている部分のことです。どういうことかと言うと、もっとも分りやすいの

は、私は“男性”だということですね。これは、男女というペアの片一方でし

かないわけです。つまり、私という個体の中に、私を超えた部分、つまり、

“種の戦略”に属する部分が存在しているということです。ということは、そ

こに“種の戦略的意識”が、明らかに存在しているということです...」

「うーん...“種”というのは、すると人間の場合は、文明社会ということで

しょうか?」

「いや、社会という共同体と、膨大な生物種がもつ“種の共同意識”とは、

少し違うでしょう。アリやハチのように、社会性をもつ動物でも、その社会共

同体と、進化をもつかさどる“種の共同意識”とは、ステージが違うのでは

ないでしょうか。

  ヒトの場合でも、社会共同体レベルでは、人体の進化には手が届かな

いわけでしょう。たしかに、重なる部分はあるわけですがね...」

「うーん...はい!

  ええ、エボラ・ウイルスに関しては、ブラッキーがもう少し詳しく説明して

いますね...」

レジオネラ症(在郷軍人病)

「それから、この同じ年に、“レジオネラ症”というのも流行しています。これ

は、ビルの冷房用冷却装置の冷却水に発生した、レジオネラ菌によって引

き起こされる肺炎です。この年、アメリカのフィラデルフィアで開催された在

郷軍人大会で発生したので、“在郷軍人病”という別名があります」

「このレジオネラ菌というのは、もともと無害な菌だと聞いていますが、」

「そうです...レジオネラ菌というのは、そもそも水中や土中に常住してい

る菌です。また、病原性というのは、ほとんど無いとされていました。しか

し、この感染症は、老齢の人たちに多発している事からも分るように、体力

の落ちている人や、免疫力の低下している人に感染しやすいようです」

「うーん...はい、」

メモ  日和見(ひよりみ)感染症       

*************************************************************************

「こうした所から、ですね...」外山は、スクリーンにメモ・ページを呼び出し

た。

「ええと...ここですね...

  この“レジオネラ症”は、“日和見感染症”の1つではないかと考えられて

います。“日和見感染症”というのは、普通の健康体の人なら、感染しても

病原性を現さず、発病もしない無害なものなのです」

「はい、」響子が、スクリーンを眺めながら、うなづいた。「日和見感染症とい

うのは、何度も耳にしているのですが、病原体には、どんなものがあるの

でしょうか?」

「原因となるものには、ウイルス、細菌、原虫、カビなど、色々ありますね。

まあ、この種の病原体は、いったん人体の“抵抗力や免疫力が低下”する

と、急に活発化し、発症するというわけです...」

「あの...確か、エイズでも、免疫不全に陥ると、こうした日和見感染症に

かかると聞きましたけど、」

「そうですね。エイズ患者にしばしば見られるカリニ肺炎は、この“日和見感

染症”の典型的な例だと思います。“免疫不全”に陥っているエイズ患者に

は、ありふれた低レベルの雑菌カビなどが、非常な脅威となってしまうわ

けです」

「はい...

  人体が持つ免疫システムというのは、非常によく出来た防御システム

のですね。したがって、それがダウンしてしまうと、人体という統合システム

は、非常にもろくなってしまうということですね、」

「そういうことです...

  ご存知のように、アレルギーはこの免疫システムの過剰反応から来るも

のです。また、ごく希にですが、この免疫システムが、メチャメチャに暴走

る疾患もあると聞きます...それはもう、過剰反応などといったレベルで

はなくなるわけですね」

「あの、話は少し違いますが...“資源・エネルギー・未来工学”担当の堀

内さんや、津田・編集長が、しばしば“飢餓”に言及していますよね。そうし

た時にも、やはり日和見感染症は脅威になるのでしょうか?」

「そうです!そうした“飢餓”の状況下では、抵抗力や免疫力が低下した状

態になります。ると、この種の“日和見感染症”が、強大な敵となって、人

類社会に襲いかかって来ます。これは、心しておくべきことです」

「はい!」

「実は、“飢餓”が非常に怖いのは、こうした日頃敵でさえなかった“日和見

感染症”のようなものが襲いかかって来るからなのです。むろん、“飢餓”そ

のものも大きな脅威ですが、その他、人体や社会の諸々の弱点や綻(ほこ

ろ)びが、一気に噴き出し、被害を拡大して行きます。普段は、何ということ

もない低レベルのトラブルで、あっさりと非常に多くの人命が失われていく

と考えられます...」

「うーん...それでは、私たちはどうしたらいいのでしょうか?」

「日頃から、しっかりと“準備”をしておくことです。そうした、非常時に備え

ておくということが大事です。個人としても、社会としてもです」

「はい...」

「また、そうした折に、“よき指導者”が社会の頂点にいないと、社会的なレ

ベルでの、甚大な被害に直結します。国家や県の指導者や、市町村の首

長の“見識・能力・技量”が問われる場面は、私たちはこれまでも、しばし

ば見て来ているわけです」

「はい!いいかげんな理由で首長や議員を選んでいると、いざという時に、

何もできないという結果になりますね」

「そういうことです...

  日頃から、本当の意味で、力量のある指導者や代議員を選んで行くこと

、何よりも大切です。それから、非常時に備え、“食糧の自給率の向上”

“備蓄”だけは、十分にやっておいて欲しいですね」

「うーん...“地球規模のトラブル”が、これからは、しばしば発生するよう

時代になるんでしょうか?」

「この地球の“大・人口爆発”を目撃していれば、ピークの裏側に脆(もろ)

が見えてくるのは当然です。異常気象が数年も続けは、人類社会は大打

撃を受けます。

  その非常時に備えておくことこそ、現在の指導者の、当面の重大な責務

ではないでしょうか。また、それを予測し、計画を立て、結果責任を負うの

が、政治の仕事ではないでしょうか...こうした事態は必ずやって来ます」

「はい!食糧の“自給率の向上”と、“備蓄”ですね、」

「そうです。それから、準備を多様化しておくことも大事です。単なる経済性

だけではなく、安全性や非常時の保険という考えも、食糧戦略には重要な

ことです。

  まあ、こうした話は、津田・編集長の専門分野ですね。しかし、話が出ま

したので、私の方からも、あえてここで指摘しておきます」

「はい!」

                                                     

 

 1982年     出血性大腸炎 溶血性尿毒症症候群         

                       < 病原性大腸菌/O-157 >

 

「この1982年には、出血性大腸炎溶血性尿毒症症候群が流行しまし

た。ちょっと聞きなれない言葉ですが、要するに、“病原性大腸菌/O-

157”による、食中毒騒動のことです。

  私は、後におこる日本での騒ぎが印象的なのですが、この頃すでに問

題になっていたわけですね。しかも、流行は世界的にあったようですね」

「はい。データでも、感染域は、全世界になっています」

「ええと...まず、“病原性大腸菌”について説明しましょうか?」

「あ、はい、そうですね...」

「そもそも、大腸菌というのは、人や動物の腸内、特に大腸内に多数生息

しています。まあ、173種といわれますね。普通は、腸内では病気を引き

起こさないのですが、中には病原性を現すものもあります

  こうした“病原性大腸菌”は、約20種類ほどの菌型があり、赤痢やコレ

ラのような症状を呈するものもあると言われます」

「うーん...赤痢や、コレラですか。相当に、激しい症状ですよね」

「そうです」

 

<日本における集団感染>

「日本における集団感染としては、1990年に埼玉県浦和市の幼稚園

起こったものが、記憶に新しいと思います。この時は、死者2人が出ていま

すね。浦和市は、現在は“さいたま市”になっています。

  それから、1996年の5月末に、岡山県で集団感染がありました。そし

てこの感染では、同年の7月末までに、死者7人と、全国で8700人の感

染者を出しました。特に、大阪市と堺市では、小学校の児童を中心に、

6500人という患者を出し、食中毒の感染としては記録的な大量発生を引

き起こしています。

  この大感染は、当時かなり大きな騒ぎになったのを記憶しています...

ニュースでも、連日報道し、日本全体でもかなりの緊張状態に陥っていた

と思います...

  最近では、この春、新型肺炎・SARSで緊張しましたが、この種の非常

事態下の緊張感というものは、貴重な体験として、大事にしたいものです。

そして、次におこる危機に、しっかりと備えて欲しいと思います。個人レベ

ルでも、自治体レベルでも、国家レベルでも、」

「はい!

  ええと、外山さん...この“O−157”というのは、どんな大腸菌なので

しょうか?」

「うーむ、そうですねえ...そもそも、大腸菌というのは、菌体の抗原抗体

反応の違いによって、173種”に分類されています。“O−157”は、157

番目に認定された菌であることを意味しているわけです」

「はい。大腸菌は、173種類あるわけですね」

「そうです」

「それで...大腸菌の大多数は無害なのに、この“O−157”は、発症す

ると腹痛下痢、血便を引き起こしますよね...それから、死者も出ます。

何故なのでしょうか?」

「はい。それは、この大腸菌は、“ベロ毒素”というタンパク質を出すからで

す。まあ、症状としては、下痢や血便など、赤痢とほとんど見分けがつかな

いといいますね。また、“溶血性尿毒症症候群”を引き起こします...」

「うーん...はい...大腸菌を殺しても、この毒素というのは、残るわけで

すね」

「はい。それから、1つ付け加えておきますと、“耐性”をもった病原性大腸

菌が報告されるようになっています。“耐性”というのは、MRSA(/メシチリン耐

性黄色ブドウ球菌)のように、抗生物質が効かない病原性大腸菌ということです」

「はい。これは、一般的な生活をしている日本人にとっても、ごく身近な感

染症の1つですね」

「そうです。まあ、手洗いなどをしっかりとすることで、相当な予防効果があ

ると思います」

 

 

1983年     エイズ (後天性免疫不全症候群)                 

         <日和見感染症のカリニ肺炎カポジ肉腫などの悪性腫瘍を起こす> 

    

「ええ...エイズが広がったのは、この年でしたか...」

「はい!」響子がうなづいた。「もう、20年にもなるわけですね...」

「まあ、エイズについては、すでにかなり知れ渡っていると思いますが、一

応概略を紹介しておきましょう...

  このエイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって起こりま

す。要するに、このウイルスは、ヒトに“免疫低下”を引き起こすわけです

ね。性交では、体液血液などを介して感染します。唾液にもウイルスは存

在しますが、ごくわずかなので、頬や唇へのキス程度では、感染しないとさ

れています」

「エイズでは、一時、同性愛が問題になっていました。それはどうなったの

でしょうか?」

「うーむ...最近では、異性間性交での感染が増加傾向にあると言われ

ています。日本でも、今年に入ってからも、厚生省が“警告”を出したり、“キ

ャンペーン”を張ったりしています。まあ、特に若者は、自分自身のこととし

て、もっとキッチリと、真剣に受け止めて欲しいですね」

「はい!」

「渋谷などでの、若者の性風俗の乱れの報道を見ていると、非常に危うい

ものを感じます。エイズは、大勢の中に埋没していれば、安全というわけで

はないのです。

  むしろ、エイズというのは、そうした大勢の中での錯綜した性交渉によっ

て、感染が拡大しているのです。また、人の波の中で、身を守る意識が麻

していることも、非常に危険なことです...

  いずれにしても、エイズに関しては、そうした“リスク”を避けることが、ま

ず第一の対策だと思います」

「あの、外山さん...エイズにも、新型肺炎・SARSに見られたような、“ス

ーパー・スプレッダー”が存在すると聞いたことがあるのですが、」

「そうですねえ...

  私は、専門家ではないので、正確な所は分りません。しかし、どのような

感染症にも、こうした非常に感染を拡大する“スーパー・スプレッダー”が存

在するという話は、聞いたことがあります。

  ただ、エイズの場合は、SARSと違って、“非常に多くの人と性交渉を持

つ人”、というようなことになりますね。しかし、そうした人間的な側面がある

にしても、そこに“スーパー・スプレッダーが存在する”という風景は、広い

視野から、しっかりと認識しておく必要があります」

「はい...

  ええと、それから...一時、“薬害エイズ事件”が大きな騒ぎになりまし

たが、あれはどうなったのでしょうか?」

「はい。このホームページでも、“薬害エイズ事件”はしばしば取り上げてい

ます。しかし、あの非加熱の血液製剤で、再びエイズ患者が出るということ

は、もう無いわけです。

  確かに、社会的には現在も大問題ですが、感染症という視点から見れ

ば、あの事件はもう過去のものです。今後は、あのような人為的な悲劇が

二度とくり返されないように、医療全般で情報公開を徹底し、また社会全

体としても、しっかりと“ガラス張りのシステム”を構築していくことが大事だ

と思います。結局、隠してコントロールするよりも、“公開”し、みんなで考え

て行く方がいいと、分っているわけですから...」

「はい!」

 

<エイズの発症>

「では、外山さん...エイズの発症について少し聞きたいのですが...

子感染というのが、約20%もあるそうですね、」

「はい。一応、帝王切開の方が、感染率が低下するといいます。それか

ら、HIV感染者が妊娠すると、エイズ発症が早まる可能性があるとも言い

ます...」

「はい...

  ええ、私たちが最も知りたい、“エイズ・ウイルスに感染”というのは、ど

のような状況や経緯になるのでしょうか?」

「そうですねえ...“感染”から数週間後に、咽頭痛、筋肉痛、倦怠感など

の、インフルエンザのような症状が、一時的に出るといいます。それから、5

年から10年の潜伏期間の後、発病するようです...」

「うーん...忘れた頃に、発病するわけですね?」

「ま、感染が分ったら、忘れるはずも無いですがね...ともかく、エボラ出

血熱は、全身の細胞から血が噴き出すというような、“劇症型”で人を殺し

ます。一方、エイズの方は、“真綿で首をしめる”ように殺すといいます。ま

あ、どっちも歓迎できないコトですがね...」

「はい...うーん...」

「しかし、エイズの方は、最近は治療法も出来てきています。ともかく、“万

感染”してしまったら、“できるだけ早い段階で、適切な医師の指示を仰

ぐ”ということが大事になってきます」

「はい!できるだけ早い対応が、いいのですね?」

「そうです!」

メモ  免疫不全の仕組み                   

************************************************************************

「それにしても、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって、どうして免疫不全などとい

うことが起こるのでしょうか?」

「うーむ...そうですねえ...

  私も第一線の研究者ではないので、詳しい状況というのは分りません。

しかし、聞く所によると、“HIV-1”が生体に侵入するとですね、これが“CD

4リンパ球”に侵入し、ポトーシス(細胞の自立的な死/自殺)を起こすようです

ねえ...こうやって、多くの“CD4リンパ球”が壊されるために、“免疫グロ

ブリン”が生産できなくなり、免疫不全の状態になってしまうということで

す。分ったでしょうか?」

「...エイズ・ウイルスが、“CD4リンパ球に侵入して、アポトーシスを起こ

すということですね。それで、免疫グロブリンの生産が出来なくなってしまう

と、」

「まあ、簡単に言ってしまえば、そういうことです。しかし、実際には、免疫シ

ステムそのものが、非常に高度で複雑な“生体防衛システム”です。決し

て、一口で言えるような、単純なものではないのです...」

「うーん...“CD4リンパ球”に、アポトーシスを起こさせるというのが、とて

も不思議なんですが...

「そうですねえ...

  人体というものを、有機的に形成しているは、約60億個の細胞です。そ

して、これらは時間軸上で、“アポトーシス”という細胞の自殺によって、猛

烈なスピードで消滅しています。しかし、その一方、“細胞分裂”によって、

な数の細胞が、新しく生まれているのです。それが、いわゆる、新陳

代謝というものですね。

  記憶をつかさどる脳神経などの細胞をのぞいて、1週間ほどで全ての細

胞が生まれ変わると言われます...そうした、凄まじい生滅のプロセス性

の中に、人体や人格というものが認識されるわけです。

  “HIV-1”による CD4リンパ球のアポトーシスは、こうした膨大な新陳代

謝の海の中で起こっているわけです。さて、問題は、“HIV-1”が、何故、

“CD4リンパ球”にアポトーシスを起こさせるのかです...」

「はい...」

「こんな“複雑で有意義”なことを、“ウイルス自身の知恵”でやっているは

ずはありません。“好き・嫌い”や膨大な“生存目的”のために、ウイルスが

そこまでやっているとは思えません...」

「では、そうしたことに、意味などあるのでしょうか?」

「あると思います...“意味”はあります。過不足なく、“意味”はあるので

す...この世界のリアリティーとは、そうしたものだからです」

「うーん...」

「ともかく、ここは膨大な地球生命圏の内部です。ここで、何が起こっている

のか...その全てを私たち自身が知るのは、おそらく困難なのではないで

しょうか」

「うーん...はい!」

 

 

 1986年     BSE/牛海綿状脳症 (狂牛病)                

   <これに関しては、狂牛病・変異プリオンの考察で詳しく考察しています> 

 

「ええ、次に狂牛病ですが、」響子が言った。「これに関しては、このバイオ

ハザードの上記のページで詳しく考察しています。そちらのページの方を、

ご覧になってください。高杉・塾長と、白石夏美さんが担当しています」

 

 

 1989年     C型肝炎             

        <C型肝炎ウイルス>         

 

「外山さん、それでは、C型肝炎について、お願いします...」響子が、ス

クリーンに、C型肝炎のデータを表示して言った。

「はい...うーむ...1989年に、C型肝炎が流行していたわけです

か...」外山が、アゴに手を当てた。「確かに、C型肝炎が騒がれていた時

期がありました。しかし、それほど鮮明な記憶がないですねえ...流行

は、全世界になっていますか...」

「はい...これは、“C型肝炎ウイルス”によって引き起こされるわけです

ね...」響子も、スクリーンを見ながら言った。

「そうです。まあ、ここでは、ここに表示しているウイルス性肝炎について、

ざっと説明しましょう。あまり詳しい説明よりも、全体像を見ていくほうがい

いでしょう」

「はい、」

 

<ウイルス性肝炎>

「ええ、このウイルス性肝炎というのは、つまり、ウイルスの感染によって

起きる肝炎ということです。日本における肝臓疾患の約70%は、ウイルス

性のものだと言われています。これに対し、私たちが気にするアルコール

による肝炎は、20%程度ですね、」

「うーん...ウイルス性の肝炎が、圧倒的に多いわけですね、」

「まあ...だから、酒を飲めということにはなりません」外山は、笑った。「つ

まり、お酒を飲まない人も、肝炎になりますよ、ということですね...

  ええ、現在、ウイルス性肝炎は、A〜Eまでの5種類の型が知られてい

ます。これらは、それぞれ、ウイルスの種類が異なるわけです。それから、

未確定のF型や、G型といわれるRNAウイルスなども発見されているよう

です。まあ、ここでは、あまり詳しい話よりも、概略を説明しておきましょう」

「はい、」

「まず、A型肝炎というのは、以前は“流行性肝炎”とも言われていました。

これは、消化器伝染病と同じように、経口感染します。つまり、口から体内

に入るということですね。しかし、治りやすく、現在日本では、大幅に減少し

つつあると言われます」

「あ、そうなんですか、」

「さて、次に、B型肝炎ですが、これはHBV(B型肝炎ウイルス)によって起きるも

ので、以前は“血清肝炎”とも“輸血後肝炎”とも言われていました。まあ、

輸血などのさい、血液を介してうつるわけですね。この肝炎は、慢性化しや

すいと言われています」

「はい、」

「ちなみに、このB型肝炎というのはですね...結核につづいて、“第二の

国民病”と言われるほど、患者数が多いようです...しかし、このウイルス

については、すでにかなり細部まで分ってきています。また、予防のため

“B型肝炎ワクチン”も、実用化されています。まあ、完全制圧も近いとい

うことでしょうか...」

「うーん、それは嬉しい話ですね...それじゃ、つぎに、問題のC型肝炎の

方をお願いします」

「うーむ...C型肝炎も、輸血との関係が深く、感染すると8割が慢性化

ると言われます。

  ちなみに、このウイルスは、直径が0.5〜0.6ミクロンの球状粒子で、

表面に無数のスパイク状の細いトゲが付いています。ウイルスとしては、

ラビウイルス科という、日本脳炎ウイルスの仲間であることが分っていま

す。

  それから、最近のことですが、C型肝炎の一部が、別のウイルスと分り、

F型と言われているようです。まだ未確定ということですが、その後、どうい

う状況になっているのでしょうかね...」

「あの、外山さん...このC型肝炎の治療薬というのは、どうなっているの

でしょうか。ボスの知人にも、C型肝炎の人がいたと聞いています。すでに、

亡くなったそうですが...」

「そうですねえ...色々な対処療法があるのだと思いますが...ニュース

としては、1992年から、4種類のインターフェロンが、治療薬として認可さ

れています。

  まあ、私も、専門家ではないわけですが、このC型肝炎というのは、非常

に慢性化しやすいわけです。そして、やがて肝硬変、さらに肝癌へ進むケ

ースが多くなるわけです...」

「うーん...これも、困りますよね、」

「まあ、そういうことです...エイズなどとはだいぶ様相が異なりますが、

肝硬変や肝癌へ進んでいくというのも、確実に命を縮めます...」

「これは、輸血が問題なんですよね。その辺りはどうなのでしょうか?対策

としては?」

「日本赤十字社が、献血のさいに、“C型肝炎ウイルスの検査”を導入した

のは、1989年です。まあ、平成1年なのですが、この年に世界的な流行

があったわけです...

  ちなみに、この1989年から1999の10年間に、45万人が陽性と判定

され、献血不適格とされています。献血者は、年間延べ約600万人といわ

れますがね...」

「うーん...早く、何とかして欲しいですよね」

「まさに、そういうことですねえ...

  マスコミも、分けの分からない芸能ニュースなどよりも、こうした現場で、

日々地道に努力している人々のことを、もっと取り上げて欲しいですね」

「はい!早く、ちゃんとした国になって欲しいですね!」

 

 1993年     ハンタウイルス肺症候群            

 

「ええ...この“ハンタウイルス肺症候群”ですが、これに関しては、私の

手元にはほとんどデータがありません。アメリカ南西部で、1993年に流行

したというデータがありますが...

  ともかく、この感染症は、“ハンタ・ウイルス”によって引き起こされます。

宿主はシカネズミということです。まあ、ウイルスとしては、高熱腎臓障害

と、出血をともなう腎症候性出血熱(HFRS)同一のグループになります」

「データは、それだけでしょうか?」

「これだけです。現在手元にあるのは...まあ、現地のアメリカでは、しっ

かりと研究されていると思いますから、そのうちに論文の発表などもあるの

ではないでしょうか...」

「はい、今後の展開次第ということですね」

「そうです...ともかく、グローバル化の中で、こうした新興感染症が、続

々と登場して来ていることが大問題なのです...それをどう管理して行く

かということですね...

  これは、今後の人類文明全体のデザインをどうしていくかということと合

わせて、非常に大きな問題になって来ると思います。まあ、当面は、空港

や港の管理と、疫学的な対策が中心になりますが、」

「はい!」

 

 

 1997年     インフルエンザ/ (新型)         

            <トリ・インフルエンザ・ウイルス>        

 

「ええ、この年、香港新型インフルエンザのために、大量のニワトリが処

分されたニュースがありました。病原体は、“トリ・インフルエンザ・ウイルス”

ですが、これもデータらしいものは、現在、私の手元にはありません。

  しかし、中国南部で発生する新型のインフルエンザというのは、人類に

とって大きな脅威となっています。今回のSARS騒動は、WHOが中国南

部で、この種の新型インフルエンザを監視していて遭遇したものです。

  SARSは、初期症状はインフルエンザと非常によく似ていて、最初は新

型のインフルエンザと考えられていたようです。しかし、SARSは、インフル

エンザのような空気感染ではなく、新型のコロナウイルスと分ったわけで

す。

  いずれにしても、中国南部は、今後も、要注意の監視地域です...」

 

 1998年     脳炎(新型)   <マレーシア/ニパウイルス/コウモリ>  

 

「ええ...マレーシアで発生したこの不思議な“脳炎”については、サイエ

ンスに論文の掲載もあり、私も読んでいます。しかし、結局、原因は曖昧の

まま、感染は終息しました。ここで登場したのが、ニパウイルスであり、主な

宿主はコウモリと言われていますが、結局、はっきりしたことは分らなかっ

たのだと思います。

  また、ブタの濡れた鼻面というもの、新型ウイルスの発生源として注目

されていましたが、その後どのような展開になったのか、私の所にはデー

タがありません。ともかく、この新型の感染症は、“トリ・インフルエンザ・ウイ

ルス”と同様に、何とか食い止められ、再度の大きな感染はないようです。

  まあ、東南アジアに位置するマレーシアも、地球儀を見れば分るように、

中国南部にあります。ここ数年の動きを見ても、まさにこの中国南部という

のは、2002年のSARS、1998年のニパウイルス1997年のトリ・イン

フルエンザ・ウイルス、と新型感染症の発生源となっています。

  重ねて言いますが、中国南部は、要注意地域の1つです。SARSの失

敗を教訓とし、新型感染症の拡大を未然に封じ込めていくことが大事で

す...」

 

 1999年  西ナイル熱  <アフリカ、アメリカ/西ナイル・ウイルス/トリ>  

 

「1999年の8月、アメリカのニューヨーク市を中心に、突然発生しました。

これは、家蚊が媒介するウイルス性の脳炎ですね。干ばつ後の雨による蚊

の大発生と時を合わせ、脳炎患者が異常発生しています。

  当初はセントルイス脳炎ウイルスと考えられていたわけですが、詳しく調

査した結果、西ナイル・ウイルスと分かったわけです。

  この西ナイル・ウイルスというのは、“人畜共通伝染病”を起こすウイル

スの1つで、“蚊”“鳥”によって人間にも感染します。まあ、1種の風土病

とも見られています。

  そもそも、このウイルスは、1937年に、アフリカのウガンダで発見され

ています。それ以後、エジプトやイスラエルなどで感染者が出ていました

が、アメリカで感染者が出たのは、1999年が初めてです。以来、大流行

が心配されています。

  

  感染すると、発熱、頭痛、発疹などがあります。高齢者や体力のない人

は、髄膜脳炎なって死亡します。この意味では、致死率の高い伝染病と言

えます。

 

  日本でも、輸入動物によって、このウイルスが国内に侵入する危険性が

指摘されています。予防法や治療法の確立されていない伝染病の1つであ

り、注意が必要ですね。

  それから、つい最近、“SARS・掲示板”にも載せましたが、“感染症法”

と“検疫法”が改正の運びになり、輸入動物は“届け出制”に強化されるよ

うです。これは、この西ナイル・ウイルスもターゲットの1つだったわけです。

ともかく、法案が国会を通過するのが待たれます...」