My Weekly Journal第1編集室21世紀・日本社会の器新時代への奔流情報公開・編

     支流から奔流へ情報公開編      

            原則・情報公開の社会礼節と慣習法による社会管理         

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  トップページHot SpotMenu最新のアップロード/                  編集長:  津田 真

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プロローグ      “派遣労働法”“個人情報保護法”が、社会を暗くした≫ 2006. 2.22
No.1 〔1〕 “個人情報保護法”の風景      2006. 2.22
No.2      ≪透明な、明るい民主主義社会の建設...≫ 2006. 2.22
No.3      ≪閉塞社会の破局点 (カタストロフィー・ポイント)・・・≫ 2006. 2.22
No.4 〔2〕“礼節”“慣習法”による社会管理 2006. 3.14
No.5        ≪ボスかのコメント...≫ 2006. 3.14
No.6        ≪痩せ細った法律 ...≫ 2006. 3.14
No.7        ≪“礼節”...“慣習法”とは ...≫ 2006. 3.14
No.8 〔3〕 情報革命のステージと、情報の本質   ****

  

  プロローグ       <理論研究員:秋月 茜>

    “派遣労働法”“個人情報保護法”が、社会を暗くした

                    

「ええ...理論研究員の、秋月茜です...

  小泉・政権では、“新自由主義”というものを目指しているようです。この言葉は、比

較的最近になってマスコミなどに登場しました。それが、どのようなものを意図してい

るのかは、詳しくはわかりません...

  ただ...ライブドアの“ホリエモン”“竹中・元金融相”、そして“小泉・首相”がス

クラムを組み...その延長線上に描いている、ダイナミックな自由競争社会のようで

す。アメリカがそのモデルなのかも知れません。

  しかし、その“新自由主義”も、“ホリエモン”が逮捕され、ライブドアの犯罪性が明

らかになった事によって、急速に色あせてきたようです...

 

  さて...私たちはずっと以前から、“新・民主主義”を提唱しています。それは、民

主主義社会を土台にして...【情報公開 と 【国民参加型・評価システム】 が基本

になります。そして後に、 【正しい公正な富の再配分】を追加した経緯があり、これが

“3つの基本的理念”となっています。

  “国民参加型・評価システム”については、“ロードマップ”で...また“正しい公正

な富の再配分”については、“支流から奔流へ/富の配分・編”で考察しています。そ

して、今回は、3つの基本理念のうちで、最後に残った“情報公開・編”になるわけで

す。

 

  “情報公開”は、3つの基本理念の内でも、最重要なものです。また、21世紀に爆

発的に始まった、文明の第3ステージ/“情報革命”の中核を形成するものです。くり

返しになりますが、第1ステージが農耕の始まった“文明の曙”第2ステージが18世

紀に始まった“産業革命”...

  そして、インターネットヒトゲノムの解読で始まった21世紀は、まさに文明の第3

ステージ/“情報革命のスタートです。このステージの本質は、それそのものの“飛

躍・跳躍”があるわけであり、まだ当分見えてこないと思います。しかし、現段階にお

いて、私たちなりに、鋭意考察を進めて行きます...

 

  ええ...“新・民主主義”“3つの基本的理念”のうちで、これが最後になってし

まったのは...実は、これはあえて考察する必要はないと思っていたからでした。す

でに社会全般で、“改革には情報公開が不可欠”との合意があると考えていたから

です。

  ところが、小泉・政権下のチグハグな政策で、“個人情報保護法”が登場して以来、

急速に風向きが変わってきました。そして、見る見るうちに、社会の全般の風景が、

公開主義”から“非公開主義”に変貌した観があります。まさに、法律/立法というも

のの、恐い側面を見た気がします...

  そもそも“個人情報保護法”は、情報保護の“理念法”と、金融や情報通信などの

業界ごとの規定を細かく定めた“個別法”とを想定していたと言われます。ところが、

小泉・政権は、1本の法律で社会全体に網をかけてしまいました。何故、このようなこ

とをしたのでしょうか...

  ともかく、そのために法律が漠然としたものになり、社会全体に“混乱”“萎縮”

“暴走”を生み出しているのです。これは、本来必要としていた“理念法”“個別法”

に主旨に戻さなければいけません。社会に非常に大きな歪みが生じ始めています。

 

  現在...事態は、個人情報保護のもつ、礼節の理念を逸脱し、どんどん“非公開主

義”に流れている様相です。情報公開/情報開示そのものが、犯罪リスクを持つと考

え、社会を“萎縮”させる方向に動いています...

  これは、顔を隠した“覆面(ふくめん)社会”を助長するものであり、決して良い流れでは

ありません...小泉・政権は、何故、“業界の個別法”を、1本の法律で、社会全体に

網をかけてしまったのでしょうか。これを政治的に利用する意図があったのでしょう

か...

  これは、ちょうど“派遣労働法”“暴走”し、国民の労働環境を急速に悪化させた

状況と似ています。日本社会は、モラルハザードの中で、法律/立法が社会を萎縮・

暴走させ、混乱をさらに加速させています。立法府全体の責任は、極めて重大です。

立法府は、責任を持って、正しい形/正しい姿に修正すべきです。

  さて...これは、右傾化する小泉・政権が仕掛けた、深慮遠謀の1つなのでしょう

か。それとも、偶然なのでしょうか。政権そのものに、それほど深い哲学があるとは思

えませんから、場当たり的な下心が生み出したものかも知れません。

  しかし、1つならともかく、“派遣労働法”“個人情報保護法”と2つ重なると、偶然

とは言えない側面も出てくるわけです。力の落ちた立法府と、見通しの甘い行政府

の、チグハグな政策が反映したという側面も重なるようです...国民の代表である

法府/国会は、いったい何をやっているのでしょうか。国民の代表をの役割を十分に

果たしているのでしょうか...

  自らの、議員年金の問題選挙区の区割りの問題議員・業界の絡んだ耐震構造

疑惑議員も関与する官制談合と天下りの問題...全て自分たちの絡んだ問題で

アクセクし、しかも何ひとつ、国民の望むスッキリとした解決には到っていません...

  全てが甘い決着で、悪事不正が野放しにされています。これは、一体どういうこ

となのでしょうか。この国は、どういう原理で動いているのでしょうか。そもそも立法府

は、国民の代表たる適正能力が、著しく欠如しているのではないでしょうか。それと、

自民党・長期政権の、恐るべき弊害が露呈してきた結果ではないでしょうか...

 

  ともかく...小泉・政権下で成立した、“派遣労働法”“個人情報保護法”という

“2つの新しい法律”が、日本の社会を急速に暗く、窮屈なものに変えつつあるようで

す。そして、ご存知のように、経団連はこれを非常に高く評価しています。そして、莫大

な利を得、“富の寡占化”を押し推し進めています。

  法律の間的熟成と同時に...もし、間違ってしまった法律なら、元の状態

す理性も必要です。道に迷ってしまった時は、いったん引き返し、そこで改めて、慎重

に考えてみることです。“個人情報保護法”は、ともかく情報保護の理念法業界の

個別法の、本来の主旨に返るべきです。

  日本は、言うまでもなく、国民主権の国家です...国民がそれを望めば、それは容

易に実現する社会です。すでに、既得権が成立した法律でも、元へ戻すべきなら、そう

すべきでしょう...

  また...少なくとも、“主権者/国民”が、企業に隷属させられている状態は、明確

な憲法違反だということを、ここではっきりと指摘しておきます。“基本的人権”は憲法

で保証されたものですが、資本主義企業システムは、いずれも憲法で保障されたも

のではありません。

  ご存知のことと思いますが...憲法で保証されているのは、“国民主権”“人権

尊重”“絶対平和主義”です...立法府は、このことを十分にわきまえ、十分に理解

しているのでしょうか...」

 

「うーん...」茜は、アゴに拳を押し当てた。「それにしても、何故、こんな社会、こんな

政治になってしまったのでしょうか...理想の社会は、どうあるべきなのでしょうか?

ともかく、それをこれから、私たちなりに検証して行こうと思います...

  また、文明の第3ステージ/“情報革命の本質”についても、理論研究員として、少

しづつ考察を広げて行きたいと思っています...ええ、では支折さん...お願いしま

す」

  茜は、ノートパソコンのキーボードに手を下ろし、支折の方に頭を下げた。それから、

ポン助の注いでくれたお茶に手を伸ばした。

  〔1〕 “個人情報保護法”の風景  wpe56.jpg (9977 バイト) 

    wpe4F.jpg (12230 バイト) index.1019.1.jpg (2310 バイト)    

 

「はい!」支折は、茜にうなづき、カーディガンの胸をおさえた。ノートパソコンのキーボ

ードに両手を添えた。

「ええ...“個人情報保護法”というのは、色々と問題のあった法律ですよね。政治

家に対する、マスコミの取材が制限されるとか...新聞で騒いでいましたよね。で

も難しすぎて、国民にはあまりピンとこないものでした...元々は、国民とは、距離の

あった法案といった感じでした...

  編集長...そもそも、社会全体が“情報公開”を求めている流れの中で、何故、あ

えて、“個人情報保護”だったのでしょうか?」

「うーむ...」津田が、口に掌を押し当てた。「我々としても、その影響がよく分らない

間に、成立してしまった法律ですねえ...それが、個人にも社会にも、非常に大きな

影響を与える法律だったということです...その意味では、まさに“派遣労働法”と同

じでしょう...

  先ほど茜さんが、法律/立法というものの、恐い側面を見たと言いましたが、まさに

その通りです...“法”が前面に出てくると...社会は“萎縮”してしまったり、逆に

“暴走”してしまったりするわけです...

  この法案に対し、野党はいったい何をしていたんでしょうか。まあ、アッサリと押し切

られたんでしょう。しかし、間違っていた法律なら、この国の“主権者/国民”の後押し

て、再度修正していけばいいのです。一度決まったものは、絶対というわけではありま

せん...」

「編集長...」支折が、サラリと髪を揺らし、頭をかしげた。「いまさら、言うのもなんで

すけど、何故、この法律が、必要だったのでしょうか?」

「うむ...

  1つには、情報化社会が到来し、ネット情報の中に、“個人情報”がどんどん呑込ま

れて行ったという経緯があるでしょう...私は、実は、それがそれほど悪いことだった

とは思っていません。運用の方を慎重に、礼節をもって対処することで、より情報の豊

かな社会にできたのではないかと思っています。

  一人暮らしのお年寄り所に、“本人の宛名”の広告の手紙が来ることが、そんなに

迷惑なことでしょうか?むしろ、自分も世間とつながっているのを実感し、それに感謝

し、喜んで広告の品物を買うかもしれません。それが、唯一の、社会とのつながりかも

知れないのです。

  また、子供が学校へ上がる時には、“本人の宛名”で、その方面の広告の手紙がく

るかもしれません。初めて、社会から認知された存在になるわけです。しかし、“個人

情報保護法”は、そうした楽しみを全て奪ってしまうものです。そして、一体、何を保護

しているというのでしょうか...

  ともかく、“情報革命”のスタートの時点において、非常に反動的とも言える、チグハ

グな法律が成立してしまいました...その意図は、何だったのか...小泉・政権に

は、“非常に罪深い軽率さ”を感じます...

  それは、“富の寡占化”もそうですし、“派遣労働法”の導入でもそうです。BSE対

策での米国産牛肉の輸入再開問題でもそうです。そもそも、輸入再開の条件を緩め

るべきではなかったのです。また、自衛隊のイラク派遣、そして米安保体制に1歩

も2歩も踏み込んでしまった問題もそうです。すべて、国民との対話を無視して進め

て、強引に押し進めています」

「そうですね」支折が、コクリとうなづいた。

                    wpe44.jpg (7720 バイト)      

“個人情報保護法”は、“情報セキュリティー”の面と“個人情報の慎重な取り扱

い”ということでは、一定の役割を果たしています...ただ、“個別法”であるべきこの

法律が、一般の社会生活全般にまで網をかけてしまったことが問題なのです...

  茜さんの言うように、地図や学校の卒業アルバムのような、漠然とした“情報の開

示”、あるいは“情報の漏洩”に対して、現実に“犯罪リスク”でて来たわけです。社会

情報の発信・開示というものに対して、非常に臆病になりつつあります。情報化社

会の未来が、この法律によって、非常に“萎縮”する方向にあると言えます...」

「はい、」

「法律違反の“犯罪リスク”を負うよりも、“サービス”“義務”を遮断した方がいい。

現在は、そういう社会の空気です...くり返しますが、この法律によって、“社会が萎

縮”してしまっています...これは、決して、いいことではありません!

「はい」

  透明な、明るい、新・民主主義社会の建設...≫ 

                      wpe4F.jpg (12230 バイト)

「あの、編集長...話をもう少し具体的にして行くと、どういうことでしょうか?」

「うーむ...」津田は顔を崩した。「そうですねえ...

  新聞で取り上げられた例ですと...JR宝塚線の脱線事故で、家族による病院へ

の問い合わせに対し、病院側が答えなかったというケースが報道されました...

  家族としては、ともかく生死や、安否情報を、一刻でも早く知りたいわけです。そん

な折りに、“個人情報保護法”もないわけですが、厳密な法律の運用はどうなっている

のかと言うこともあるわけです...まあ、この場合は、過剰反応であり、法律の誤解

あったようです」

「うーん...深刻ですね...

  厳密な法律の運用が分らないから、ともかくリスクを避けて、個人情報は流さないと

いうことかしら?」

「うーむ...

  まあ、病院の外から電話がかかってきて...誰か確認もできないままに...べら

べらと患者の個人情報を流す病院もないわけです...通常の場合は、」

「うーん...そうですよね、」

「しかし、非常の場合は...今回の脱線事故のような場合は、安否情報は流していい

わけです。マスコミでも、安否情報は、流すわけですし...

  人の生命財産の保護に必要な場合は、本人の同意がなくても、情報提供ができ

るわけです。医療の現場では、よくあることだと思いますがね。まあ、その医療現場の

詳しい状況というのは、私は知らないわけですが、」

「うーん...ともかく、“マニュアル”が必要ということでしょうか?」

「そうですね...そういうことになるでしょうか...

  ともかく、病院のような所は、慎重にならざるを得ない...曖昧な時は、リスクを回避

する...これは、よく分ります。が、しかし、この風景は、全体としてどこかおかしい。こ

れでは、“原則・情報非公開”の流れになってしまう...いわゆる“覆面社会”になっ

てしまうわけです」

「うーん...」

「この、まさに、“情報革命”時代に...“情報の闇”が広がってしまう...“情報の

闇”が広がって得をするのは、犯罪者でしょう...あるいは、支配者支配的階級

しょう...決して、民衆の得にはならないと思います。また、透明な明るい社会にもな

りません。

  ごく普通に暮らしている大多数の一般市民に、秘密にしなければならない、どれほ

どの情報があるというのでしょうか...せいぜい、“ID番号”“パスワード”そして

いわゆる、“プライバシー”ぐらいではないでしょうか。

  それらは、“業界の個別法”や、“礼節”、あるいは“慣習法”で、十分管理できるも

のです。いずれにしても社会は、文化・文明のエキスである“礼節”“慣習法”

理していかなければ、なかなかうまく運用できないと思います。

  これは、法治社会の人間的な側面とも言えるものですが...これがなければ、角

の取れた、豊かな社会というのは実現しません」

「はい...“金融”が社会の血液循環だとすれば、“情報”は、神経回路ですよね。そ

こに情報が流れないというようなことで、はたしていいのでしょうか、」

「そうですね...

  極端な話、“情報の欠落した社会”というのは、“闇社会”でしょう...そもそも、ホ

モサピエンスが文明を建設した“言語的亜空間”は、“情報空間”なのです。“情報”

不可分に融合した世界です...

  高杉・塾長の話だと、そこで“ストーリイ”が生まれ、流れ出しています。“認識/認

知”が発現し、時間軸が形成され、“ストーリイ”が発現しているのだそうです。その“相

互主体”による人間的なストーリイには、独特のパターンがあり、重要な節があり、

が波動しているといいます。

  それらは全て、“情報の海/情報の連鎖”なのだそうです...私には、よく分りま

せんが、そこが文明の第3ステージの、より本質に近い部分だそうです。まず最初に

そこにあったのは、“意識/主体”だろう、と塾長は言っていました...」

「はい...」

“リアリティー”とは、切れ目のない全体なのだそうです...それは、“全く過不足の

ない”“全体がひとつのもの”だそうです...すでに名詞によって分断された“言語

的亜空間”とは微妙に異なります...

  しかし、まあ...眼前する、“まさにこの世界”が、リアリティーなのです。なるほど

360度見回しても、空間に切れ目などはないですねえ...

  “言語”というものは、リアリティーを名詞によって無限に分割し、様々に形容(形容詞)

し、動詞によって動かします...そして、それそのものが“情報”であり、“認識”であ

り、“意識”と重なるものです...まさに、これからは、この“文明の第3ステージ/情

報革命”へ突入して行くわけですからねえ...」

「うーん...つまり、文化・文明は...半分は“情報”だと言うわけですね、」

「うーむ...少し違いますねえ...

  物質世界もまた、強烈な情報なのでしょう...全ては、情報として脳に入り、認識

され...物質は、物質として、意識の中で存在している...つまり、この世というの

は、そもそも“意識の中にある壮大な夢”とも言えるわけです...」

「うーん...はい...

  何時だったか、高杉さんが、“人生とは、夢の中を歩むものだ”と言っていましたよ

ね...そういうことなんでしょうか?」

「うーむ...

  ま、そうなんでしょう...高杉・塾長の言うことですから、そうなんでしょう...しか

し、そういうことは、聞いて理解することではなく、自分自身が“悟る”ものです。このぐ

らいは、私にも分ります」

「うーん、」支折が、静かにうなづいた。「はい...」

『般若心経』に、“色即是空(しき・そく・ぜ・くう)...空即是色(くう・そく・ぜ・しき)という言葉

があります」

「あ、はい...」

“色(しき)とは、現象界の物質的存在...そこには固定的実体がなく、“空(くう)であ

るという意味です...“空”とは、諸々の事物は“縁起(えんぎ/因縁生起・因果)によって成

り立っており、永遠不変の固定的実体が無いということです...その逆も、またしか

りと言うことですね...」

大乗仏教の、根本真理ですね?」

「そうです...

  “情報”というのは、もともとが“空”です...そして、“空即是色”だということです。

この世界というのは、いわば“空”瀰漫(びまん/一面にみなぎること)しているということでし

ょう...大乗仏教の、根本真理とは、そういうことなのでしょう...

  しかし、宗教というのは、言葉の上で理解してもしょうがない。それを体験的に学

ことが“修行”であり、“悟り”であり...真理の体験的伝承の系譜が、仏教の流れ

なのだと言います...したがって、仏教には、唯一絶対“聖書”“コーラン”の様な

聖典はありません。

  だから、高杉・塾長は...“それゆえに、仏教は、成長し進化する宗教”だといいま

す。また、“智慧の道”だとも言います。そして、もう1つ、面白いことを言っています。科

学とは、リアリティーを“心の領域”“物の領域”に分割したデカルトに端を発していま

す。つまり、西洋文明に端を発しています。

  むろん、デカルトは敬虔なキリスト教徒であり、神の存在を信じていたし、“心の領

域”の優位性を主張していました。しかし、何故か“物の領域”の方のみが、科学とし

て大いに発展しました...しかし、塾長は、現代物理学仏教的世界観東洋思想

と重なるものが、非常に多いと言っています...」

「うーん...難しいですね、」

「私もこの方面のことは、あまり詳しくはありません。ま、高杉・塾長の領分です...

  しかし、ともかく...私たちとしては...透明な、“原則・情報公開の社会”を目指

しています。それが、“新・民主主義”の基本理念です。ところが、今は、それとは逆の

流れになっています。それが大問題なのです」

    index.1019.1.jpg (2310 バイト)   wpe44.jpg (7720 バイト)      

「ええ...編集長、他に、具体的には、どんな問題があるのでしょうか?」

「そうですねえ...

  茜さんが先ほど触れたように、街の地図...こうしたものも、何故か規制を受けて

います...郵便や新聞、宅配物は、そうした地図をもとに配達されるわけです。こうし

たものにまで、安易に規制がかかってきています...

  それから、教育現場などで、名簿が作成できなくなったり、卒業アルバムが作れなく

なったりしています。こうしたものは、今までどうり“原則・情報公開”がいいでしょう。こ

れで、いったい、誰がどれだけの実害があったというのでしょうか...

  それよりもより発達した“透明な立体情報社会”の中で、犯罪災害に対処するこ

との方が、よほど重要でしょう。そこにこそ、“明るく豊かな共生社会”を演出していけ

るのではないでしょうか。“インターネットは悪”だと主張する人がいますが、インター

ネットそのものは“悪ではない”のです。それと同じことでしょう」

「はい!」

「むろん、インターネットの世界でも、実社会と表裏一体の、“原則・情報公開”を私た

ちは主張しています。インターネットは、“覆面社会”のゆえに、犯罪が多発している

のです。原則・透明な、責任の所在が明確な社会にしなければ、まさに犯罪とインチ

キの巣窟になり、歪んだ形で発達してしまいます...

  その意味においても、“個人情報保護法”の暴走は、“覆面社会”を作り出し、国民を

孤立させ、その中で犯罪とインチキ助長してしまうのではないでしょうか...これは、

本来の主旨である、金融情報通信“業界の個別法”に変えるべきです。この法

律を作った立法府は、責任を持って、キッチリと修正すべきです!」

「はい!」支折が、うなづいた。「個人情報をガードしすぎては、コミニュケーションは生

まれてきませんよね。病気だって、隠したい人は、隠せばいいんじゃないかしら。そう

やって、静かに病気と対峙したい人もいるわけです...

  それから、逆に、積極的に病気の体験を公開しつつ、ネットワークを作り、みんなで

乗り越えて行こうというのもいいのではないでしょうか。それに、人間の欲望として、

“みんなに知って欲しい”ということがあります。隠すというよりも、“知って欲しい”とい

うのが、人間の願望であることも、分って欲しいですよね」

「そうですねえ...

  しかし今は、本末転倒のような事態が起こっています。法律/立法によって、社会

“萎縮”しています。いったい、立法府は、何をやっているのでしょうかねえ...」

「うーん...ともかく、国民から乖離していますよね」

「...“個人情報保護法”では...社会が“萎縮”している反面、幅広い全ての利用

目的に同意しないと契約できない定期預金や、様々なネット上の契約など、逆方面の

圧力もかかって来ていると聞きます...

  ともかく、この法律は、大いに再考する必要があります...」

「はい!」

≪閉塞社会の破局点 (カタストロフィー・ポイント)・・・≫  

       wpeA.jpg (42909 バイト)  index.1019.1.jpg (2310 バイト)   wpe4F.jpg (12230 バイト)  

 

「編集長...

  つい先日、滋賀県長浜市で、幼稚園児二人が刺殺される事件がありました。それ

も、グループ送迎の母親の1人が、刺殺したというものです。最も安心な母親まで、信

頼できない社会になるのでしょうか?」

「これは、まさに深刻な問題です...

  日本全体の文化の衰退...精神性の喪失...しいては、モラルハザード社会が

生み出した悲劇という側面もあると思います...犯行の実態は、まだ解明されてい

ないわけですから、軽々には言えませんが、単なる加害者の異常行動で決着をつけ

るべきではありません。社会が病んでいるのです...

  壮大なモラルハザード社会は、地域社会の“礼節”“慣習法”をも奪い、包容力

優しさも、喪失しているのではないでしょうか...それは、個人の力では埋めきれな

い部分、時代の流れがあるのかも知れません...信用で成り立つ社会性破局点

(カタストロフィー・ポイント)が近づいているのでしょう。このままでは、全ての信用破壊が起こ

り、大混乱が予想されます」

「はい」

「...政治は、“モラルハザード社会からの脱却の筋道”を、依然として示していませ

ん。政治は国民から乖離し、久しくなります。2005年は、結局、“小泉・郵政選挙”

騙されたのでしょう。その証拠に、“改革”は掛け声だけで、生活は一向に改善されて

きません。ますます、苦しくなるばかりです。

  そして、2006年に入ってからも、マンション・ホテルの耐震偽装事...件ライブド

ア・ショック...闇の深まる官制談合と天下り問題...社会の骨格が、さらなる壮大

な虫食い状態になっている実態が明らかになっています...

  そうした中で、社会の川下の方の犯罪凶悪化し、拡大し、日常化しています。こ

れが、国家全体/社会全体に、大きな物理的不安も押し広げています」

「まさに、その通りですわ!」茜が、テーブルに両肘を立てた。「現在の社会状況・社会

形態が、安全性においても、信頼性においても、明確な限界を示しています...時代

が急速に流れています。今こそ、社会の根本的なデザインを変える必要があります。

  経済至上主義/社会の上層部に源流を持つモラルハザード...これを、超えてい

かなければならないのは、当然ですが...まず、価値観の転換が必要です...」

「うーん...政治は、頼りにならないわよねえ」支折が言った。

「そうですね...」茜が、うなづいた。「ええ...くり返しますが、私たちは社会の将来

型モデルとして、“新・民主主義社会”を提唱しています。それは【情報公開】【国民

参加型・評価システム】【正しい公平な富の再配分】を、3つの基本理念としていま

す」

「ある程度の、公的な“個人情報の開示”なしには...」津田が、言った。「“全ての人

が不審人になってしまいます...こうした状況下では、助け合いの精神も、明るい

街づくりも、その基本部分がベールで隠されてしまいます...

  “覆面社会”では、明るい社会は実現できません。はっきりと言いますが、この流れ

は間違っています。政治は、責任を持って、修正すべきです!」

「はい、」支折が言った。「裏では、かえって“闇情報”が繁盛しているのではないでしょ

うか」

「そうだと、聞いています...」茜が、唇を引き結んだ。

 

  〔2〕  “礼節”“慣習法”による社会管理

      wpe4F.jpg (12230 バイト)  index.1019.1.jpg (2310 バイト)     

  ≪ボス(岡田)からのコメント≫         

  津田・編集長が、携帯電話を片手に持ち、腕時計を見ていた。しばらく待つと、手の

中で携帯電話が鳴った。

「おはようございます、ボス!」津田が言った。

「うむ、元気かね?」

「はい!ボスもお元気でしょうか?」

「ああ。さて...日本も、いよいよ深刻な状況になってきたな、」

「はい。日本の社会混乱が、改善の方向へ向かうのか、さらに悪化して行くのか、今が

正念場かも知れません。その意味では、時間との戦いになっています」

「新たな要素が...必要と言うことか?」

「はい...“モラルハザード社会”の重力圏から離脱し、この国に新しい社会秩序

創出するには、最後の一撃が必要です...それが、見当たりません」

「うーむ...何にしても、民衆が立ち上がることだ」

「はい」

「ボス、」支折が言った。「インフォメーション・スクリーンに切換えます」

「ああ...」

  津田は、壁面の大型液晶スクリーンの方を眺めた。スクリーンが回復し、ワークステ

ーションの椅子を回転させているボスの姿が映った。ボスは、無精ヒゲが少し伸びて

いて、椅子の上で脚を組み上げた...脇に、作動しているパソコンがあり、ビールの

ジョッキと、枝豆の皿が見える。

「お楽しみの所を、すみません、ボス」茜が言った。

 

                    wpe73.jpg (32240 バイト)       

「なに、かまわんよ、」カメラ正面に向かって、ボスが微笑した。「さて...ポイントは、

民衆が立ち上がることだ...

  “サイレント・マジョリティー(声なき多数)が、自ら立ち上がらなければ、“真の民主主

義/革命”は遂行できない。しかし、今、情報テクノロジーが爆発的に進化し、直接・民

主主義の比重を高める、技術的な要件は整いつつある...

  いいかね...これまで、世界で様々な民主主義の革命が失敗に帰してきた。それ

は、如何に民衆が立ち上がり、革命が成就しても、その後の統治に失敗してきたから

だ。その革新的な民意を受け入れる“器”が、不完全だったからだ。民意を作動させる

“情報テクノロジー”が、未成熟だったからだ...」

「つまり...“人間性/個人の資質”に頼ってきたわけですね、」津田が言った。「だ

から、基盤が弱かった」

「そうだ...」ボスが、壁面スクリーンの中で言った。「そういうことだ...

  結局、民意はゆがめられたし...英雄的な指導部も、やがて腐敗が進み、世代交

が起こり、再び民衆による怨嗟の対象になってしまった。しかし、直接・民主制の比

重を高め、その“民意”を吸上げ実行する、情報技術の爆発的進化が起これば、どう

...ひょっとすれば、“新・民主主義”は、うまく行くかもしれない...」

「はい!」

“民衆が覚醒”している限り...」ボスは、頭を傾げていった。「民主主義は、後戻りす

ることは無いだろう...“民衆が覚醒”だ...それが、カギになる...」

「はい、そのことは、かねて私たちも提言しています。その意味では、日本の社会は、

日本の国民は、“覚醒”しつつあると思います...それは、確かです...」

「うむ、」

「しかし、ボス...

  立法府/国会行政府/官僚組織マスメディア、そしてモラルハザードに陥ってい

企業社会を見ていくと...果たして改善の方向に向かっているのかと、暗澹たる

気持ちになってしまいます...

  “政治家の世襲”や、“官僚支配・官制談合・天下り”は、一向に、改まる気配があり

ません。マスメディアの方も、“NHKの解体・再編成”“民放の再編成/多チャンネル

化”の話は、ようやく緒についた観はありますが、それはハード面だけの話です。

  肝心の、ソフト面/日本文化の再編成は、話題にも上っていないのが現実です」

「日本の社会に...」茜が言った。「再び秩序信頼性を取り戻すには、何が必要でし

ょうか?」

「うーむ...」ボスは、顔を落とし、ビールのジョッキに手をかけた。が、また手を離し、

しばらく考えていた。「ともかく...混乱した日本社会を建て直すには、“礼節”と、

“慣習法”による社会管理...これだろう...

  いいかね、諸君...日本は“法治家”だが、実際に社会を動かし、波動させてい

るのは、法律ではない...文化の方なのだ。ここを、しっかりと認識しておく必要が

ある」

「それは、重要な視点ですわ」茜が言った。「確かに、国家を動かしているのは、文化

の方ですわ。法律は、陰で支えているものですね、」

「うむ、」津田が、腕組みをした。「法律だけでは、面白味の無い社会だからねえ」

「日々の生活を動かしているのは...」ボスが言った。「“礼節”であり、“慣習法”だ。

こうした“慣習法”は、法律というより文化なのだ...冷徹な法律の規定以前のより

人間的な、“感情”“情操”による(しば)であり...儀式・形式であり...共通意

であると言うことができる...」

「分りますわ!」茜が、言った。

「こうした“慣習法”というのは、人類が文明を形成してきて以来、その中心に流れて

いる、“社会構成のエキス”だ...“文明のエキス”であり、“文化のエキス”であると

言っていいだろう...

  “慣習法”を抜き取ってしまったら、社会は何の意味も持たない、砂のような集合体

になってしまう。“慣習法”とは、社会にとって、それほど大事な“宝”であり、“真髄”

あり、“エキス”だと言うことだ...」

「はい、」

「一般の国民は、法律の専門家ではない。いちいち法律に照らし合わせて、社会生

活をしているわけではない。人類社会が営々と積み重ねてきた、“慣習法”の中で生

きているのだ」

「はい、」

「社会から...」津田が言った。「“勤勉”、“努力”、“勇気”、“優しさ”、“社会貢献”

どという“慣習法”が抜け落ちてしまったら...いつたい、どういうことになるのでしょ

うか、」

「国家や社会から、実際に“慣習法/エキス”を抜いてしまったら、まさに骨格が潰れ、

一気に求心力を失ってしまう...集団は、砂以下の、バラバラな状態になってしまう

だろう。

  “慣習法”を喪失した日本社会が、建国以来・未曾有の大混乱だと言うのは、まさ

に正鵠(せいこく:的の中央)を射た言葉だ」

「あの、」支折が言った。「誰がいったい、この社会から、“エキス”を抜き取ってしまった

のでしょうか?」

「ウーム...」ボスは、壁面スクリーンの中で、組み上げた脚を引き寄せた。「まあ、

民党・長期政権...が、諸悪の根源にあったのは、間違いない。それを許してきたの

は、国民自身だという側面もある...しかし、それは、詭弁(きべん/こじつけの議論)だろう」

「詭弁と言うと、」津田が言った。

「何故なら...大多数の国民は、全くこんな政治状況は望まず、政治が国民から乖

しているからだ。むろん、“サイレント・マジョリティー(声なき多数)が動き、この状況を

覆すことは可能だ。しかし、だからと言って、この政治状況を、全て国民のせいにされ

てはかなわない...

  第一に、“世襲政治”も、“官僚支配”も、“官制談合・天下り”も、そして“富の寡占

化”も...大多数の国民は、望んではいないものだからだ...

  さて...津田・編集長...」

「はい、」津田が、姿勢を正した。

         wpe73.jpg (32240 バイト)            

“法治国家”という建前なら...まず、その“法治”“正しいレール”の上に、脱線し

た社会をしっかりと戻すことが第1だ。ウヤムヤはいけない。この状況を可能な限り、

法的に清算し、その上で次のステップに進むことだ。そうでなければ、“法律”は、国民

の信頼を得られない」

「はい」

「ところで、何故、モラルハザードが起こっているかだ...

  その原因を取り除く必要があるな。一向に改善しないのは、その病根が取り除か

れていないからではないのかね」

「はい、ボス...」津田が言った。「その通りです。それは、私たちも何度も分析してい

るのですが...病根が大き過ぎるのです」

「うむ...それは、どういうものだね、」

「はい...政治マスメディア、そして、官僚の天下りの構造的な病根です」

「うむ、」

「有力政治家の、“政治とは、清濁を合わせ呑むもの”とか、“政治とは、刑務所の塀

の上を歩いているようなもの”という発言があり、政治が灰色を容認した時代...ま

た、マスコミが、“刑務所がえりの作家”をもてはやし、犯罪を積極的にメディアで容認

した時代がありました。

  社会の体制の側が、あえて“慣習法を破壊”してきた時代が、確かにあったわけで

す。その病巣が、今日のモラルハザード社会を招いたものと、私たちは見ています。

は、消えることが無く、ガン細胞のように、脈々と増殖していたものと思われます」

「うーむ...

  しかし、何故、社会体制の側にあるものが、あえて“慣習法”“据物切り”にするよ

うなことをしたのかね?」

「関係者は、まだ健在です。聞いてみたらいかがでしょうか?」

「うーむ...で、君達は、それを分析してみたのかね?」

「何度も分析しました。興味ある課題でしたから、」

「それは、どういうものかね?」

「はい...当時は、経済の勢いが、“戦後=日本の絶頂期”にありました。世界の経

済大国世界の技術大国を打ち立てた、日本の絶頂期です」

「うむ、」

政治行政マスメディアにも、その“驕(おご)り”があったのではないでしょうか。そ

れが、あのような、有力政治家の発言になったのだと思います。あえて、“濁”“悪”

を堂々と容認し、反論できない所に、“自分の力を誇示”したのだと推測します...

  こうしたことは、地方議員経済界の有力者などにも、しばしば見られることです。

白を黒と言い、あえて“悪”をやり、それに反論できない周囲に、自分の力を誇示する

のが目的のようです。しかし、それも愛嬌のレベルを超えると、非常に問題です。深刻

な実害が出てきます。

  また、有力政治家が、テレビでそれをやった場合は、影響は計り知れません...

家や社会の道徳規範がきしみ大きな歪(ゆが)を生じさせます。それが、さらに、

メディアの積極的な犯罪の容認や、官僚の不正行為共鳴すると、巨大なモラルハ

ザード社会の原因になるというわけです...」

「ウーム...」ボスがうなった。

「そうした人たちは、」茜が言った。「もちろん“一流”ではありませんわ。塀の内側へ落

ちるような、“二流”の人たちですわ。“一流”の人は、塀の内側へ落ちるような真似はし

ません...でも、そんな人たちが、今、この国の政治をやっています...」

「道を踏み外しています」津田が、言った。

「そうですわ...」茜が、津田にうなづいた。「本当に重大なことが見えない様では、

真の政治家真の官僚真のマスコミ人とは言えません。人間としても、“二流”“三

流”で、ひょっとしたら犯罪者です...」

「いや、」津田が、掌を立てた。「政治家が、悪事をやっているのは、国民の全てがよく

知っています。犯罪発生率の高さも、それを裏付けています。氷山の一角と国民が見

ているのは、おそらく当っているでしょう...しかし、有力政治家が、“マスメディアで

悪を広言”するということは、別の意味を持ちます。

  また、マスメディアが、“悪を積極的に容認”したのも同様です。“刑務所がえりの作

家”が問題なのではありません。様々な人生を歩む人がいますから。しかし、そうした

作家を、マスメディアが積極的に登場させ、犯罪者が収容される刑務所の中を茶化

したことが、大問題なのです。

  権威ある、マスメディアによる犯罪の軽視は、モラルハザード社会の下地を作って

きたと言うことです...ついに、この小説は、映画化までされたわけです...何故、

マスメディアは、それほどまでに、“悪を積極的に容認”したのでしょうか...

  それが、どういう結果を招くかは、分っていたはずです。もちろん、そうしたメディア

の中には、公共放送・NHKも含まれていました...何故、あえて、刑務所がえりの作

であり、犯罪軽視の謳歌だったのでしょうか...

  モラルハザード社会招来のカギは、まさにそこにあったのではないでしょうか...

そうしたマスメディアの姿勢が、政治家の姿勢が、今日の日本文化の衰退を招き、

“慣習法”を破壊して来たのは、間違いありません...」

「ウーム...」ボスが、スクリーンの中でうなづいた。「そんな時代が、確かにあったな

あ...」

「それと、もう1つ...今になってみれば、公共放送・NHKが、設立当初の“本来の任

務”を、全く果たしていなかったということです。あると思っていた、民主主義の安全装

が、全く機能していなかったと言うことです」

「それが、“モラルハザード社会”を招来したともいえるわけか」

「はい...

  “国民の浄財”が、本来の目的とは違うことに使われていたわけです。国民が気が

ついてみたら、“浄財”によって運営されている、巨大な官僚組織がそこにありました。

これは、解体し、国民の手で再編成すべきです」

「ウム...“浄財で運営”する組織さえ、別のものになっていたわけだな」

「はい...

  この、20〜30年前に、面白おかしく始めた“反・慣習法の種”が、“モラルハザード

社会の源流”だと、私たちは推測しています...そのあたりから、徐々に、“慣習法の

食”が始まり、社会全体がモラルハザードに汚染されたと、私たちは見ています。

  これは、テレビ放映がマスメディアとして、絶大な影響力を持ってきた時代でもあり

ます。そのマスメディアとしての驕り”が、日本の文化をダメにしてしまったのではな

いでしょうか。

  マスメディアが、文化の媒体ではなく、“文化そのもの”になった時、本の文化の

空洞化が始まったようです...本物の文化が陰に隠れ、マスメディアの決めたもの

が、“文化そのもの”になってしまった経緯があります...」

「なるほど、」ボスが、大型スクリーンの中で肩を揺らした。「そうした“慣習法の侵食”

が、社会を弱体化させて来たわけか、」

「はい...これは国民自身の手で、早急に是正しなくてはなりません」

「ウム...ともかく...もう一度くり返すが、」

「はい」

“法治国家”といっても、社会がいわゆる“法律”で動いている部分は、その骨格に過

ぎない。その他の、五臓六腑や、筋肉部分は、“慣習法”で動いている。つまり、文化

で動いているわけだ。その、文化が衰退してしまったわけだ...

  “慣習法”は、文明社会が、長い歴史の中で培ってきた“エキス(本質・物事の精髄)であ

り、文化なのだ。それが、人間の社会活動の本質なのだろう...決して、法律経済

が、社会活動の本質ではない...“法”は社会の交通整理をするものであり、“富”

正しく、公平に再配分されるべきものだ...」

「分ります、」

「まあ...」と、ボスは言い、しばらく間を置いた。「私のように、孤独を愛し...たった

1人でブラリと生きて来た人間が、“礼節”を説くのもおかしな話だがね...およそ、

そういうものとは、無縁のポジションにいたからねえ...

  しかし、1人の思想家として考えるに、社会秩序回復のカギは...まず、“主権者

/サイレントマジョリティー(声なき多数)による“シビリアンコントロールの確立”だろ

う。これは、社会文化資本主義市場、全てにおいて確立する必要がある...そし

て、次に、礼節”と、“慣習法”による社会管理 ...

  おそらく、この2つがカギになる。私が言いたいのは、これだけだ...」

「はい、ボス」茜がうなづいた。

「うむ...後は頼むぞ」ボスは、ビールのジョッキ取り上げた。

「はい」津田が答えた。

  支折が、回線を切っり、

「お茶を入れましょう」と言った。

≪痩せ細った法律 ...≫  

         index.1019.1.jpg (2310 バイト)   wpe4F.jpg (12230 バイト) 

 

「さて、...」津田が、ゆっくりと湯飲み茶碗を脇へやった。「立法府である国会は、自

らの“犯罪の種”が尽きることはありません...

  ともかく、遺憾ながら、非常に犯罪発生率の高い集団です。この立法府の状況で、

安心して国家の舵取りを任せられるのでしょうか...まさに、嵐の中で、日本丸が迷

走しています。

  また、行政府法務省は...“法律軽視”“コンプライアンス(法令遵守)の叫ばれ

る深刻な社会状況に匙を投げ、新しい“裁判員制度”の準備の方に御執心です...

さて、私たち国民は、一体どうしたらいいのでしょうか...

  残されたのは...痩せ細った法律...気まぐれに発動される強権...出口

の見えないモラルハザード社会...文化の低俗化と、社会不安の増大...

  これを、何とかしなければならないわけです...」

「うーん...」支折が、首を傾けた。「いったい...“よき時代”“良き昔”はどうだっ

たのかしら?」

「それは、大事なことです」茜が、支折にうなづいた。「かつての、“よき時代”は、どう

だったのか...

  “よき時代”の選び方は、色々ありますが、ともかく戦後・昭和の時代は、社会に

 “礼節”“慣習法”“社会的秩序”が、脈々と生きていました。どのような立場の人

も、“慣習”として、“社会/世間”というものを奉じ、それに対する“遠慮”“敬意”を忘

れなかったものです。それがあった時代は、“よき時代”です。

  ともかく、世界の様々な歴史は、“良き手本”“悪しき手本”の宝庫です...かっ

ての“日本人らしさ”とは、どのように育まれてきたのか。“武士道”は、どのように生ま

れ、その時代の人たちは、どのように生き、どのように死んで行ったのか...」

「はい...」支折が、拳を握り、うなづいた。

「まず、」茜は、津田の方に顔を向けた。「ボスの言うように、“法治国家/法治社会”

取り戻し、“モラルハザドの源流”を断ち切ることですわ...」

「うむ、」津田は、力をこめてうなづいた。

「そのためには、“法の番人”である法務当局毅然とした態度で臨むことが、第1

歩と思います。そして、それには、あえて国民のバックアップが必要だと思います。こ

の国の主権者である、“サイレント・マジョリティー”が、その“社会正義”をしっかりと支

持し、その舵取りを見守って行く必要があります...

  また、匙を投げられては、困りますから...」

「そうだな、」津田が、口元を崩した。

「次に...

  現在の“経済原理”に代わる、“新しい価値観”を創出することです。この“新しい価

値観”というのは、まさに“時代のキーワード”になります。人類文明が“第3ステージ

/情報革命のステージ”へ移行しつつあると同時に、“文明の折返し点”に突入して

いるからです。とても、“経済原理”などで、乗り切れる時代ではありません。

  文明史的な、折返し点の奔流の中で、人類として“新しい価値観”を創出・展開して

いく必要があります。“物の時代”から“心の時代”へと言うのも、“第3のステージ”

ふさわしい、1つの指針です。

  それから、かって社会はどのように“秩序”を保ってきたか、その基本を再確認する

ことも大事です...」

「ウーム...」津田が、うなった。「それは“宗教”であり...“礼節”であり...“慣習

法”...だったのでしょう...その価値観の中で、人は生き、人は死に、人は歴史を

刻んできたわけです」

  支折が、黙ってうなづいた。

「高杉・塾長が、言っていました...」津田が、言った。「新時代は、“宗教”が1つの重

要な意味を持ってくると...興味深い指摘です...しかし、それがどのように展開す

るかは、塾長にも、予測不能だとも言いいます...」

「うーん...」茜が、コブシを唇に押し当てた。「宗教が、どのように、新たな展開を見

せるのかしら...興味深いですわ、」

「さて...ともかく、“法律”が前面に出てくる社会といのは、確かにあまり良質な社

とは言えないでしょう。ボスの言う通り、“礼節”“慣習法”で、文化的に社会管

理をするのがいいと思います...」

「ええ、では...」支折が、ノートパソコンに目を落した。「その“礼節”“慣習法”の方

に、話を移しましょうか、」

「はい」茜がうなづいた。

≪“礼節”...“慣習法”とは...≫    

     house5.114.2.jpg (1340 バイト)    wpeC.jpg (58842 バイト)house1.s3.jpg (1834 バイト)    wpe4F.jpg (12230 バイト) 

 

「では...」支折が言った。「ええと、茜さん...ボスは、“礼節”“慣習法”による

会管理を提言してきました。あらためて、この提言について、コメントをお願いします」

「まず、正しい指摘だと思います...

  さすがは、ボスですね...“慣習法”による社会管理が、何故、良いかと言うと、そ

れはつまり“文化”だからです。“情操”による、社会秩序の復元だからです」

“情操”というのは、どういう意味なのでしょうか?」

「そうですね...広辞苑(こうじえん/辞書の名前)で調べてあります...

  “情操”とは、もろもろの感情のうち、道徳的・芸術的・宗教的など、文化的・社会的

価値をそなえた、複雑で高次なもの...そうした、“高次な感情”と言うことです。こ

れこそまさに、何にも代えがたい、“文明のエキス”なのでしょう。もっとも私は、こうした

ことを深く研究したことはありません...」

「うーん...」支折は、髪を耳の後ろにかき上げた。

「つまり、ボスは...法律で社会管理するのではなく、“慣習法”という文化で、社会管

理をすべきだと言っているのです。事実、社会がダイナミックに波動しているのは、

によるわけです。

  法律という統治技術は、バックボーンとして、陰で社会を支えていればいいので

す。ともかく、社会には“法律以前の法律”があり、それが、“慣習法”であり、“社会原

理のエキス”である...ということですね」

「うーん、そうですか...

  ええと、茜さん...まず、その、“礼節”“慣習法”について...あらためて、分り

やすく、説明していただけないでしょうか」

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「ええと、そうですね...“礼節”“慣習法”の定義ですが...

  “礼節”とは礼儀節度のことです。あるいは、礼儀のきまりのことを言います。朝会

えば、挨拶(あいさつ)をする。目上の人は敬(うやま)う。こんなことは、法律では決まってい

ませんが、礼儀として大切なことです。今の日本の社会には、こうしたことが欠落して

来ています。

  そもそも、民主主義社会の模範となるべき国会議員の討論が...相手の意見は

聞かない...話の腰は折る...大声で一言でも多く言い放った方が勝ち...、とい

う様相になって来ています...

  議員の討論には、およそ“礼節”というものが感じられません...でも、さすがに、

“モラルハザードの元凶”としては、貫禄さえ感じます...」

「うーん...一般の社会では、真似をして欲しくないですよね。民主主義社会の、

面教師にはなりますけど、」

「そうですね...

  ええ、続いて、節度ですが...節度とは、度を越さない、適当なほどあいを言いま

す。人と接する場合、こうした節度も大事なことです。

  こうした“礼節”は、長い歴史の中で育まれて来たものです。歴史的・社会的に形成

されてきた、文化的エキス”とも言えるものです。どこの文化圏でもそうだと思います

が、こうした“礼節”をわきまえて、はじめて一人前の社会人として認められます」

「そうですね」

つぎに、“慣習法”ですが...これは先ほども言ったように、“法律以前の法律”

す。また、“法律以前の社会規範”ということも出来ます。例えば、“勤勉”“努力”

“勇気”“優しさ”社会貢献...こうしたことを、しっかりと社会全体で評価してい

くシステム”...これが“慣習法”です。

  こうした【国民参加型・評価システム】は、“新・民主主義”の3つの基本理念の1

つに取り上げていますが、かっては“慣習法”として確立されていたものです。国が与

える勲章をはじめ、様々な社会的な賞専門分野の賞、企業・団体や集団の中での

評価基準も、ほとんどは“慣習法”を満たすものでした。

  こうした“公正な評価システム”は、“社会の大道”を明示し、“社会の骨格”を創り

“夢”を育み、“希望”を満たします...ハードウエアーは物理的インフラですが、“慣

法”はソフト面での、“精神的な社会インフラ”を形成するものではないでしょうか」

「先ほどの“礼節”も...“慣習法”の範疇に入るものですよね」支折が、確かめた。

「そうです...

  あえて分けたのは、分りやすく説明するためです...あ、それから、文化文明

違いですが...文化は主に精神的なもの、文明は技術的・物質的なニュアンスも含

みます。でも、文化と文明は、明確に区別されるものではありません...」

「はい...」

「ええ...

  くり返しますが、“法律”が、前面に出てくる社会というのは、良質な社会とは言えな

いということですね。その前に、文化的“法律以前の法律/慣習法”による枠組み

があると言うことですね。それで、実質的に、社会が波動していると言うことです...

  マスメディアの“堕落”...役人の“ムダ使い・官制談合・天下り”...政治家の

“世襲・犯罪発生率の高さ”...こうした諸々は、“慣習法”がこれを認めないと言う事

です。法律以前の問題のです...そこに、国民としては、非常に違和感を抱くわけ

です...」

「うーん」支折が、考えながら、うなづいた。「そうですよね」

「ともかく...」津田が、言った。「ボスが言ったように、社会秩序回復のカギは...

  まず、“主権者/サイレントマジョリティー”による“シビリアンコントロールの確

立”、そして、礼節”と、“慣習法”による社会管理 ...この2つがカギになります。

  そのいずれも、私たちの掌中にあります。まさに、私たち自身の自覚にあります。そ

の私たちの自覚と行動が...透明な豊かな未来社会...“新・民主主義社会”を切

り開いて行く原動力なのです...」

「はい!」支折が言った。

                                              

 〔3〕 情報革命のステージと、情報の本質 

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≪個と、超個の領域≫