Menu/My Assistant Desk/マチコ・in・永田町/(真剣勝負)/ミッション永田町・考=第2部 |
![]() ![]() ![]() ![]() ヒッグス粒子 ・・・ &(アンド) アインシュタイン方程式 ・・・ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
トップページ/Hot Spot/NewPageWav/Menu/最新のアップロード 担当 : 折原 マチコ |
No.1 | 〔1〕 永田町/漫才定数・説とは・・・ | 2012. 9. 3 |
No.2 | 〔2〕 【相対性理論】 と 【量子論】 は・・・ | 2012. 9. 3 |
No.3 | <ヒッグス粒子・・・に王手・・・?> | 2012. 9. 3 |
No.4 | < ヒッグス粒子の崩壊パターン ・・・ 予測 > | 2012. 9. 3 |
No.5 | <宇宙定数・・・宇宙項の係数とは・・・?> | 2012. 9. 3 |
No.6 | <アインシュタイン方程式> | 2012. 9. 3 |
No.7 | 推敲完了 | 2012. 9. 8 |
〔3〕
真理空間における 意味ある偶然の一致・・・共時性/シンクロニシティの衝撃! |
準備中 |
![]() <第1部>・・・より続く・・・ ![]() |
<参考文献> 日経サイエンス /2012 - 09 特集/ヒッグス粒子 |
〔1〕
永田町/漫才定数・説とは・・・
ですね...」 「はい!」マチコが、うなづいた。「私の両手に余るものでした!よろしくお願いします!」 「はは...」関三郎が、陽気に顔を和ませた。「...うーむ...これは... アインシュタインが...【一般・相対性理論】(/重力理論)/“重力場方程式”= アインシュタイン 方程式 に導入した...“宇宙項・・・の係数・・・宇宙定数”を持ち出して来た...いうことですか、」 「...」マチコが、黙ってうなづいた。 「この“宇宙定数”に相当するエネルギーは... おそらく、人類文明が知る...そして物理学の計算式に入れられた...最大エネルギーでしょう。 これは...“物理的・宇宙空間の・・・空間自体が持つ・・・莫大な真空エネルギー”...を指して います。つまり、“全宇宙空間のエネルギー/宇宙空間の・・・比例定数となるエネルギー”...と考 えられています。 まあ...現在、そのように推定されているわけですが、その実態は、必ずしも分かっているわけで はありません。と言うより...推定だけで...全く分からない、と言っていいのかも知れません...」 「あ...」マチコが、頭に手をやった。「ええと、三郎さん... まず、確かめたいんだけど、“何も存在しない空間・・・完全な真空”でも...ものすごいエネルギー を持っている、ということなのかしら?」 「そういうことです...」関三郎が、コクリとうなづいた。「ただし... これは、“負のエネルギー”と考えられています。電気的に、負の電荷というのではありません。エネ ルギーそのものが、マイナスと考えられるのですが、実態はよくは分かっていないようです。現代科学 では、いまだに捕捉されていないエネルギーです」 「でも...理論的には予測されているんだあ...」 「そうですね... “ディラックの海”(/真空での、負エネルギーの電子の海・・・ディラックの海の空孔は、正エネルギーを持ち、反粒子に対応する) という言葉ありますが...これは、ディラック(Paul Dirac /1902年 ~ 1984年/イギリスの理論物理学者/量子力学及 び量子電磁気学の基礎づけについて多く貢献。1933年に、波動力学のシュレーディンガーと共にノーベル物理学賞を受賞)が、仮定し た概念です。 まあ、後に、概念の拡張、解釈の見直しも行われているようですが...いずれにしても、確認はこ れからのようです」 「はい...」 “真空”というものは...“観測のできない・・・負エネルギーを持った・・・電子で満たされてい る”...とする概念のようです。つまり、宇宙空間という無限の空間が、“膨大な負エネルギー・・・ でギッシリと満たされる”...と考えればいいようです。それが、宇宙定数”のエネルギーです... まあ...このあたりのことは、まだよく分かっていないというのが実態ですね。これから、本格的な 研究が始まって行くようです」 「うーん...でも...そういうことなんだあ...」 「ま...おいおいと説明しますが...」 「はい...」マチコが、両手を組んだ。 「ええと... その“宇宙定数”から類推すると...マチコさんの指摘した“漫才定数”というのは...“永田町 /政治ストーリイ・結晶化の・・・強大な変動要因”...具体的には...“ボケ/ツッコミ・エネル ギーによる・・・人間原理ストーリイの偏向動因・・・?”...その強烈な、干渉エネルギーというこ とになるのでしょうか... しかし、この...“新しい・・・情動科学/情報科学・・・の力学系”の創設には...幾つもの基盤 的・条件整備が必要になります。そう簡単には行かないものがあります。 ま...そのために、< 集されたのでしょうが...」 「うーん...」マチコが、腕組みをして、コクリとうなづいた。「あ...もちろん、そうなんだけどさあ、」 「はは...」 「私は...」マチコが言った。「ただ直感的にそう思ったわけだけど... 分析的に考察すれば、そういうことになるのかしら。うーん...漫才だから、“ボケ/ツッコミ・エネ ルギー”かあ...でも、確かに、不思議な現象よねえ...どうして政治の流れの中に、こうもはっきり と、“ボケ/ツッコミ・・・現象”が現れるのかしら?」 「ほほ...」茜が、口に手をやり、顔を崩した。「本当に、そうですね... 確かに...誤差や偶然として...無視できるレベルではありません。実に、不思議なことですわ。 これには、伝統的日本文化や...上位レベル意識...“霊魂・・・思念エネルギー”...というもの が、不可分に関与しているとも思われます...さあ、それをこれから、見て行きましょう...」 「うーん...」マチコが、大きく肩をかしげた。「あ、そうそう、三郎さん... “ヒッグス粒子”が発見されたようだけど...“ボケ/ツッコミ・エネルギー”もさあ ...“ファイン マン・ダイアグラム”(場の量子論において、摂動展開の各項を図示したもの・・・リチャード・P・ファインマン: ノーベル賞受賞/量子 電磁力学の創始者の1人/提唱されたファインマン・ルールにのっとって計算すると・・・素粒子の振る舞いを記述できる)で表現できる のかしら...?」 「ハッハッハッ!」関三郎が、テーブルを叩いて笑った。「だから...ハッハッハッ...それには... 幾つもの条件のクリアが、必要なんです...ハハ...」 「うーん...」マチコが、ポン助の方を見た。「“分からないエネルギー”よねえ... ええと...“情動科学/情報科学のエネルギー・・・?意識エネルギー・・・?・・・”かあ...大 関/琴奨菊(ことしょうぎく)のイナバウアー(/フィギュアスケート・金メダリストの荒川静香さんの得意技)はさあ...すご いエネルギーを感じるんだけど、そのエネルギーとも違うわよねえ... 鬼太郎さんなら、髪の毛をピンと立てて...妖気(怪しい気配)を感じることができるのかしら...?」 「ま、しかし...」関三郎が、真面目な顔で言った。「コトは、重要で...深刻ですね... 場合によっては...日本の“国家中枢部/永田町・霞ヶ関”が、大崩落しかねない状況です。いよ いよ、そのレッド・ゾーン/“危険領域”に入ったようですね、」 「うん!」マチコが、大きくうなづいた。「“永田町”が、大崩壊してしまうわよね...いよいよ、妖怪大 戦争になるのかしら?」 「ともかく...」関三郎が言った。「“永田町”界隈(かいわい/付近、近辺)に... “未知の変動値”が極度に高まり...“危険領域”に突入している...ということは確かです。そ れが、何者によるもので...どういう意図/構造/背景を持っているか...既存概念/常識を超え た、新しい視点からの解明が必要のようですねえ...国家の一大事と思われます...」 「はい!」マチコが、テーブルの上で、両手のコブシを握った。「その、“ミッション/永田町・考”にな ります!」 「ともかく... 単純な構造ではないですねえ...それに、時間的に熟成されて来た、まがまがしいモノ を感じま すねえ...」 「うん...」マチコが、素直にうなづいた。「そうよね... それが...“ミッション/永田町・考”<永田町/妖怪憑依・説>...の原点なんだけど、それ を、現代・物理学的に解釈すると...<永田町/漫才定数・説>...ということになるのかしら? 自分で言っておいて、何なんだけど...そういうことなのかしら?」 「うーん...」茜が、かしこそうに頭を傾けた。「そういうこと、なのかしら...? 【量子力学】の成立当時(/1925年)のように...当時...ハイゼンベルクの“行列力学”と、シュレ ーディンガーの“波動力学”が同等のものであり...それぞれが、別々の側面を表現していたように、 ですか...? うーん...<妖怪憑依・説>と<漫才定数・説>は...“永田町/政治力学の・・・漫才項を 加えた・・・新/政治力学”の...別の表現ということかしら...???どちらのアプローチも...2 つの正しい表現/側面だと...???」
2つの仮説を統合して...1925年(/量子力学の成立)のように...“永田町・・・政治力学”という、 新学問が成立できないかしら? 隣には...マニアック(ある事に、極端に熱中しているさま)だけど...“霞ヶ関・文学”という、新文学・ジャン ルの息吹(いぶき)もあるし...これは、全国的に認知され始めて来たわよね...」 「ハハー ...」関三郎が、大口をあけ、宙を見た。「...ウーム...」 「でも...」マチコが言った。「本気で...“永田町/政治力学”の解明は、進むのかしら?」 「進めますわ!」茜が、キッパリと言った。「もちろん...本気で考えてみましょう...」
「肝心なのは、」マチコが言った。「日本の中枢エリアで...“何か・・・異常事態が起こっている”、と いうコトなのよね...コレは、何なのかと...?」 「そうですね...」茜が、唇に指を当てた。「本当に...不思議なことです... “日本の政治が・・・何故か漫才化して行く・・・奇病/難病に罹患(りかん)している”...という現 象/病理が...観測されているのは、まぎれもない事実です。 ただ、これを定量化し、測定して...再現性のある科学という方法論的・学問として構築して行くと いうのは...非常に困難ですわ...」 「その通りです...」関三郎が、うなづいた。「今までのセオリー(理論、学説)では...無理でしょうね、」 「でも...」茜が、続けた。「そうでは、あっても... 次世代の...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代には...こうした境界領域の問題こ そが...学問的解明の焦点に浮上してくるのかも知れません。つまり、“意味の世界/情報の海” へ切り込んで行く...突破口となるのかも知れません...」 「はい...」マチコが、コブシを握った。 「そもそも... “私たちは・・・何所にいて・・・何を成し・・・何所へ消えていくのか?”...という大疑問がある わけですわ... 終局の見えてきた、現パラダイム...“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”の軌道上に あるような...便利ロボットに価値を見出すのではなく...新・価値観のもとで、解決策を探ります」 「うん...」マチコが、ゆっくりと肩を左右に揺らした。
江戸/東京の結界(霊的バリヤー)は...調べてみると...明治・政府が、新たに東京の守護を平将 門(たいらのまさかど/平安中期の武将/下総を本拠とした、関東の最強豪族)の霊力ではなく...“明治維新で・・・偉 業を成した・・・新しい時代の人々の霊” ...によって、新たに取り行ったらしいのよ... うーん...でも...新しい結界は、関東大震災で破られた様子なのよね。真偽のほどは分らない んだけど、以後...B-29 (第二次世界大戦末期から朝鮮戦争期における・・・アメリカの戦略爆撃機)の侵入を許し、東 京大空襲なども受けている...と言うのよね、」 「はい...」茜が、小さくうなづいた。 「でも...結界が破れていても... 戦後復興期の勢いの旺盛な時代は、大丈夫だったようです。それが、衰えて来た頃から...うー ん...ちょうどバブルの絶頂期頃かしら...そのあたりからさあ...まさに百鬼夜行の棲家(すみか) になって来たらしいのよね...あ、これは、“永田町”/“妖怪憑依・説”の方なんだけど...」 「はい...」茜が、ゆっくりと、カキ氷にスプーンを突き刺した。 〔2〕
【相対性理論】 と 【量子論】 は・・・
「ええ...」関三郎が言った。「さて...難しい問題ですが、考察に踏み込んでみましょう...
マチコさんの言った、“宇宙定数”を導入する宇宙論/“重力場方程式”とは...誰もが納得する、 宇宙物理学という学問領域の話です。ええ...物理的・宇宙には、“大きく分けて・・・4つの力”が観 測されています。 いわゆる...“電磁気力”...“弱い相互作用の力”...“強い相互作用の力”...そして、“重 力”...の4つです。 また...【素粒子の標準理論/・・・標準模型・・・標準モデル】によれば...前の3種類の力は、 統一的に扱えるのですが...これもよく知られているように、“重力”はまだ統合されていないわけで すね。 もし、統合されるなら...アインシュタインの【一般・相対性理論】より導かれる、重力波を媒介す る粒子として...重力子(Graviton/グラビトン)という...<スピン 2、質量 0、電荷 0、寿命無限大> の、ボース粒子が発見されるはずです。つまり、【標準理論】によって、この粒子が予想されています」 「うーん...」マチコが言った。「まだ、統合されていないのに、どうして分るのかしら...?」 「いいですか... 【標準理論】では、こうやって新粒子が次々に予想され、そして発見されてきたわけです。“超ひも 理論”では、【標準理論】のようには...新粒子の予測が、なかなかできないようですねえ。まあ、詳 しいことは分りませんが...」 「うーん...そうなんだあ...」 「ええ...」関三郎が、モニターから顔を上げた。「いいですか... 4つ目の力...“重力”の統合は...これは【量子力学/・・・標準理論】と、【重力理論/・・・ 一般・相対性理論】との統合になるわけですが...実はもっと大きな存在が...統合されずに残っ ています。 それは...〔物理学の枠外〕の問題になるわけですが...〔自我/精神/私たち・・・1人称の 主体〕です。〔世界の半分を占拠する・・・心の領域/精神世界〕と...〔物の領域/物質世界〕 との最終統合です。 デカルトが分離した、“物の領域”と“心の領域”が関係性がつながれなければ...〔真理〕に到達 することはできません。【量子力学】において、“参与者”という言葉が考案され、観測座標/主体と いうものが俎上に上って来たのですが...理解が難しく、一般的には放置されているのでしょうか。 ああ...これは、【ベルの定理】も同様ですね...“ベルの不等式”は...“科学における最も 深遠な発見”、とされていますが、難解なのです。そもそも、“局所原因の原理・・・が間違っている ・・・世界の中で、孤立的な部分というものは、成立しない”...と証明されても、扱いに困るわけ ですね、」 「それで、どうなっているのかしら?」マチコが聞いた。 「まあ... “ベルの不等式”で数学的に証明されても...実際に、“局所原因性”がどのように間違っている かを、示していないと言われます。したがって、ほとんどの科学者は、今もなお還元主義的なスタイル で研究し、“ベルの不等式”は無視されているようです。これは、後でもう一度、説明します...」 「はい...」マチコが、うなづいた。「そうかあ...無視しているんだあ...」
「マチコさんの持ち込んだ... 永田町/<妖怪憑依・説>VS<漫才定数・説>は...実は、“物と心の・・・2つの領域”に関わ る次世代型・問題の側面を持つわけです。 したがって...これは、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代において...主要テーマ として、新たに展開して行くものかも知れません」 「うーん...」マチコが、首を横に沈めた。「でもさあ... こうした問題は...すぐそこに...“私たちの横に・・・転がっている問題”よね。常に、私たちと一 緒にあってさあ...」 「その通りです...」関三郎が、うなづいた。「しかし...難しすぎて、これまで手がつけられなかった 問題だったのです... 心の問題...心の力学...というものは非常に繊細です。また、それゆえに...文化的・遺伝子 の脈動と経路は...力学系の数量的・学問としては、扱われてこなかったわけです。 大雑把な文化としてとらえ...感情、芸術、快感などの系譜で...完全に分離して扱われてきたわ けです。しかし、いよいよ、そこへの切り込みも、始まるのでしょうか。しかし、どう切り込んで行けばい いのかということですが...はは、」 「うーん...」マチコが、横に頭を振った。 「それは...」茜が言った。「“霊魂の問題”とも...結びついてくるわけですね...?」 「そうですね...」関三郎が言った。「が、当面は、目先の問題を考察しましょう...」 「うん!」マチコが、コクリとうなづいた。
「では...」関三郎が言った。「話を進めましょう... 【量子論/・・・標準理論】と、【重力理論/・・・一般相対性理論】の統合ですが ...この問題 は、まさに、“相性の悪い・・・夫婦のようだ”...とも言われます。誰が仲立ちしても、どんなに説得し ても、しっくりと丸く収まることがないわけです。仲立ち・説得とは、つまり、“4つの力を統一” する、こ こ数十年間の全試行錯誤です。 【現代物理学の基盤・・・ダブル・スタンダードの両理論】 はそもそも...物理的・基盤とする時 間と空間そのものが...根本的に異なる思想のもとで組み立てられているのです。【量子論】では、 “絶対的・時空間”のもとで記述し...【相対性理論】では、文字どうりに、“相対的・時空間”の影響 下での記述になるわけです。 それは、どのように違うのかというと、古典力学/ニュートン力学では...空間を“絶対的な空間”、 つまり...“物質の存在・・・から独立した・・・空虚な容器”...すなわち、“三次元・ユークリッド空間” として記述しています。時間も同様に...“絶対的・時の流れ”として、理論構築されているわけです」 「うん...」マチコが、コクリとうなづいた。 「しかし... 【相対性理論】では、ご存じのように...“時間と空間は・・・不可分”であり...“空間は・・・物質 の存在の仕方により・・・曲がるもの/変化するもの”...という概念で構築されているわけです。だ から...大質量/太陽の近くを通過して来る光は...空間の歪みを反映します。 つまり、【相対性理論】では...“四次元・リーマン空間”...“相対的・時空間”が導入されている わけですね。しかし、【量子論】の方は...“絶対的・時空間”のもとで、波動関数が記述されている ということでしょう。当然、統合は難しくなるわけです。 まあ...専門家ではないので、これ以上の言及は避けますが...両方とも正しいのです。【相対 性理論】なくしては、天文学や宇宙技術は語れないし...【量子論】なくしては、電子工学や光工学 は語れないわけです。つまり、コンピューターも、組み立てられなかったということです...」 「そうかあ...」 「まあ、しかし... “統合されない・・・正しい基盤的理論が2つある/ダブル・スタンダード”...そのものが、非常に 困ったことなのです」 「うーん...」マチコが、膝に手を置いた。「どちらかが、間違っているかというと...そうでもないわけ かあ...」 「まあ... “ナノ・テクノロジー”という言葉がありますが...大雑把に言って、そのサイズよりもマクロの側は、 【相対性理論】が威力を発揮するようです。 そして、ミクロの側は...【量子論】が適応しているということのようです...ま、その棲み分けが 完璧なら、それでいいわけですが、そもそも“時空間のとらえ方”が違うわけで、丸く収まらないようで すね...はは、」 「はい...」茜が、カキ氷のカップを、そっと手で押した。 「そうですねえ...」関三郎が、椅子の背に体を引き、脚を組み上げた。「最近は... かつての、統一理論/“超重力理論”の計算が...新しい計算法でアプローチが可能となり、見直 される向きもあるようです。素粒子の散乱を...“ファインマン・ダイヤグラム”で表現していたものを、 “ユニタリー性の方法”とか呼ばれるもので、飛躍的に簡略化できるようになったと言われています」 「ああ...」茜が、口元をゆるめ、微笑した。「はい... そんな論文が、雑誌に載っていましたわ...計算時間の爆発が回避され、かつての“超重力理論” が見直され、再計算されているとか...」 「そうです...はは...どうなるのでしょうか...」
<ヒッグス粒子・・・に王手・・・?> A
【標準理論】はどうなるのかしら...先日...“ヒッグス粒子”も発見されたというわよね...」 「ああ、はい...」関三郎も、カチャリと、かき氷りのスプーンを置いた。「それは、全く問題はありませ ん... そうですね...先日、最後の、“未発見粒子・・・ヒッグス粒子” が発見された様子ですね。しか し、基本的スタンスは変わりません。【標準理論】の体系が、より完璧に近づいたということでしょう。 ただし...【標準理論】も、“究極理論”ではないかも知れないということです。その場合、それを超 える、【超対称性理論】が、現実味を帯びてくるということです...この期待が、大きいようです...」 「うーん...」マチコが言った。「【超対称性理論】というのは...何かしら...?」 「そうですねえ... “ヒッグス粒子”については、あと数カ月もすれば、正体がはっきりしてくるでしょう。その時に、《別 のページ》を設け、あらためて考察することになると思います。企画の響子さんも、ニュースを見なが ら、そんなことを言っていました」 「ふーん...」マチコが、うなづいた。「そうなんだあ...」 「が...」関三郎が、白い歯を見せた。「せっかくですから、少し説明しましょうか...ハハ...予備知 識も、必要でしょうから...」 「あ、はい...」マチコが、顔を崩し髪をしぼった。「お願いします...予備知識として...」
「ええと...」関三郎が言った。「そうですねえ... “ヒッグス粒子”を発見したのは...スイス/ジュネーブ郊外/レマン湖の近くにあって...スイス とフランスにまたがって位置する...CERN (欧州合同原子核研究機構)の、LHC (Large Hadron Collider/大型 ハドロン衝突型加速器)です。 LHCは...まず、“中型加速器群”(/建設から数十年がたつ古い施設)の、“陽子・シンクロトロン加速器” (PS/Pはproton=陽子、Sはsynchrotron=円形加速器の一種)と、“スーパー陽子シンクロトロン加速器”(SPS)で、 陽子を“光速の・・・99.999997%”まで加速します。 この針のように細くした、“陽子バンチ・・・陽子の濃密な細長い塊”を、周長27km(/東京の山手線の 周長は34.5km)ほどの、“超大型加速器”に取り入れ...それぞれ別々の方向へ、さらに10倍ほどエネ ルギーを高めて...約10時間...正面衝突を起こすわけです。この全体を、LHCと呼ぶようです。 ええ...逆回りの衝突エネルギーは、2倍になるわけですね...これが、今回の発表の段階では、 4TeV(4テブ/4テラ電子ボルト=4兆電子ボルト)...そして衝突エネルギーは、2倍の8TeVになるわけです。
もう一度、別の角度から説明すると...逆向きに加速した...“40億個の陽子の塊/ビーム・バ ンチ”を...正面衝突させるわけです。リング内では...光速近くまで加速された陽子は、相対論的 効果で進行方向に沿って縮むので...球形ではなく、平たい円盤状の粒子になっているそうです。そ の円盤群と円盤群が...濃密に“検出器”のところで激突し、まさに陽子が大破壊されるわけです。
この“陽子バンチ”どうしの激突で...陽子がまさに破壊されるわけですが...実は、陽子という のは、3個のクォーク(/陽子は2個のアップ・クォーク と1個のダウン・クォーク・・・ついでに、中性子は1個のアップ・クォークと2個 のダウン・クォークからなる )が、グルーオンという粒子で結ばれている、複合粒子なわけですね。 したがって、実際の衝突は...クォーク同士や...クォークと反・クォーク...グルーオン同士な ど、様々なケースがあって...ここから“ヒッグス粒子”も、生み出されると予測されて来たわけです」 「うーん...」マチコが言った。「LHCというのはさあ...ものすごいことをやっているんだあ...」 「そうです...」関三郎が、モニターの方に目を投げた。「それで... まあ...“ヒッグス粒子”は発見されたわけですが...約10-21秒という、非常に短時間で、“質量 の小さな・・・別の粒子”へと、崩壊して行くわけですね...」 「うーん...」 「そして... このLHCの、“検出器/巨大検出器”には...オール・ジャパン体制で参加している、“ATLAS” (アトラス/・・・総重量約7000トン/総工費約600億円・・・日本は約110人が参加し、全体の約10パーセントは日本グループが作った。 世界38カ国、174の大学・研究機関の3000人が参加)と...“CMS”(鉄を大量に組み込んであるため、総重量は約1万2500ト ン。世界40カ国、172の大学・研究機関の3000人が参加)があるわけですね。これらは、違う方法で、同じものを補 足しようとしているようですが...まあ、性能的には互角と言われています... それぞれに、参加している国の数や大学の数もほぼ均等で、双方とも3000人ほどが従事している ようです。まあ、純粋な学術研究ですから、経済競争のようなエゲツなさはないと思います。双方が競 うことによって...“より高みを志向”...する、ということなのでしょうか...」 「ふーん...」茜が、うなづいた。 「いや、そのように見えるということです...詳しいことは、関係ホームページ等で確認してください」 「はい...」茜が苦笑した。「そうですね...」 「さて... この“ヒッグス粒子”の崩壊には...幾つかのパターンがあると予想されて来ました。まあ、その予 想/予測に沿って...崩壊のエネルギー・レベルの周辺にあたりをつけ、調べていたようです。まあ、 予測していた140Gev(140ジェブ/1GeVは10億電子ボルトであり・・・1400億電子ボルト)よりも、重い方ではなく、 多少軽い方の...125GeV~126GeVあたりでの、発見だったようですが... ちなみに、“ヒッグス粒子”は...次の5つのパターンに、崩壊して行くと予想されています...」
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② Z粒子2個に崩壊・・・ Z粒子はさらに、電子と 陽電子のペア...またはミュー粒子と 反ミュー粒子 のペアに崩壊する。 ③ W粒子2個に崩壊・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <これらは、ボーズ粒子 への崩壊> (ボーズ粒子・・・素粒子の間の相互作用を媒介する粒子/力を媒介する粒子・・・スピンが0か、正の整 数の粒子。光子は・・・電磁力を担うボーズ粒子。 Z、W-、W+は・・・弱い相互作用を担うボーズ粒子)
④ ボトム・クォークと、反ボトム・クォークに崩壊・・・ ⑤ タウ粒子と、反タウ粒子に崩壊・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <これらは、フェルミ粒子 への崩壊> (フェルミ粒子・・・物質を構成する粒子。スピンが 1/2の粒子。電子、ニュートリノ、クォークがある。 陽子や中性子は、クォークやグルーオンからなる複合粒子。ボトム・クォークとタウ粒子は、いずれも、 負の電荷をもつ・・・ )
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そして...この陽子/複合粒子の崩壊を観測するのが、“巨大検出器”の“ATLAS”と、“CMS” です。それから...この5つの崩壊パターンは、大きくは2つに分けられるということです。 1つは、① ② ③ で、これらはいずれも、“ボーズ粒子への崩壊”です...そして、もう1方は... ④ ⑤ で、これらは、“フェルミ粒子への崩壊”であり...このボトム・クォークとタウ粒子は、いずれ も、“負の電荷をもつ”...ということです。何故、こうなのかということは...今後の研究課題になる のだそうです...」 「うん...」マチコが、うなづいた。 「そして...いいですか... 2012年7月4日に発表された、“新粒子/h”は...“ATLAS”と“CMS”ともに...① ② の崩 壊パターンに関するデータなのだそうです。そして、今年末までの実験で、世界中の研究者が注目し ているのは、検出器でシグナルを得るのが難しい... ④ ⑤ の崩壊パターンのデータなのだそうで す。この崩壊を確認したい...というわけですね。いずれも、確定ではなく、推定です... ああ、そうそう...“ヒッグス粒子”は...“h” の他に “H-”、“H0”、“H+”が予想されています。 詳しいことは、これから話題になってくると思います...一応、予備知識として、小耳にはさんでおい て下さい...」 「うーん...」マチコが、耳に手を当てた。「はい...小耳にかあ...」 「ま...結果がどの方向へ向くとしても... これが確認されれば...“ヒッグス粒子”というものの実態が分かって来るそうです。【標準理論】を 完全なものにするか...【超対称性理論】に向うもの、になるか...はっきりして来るのだそうです。 ま、面白くなるのは、【超対称性理論】の方向へ理論が展開していくことのようです。いずれにしても、 近々分るわけですから、これぐらいにしておきましょうか...」 「あの、三郎さん...」茜が言った。「【標準理論/素粒子の標準モデル】が予言している“ヒッグス 粒子”は...1種類ではなかったかしら?」 「そうです...」関三郎が、大きくうなづいた。「だから... それを超えるものが、【超対称性理論】の方向へ向うわけです...そもそも、CERN(欧州合同原子核 研究機構/)のLHC(Large Hadron Collider/大型ハドロン衝突型加速器)は、そうした...“超対称性粒子・・・普 通の粒子の、超対称性パートナー”、を発見することが、建設目的の1つにあるのだそうです...」 「すると...」茜が言った。「“ヒッグス粒子”ではない...他の“超対称性粒子”をも探していたと?」 「そのようです... ええと...LHCは、今後...2013年に改修工事を行い...2014年からは、これまでの衝突エ ネルギー/8TeV(8テブ/8兆電子ボルト)から、14TeVに引き上げて、実験をして行くていくそうです。 まあ、いずれにしても...“はっきりする”と言いながら...“ますます複雑化”して行くのが...科 学の常道ですが...世界中の物理学者たちも、間違いなくその方向を期待しているのでしょう...」 「はい...」茜が、大きくうなづいた。「“ヒッグス粒子”は、そんなことになっているのですか...」 「まあ...」関三郎が、マウスでモニターをスクロールした。「ザッと、論文に目を通しただけです... ああ...ここにデータがありますね...今回の新粒子は、“ATLAS”で、“質量=126.5GeV” あたりに存在する確率が、“99.99998%”で...“CMS”では、“質量=125.3±6GeV”あた りに存在する確率が、“99.99995%”ということですね。これは予想されていたよりも軽いようです。 ここに、また...何故か...という疑問も出てくるのだそうです。理論家の、活力源ですね...」
「うーん...」マチコが、頭をかしげた。「あ、三郎さん... 重力子(グラビトン)も...まだ見つかっていないのではなかったかしら...?」 「うーむ...」関三郎が、頭をツルリと撫でた。「これも、微妙な問題ですねえ... 重力が量子化できるものなら...重力子(グラビトン)が発見できるということです。そして、これも“ヒッ グス粒子”と同様に...力を媒介する粒子であり...ボーズ粒子であり...ゲージ粒子ですね...」 「あ...」マチコが、何かを見つけたように、笑った。「ゲージ粒子というのは、何かしら?また、おかし な粒子が出てきたわよね、」 「はは...はい...」関三郎が笑い、うなづいた。「自然界には... 今の所...大きく分けて、4つの力が観測されると言いました。これは、“ビッグバン”の膨張が継 続する中で、今後、さらに細かく分裂して行くのかも知れません。しかし、大きな分類では、この4つの 体制は変わらない、とも考えられています。今の宇宙観では、です... それが、つまり...“電磁気力”...“弱い相互作用の力”...“強い相互作用の力”...そし て、“重力”...の4つです。 そこで、4つの力があるわけで...それを媒介するゲージ粒子も...4つ考えられるわけです。ち なみに、“電磁力”を伝えるのが、光子(1種類)...“弱い力”を伝えるのが、ウィーク・ボソン(W粒子・・・ W-粒子、W+粒子、Z粒子の3種類)...“強い力”を媒介するのが、グルーオン(にかわ粒子・・・8種類)...です。 それから、問題の“重力”を媒介するのが、重力子(グラビトン)と想定されるわけです。つまり、こうした ゲージ粒子が、4種類あるというわけです。そして、マチコさんの言うように...重力波/重力子は、 まだ観測はされていません...」 「うん...」マチコが、納得した。 「そこで...この重力子ですが... 現在、重力子を補足するための...重力波・望遠鏡が稼動しています。“大型低温・重力波望遠 鏡計画/KAGRA計画”が...岐阜県/飛騨市/神岡町/・・・神岡鉱山の地下深くで動き出してい ます。したがって...むろん...グラビトン(重力子)を補足するつもりなのでしょう... ここはニュートリノで有名な、“カミオカンデ”や“後継/スーパー・カミオカンデ”のある所です」 「あ、そうなんだあ...」マチコが、手を打った。「前にさあ...そんなことを言っていたわよね?」 「さあ、私は担当していなかったのですが、そうかも知れません... ともかく、“ヒッグス粒子”についても、これから研究が活発化してきますから、詳しく考察して行きた いと思います。 が、しかし...ここでは、ともかく...“宇宙定数”について考察しましょう。話を元の軌道に戻しま しょうか、」 「うん...」マチコが、コクリとうなづいた。「そういうことよね!」
<宇宙定数・・・宇宙項の係数とは・・・?> C
いわゆる...現在の、人類/人類文明に見えている物質は...全宇宙の質量/エネルギー組成 の、わずか4% にしかすぎないのだそうです。つまり96%は、肉眼で捕捉可能な可視光においても、 科学技術を総動員した最新の観測装置を駆使しても、見えていない状態と言うわけです。まあ、現在、 未知のエネルギーを補足する、幾つものプロジェクトが大車輪で動き出している様子です。 ともかく...96%のうちの23% は...いわゆる、“暗黒物質”(ダークマター/dark matter/光学的に観測され ず・・・人間が見知ることが出来る物質とは、ほとんど反応しない・・・)であり...あとの73% は...“暗黒エネルギー” (dark energy/・・・真空のエネルギーが、有力候補の1つとされている・・・)と呼ばれるもので、これが“宇宙定数”に相当 する、見えない質量のようです」 「ふーん...」マチコが、ミミちゃんの頭に、指先を置いた。「そうかあ...」 「いずれも、正体はまだよく分っていません... 【特殊・相対性理論】で...質量とエネルギーが等価(/同値)であることが導かれているので... 質量とエネルギーは同じ意味であり...物理的にも等しい...ということです。 そこで...“暗黒物質”と“暗黒エネルギー”ですが...これは、日本語としては極めて似ています。 まあ、もとの英語でも、“dark matte”と“dark energy”であり、よく似ています。したがって、ネーミング (名前付け)が少々ややこしかったようです。ともかく、別々に分類した概念、と承知しておいて下さい」
「ねえ、三郎さん...」マチコが言った。「そもそも... “宇宙定数”というのは、何なのかしら...自分から言い出しておいて、何なんだけど、どうも、よく 分からないわけよね...ここで、詳しく説明して置いてもらえないかしら、」 「ああ...」関三郎が、うなづいた。「はいはい... 詳しく説明するには、計算式が必要ですが...まあ計算式抜きで、何とか分かりやすく説明してみ ましょう」 「はい、」マチコが、椅子を引いて座り直した。 「これは...」関三郎が、モニターのマウスを動かした。「そもそも、分からないモノなんです... したがって、分かるはずもないのです。アインシュタインが喝破し、さんざん迷った、“宇宙定数”(う ちゅうていすう/cosmological constant)というのは...【一般・相対性理論】の“重力場方程式”の中に導 入した、“宇宙項”(うちゅうこう)の、“係数/比例定数”なのです...」 「“係数/比例定数”...ですか?」 「そうです... つまり...粘性率や膨張率や弾性率などの、係数と同様のものです。“宇宙定数”は、宇宙空間 に関わる“係数/比例定数”なのです。したがって、これは、いわゆるスカラー量(/スカラー: 大きさのみを 持つ量のこと・・・大きさと、方向を持つ、ベクトルに対比する概念)です」 「ふーん...」 「いいですか...」関三郎が、テーブルに両肘を立てた。「【一般・相対性理論】は、1916年に発表 されたわけです...」 「あ、うん...」 「そして、1917年の論文では... アインシュタインは...“宇宙項を導入した・・・重力場方程式”、を発表しているわけです。ここで は、“宇宙定数”をわずかに“正”とし...“万有・斥力”を導入することで...質量が持つ“万有・引 力”に拮抗させ...“= 定常宇宙 =”を導いているのです...」 「“万有・斥力”...?」マチコが、肩をかしげた。「“= 定常宇宙 =”...?」 「説明します... まず...“= 定常宇宙 =”とは、“静かな宇宙・・・変動のない静的宇宙”のことです。実は、つい 近年までは、皆がそう思っていたのです。大宇宙は無限の広がりを持つ...“ロマンあふれる・・・静 かな世界”、だと思っていたわけです。それ以前は...“天動説”の時代さえ、長く続いたわけです」 「うーん...」マチコが、腕組みをした。「“神様”が、支配していた世界よね...」 「そうです... そんな時代に、“地動説”を提唱したコペルニクス(ニコラウス・コペルニクス/1473年 - 1543年/ポーランドの天文学 者・・・教会では律修司祭(カノン)であり・・・知事、長官、法学者、占星術師であり・・・医者でもあった/地動説は、天文学史上で最も重要 な再発見と言われる)は、その大き過ぎる影響を恐れ、主著/『天体の回転について』の販売を、1543年 に死期を迎えるまで、絶対に許さなかったようです。 そして、後に...自作の望遠鏡で天体観測を行い...“地動説”を支持したガリレオ(ガリレオ・ガリレイ /1564年~1642年/イタリアの物理学者、天文学者、哲学者・・・パドヴァ大学教授/その業績から天文学の父・科学の父とも言われる /・・・キリスト教会から異端者として幽閉された)は...狂人あつかいだったわけです」 「うーん...」マチコが、頭に手をやった。「ガリレオさんは、大学教授だったわけかあ...」
「ええと...」関三郎が言った。「いいですか... 【一般・相対性理論】の“重力場方程式”は、よく知られているように、 アインシュタイン方程式 とも呼ばれています。 この方程式を、素直に解くと、“宇宙は・・・膨張している”...という結果が導かれるそうです。こ れは、現在ではごく普通に受け入れられている、一般的・概念ですね。“天動説”の頃とは、雲泥の違 いです。 ところが、1916年・当時...アインシュタインはこの結果に仰天した様子です。“宇宙は膨張して いる・・・という方程式の解は・・・信じがたく、受け入れがたいもの!”...だったようです。 アインシュタインは、20世紀の科学者ですから...もちろん、“天動説”ではなく“地動説”を信じて いたのでしょう。しかし、さしずめ...“地動説”を耳にした中世の教皇のような...驚天動地(きょうてん どうち)だったのでしょうか。それほど...“膨張する・・・宇宙”、は受け入れがたかったのでしょう」 「うーん...」マチコが言った。 「光に...」茜が言った。「量子の概念を導入し...初めて、光量子/光子の概念を打ち出した、アイ ンシュタインでも、ですね...」 「そ...」マチコが、うなづいた。 「いいですか...」関三郎が、言った。「そこで、アインシュタインは... 自ら作った“重力場方程式”に...“宇宙項”と呼ばれる“項”を付け足すという...改造を加えた のです。そうやって、“膨張しない・・・静的宇宙/= 定常宇宙 =”、の“重力場方程式”を、再度提 出したわけです。下に示すのは、その2つの“重力場方程式”/ アインシュタイン方程式 です...」
最初のアインシュタイン方程式
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「ええ...つまり... とです。 くり返しますが...これは、粘性率や膨張率や弾性率などと同様の、係数になります。したがって、 大きさのみの、スカラー量で表現されます。ベクトル量のように、力と方向を持つような量ではないわ けです。 では...この正体は何か...それほど膨大なエネルギーに相当するものは何か...となると、空 間自体が持つ、“真空のエネルギー”が該当すると推定されるわけですね。しかし、それは現在まで、 捕捉されたことはないわけです...」 「うーん...」マチコが、コクリとうなづいた。「重力子(グラビトン)/重力波と...同じなんだあ...」 「そうです... 【量子論/・・・素粒子の標準理論】では...エネルギーというのものは、無限に分割できる滑ら かなものではなく...“量子/粒子”のように...具体的には光子や電子のように...“1個づつ数 えられる・・・集合体”からなっている...とする理論です。だから、【量子論/素粒子論】なのです」 「はい...」 「これは、前にも言ったように... プランクが...“黒体輻射の問題”で...エネルギーは連続しものではなく...“量子”という、ま とまった単位を持つ、と考えたことから始まっています。これは深い洞察というより、たまたま、基本公 式から、 1 を引いてみたら適合したというような、偶然の発見だったようです。それで、プランク自身 も半信半疑だったようです。 しかし...当人/マックス・プランクが...半信半疑で提出した『電磁波の量子モデル』を...アイ ンシュタインが光に対して応用したわけです。この、アインシュタインの最初の論文/『光電効果に関 する論文』で、光は初めて...“光量子/光子”...になったわけです。 ここを起点とし...ハイゼンベルクの“行列力学”と、シュレーディンガーの“波動方程式/波動力 学”が展開し...それが統合されて、一応、1925年ということになっていますが...ニュートン力学 とは全く異なる、新しい力学/『量子力学』の誕生となるわけです...」 「うーん...そういうことかあ...」 「ああ、そうそう...」関三郎が、頭に手を当てた。「それ以前に... 多くの学者が、光の強さというものが...計算とうく合わずに、苦労していたようです。そこで、プラ ンクは、光のエネルギーは振動数に比例するのではないか、と考えたようですね。 まあ、それは正しかったわけで...“光子/量子一般のエネルギー値と・・・振動数の関係”に は...【プランクの定数】/(h= 6.626×10-34)という...“係数/比例定数”が用いられます。 これは、プランクの業績にちなんで、命名されたものだそうです...」 「量子一般というと...」マチコが言った。「電子なんかも...そうだということかしら?」 「まあ、そういうことです... この【プランクの定数】は...量子の関わる広範な現象に登場する、“普遍的な定数”です。まあ、 【量子力学】の基礎となる単位を示す、“物理定数”です...覚えておいてください」 「うん...」マチコが、小さくうなづいた。「【プランクの定数】かあ...」 「あ、いいかしら...」茜が、指を立てた。「一言...」 「ああ、はい...」関三郎が、体を引いた。 「“量子”、という概念と...」茜が言った。「“プランクの定数”、が使われるようになってから... 物理学では...それ以前を古典・物理学と呼びますわ。そして、それ以後を、現代・物理学と分け るようになったようです。したがって、【相対性理論】も、古典・物理学に含めることが多いようです」 「そうですね...」関三郎が言った。「まあ... 【特殊・相対性理論】は...古典・物理学を完成した、という意見もあるようです...まあ、この話 は、また別の機会にしましょう」 「そうですね、」茜が、うなづいた。「一言、コメントを入れておきました、」
「ともかく...」マチコが言った。「“= 定常宇宙 =”というのはさあ... 昔からの、“静かな宇宙観”だったわけかあ...アインシュタインは、その姿を追い求めていたわけ かしら、」 「まあ...」関三郎が、ため息をつき、大きくうなづいた。「それを、信じていたようですね... 現在では...【ビッグバン理論/ビッグバン仮説】の方が有力になっていて...こっちの方が、 【標準的な・・・宇宙論モデル】、となっています。 したがって...“= 定常宇宙論 =”は...現在は“非/標準的宇宙論”の1つとなっています。 1917年当時...アインシュタインは、“重力場方程式”に“宇宙項”を加えたわけですが、おそらく彼 の心には、“美しく深遠な・・・静的宇宙が・・・確固たる情景”...として描かれていたのでしょう。まる で、夢のような...」 「はい...」茜が、目をしばたいた。 「特に...」関三郎が、宙を見た。「アインシュタインは...そうした思い、が強かったのでしょう... 若い頃は、それが、“パラダイムシフト・・・の良い方向へ作用”したようですが...その後は、ど ういうわけか、“仇役(かたきやく)・・・の方向へ作用”したようです。まあ、この、“仇役も・・・物理学に とっては・・・必須の有用な作用”...だったことは、万人が認めるところです。 しかし、この“仇役”に関しては、“漫才定数・説”との関連で、後でさらに深く考察して行くことにし ましょう」 「ふーん...」マチコが、ミミちゃんの背中をなで下した。「もしかして... “ボケ/ツッコミ・エネルギー”...が作用していた、ということかしら?アインシュタイン自身も、さ らに、受け入れがたいような...ビツクリ仰天するような...“未知のエネルギー”が...」 「ハッハッハッ...」関三郎が、開けっ広げに笑った。「まあ、ともかく... “= 定常宇宙・論 =”というのは...“初期の・・・単純な・・・静的宇宙観”から、天文観測的・事 実と突き合わせ...時代と共に、定義が変化して来ているようです。最近は、“宇宙の・・・加速膨張” という予想外の観測結果を受け、“= 準/定常宇宙論 =”というものも、構築されているようです」 茜が、小さくうなづいた。
「ええ...」関三郎が言った。「ともかく... 現在の、“= 定常宇宙・論 =”というのは...“宇宙は膨張しているが・・・無からの物質の創生 により・・・任意の空間の質量は、常に一定に保 たれ・・・宇宙の基本的構造は、時間によって変化す る事はない・・・”、とする宇宙モデルになります」 「うーん...」マチコが、大きくうなづいた。 「いいですか...」関三郎が、続けた。「【一般・相対性理論】のもとでは... “= 定常宇宙・・・静的宇宙 =”は、存在できないという理論計算があり...また、“宇宙膨張/ 動的宇宙”を示す...エドウィン・ハッブル (アメリカの天文学者: ハッブルの法則を発見/アメリカのハッブル宇宙望遠鏡 は彼の業績にちなんで命名/ノーベル賞受賞の通知を受ける直前の1953年9月28日に死去。ノーベル賞は存命者のみに与えられるため、 ハッブルは受賞できなかった。死後、受賞者に内定していたことが彼の妻に知らされた。これ以前は、天文学はノーベル賞の対象外だった) の観測・結果などを受け、新たに構築されたものです...」 「うん...」 「それでも...」関三郎が言った。「なお、アインシュタインは... “= 定常宇宙 =”を、主張したかったわけでしょう。また...“観測的に・・・きわめて平坦に近 い・・・宇宙空間”...という、観測事実もあったわけです」 「うん...」 「まあ...」関三郎が、言った。「ここらあたりで... “この世・・・情報を映す鏡/自我という1人称的鏡・・・”にも...いよいよ、メスを入れる時期に 来ているのかも知れません。“何のために・・・こんなものが・・・ここにあるのか?”...ということ です。それを、“1人称/自我以外の座標から・・・観察することは、可能なのか?”...ということ です」 「数学...」マチコが言った。「ということかしら...?」 「それも...結局は、“1人称/主体”を通すわけです... “心/精神/霊魂というものが・・・分割・排除された、物理的/宇宙空間”...では、どうにも、 超えられない矛盾が噴出してきているようにも思いますねえ...【量子力学】という最先端学問には、 さすがにそれが、顕著に現れているようです...」 「そうかしら...」 「うーむ... “霊魂”を持ち出してくると...話が非常にややこしくなるわけですが、門外漢の我々が持ち出す のであれば...文句も出ないでしょう...はは、」 「うん...」マチコが、肩を左右に揺らした。
エドウィン・ハッブルよりは、2年ほど後まで存命だったわけですね。ともかく、〔激動の20世紀〕で した。〔物理学〕においても、〔天文学〕においても...そして、〔原子爆弾を創出〕 したという意味に おいても、“文明のターニング・ポイント・・・折り返し点”...に到達していたわけです。 そして、今...その時代が終わりを告げ...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代が、 開幕しつつあります。今回の、“ミッション/永田町・考”・・・“永田町/妖怪憑依・説” VS “漫才 定数・説” は...そうした意味でも、新時代を切り開いていく、恰好のテーマかも知れません...」 「そうですねえ...」関三郎が、うなづいた。「“霊魂”を、学問の俎上(そじょう/まな板の上)に上げていくとな れば...当然、そうかも知れません」 「うん...」マチコも、うなづいた。 「ええと...」茜が、モニターをチラリと見た。「でも、あまり話を拡散させないでおきましょうか、」 「ハハ...そういうことです」
「ええ、そういうことで...」茜が、また耳の後ろへ髪を撫でた。「話を、少し戻します... “= 定常宇宙 =”では...宇宙が膨張しているのは認めても...無から物質の創生が常にあり、 空間質量は一定密度が保たれている、ということです。“= 定常宇宙/静的宇宙 =”は、それでも、 まさに...“ここに・・・存在している”...ということですね」 「その通りです...」関三郎が、頭を丸く撫でた。「宇宙膨張にもかかわらず... “宇宙は・・・時間とともに変化しない”...と主張するわけです。そして、この主張が成り立つため には...“宇宙・密度を・・・不変に保つ”...必要があり、そのためには、“新しい物質が・・・時間とと もに・・・絶えず生成されている”...という必要があるわけです」 「うーん...」マチコが、大きく肩を揺らした。「でもさあ、複雑なことを言うわよねえ... アインシュタインは、それでも“= 定常宇宙 =”を導くために...“宇宙項”を、“重力場方程式” に入れる必要があったわけかしら?」 「ま...」関三郎が、腰を動かした。「そういうことですが... 最初は、1917年のことです。20世紀・初頭の宇宙観です。ところが、その後、クエーサー(準星/準・ 恒星状天体/大きな赤方偏移を持つ・・・これはクエーサーが、地球から高速で遠ざかっていることを意味する)などの観測によって、 宇宙膨張が明確になって来たわけです」 「うーん...」
「ところで...」関三郎が、言った。「アインシュタインは... “重力場方程式”に、“宇宙項”を導入したことを...“生涯で最大の過ちだった・・・と痛烈に後 悔した”...という有名なエピソードがあります。うーむ...相当に悔しがったのでしょうか。ところが、 ハハ...この話には、続きがあるのです」 「はい...」マチコが、頭を傾げた。 「続きの話は...こうです... まず...【標準/ビッグバン・宇宙モデル】の初期条件を説明する、“宇宙インフレーション・モ デル”、が考案された経緯があります。一度は、耳にしたことがあるのではないでしょうか?」 「はい...」マチコが、コクリとうなづいた。 「まあ、そういうことですねえ... これは、“宇宙初期に・・・時空間が指数関数的な・・・大膨張を遂げた”...とするものですね。 ところが、その原理は...“宇宙項に相当する・・・莫大な真空エネルギー・・・巨大斥力”、を背景 としているわけです。つまり...ここで再び、“宇宙項”が復活して来るわけです...はは、」 「うーん...」マチコが、頭を横に沈めた。「どういうことかしら...?」 「つまり...」関三郎が、椅子の背に体を倒し、頭の後ろに両手を当てた。「アインシュタインが... “生涯で最大の過ち・・・として痛烈に後悔している”...と表明したコトが...今度は逆の方に ひっくり返ったわけです。つまり、それがまた、裏目に出たということです。要するに、“宇宙項”の導 入は、“非常に・・・先見の明があった”、となったわけです。しかし、アインシュタインはそれを、“生 涯で最大の過ち”...と宣言していた、というわけです」 「うーん...“早とちり”(早合点をして、間違えること)かあ...」 「まあ... 後半生のアインシュタインの業績は、まさにこうした、“ボケ/ツッコミ・エネルギー”、が強大かつ 典型的に、作用していた様子です...」 「“宇宙定数”ではなく...」茜が、アゴを上げてた。「...“漫才定数”の方ですか...」 「うーん!」マチコが感動して、関三郎に大きくうなづいた。 「はは...ま...本当に、どうしたものですかねえ... 【量子論】の生みの親でありながら...【不確定性原理】に疑問を持ち...まだ未発見の“未知の 変数”があると信じ...非局所性の“量子もつれ”を嫌い... プリンストン高等研究所(アメリカ/ニュージャージー州/プリンストン市にある世界で最も優れた学術研究機関の1つ・・・自然 科学・数学・社会科学・歴史学の四部門を持つ。ドイツより亡命した、アインシュタインのために創設された研究所とも言われる。/プリンスト ン大学とは直接の関係はない・・・)の仲間と『共同論文』を提出して... その中にある有名な、“E・P・R(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンの頭文字)の思考実験”で...論文の 主張とは逆の結果...【ベルの定理】という数学的・科学的深淵を...導き出すことになるわけです ね...まあ、これは...アインシュタインの死後ということになるわけですが...」 「はい...」茜が、テーブルに立てた手を握った。「ええと... 【ベルの定理】は...アインシュタインが没して9年後...1964年の発表ですわ。CERN (欧州合 同原子核研究機構)の研究者の、ジョン・スチュワート・ベル(イギリス/北アイルランド/ベルファスト出身/・・・物理学者/ 1928年 ~1990年)によって、提唱されたものです...」 「その...」マチコが言った。「【ベルの定理】というのがさあ...よく分からないのよね...」 「ベルは...」茜が言った。「『EPRパラドックスについて』という論文で...現在、“ベルの不等式” と呼ばれる結果を、導いたわけです... これは、いわゆる...“局所実在性と・・・量子力学は・・・本質的に、相容れない”...というこ とを意味している、といいます。 ええと...これは後に...アラン・アスペ(フランス/アジャン/1947年~ /物理学者・・・エコール・ポリテクニーク教 授)によって、実験的に証明されています。これは...1980年代の初期に、共同実験者とともに“ベ ルの不等式”を検証する実験を行ったものですね... この実験で、アスペは...“CHSH不等式”(ベルの不等式の一種)が破られていることを示しました。アス ペの実験は、多くの物理学者によって、“ベルの不等式”が成立しない...つまり、“局所実在論は 正しくない”...ということを決定づけるものとして受け入れられました。 でも...“この実験には・・・不完全な点がある”、として...より完全な検証を求める物理学者もい る、ということですわ。ともかく...【ベルの定理】は数学的証明なのですが、自然界においても、“局 所実在性”が成立しない、ということが示されたわけです...」 「うーん...」マチコが、頭をひねった。 「つまり...」茜が、マチコを眺めて言った。「...簡単に言ってしまえば... 世界の中で...“そこだけで存在している・・・部分というものは・・・ありえない”...ということ です。“世界は・・・巨大な1つの全体”...だと言うことです。高杉・塾長は、こうした巨大な全体は、 “禅的な・・・唯心”...に近いものだと言っていますわ...」 「うん...塾長はさあ、昔から、そんなことを言っているわよね...」 「ええ...」茜が、続けた。「したがって... 【相対性理論】に反して...“光速を超える・・・情報交換”も...ありうるということになります。こ れが、“量子もつれ”という...量子現象の確認につながっていくわけです...」 .......<詳しくは、こちらへどうぞ//量子もつれとベルの定理> 「そうかあ...」マチコが言った。 「アインシュタインは...特に... “非局所性”の、“量子もつれ”という現象を、嫌っていたようですわ。でも、最近のことですが、これ が、量子現象の1つとして、確認されたようです。それが、“量子情報科学”という新学問分野のスタ ートにつながったようです...門外漢ですので、詳しいことは分りませんが...」 .......<詳しくは、こちらへどうぞ//量子情報科学のスタート> 「うーん...」マチコが、椅子の背に上体を倒した。「本当に...後半生のアインシュタインは、何を やっていたのかしら」 「そこに...」関三郎が言った。「強力に... “漫才定数・・・ ボケ/ツッコミ・エネルギー”...が作用していたのではないでしょうか。まあ、い ずれにしても...アインシュタインの功績でしょう...“仇役”としての功績です... ハハ...彼がいなくては、【相対性理論】も、【量子論】も、そして【ベルの定理】も...現在のよう には、ここに展開していなかったわけです。まあ、その時はその時で、別の道というものがあったので しょうが...現在のような文明形態ではなかったでしょう...」 「その方が...」茜が言った。「現在のような、危機的文明とはならなかったのかも知れませんし... あるいは...“第1次世界大戦”のような戦争が拡大し... 別の形で、文明危機が訪れていたか も知れませんね。いずれにしても、生態系は大きく破壊され、“地球温暖化”はやって来たのかもしれ ません... 私たちの選択は、長い目で見れば...間違いというものは無いのです。仮に、短期的には間違っ ていたと見えても、長い目で見れば...その上に現象や時代が紡がれ、それを基盤に進化し、生命 潮流が経歴して行くわけです...つまり、迷路の中の、どの道を選択するか...だけなのです...」 「うーん...でもさあ...短期的に見れば...勝った、負けた、はあるわけよね、」 「その通りですわ...そこに、激しい感情や、達成感や、芸術性が紡がれていくわけですね...」
「ともかく...」関三郎が言った。「【量子力学】の歴史は... “仇役”がいて...“主役”が引き立ったわけです。演劇と同じですね...アインシュタインの場合 は、最初は“圧倒的な主役”を演じ...【量子力学】が確立されると...今度は“強力なな仇役”に 回り...現代・物理学/現代・文明の礎(いしずえ)を、築いて来たわけです...はは、」 「ふーん...不思議なキャラクターよね...」 「そうですね...」茜が、顔をくずした。「人類の文明史の上でも...」 「うん!」マチコが、大いに納得した。
「はい!」マチコが、腰を浮かし、座りなおした。 「近年... 遠方の超新星の観測や...宇宙マイクロ波背景放射(CMB=cosmic microwave background/ 宇宙背景放射/ 3K背景放射)の観測から...宇宙は、加速度的に膨張していることが、明らかになって来ています。 この“加速・膨張”を説明するメカニズムとして、あらためて“宇宙項”の存在が支持されて来ている ようです。そして、“宇宙定数”の源の有力候補として、“真空エネルギー”が挙げられているわけです ね...」 「ふーん...」マチコが、トン、トン、とテーブルを指でたたいた。「“真空”かあ...」 「そうです...」関三郎が、手で口をふさいだ。「“真空”であり...“空間自体”です... 宇宙空間は、“超真空”などとも呼ばれますが...“宇宙定数”の導入で...物質の存在しない宇 宙空間にも、“空間自体の持つ・・・莫大な真空エネルギー・・・dark energy/負のエネルギー/ 万有・斥力”...が充満していることになっているようです。 これが...空間/宇宙空間の、“係数/比例定数”という意味のようです。まあ、とりあえずは... くり返しますが...膨張している宇宙空間は...膨張そのものが、莫大なエネルギー/“真空エネル ギー”を創生している、ということになるようです。 当然...【エネルギー保存の法則】(熱力学の第1法則/・・・ある孤立系の中のエネルギーの総量は変化しない)には 反しているわけですが...こうした宇宙論では、孤立系が破れているわけですね...」 「ふーん...」マチコが、首を揺らした。「そういうことかあ...でも、何となく、ヘンよねえ...」 「はは...まあ、どう考えようと...考えるのは自由です...」 茜が、ペン立からペンを取った。そして、メモ用紙に何かを書いた。
「ええと...」関三郎が、モニターに目を落とした。「ともかく...また、話を戻しますが... “暗黒物質”(dark matter)ではなく...見えていないエネルギーの73% に当たる、“暗黒エネルギー” (dark energy)の方が...“宇宙定数”の莫大なエネルギーに相当するようです。しかし、こんなものを、 “重力場方程式”/アインシュタイン方程式 に導入しては...
「それで...」マチコが言った。「アインシュタイン自身が... 自分で導入した“宇宙項”を、また否定したわけかあ。“生涯で・・・最大の過ち”...とか言って」 「うーむ...」関三郎が、脚を組み上げた。「まあ、そのようですねえ... アインシュタインはユダヤ人であり...“神の存在”...というものを、深く信じていたようです。い ずれにしても、我々よりも何倍も深く...“大宇宙の深淵を見つめ・・・神を信じ・・・大自然の中の 美しい秩序”...を見ていたのでしょう。こうした彼の行動を、軽々に笑うわけにはいきません...」 「うーん...」マチコが、深くうなづいた。「...何倍も...深く...かあ...」 「そうです...」 「そして...」茜が、胸元に指を置いた。「このストーリイには...非常に奇妙な所がありますわ...」 「というと...?」マチコが、茜の方に、体ごと肩を寄せた。 「ストーリイが...」茜が、額の髪を撫で上げた。「アインシュタインの... “人格・・・霊魂・・・人間原理ストーリイの形成場”が...“特別に高い・・・ポテンシャル・エネ ルギー”を持っているようだ...ということですわ」 「それが...」マチコが言った。「つまりさあ... “漫才定数”から来る...“ストーリイの・・・ボケ/ツッコミ・エネルギー”...だということかし ら?」 「もちろん...」茜が、首を振った。「確証など、ありません... ただ、そうした検証が...いよいよ始まって行くのでしょうか...“文明の第3ステージ/意識・情 報革命”の時代の中で...」 「アインシュタインは...」関三郎が言った。「悩んだ末に... “確信的に・・・自ら意図することなく・・・反対方向へ、反対方向へ”...舵を切って行ったということ です。面白いですわ。これは...アインシュタインの、宗教性や人間性や人格の特殊性によるものか も知れません。ともかく、何とか、解明の糸口が見つけられないものかしら...」 「うーん...そうかしら...」 「ここは...」関三郎が言った。「茜さん...」 「はい...?」 「新理論を創出する、セクション(部門)の担当者として... また...【茜・新理論研究所】としても...笑い過ごせる話ではありませんね。この、“ストーリイ の・・・創生/偏向”は...【人間原理ストーリイ】の大局から、再検討してみる必要がありそうです」 「はい...」茜が、微笑を浮かべて、うなづいた。「次の、課題になりますわ...」 「そうですねえ、」 「アインシュタインの人格かあ...」マチコが、大きく口をあけた。 「はは...」関三郎が、宙を見た。「アインシュタインは... “神は・・・サイコロを振り給わず”と言って...【量子力学】の不確実性 ...つまり、【不確定性 原理】や、“相補性”や...局所原因性を否定する“量子もつれ”を、非常に嫌ったわけです... しかし、どうにも...“神様”は...“ギャンブル”も嗜(たしな)むし...“漫才/ボケ・ツッコミ”も好き な、“砕けた人格”のようです。ハハ...これはまだ分りませんね...もっと深い領域に、アインシュ タインの言う...“未知の変数”(ヒドゥン・パラメーター)が、隠されているのかも知れません...」 「うん...」マチコが、うなづいた。「“奥には奥がある”、というわよね...」 「そうです...」関三郎が言った。「これはあくまでも... “現・パラダイム”では、アインシュタインにとっては分が悪いということです。“神の懐”は、もっと、 もっと、“はるかに深い”のは...周知の事実です。 私たちもまた、さらに大きな、“物の領域/物質世界”と“心の領域/精神世界”の...再統合に言 及しているわけですから、」
「それで、さあ...」マチコが言った。「三郎さんは、どう思うのかしら?」 「ああ、はい... そうですねえ...私自身の見解は、【人間原理ストーリイ・・・今の領域の・・・開放系ストーリイ】 は...“過去・現在・未来の方向から・・・そして、別次元からも・・・多方面の衝撃を受けている” と、おぼろげに感じています。まあ...そう考えているということですね、」 「ふーん...」マチコが、肘を抱いた。「私たちの...“日常/今のストーリイ”というのはさあ...そ んなに、複雑なものなんだあ...」 「まあ...複雑かどうか... ともかく...全体構造が分からないということです。分からないという意味では...まさに、複雑系 の塊かも知れません。分かっているのは、全てが...“1人称・・・自我の鏡”に投影され...認識 が始まっているということです。 “最大の疑問は・・・私自身/自我のメカニズム・・・であり自我の座標系”...ということかも知 れません」 「ふーん...」マチコが、頬に手を当てた。「つまり...“ヒッグス粒子”が質量を獲得したようにかあ、」 「そうですね... その...“主体/1人称が集まり・・・相互主体性世界を形成”...しているようです。そして、そ れはボーズ粒子のように、“1点に・・・幾らでも入り”...“ホモサピエンスの・・・種の意識体”の 中に...“文明社会を・・・言語的/シンボル的に形成し”...し“ベクトル/力と方向”を持ってい る、ということです。それが、物理世界のジオグラフィック(地理)を補完し...リアリティー(迫真)に接近 するようです。 まあ、そこで...一応、“時間軸に沿うように”...“ストーリイ”が開示されて行くのでしょう。何故、 こんな現象が、発現しているのかは分かりませんねえ... 私たちから見た場合...問題は、その【人間原理ストーリイ】の形成の...“偏向/バイアスの 問題”です...“何故・・・漫才化”、して行くのか... うーむ...今頃、アインシュタイン自身は...天国で、どう思っているのでしょうか?頑固なようで すから...おそらくは、自説は変えてはいないのでしょうか...はは...」 「うーん...それは、ありうるわよね...」 「ええと...」茜が、手を立てた。「それでは...次は、“漫才定数”の方ですね、」 「はい!」マチコが、コクリとうなづいた。「そして、その背景にある風景として... ええと...“霊魂が介在する座標系の・・・共時性/意味のある偶然の一致・・・過不足のない 真理空間ストーリイの揺らぎ・・・”...を考察するわけですね、」 「“共時性”(/英語: Synchronicity・・・シンクロニシティ) は...」茜が、モニターに目を投げた。「ユング心理学 に出て来る言葉ですね... したがって、本来なら...< となっています。でも...ここでは表面的なことですので、私が説明します...」 「はい... ええと...沙織さんは響子と一緒に、《軽井沢基地》にいるわよね...私の代わりに、《万葉集 の考察》に参加しているはずです」 「はい、そのようですね...」茜が微笑し、コクリとうなづいた。「あ、一言だけ説明しておきますと... “共時性/シンクロニシティ・・・意味のある偶然の一致”とは...非・因果的な...複数の事象の 生起を決定する法則原理として...これまで知られていた因果性とは異なる原理として...カール・ ユング(スイスの精神科医・心理学者/1875年 ~ 1961年/深層心理について研究。フロイトを師とし、ユング心理学を創設)によって 提唱されたものです。 つまり、複数の事象が...“偶然の一致・・・意味・イメージにおいて・・・類似性・近接性を見せ る時”...従来の因果性では何の関係性も持たない場合でも...これを、“共時性・・・シンクロニシ ティの作用”、と見なすわけです」 「うーん...」マチコが、うなった。「ともかく...そういう方向で、考察を開始します... あ、ページが長くなってしまったので、 また新しいページを作成し第3部とします。ええ、どうぞ、ご 期待下さい!」
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第3部・・・ 新ページを作成 〔3〕
真理/時空間における
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MoMA(ニューヨーク近代美術館)コレクション
こちらにも、別のもの がございます