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    BOOK・1/1998年   

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トップページHot SpotMenu最新のアップロード/            担当 : 中西 卓

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1998. 2. 4  競馬コーナーの担当記者/大川慶三郎、My Assistant Deskを訪問  
1998. 2. 6  大川慶三郎、 My Weekly Journal の編集室に顔を出す  
1998. 2.16  津田真、中里響子が、My Work Station へ行き、仕事の打ち合わせ  
1998. 2.23  大川慶三郎と塾長が、軍事問題コーナーで雑談  
1998. 2.26  高杉、津田、大川が、休憩コーナーで一杯やりながら雑談  
1998. 3. 9  高杉、大川が、休憩コーナーでパラリンピックの観戦   
1998. 3.20  大川慶三郎、中西卓とドライブに出る  
1998. 4. 1  折原マチコ、星野支折に先輩風を吹かせる  
1998.10.13  マチコと支折の、国立天文台・野辺山の見学  
1998.11.27  折原マチコ、競馬コーナーで98・秋G1シリーズをを2回外し、落ち込む  

    

                                                                      <1998.2.4>

  競馬コーナー担当記者/大川慶三郎

                    My Assistant Desk を訪問

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「よう、マチコちゃん」

「アラ、いらっしゃい!」

「ふーん、こんな所に居るのかい」

 大川はタバコを吹かしながら、赤いディレクター・チェアーに腰を落とした。                      

「まだ、何も無い所よ。何かご用?」

「いや...別に用というほどじゃないが...」

「コーヒーを入れましょうか?」

「ああ。もらおうか...」

「初仕事、当たったんですってね」

「うむ。ま、ついていたようだ」

「こんど、あたしも頼もうかな」

「いいとも。脈のある時は声をかけよう」

「そ、頼むわね。どうぞ、お砂糖は自分で入れてね」

「ああ」

               

                                                                       <1998.2.6>

   大川慶三郎・・・

   My Weekly Journal の編集室に顔を出す

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「おい、このバイク、借りてもいいか?」大川慶三郎が、バイクを見回しながら言っ

た。

「ああ...何処へ行く?」津田は、受話器を置いて言った。

「美浦トレセンさ。少し寒いけど、行ってくるぜ」

「ふむ。遠いな。ガソリンもあまりないぞ」

「入れるさ。調子は?」

「新品だよ。まだ、50キロも走ってない。まあ、美浦だろうと、府中だろうと大丈夫

だ」

「うむ...」

 大川慶三郎は、タバコをプカリと吹かした。それから、くわえタバコでバイクに乗り、

エンジンをかけた。静かな軽快なエンジン音がスタートした。スロットルをかすかに回

すと、機敏に反応する。

「よーし、上々だ」

「おい、ヘルメットを忘れるな。棚の上だ」

「ああ、」大川は、バイクを下り、ヘルメットを取ってかぶった。

「じゃ、ちょっと行ってくるぜ」

「気をつけてな」

「うむ...それにしても...今年伸びるジョッキーは、誰かなあ...横典は一歩抜

け出したが、」

「そりゃそうだ...」津田は、キーボードのある机の上で、両手を組んだ。「それで特

集を組むかね?」

「まさか」大川は片手を振った。

「いや、面白いと思うが、」

「ま、それは編集長の考えることさ。やれって言えば、やりますがね。しかし...今

年は、後藤あたりが面白いかな、」

「アメリカへ武者修業に行ってたやつか」

「ええ...」

 大川慶三郎は、エンジンをゆるく吹かした。それからタバコを吹かしながら、滑らか

に外へ乗り出していった。

 

                                                                       <1998.2.16>

  津田真、里中響子が・・・

  My Work Station へ行き仕事の打ち合わせ

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  ドアにノックがあり、My Weekly Journal の津田が入ってきた。

「おう、何か用か?」高杉 は、椅子を回し、ドアの方に向いた。

「相変わらず、お忙しそうですね」津田は手に持っていたバインダーを、肘にはさん

だ。「時間はありますか?」

「ああ。あるといえば、いくらでもある」

「それじゃ、時事短評とオピニヨンの原稿を頼みます」

「そうだな...内容は?」

「イラクの国連査察問題が緊迫化してきています」

「うむ、わかった...資料は?」

「ありません。資料を用意しておきますか?」

「うむ、その方がありがたいな」

「はあ...ですが、私は軍事問題は分かりません。だれか、専門の担当者を配置で

きませんか」

「すぐには無理だ...」高杉は、腕組みをして、天井を眺めた。

「大川慶三郎にたのむか、」

「彼ですか...」

「うむ。あいつは、あれで、前はそっちの方のルポライターをやってたことがあるん

だ。ま、ずっと若い頃のことだが」

「初耳ですね」

「私の方から頼んでおこう。言葉の解説の方は、マチコと相談して、バックアップを頼

む」

「はい。色々とまだやることがありますね。私の方も、マスコミ関係のデータベース作

りを考えているのですが」

「ふむ、マスコミか...」

 開いているドアをノックし、里中響子がツカツカと入ってきた。

「塾長、第一会議室の設定ですが、」里中響子が、バインダーを開きながら言った。

「3月からでよろしいでしょうか?」

「設定は君に任せる。僕は、最後にひとこと発言するぐらいにしてくれないか」

「検討してみます」

「張り切ってるね」

「はい。初仕事ですので、」里中響子は、初めて少し顔を崩した。

引き締めた口元に、彼女の気の強さが感じられた。

「津田も、色々と相談に乗ってやってくれ」

「ええ、分かってます」津田は、笑って答えた。

「よろしくお願いします、津田さん」

「ああ、こちらこそ」

 津田が出て行くと、高杉はすぐにインターフォンのボタンを押した。

「はい。何でしょうか?」マチコの声が、すぐに返ってきた。

「大川はどこに居る?」

「さあ...競馬コーナーで、グリーン・チャンネルを見ていると思いますが」

「ふむ。こっちへ電話をするように言ってくれないか」

「はい」

 すぐに、大川慶三郎から電話が返ってきた。

「やあ、塾長、何ですか?」

「うむ。ひとつ、君にたのみがある。軍事問題の担当をやってもらおうと思うんだが」

「ああ、いいですよ。軍事問題は、今でもテリトリーの一部です。で、何をすればいい

んです?」

「まず、イラク問題だ。いよいよキナ臭い匂いがする。いざ攻撃となった場合の、巡

航ミサイルから、レーザー誘導ミサイルまで、兵器体系をまとめてくれ。大雑把なも

のでいいが、ガイドラインはしっかりとたのむ」

「わかった。後は自由にやっていいわけだな?」

「ああ。津田か、私がチェックする」

「イラクに飛ぶことになるかも知れんぜ 」

「そんな予算はない」

「分かってますよ。さっそく始めるか...」

 

                                          <1998.2.23>

   大川慶三郎、塾長が・・・

            軍事問題コーナーで雑談

              


「やれやれ、“砂漠の雷鳴”作戦を特集していたら、終わってしまいそうだな」 高杉光

一は、大川慶三郎から受け取った缶ビールの口を切りながら言った。

「すると、フセインは、何が言いたかったのかな?」大川慶三郎は、ズバリ核心を突

いて言った。

「そこだ...」高杉は、椅子から立ちあがって、缶ビールを一口飲んだ。それから、

ソファーの方へ行って腰を落とした。

「アナン事務総長は紳士だか、フセインはタヌキだぜ」大川も、缶ビールを持って向

かい側の椅子に腰を下ろした。

「タヌキか...ふう...」高杉は、ビールをあおった。「国民は、たまったものではな

いだろう」

「いずれにしても、もう少し様子を見ることになりますな」

「ま、これで落ち着いてくれるんなら、それにこしたことはない。しかし、中東はまず

置いておくとして、北朝鮮はどうだ?」

「人道援助の食料を、軍隊が備蓄してるって話があります」

「うむ。金大中大統領が登場し、経済がパンクし、朝鮮半島も正念場だな.....」

  高杉は、缶ビールを飲み干し、窓の外を眺めた。外は、また雪がチラチラ舞い始め

ていた。

「ここは、日本が全面的にバック・アップしなきゃあならんだろう.....」高杉は言っ

た。

「しかし、竹島ではやりすぎだぜ」大川も、空になったビールの缶をクズカゴに放りり

込んだ。「日本もだらしないが、」

「しかし、あの日韓漁業交渉問題は、うまいやり方ではなかったような気がする。相

手が一番まいっている時に、一矢報いるなんてのはな。国政レベルでやるべきこと

じゃあない」

「たしかにな。恨みが残るな。もっと、実を取るべきだったかも知れん」

「それよりも、日本は今こそ、朝鮮半島を全力で支えるべきだと思う。この国に、それ

だけの度量があるかどうかが問題だが」

「うーむ、僕には分からんな」

「ついこの間まで、日本も韓国も日の出の勢いだった。それが両方ともポシャった。

互いに楽な時は、人間は助け合ったりはしないものさ。苦しい時にこそ、友情が生

れる」

「過去も水に流せるというわけか」

「そういうことだ」高杉も、空の缶を、遠くにあるクズカゴを狙って投げた。空缶は、そ

の手前で落ちて、カランとはねた。

 

                                                      <1998.2.26>

高杉、津田、大川が・・・

       休憩コーナーで一杯やりながら雑談 

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「いや、問題は、フセインという男だ...」高杉光一は、グラスの中の氷をカラカラ回

しながら言った。「我々は、もう少しあの男を理解してみる必要がありそうだ。アラブ

という世界についても、」

「フセインは、何故戦っているんでしょうか?」津田真が言った。

「まあ、何にしてもだ、」大川慶三郎が、口を開いた。「あの大統領は、自国のクルド

族に毒ガスを打ち込むような男さ。そういう事が、平気でできる男さ」

「少し、あの地域の歴史を探ってみる必要がありますね」津田が言った。

「そうだな。そうしよう」

「そうそう、オピニオンの“国際・機動救助船構想”ですがね、」大川慶三郎が、2杯

目のオンザロックを作りながら言った。「機動救助船の“機動”という文字はいらんで

しょう」

「ふむ...やはり、そう思うか?」高杉は、津田の方を向いた。

「ネーミングとしては長いですね」津田は、ピーナツを口に放り込んだ。

「そのことは、考えなかったわけじゃないんだが...」

「機動とは、機動部隊のことを指します...」大川は、グラスに氷を1つ落とした。

「空母機動部隊ならいいですが、1隻や2隻では何ともへんです」

「じゃ、“国際・救助船構想”とするか」

「ええ」

「そう、その方が、スッキリしますね」 津田も同意した。「アメリカが世界の警察官、

日本は救急車」

「それを言うなら、アメリカが軍艦で、日本は救助船よ」 里中響子が、高杉の背後で

言った。 「私にも一杯いただけるかしら?」

「おお...」大川は、食器棚の方を指した。「グラスを持ってきな」

「いいわ。自分で作ります」

 

                                                                   <1998.3.9> 

高杉、大川が・・・

   休憩コーナーでパラリンピックの観戦 

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「すごいものだな」大川慶三郎が、タバコを吹かしながらうなった。

「うーむ。一本スキーで、ストックも小さなスキーになっているわけか」高杉もうなづい

た。「スノーボードのようでもあるな。おう、マチコ、どこへいってきた?」

「ちょっとお買い物」マチコは、ソファーの上に買い物袋を置いた。

「コーヒーを入れましょうか?」

「ああ、たのむ」

 

                                                                 <1998.3.20>

   大川慶三郎、中西卓とドライブに出る

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 大川慶三郎は、タバコを吹かしながら裏通りへ抜けるドアを押した。歩道があり、

その向こうの細いアスファルトの車道が、春の陽光に白く反射していた。通りの向こ

う側の民家の庭に、小さな梅が満開に咲いている。その民家の右手の方は、広々と

した貸し駐車場だった。これも、土地神話の崩壊と、バブル経済の後遺症である。

東京には、こうした駐車場が、無数にあると言われる。

 なま暖かい風を受け、ボンヤリとそこを眺めていると、駐車場の隅に Inner Story

担当の中西卓の姿がが目に入った。バケツを持って行き、ジープの手入れをしてい

た。

                 

 大川は、ブラリと歩道へ出た。太陽を見上げ、目を細めた。バイクを一台やり過ご

し、車道を渡った。民家の庭の満開の梅の隣に、大きな桜の木があった。桜はまだ

蕾で、陽光を浴び、ひっそりとエネルギーをたくわえている。

 そういえば、桜花賞も近いな...と大川は思った。桜花賞、その次は皐月賞と、

いよいよ春のG1クラシック・レースがスタートする。ヨシ、と大川は心の中でつぶや

き、春の青空を見上げた。

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「いい天気だな」大川は、ジープの方へ歩きながら言った。「手入れかい?」

「ええ、春ですから」中西卓が言った。「ばっちり整備して、洗車して」

「ふーむ...このジープは、3000ccぐらいか?」

「ええ。3000ccです」

「ま、このぐらいあれば楽だろうぜ。御殿場の坂あたりでもな」

「ええ。暇ですか、大川さん?」

「まあ、暇な部類だな、」

「ちょいとドライブに行きませんか?」

「おお。いいとも。それじゃあ、昼飯をおごるぜ」

「いいですねえ。ちょっと待って下さい。仕上げちまいますから」

「うむ。上着を取ってこよう。10分ぐらいか?」

「ええ。そうですね」

「わかった」

「ああ、大川さん、桜花賞のディスカッションはいつですか?」

「まあ、4月に入ってからだ」

「やっぱりロンドンブリッジですか?」

「エイダイクインも気になる ...」

「ま、桜花賞ですから、名前からいったらオータムリーフはペケですね」

「ああ ...武豊が、いかにも桜花賞馬らしい馬って言ってるが、そこが問題よ」

「国語の問題みたいですね。読解力の問題かもしれませんね。新聞や雑誌は、盛り

上げるために、かなりいいかげんな推理を入れてますからねえ」

「うーむ。そういうことだ。そういうデータの真贋を判断することも勝敗に直結してく

る」

「ええ、強気一点張りの調教師もいますしね」

「そう。そうなると、単なる国語の読解力のレベルを超えるな...さて、上着を取って

こよう」

 大川は、くるりと向きを変えた。大股で、もと来た方へ引き返していった。

 

 

                                                      <1998.4.1>

折原マチコ、星野支折に先輩風を吹かせる

      折原マチコ((My Assistant Deskk           星野支折  (文芸 ・フリートーク

                                        カンパーイ!  

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「これ、おいしいわね」星野支折が、ワイングラスをかざして言った。

「おいしいでしょう。じゃんじゃんやってよ。最近、ワインにこってるのよ」折原マチコ

は、ピザを切ったナイフを置いた。

「ふーん、赤ワインて体にいいんですって?」

「そう...」マチコは、自分のグラスを取り上げ、ゆっくりと傾けた。

「ねえねえ、中西さんさあ、あんたのコレ?」

「うん?」マチコは、ワイングラス越しに聞いた。

「コレよう!」星野支折は、小指を立てて揺らした。

「ああ...ホッホッホッホッホッ、まっさかあ!」

「ふーん...」支折は、グラスの中のワインを揺らし、小首を振った。

「彼はダメよ。一緒に上京してきた幼馴染みがいるのよ」

「あら、」

「駅前の和菓子やさんで働いてるわよ。彼女、そのうちに自分のお店を持ちたいん

ですって」

「ふーん。たいしたものねえ」

 支折は、ピザを一切れ取り、伸びてくるチーズをクルクル回して切った。

「そういうのもいいわね。自分のお店を持つのかあ...」

 マチコはワイングラスを傾けた。

 支折は、ピザを一口食べ、もぐもぐやった。それから、それをワインで喉に流し込

んだ。

「今度、紹介するわ。いい人よ。あそこ、お茶がおいしいのよ」

「なんて名前?」

「香織さん。私は、ずっと前から知ってるのよ」

「ふーん...」

「つまりそういうこと。それより、どう、仕事の方は?」

「やることはいっぱいあるんだけど、どうしたらいいのか...」

「整理?」

「ええ、かってにやっていいのか分からないし、」

「原則さえ変えなければ大丈夫よ。塾長は細かいことは言わないわ。じゃんじゃん

私に聞いてよ。私は塾長のアシスタントだから」

「うん、たのむわね」

「里中響子さんの所、これから、忙しくなりそうね...」マチコは、二つのグラスにワ

インを注いだ。

「うーん、あそこは大変そうねえ...」支折は、椅子の背にもたれかかった。

「でも、多分、大丈夫。塾長が言ってたわよ。あの人はインテリなんですって。私たち

とは違うわ」

「あら、私だってそのつもりよ」

「あら...だったら、私だって、」

「アッハッハッハッハッ」

「オーッホッホッホッホッ」

「もう一度、カンパーイ!」

「カンパーイ!」

「一本みんな開けちゃうわよ!」

「オーッ!」

           

                                           (1998.10.13)

  マチコと支折の・・・国立天文台・野辺山の見学 

                                        <9月23日/秋分の日>

              マチコと支折は、中西卓の四輪駆動車を借用・・・二人で交代で運転

           


  My Asisstant Desk の折原マチコと、文芸・フリートークの星野支折は、天文台

を一回りし、ゲートの外の駐車場へ出てきた。小雨がパラパラ降り、また空がどんよ

りと曇ってきている。二人は、手持ちぶたさに周囲を見回している。

  駐車場の向こうに細い道があり、その道に沿って小川が流れている。川の向こう

は芝生の公園のようになっていて、村の文化情報交流館がたっていた。天文台の

付属の建物ではなさそうだったが、全く無縁でもないといった関係のようである。な

んともややこしいが、つまりそんな関係のようである。

 

「ねえ、おなかすいた?」マチコが、ヨイショ、と背中のリックを揺らし、支折に聞い

た。

「うん。それより、足が疲れたわ」支折は、腰に片手を当てて言った。「雨は大丈夫か

しら?」

「ン?お...」マチコが、文化情報交流館の方を眺めながら言った。「...支折、ア

レ、うちのボスじゃないかしら?」

「え...アラ...間違いないわ、ボスよ!行こう!」

「おう!」

 二人は、川の下手にある橋の方へ駆け下った。川は意外に水量があった。岩魚

がいそうな滝壷もある。

「おーい!おーい!」マチコが手を振り上げていった。「ちょっと、そこの、オジさー

ん!」

「こんにちはー、ボス!」支折は口に両手を当て、立ち止まって声を張り上げた。

 近くにいた何人かが、彼女立ちの方を振り返った。

「おう...なんだ、おまえらか...」岡田は、鉄平石の敷石の上で立ち止った。そし

て、二人が橋の方から砂利道を登ってくるのを眺めた。

「ふむ...何でお前等がこんな所にいるんだい?」

「あら、ごあいさつね」マチコが息をはずませながら言った。「一生懸命に働いている

のよ」

「お食事ですか、ボス?」支折も、息を切りながら言った。

「ああ。君達も一緒に食べるかね?」

「はい」

「ホームページでは、ここで食事ができるとかいてありました」マチコが言った。

「うむ。そうらしい」

「何でも食べていいんですか?」マチコが聞いた。

「ああ、いいとも。君達はサイバー・スペースのスタッフだ。金がからん。何でもジャン

ジャン食べていいぞ」

「わーい!」マチコが飛び上がった。

「さあ、行きましょう!」支折が言った。「もう、本当におなかがすいちゃったわ」

「じゃんじゃん食べるわよ!」

 三人は、建物の正面玄関へ向かって歩いた。

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 食堂は、入り口ホールの奥にあった。見晴らしのいい一段低いスペースで、ゆった

りとしていた。ホールも食堂も、近代的でなかなか洒落た雰囲気だ。大きな中継スク

リーンがあり、食事をしながら、ホールの中の講演の様子も見ることができる。

 さて、テーブルについて立派なメニューを取り上げてみると、ウドンとソバしかなか

った。あとは、カレーライスと...ま、その他は大体想像のつくメニュー...

「で...」と、岡田は二人に聞いた。「何を食べるかね?」

「これしかないんですかあ、」マチコが頭の後ろに両手をやり、椅子にそっくり返っ

た。

「うーん、」支折も、そっとメニューを置いた。「ボスは何を食べます?」

「私は、ウドンだ。天婦羅を入れて。さあ、君達もあきらめて、何か注文するんだな」

「はーい」マチコが言って、体を起こした。

「これからどうするんですか、ボス?」支折が聞いた。

「ここで講演を聞く予定だ。2時半から始まるやつだ」

「それじゃ、マチコ、私達もそうしようか?」

「うん」

 

                                                     (1998.11.27)

  折原マチコ・・・

     98・秋G1シリーズを2度外し、落ち込む

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「おーい、マチコ、いるかあ?」白石夏美が、ドンとロビーのドアを押した。

「うん...」マチコは、ソファーの上で脚を伸ばし、ボンヤリしていた。夏美の方は見

ずに、「フウーッ...」と、ため息をついた。

「なーんだ、マチコ、まだ落ち込んでるのかあ!」

「力が抜けちゃったのよ...」

「ま、しょうがないか」

「今度は、ジャパンカップね。うーん...」

「そんなに当たるもんじゃないわよ。さ、競馬コーナーへ行くわよ」

「うん」