「あら!ここね...」マチコが、夕暮れの道路で、背中のリックサ
ックをゆすった。「おーい!おイモ屋さーん!
お芋をちょうだいな
ー!」
「おう!マチコと夏美か!」ポン助が、仕事をしながら片手を上げ
た。それから、お客の方に、大きな焼きイモの入った紙袋を2つ
渡した。「はい!まいど!」
「焼きイモ屋さん、明日も来るかしら?」お客が聞いた。
「来るよな」
「そう、じゃ、明日もお願いね」
「おう!」
「売れてるわね、ポンちゃん」夏美が、関心して言った。「ポンちゃ
んは、商売がうまいわねえ。ボスも、これぐらい商売上手だった
らいいんだけど...」
「うーん...ボスは、その気がないわよね...」マチコは、夏美
と一緒にトラックの方へ歩きながら、首を傾げた。
「でも、“武士の商法”なら、しない方がいいかもよ、」
「確かにね...ボスは、“利”というものに、関心が薄いのよ」
「ポンちゃんは、それに、よく働くわよね、」夏美は、ポン助の前で
言った。
「石焼きイモは、これからだよな!」ポン助は、ストーブの中に薪
を1本放り込み、フタをした。
「ふーん...」マチコが、感心して、軽トラックの荷台をのぞきこ
んだ。「ポンちゃんは、本当に商売が好きなのね」
P公は、軍手をはめた手で、石焼きイモの釜の中に、新しいイ
モを並べている。
「ポンちゃん、大きなのを、2本もらおうかしら」夏美が言った。「そ
れから、みんなのお土産に、5、6本、」
「あいよ!おう、P公!」
「うん、」
「Pちゃんは、おイモは好きなの?」マチコが聞いた。
「好きだよ、」
「そっかあ。やっぱり秋は、石焼きイモよねえ...あ、そうそう、
ボスから、おイモの俳句を預かってきたの。ポンちゃんが、焼きイ
モ屋さんを始めるんなら、是非、何処かに貼り付けておけって、」
「おう、いいぞ。トラックのドアの横に貼り付けていいよな、」
「うん」
マチコは、運転席のドアに、両面テープで貼り付けた。