Menu/My Assistant Desk/マチコ・in・永田町/(真剣勝負)/2012=妖怪憑依説・VS・漫才定数説 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() (ようかい) (ひょうい) * (ていすう)
|
トップページ/Hot Spot/NewPageWav/Menu/最新のアップロード 担当 : 折原 マチコ |
プロローグ | ミッション/永田町・考 | 2012. 7.12 |
No.1 | 川柳・・・/永田町 | 2012. 7.12 |
No.2 | 〔1〕 永田町/妖怪憑依・説とは・・・ | 2012. 7.12 |
No.3 | <マチコ in 永田町> | 2012. 7.12 |
No.4 | <永田町の・・・地理> | 2012. 7.12 |
No.5 | <太陽系大航海と・・・/妖怪憑依・説> | 2012. 7.12 |
No.6 | <アインシュタイン方程式> | 2012. 7.12 |
ミッション/永田町・考・・・破局点!
《真剣勝負・・・第1弾》
《真剣勝負・・・第2弾》
「マチコです...“永田町/妖怪憑依・説”...は長らくお待たせしました。 このテーマは、長年研究を続けてきたのですが、私の力不足/多忙のために、まとめ上げることが できませんでした。申し訳なく思っています。 そこで、今回...【茜・新理論研究所】の秋月茜さんと...< 工学・理論派/関三郎さん...それに、《My Weekly Journal》/政治・部長/青木昌一さんの 力を結集し、何とかまとめようと思っています...ええ...皆さん、そういうわけで、よろしくお願いし ます!」
「難しい複雑なミッション(任務・使命/・・・義務・タスク)ですが...」秋月茜が、白い歯を見せた。「頑張って みますわ...大変そうですが、楽しい仕事になりそうですね」 「ハッハッハッ...」関三郎が、陽気に笑った。「“永田町/妖怪憑依・説”ですか。いいですねえ。私 の方は、“漫才定数・説”ということですが、一応、そのラインで考察しておきました」 「はい!」マチコが、元気よく頭を下げた。「ありがとうございます!」 「ま...」青木昌一が、破願し、眼鏡に手をかけた。「ひとつ、よろしくお願いします... 永田町には...国会議事堂があり、心霊スポットもあるらしいですから、全く的外れということはあ りません。ともかく、このエリアは、いろいろな意味で、妖怪の巣窟とも言われます。 魑魅魍魎(ちみもうりょう/人に害を与える化け物の総称)が跋扈(ばっこ)し...百鬼夜行(ひゃっきやぎょう/色々な化け物 が、夜中に列をなして出歩くこと)があらわれ...残留思念の渦巻いている所です。 ここに新しい、まったく別の角度から、探求の光を当てるのは、大いに意味のあることかも知れませ ん。政治が、ここまで漫才化してしまってたのは、もはやただ事ではないのは確かです」 「うーん...」マチコが言った。「そういわれると、真実味を帯びて来るわよねえ...」 「ハッハッハッ...」関三郎が、また大笑いをした。「そうですね... SPring-8 (スプリングエイト/Super Photon ring-8 GeV/・・・兵庫県・播磨科学公園都市にある大型放射光施設・・・和歌山毒入 りカレー事件で、亜ヒ酸の分析に用いられたことで有名・・・)のシンクロトロン放射光を当てれば、何かが見えて来るか も知れませんねえ...ハッハッハッ...」
青木 昌一 関 三郎 秋月 茜 折原 マチコ
この国家の中枢エリアの異常事態は、以前から注目してきました。それが、昨今の、崩壊寸前の永 田町/立法府・風景と相まって...緊急を要する事態になってきたわけです。 うーん...“漫才劇場”として、笑って眺めていられる状況ではなくなったということですよね。そこ で、《企画室》の方から、“永田町/妖怪憑依・説” に白羽の矢が立った次第です...ええと、まず、 これまでの、“関連する・・・永田町川柳”を紹介しておきます。これは、時間的経緯にもなります、」
面白うて やがて哀しき チルドレン .....(一風/・・・ ボスの俳号) 面白うて やがて哀しき 漫才劇場 .....(一風 )
古時計 隣は何を する党ぞ
.....(一風 ) 清濁を あわせ呑み過ぎ 腹下し .....(投句/折原マチコ )
下痢の国 漫才劇場 拍手なく .....(投句/折原マチコ )
満月に 民の離船や 総選挙 .....(投句/秋月 茜 ) 永田町 ぬらりひょんと 連れ小便 .....(投句/折原マチコ )
「ふーん...」マチコが、しみじみと頭をかしげた。「これまでの...経緯を説明すると... 多士多彩な...学者/評論家/勤勉な日本国民も...現状の永田町(国会議事堂を中心に・・・首相官邸、 衆議院議長公邸・参議院議長公邸、諸政党の本部が立地)/霞ヶ関(永田町と隣接する官庁街・・・日本の行政中枢機能が集中)の 状況は、まさに...“理解不能/対処不能”...になっていますよね。 最近/5月7日...ゴールデンウイーク明けに...そのあたりを歩いてみたのですが...やはり、 “何か変だ!”...という感覚がありました。ゲゲゲの鬼太郎さんが、髪の毛をピンと立てて妖気を 感知するように、私もただならぬ妖気と無気力が充満しているのを感じました。 このことを、すぐに、《企画室》の響子さんに報告した経緯があるわけです。そのことで、《企画室 /企画・会議》の方で、“永田町/妖怪憑依・説”がピックアップされました。新・理論の角度から、 理論的・解明を急ぐということになりました。長年の懸案でしたので、いよいよ、解明に着手です...」
「うーん...」マチコが、モニターをスクロールした。「この解明は... 正当なセオリー(理論、学説)からのアプローチでは、 解析不能となっているわよね...やはり、真に “霊的/超常現象”...が深く関与しているのでしょうか? 最悪の場合...妖怪等/百鬼夜行が...永田町・霞ヶ関を、すでに完全支配していることも、十分 考慮する必要もあると思います。 あ、それから...《真剣勝負・・・第1弾/政治家のお仕事は?》...で私たちは、もう1つ、別の 仮説...“永田町/漫才定数・説”...も提唱しています。それは、以下のような経緯です...
********************************************************** (マチコ談) 「アインシュタインはさあ... 宇宙論に、“宇宙定数(/真空エネルギーと考えられる)”を導入したり、それを引っ 込めたりして、迷ったと言われるけど...今の日本の政治は、“漫才定数”を 導入すれば、スッキリと理解できるのかしら...?」 ***********************************************************
ええ...ここから...《永田町/漫才定数・説》...の考察も開始したわけです。でも、多忙もあ り、私の両手に余るものでした。そこで今回、新・理論を専門とする、【茜・新理論研究所】の秋月茜 さんと、< お願いしました。あ、もちろん、理論・提唱者として私も頑張ります。 形式としては...《真剣勝負・・・第1弾/政治家のお仕事は?》に続き...《真剣勝負・・・第2 弾/妖怪憑依・説 VS 漫才定数・説》...ということにしました。よろしくお願いします。 メンバーもそろいましたし、面白い展開になりそうです。どうぞ、今後の展開にご期待ください!」
〔1〕
永田町/妖怪憑依・説
とは・・・
<マチコ in 永田町> A
ゲゲゲの鬼太郎さんがいなくなって...もう、久しくなるし...ビビビのねずみ男さんも、最近は すっかり姿を見ないわよね... 小泣きジジイも、姿を消したし、淋しくなったわねえ...あ、もちろん、砂かけババアやネコ娘は健 在だけどさあ...」 「ネコ娘はよう...」雨に濡れそぼって立つ、ポン助が言った。「仲間を増やしているよな。そんな小娘 が多くなったようだぞ...一反もめんもよう、似たような女とつるんでるよな...」 「うん...」マチコが、小さくうなづく。 マチコは、妖気の漂う...雨で光るアスファルト舗装を眺めていた。黒い車が1台、濡れた車道を 流して行く。誰が乗っているのかしら、とマチコは窓を見た。が、白いカーテンがあって中は見えなかっ た。 「うーん...」マチコが、コウモリを大きく上げ、雨空を見上げた。「今...永田町で元気なのは、誰か しら...あ、妖怪で...だけど...」 「やっぱり、よう...」ポン助が言った。「民主党の... 八百八狸(はっぴゃくやだぬき/『松山騒動八百八狸物語』)と...ボスの刑部狸(ぎょうぶだぬき/伊予・松山に伝わる化 け狸)だよな...未曾有の大反乱を引き起こしてるぞ... 自民党では...神棚へ引っこんでいたぬりかべ/親分(ミスター神の国)と...たんたん坊が元気だ よな...ラッキョは、口に放り込んで終わりだけどよう...公明党の小泣きジジイは、引退したよう だよな... 国民新党のシーサー(沖縄の獅子の妖怪/沖縄では、建物の門や屋根などに据え付けられ、悪霊を追い払う)も、元気だ ぞ。ゲゲゲの鬼太郎の子分でよう、オレの友達だよな...いい奴だぞ、」 「あ、そうなんだ...ポンちゃんの友達なんだあ」 「おう...」 また1台、黒い車が通った。マチコとポン助は、人通りのない濡れた歩道を歩いた。 「うーん...」マチコが、コウモリを両手で持った。「問題は、刑部狸の反乱よねえ...本当に、予想 外のクーデターだったわねえ...あ、この場合、クーデターとは言わないのかしら...」 「小泉・政権は...」ポン助が、濡れた樹木を見上げた。「“民意を背景にして・・・自民党をぶっ壊し た”けどよう...野田・政権は、“官僚を背景にして・・・民意をぶっ壊した”よな...こんな、民主党 は、国民は支持した覚えはないよな、」 「そうなのよね...やっぱり、この大混乱は、妖怪大戦争の始まりなのかしら...?」 「刑部狸は...」ポン助が、雨に濡れ、うなだれて言った。「手ごわいよな...」 「そうかあ...ポンちゃんは狸だもの、よく知ってるわよね...」 「刑部狸は...八百八狸の大軍勢を動かしてよう...妖怪獣をあやつってよう...実力で日本を 制圧して、国民を奴隷化してしまうよな...」 「うーん...鬼太郎さんも、かつて苦戦した相手よねえ...」 「そうだよな...」ポン助が、濡れた頭に手を当てた。「民主党はよう... 八百八狸に乗っ取られたのかも知れないよな...何処かの・・・シロアリ軍団と、手を組んでいる かも知れないよな...」 ザーッ、と雨が強くなッた。ポン助はマチコのコウモリの下に入った。すると、ピカッ!、と天空の一 角が激しく光った。直後に...ガラ、ガラ、ガガーン!...と割れるような雷鳴が、一帯の天空に轟 いた。それに続いて、雨空に巨大な雷鳴が渦巻き始めた。雲の中から、竜/ドラゴンが下りて来るの かと思われた。 凄まじい雷鳴の威圧の中で...マチコが、かろうじて議事堂のてっぺんを見た。かつて...2003 年9月3日/夕刻...国会議事堂のてっぺんに、“ 天の雷 ”(てんのいかずち)が直撃していた。また、そ の、“ 天罰の雷 ”かと思った。が、白い雨糸にかすんで...議事堂はそこに静まっていた。
<永田町の・・・地理> B
マチコが、突っ立ったままコーヒーを飲んでいる...自分たちの、永田町・ルポ(/仏語・・・ルポルタージュ /現地からの報告・・・)の映像を見ていた。マチコが、コーヒー・カップを、カチャリと受け皿に置く... 「うーん...」マチコが、腰に手を当てた。「くり返しますが... 今回の《真剣勝負》は...“永田町/妖怪憑依・説”(ようかいひょうい・せつ))VS(ver sus/対))“漫才常 数・説”(まんざいじょうすう・せせつ)...というテーマです。難しいテーマですので、あらためて、背景を説明 します」 「はい...」青木昌一が、口を開き、ツイと眼鏡を押した。
「ええと...」マチコが、茜の横の椅子に掛け、スクリーン・ボードを見上げた。「皆さんは...もちろん 承知していると思いますが、あらためて、地理的関係を説明します。 いわゆる...“永田町”は...東京都/千代田区/永田町のことです。ここには、国会議事堂が 立地しているわですね...日本の政治の中心地/心臓部...です。 その南側は...大きく下っていて、霞が関の官庁街があります。その向こうは、日比谷公園がです ね。霞が関・・・と呼ばれる官庁街エリアは、日本の行政組織の中枢になります。警視庁/特徴の あるビルも、この一角/桜田門にあります。 それから、最高裁判所は、“永田町”をはさんで、北側の・・・お堀端/隼町になります。“隼町・永 田町・霞が関”は...東側の内堀/桜田濠(さくらだぼり)に面しているわけですが...お濠(ほり)の向こ うは、旧・江戸城の森/《 皇 居 》が、広がっています。 つまり、ここは...地理的にも、政治・行政的にも、シンボル的にも...《日本の権力中枢/司法 ・立法・行政府・・・シンボルの中枢/千代田の森》...となっています。そして、周辺にも、《様々 な・・・国家中枢機関》が集中しています。 ええと...秋月茜さん、関三郎さん、そして、青木昌一さん...どうなのでしょうか?本格的・解明 は、今後、徐々に進めて行くとして...まず、一言づつ、コメントをお願いします...」 「そうですね...」青木昌一が、秋月茜の方を見た。
<太陽系大航海と・・・
/妖怪憑依・説> 3
この...《先進的/文明国/日本の・・・中枢エリア・・・千代田区/永田町》で...一体、何が 起こっているのでしょうか?世界中が、目をみはり、耳を傾けている...ところだと思います。 ともかく...“悪霊”、“妖怪”、“残留思念”、“精霊”...などと表現されてる何者かが...“文明 の第3ステージ/意識・情報革命”という、次世代・パラダイムにおいて...本格的に、学問化/構造 化が、試みられて行くとになるのでしょうか...?」 「すでに...」関三郎が言った。「人類文明は... こうした問題を、“分析/統合的に扱える・・・文明の第3ステージ”...に突入しているのでしょう。 その自覚が必要ですね...もはや、“食物連鎖の喧噪/弱肉強食のパラダイム”には、いないという ことです...その野蛮から、離脱していくということです。その情熱は、残しつつ...」 「はい...」茜が、関三郎にうなづいた。「その難しい課題は、後で考察していくとして... かつて...“太陽系の中には・・・ニュートン力学で、説明のきないものはない”...とまで言われま した。イギリス/ロンドン/王立研究所で、ケルビン卿(イギリスの物理学者/多方面で活躍)が講演したことで 知られていますが...
“物理学をおおう雲は・・・今や黒体輻射の問題と、マイケルソン=モーレーの実 験の問題の、2だけしかなくなった・・・その雲も、疑いなく、やがてなくなるだろう”
...と豪語したそうですね。でも、この“黒体輻射の問題”から、“プランクの定数”(h=6.626×10-34 ) が引き出され、『量子仮説』が、掲げられたわけです。これは、マックス・プランク(ドイツの理論物理学者/ ノーベル物理学賞を受賞)の業績です。 また、“マイケルソン=モーレーの実験の問題”の方は...アインシュタインの、最初の論文/『光 電効果に関する論文』が、その暗雲を取り除いたわけですね。これは、プランクの、“電磁波の量子 モデル”を、“光に適用”したものです。つまり、光量子/光子という概念の登場です。 そして、同年(1905年/日露戦争の日本海海戦の年)、後を追うようにして発表されたのが、『特殊相対性理 論』であり、『一般相対性理論』が提唱されるのが、1916年です。さらに、1925年には...ハイゼ ンベルク(ドイツの理論物理学者/ノーベル物理学賞を受賞)の“行列力学”と...シュレーディンガー(オーストリアの理 論物理学者/ノーベル物理学賞を受賞)の“波動方程式/波動力学”から...『量子力学』が、誕生しています」 「うーん...」マチコが、うなった。「それが、『量子力学』なんだあ...」 「そうですね... ええ、そういうわけで...20世紀初頭に、“物理学のパラダイムシフト”があったわけですが、そ れが、“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”という...科学技術・文明時代を、創出してき たわけです。 そして、20世紀は...反面、“戦争の世紀”でもあり...“原子爆弾”や、“核融合爆弾”、も創ら れました。エネルギーの革命でしたが、それは主に...“粗野な・・・熱運搬エネルギーの段階”で した。現在、存続が大問題になっている“原子力発電”も...そうした“20世紀の負の遺物”です、」 「はい...」マチコが、うなづいた。「“核兵器”もその範疇(はんちゅう)かあ...」 「そうです...」茜が、うなづいた。「“原発”は、超大型の“原子爆弾”を、非常にゆっくりと爆発させ、 その熱でお湯を沸かし、蒸気の力でタービン発電機を回しているものです...」 「うん...」マチコが、短くうなづいた。
「さて...」茜が言った。「私たちは... コンピューター技術のイノベーション(技術革新)と、ヒトゲノム・解読のイノベーションを経て...徐々 に、“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代に...足を踏み入れて来ているようです。そこで は...“微細な・・・情報運搬エネルギー・・・の発達段階”...に到達しているということです。 生命体/生態系システムは、こうした幾層もの、膨大な情報エネルギーによって構成され...流さ れ...その“情報の海/・・・遺伝子の海”で...調整され、進化しているということですわ...様 々な新興感染症も、そうした全体制の、ホメオスタシス(恒常性)のセクション(部門)から生み出されて来 ると考えられます」 「まあ...」関三郎が、手をひらいて上げた。「宇宙・物理空間にしても、そうです... 物理法則を支配しているのは、その関係性であり...それを繋ぐのは情報なのです。ブラックホー ルは、“事象の地平面”と言われますが、それを観測するコトそのものが、情報なのです。CERN(欧州 合同原子核研究機構)でヒッグス粒子が発見されたようですが...そうした、未知の法則性・関係性を結ん でいるのも...いわゆる...情報の相互作用が存在しているからです...」 「はい...」茜が、かすかに微笑して、うなづいた。「そして...今... “永田町問題/・・・永田町・妖怪憑依・問題”から...“物理学を超える・・・巨大なパラダイム シフト”...が起こるかも知れないということですね...それが...“ニュートン力学を打ち破る・・・ 残った2つの問題”...になるかも知れないということですね。うーん...大変なことになりました、」 「はい!」マチコが、コクリとうなづいた。
小惑星探査機/はやぶさ・・・想像図 ボイジャー1号 ボイジャー1号の構造図 <Wikipedia より・・・パブリックドメインの画像を借用> <Wikipedia より・・・NASAの画像/パブリックドメイン/著作権フリー>
現在の人類文明の状況を見てみましょう...太陽系の版図(はんと)は、望遠鏡で眺めていた時代 から、太陽系空間への大航海時代に入りつつあると言えます...日本の“小惑星探査機/はやぶ さ”も、このことに大きく貢献しています...」 「うーん...」マチコが言った。「“はやぶさ”かあ...アレは、感動したわよね...」 「そうですね... 日本の“小惑星探査機/はやぶさ”は...2003年/5月に、鹿児島県/内之浦・宇宙空間観測 所より...M−Vロケット5号機で打ち上げられました。 この内之浦・宇宙空間観測所は...JAXA(ジャクサ/宇宙航空研究開発機構)の施設の1つで...種子島 宇宙センターとは別に、九州本土にあるロケット打ち上げ施設ですね。おもに、科学観測用衛星の打 ち上げと、追跡・管制を行っているようです」 「あ、そうなんだあ...」マチコが言った。「同じ所じゃないんだあ...」 「そうです、」関三郎が、短い髪をパラリとなでた。 「この方面は...」茜が、口をすぼめた。「三郎さんが、詳しいのですね」 「ハハ...拝聴します」 「はい。お株を取って、すみません。間違っていたら、訂正してください」 「はい...」関三郎が、うなづいた。
「ええ... “小惑星探査機/はやぶさ”は...“小惑星/イトカワ”から表面サンプルを採取...次々と、重 大トラブルに遭遇しつつ...予定外の7年に及ぶ太陽系・大航海を終え...2010年6月13日/ 22時51分...約60億Kmに及ぶ大冒険旅行を終えました。 小惑星サンプル・リターン計画の任務を全うし...地球大気圏に再突入しているわけですね。地球 重力圏(/月)以外の天体での...“固体表面に着陸・・・サンプル・リターン”...は、世界初の快挙と いうことです。 “はやぶさ/本体”は...地球/大気圏で燃え尽きてしまいました。これは予定どうりですね。そ して、“はやぶさ/サンプル容器”の収められたカプセルの方は...パラシュートで南オーストラリ ア/ウーメラ砂漠に、無事着地しています。これは、つい2年前のことですから、記憶も新しいと思い ます...」 「うん...」マチコが、大きくうなづいた。
「それから...」茜が、自分のモニターに目を落とした。「太陽系空間の大航海といえば... 最も遠くへ到達しているのは、惑星探査機/ボイジャー1号です。2005年/5月/24日...ボイ ジャー1号が、太陽系の果てにある...“末端衝撃波面”に到達しています。 太陽から...太陽系の外縁部に到達する、球形の高速度の太陽風は...最終的には星間物質 (/恒星間・宇宙空間に分布する、希薄物質の総称・・・)との衝突や、星間磁場によって減速され、“末端衝撃波面 /球形”を形成しています」 「うーん...」マチコが、頭をひねった。「それは、さあ...シャボン玉のような形かしら?」 「形としては...」関三郎が言った。「3次元の球形です。歪んでいるかも知れませんが... その“末端衝撃波面”の外側は...低速度の太陽風と星間物質とが混ざり合う、“ヘリオシース”と いう広大な衝撃波領域で...その外側の“ヘリオポーズ”で、完全に星間物質に溶け込んでいるよう です。ここが、太陽系の最果てになります。ボイジャーは、ここに到達しているようです...」 「三郎さん...」マチコが言った。「ボイジャーは、いつ地球を、出発したのかしら?」 「うーむ... ボイジャー1号は...ええと...1977年/9月5日に打ち上げられていますね。故障の関係で、 ボイジャー2号の方が...半月ほど前の、1977年8月20日に打ち上げられたようです。したがって、 2号の方が、兄貴分なわけです。製作されたのは、後になるのでしょうが...」 「双子でもさあ、先に生まれた方が、兄よね、」 「そうです... それから...茜さんが言ったように、このボイジャー1号は、地球から最も遠い距離に到達した人工 物体となっています。現在、太陽の影響圏/“ヘリオポーズ”から、星間空間へ入りつつあります。ボイ ジャー2号の方は、ボイジャー1号とパイオニア10号に次いで...地球から3番目に遠い位置にあり、 別の方向へ遠ざかりつつあります」 「もう、太陽系から、出たのかあ...」 「そうですねえ... ええと...今年/・・・2012年6月18日/現在...ですが...太陽から約180億kmの距離 を、時速/約6万kmで遠ざかっているようです。2012年/年末には...“ヘリオポーズ”を突き抜 け、太陽系外の探査へ踏み出すようです。 ま、詳しいことは...NASA(アメリカ航空宇宙局)のホームページで確認してください...」 「はい...」マチコが、うなづいた。
<ボイジャー2号・想像図・・・NASA/パブリックドメイン> 「うーん...」マチコが、腕組みをした。「“ヘリオポーズ”かあ...そこが、私たちの、太陽系の果てな んだあ...」 「そうです...」関三郎も、腕を組んだ。「“ヘリオポーズ”(Heliopause)とは... 太陽から大量に放出された太陽風が...星間物質や銀河系磁場と衝突して完全に混ざり合う、い わゆる“境界面”のことです。太陽風の届く範囲を、“太陽圏/太陽系圏/ヘリオスフィア(Heliosphere)” などと呼ぶわけです。その外側の宇宙空間/局所・恒星間雲との、“境界面”を表す用語です」 「はい...」マチコが、スクリーン・ボードを見た。 「ええと...」茜が、続けた。「いいですか... くり返しますが...現在、ボイジャー1号は、地球との通信に、片道/約13時間を要する距離まで 遠ざかっています。こちらのデータでは、2010年12月には、太陽風速度/ゼロの領域に到達してい ます。NASAの計算によれば、約4年後には、“ヘリオポーズ”を超えると推定しています。 これは...三郎さんのデータの方が、新しいというわけですね。1ヶ月以内のデータですから...」 「はい...」関三郎が、口を押さえた。「そういうことですが... すると...“ヘリオシース”/衝撃波領域を、2年ほどで抜けた計算になるのかな。4年ほどかかる と推定されていたものが、」 マチコが、無言でスクリーン・ボードを眺めた。 「ちなみに...」茜が、モニターを見ながら言った。「ええと... ボイジャーは...原子力電池の出力低下にともない...全ての機器に電源を入れておくことが出 来なってきています。ボイジャーが完全・稼動停止になるのは、ボイジャー1号が2020年以降...ボ イジャー2号の方は、2030年以降だそうです。 でも...地球との、通信/情報交換は途絶えても...ボイジャーはその後も、星間旅行は続けて 行くわけです。ホモ・サピエンスの象徴として... そして、そう遠くない時期に...ホモ・サピエンスの超高速・探査機が、ボイジャーを追い抜いて行 くことも、可能性大なのかも知れません...」 「そうです...」関三郎が、ゆっくりとうなづいた。「100年は、ほんの一昔ですからねえ...」
「ええ...」茜が、作業テーブルを見回した。「人類文明は、このように、いよいよ太陽系空間を越え、 星間空間に突入しつつあります... でも、一方...“人類文明の・・・内なる探求の荒野”も...物理的・宇宙空間をはるかに凌ぐ、 “複雑な幾層もの深遠世界・・・複雑系/開放系システム・・・心の領域への統合・・・”...へと、 向けられて来ています。 今回の...ミッション/永田町・考・・・<永田町/妖怪憑依・説>...の考察は、そうした文明 の未開領域へ踏み込んで行く、序章なのかも知れません。 “先人の残した文献”なども、山のようにあるわけですが、まずは、私たちの推理を展開したいと思 います。力不足は重々承知していますが...どうぞ、ご期待下さい!」
〔2〕
永田町/漫才定数・説とは・・・
「さて...」関三郎が、ドン、と両手をテーブルに置いた。「今度は、《永田町/漫才定数・説》という ことですね...」 「はい...」マチコが、うなづいた。「私の両手に余るものでした...よろしくお願いします!」 「ハハ...」関三郎が、陽気に顔を和ませた。「うーむ... アインシュタインが、一般相対性理論(重力理論)/重力場方程式= アインシュタイン方程式 に導 入した“宇宙項”の、“係数・・・宇宙定数”を持ち出して来た...いうことですか。 このエネルギーは、知りうる限りの、莫大なものです。これは...“物理的・宇宙空間の・・・空間 自体が持つ・・・莫大な真空エネルギー”...のことを指しています。まあ、現在、そのように推定さ れている、と言うことです」 「あ、ええと...」マチコが言った。「三郎さん... まず、確かめたいんだけど...“何も存在しない空間・・・完全な真空”でも、ものすごいエネルギー を持っている、ということなのかしら?」 「そういうことです...」関三郎が、コクリとうなづいた。「ただし... これは、“負のエネルギー”と考えられています。電気的に、負の電荷というのではありません。エネ ルギーそのものが、マイナスのと考えられるのですが、実態はよく分かっていないようです。現代科学 では、捕捉されていないエネルギーです」 「でも...理論的には、予測されているんだあ...」 「そうです... “ディラックの海”(/真空での負エネルギーの電子の海・・・ディラックの海の空孔は、正のエネルギーを持ち、反粒子に対応する) という言葉ありますが...これは、ディラック(Paul Dirac /1902年 〜 1984年/イギリスの理論物理学者/量子力学及び 量子電磁気学の基礎づけについて多く貢献。1933年に、波動力学のシュレーディンガーと共にノーベル物理学賞を受賞)が、仮定した 概念です。まあ、後に...概念の拡張、解釈の見直しが行われているようですね... されている”...とする概念のようですね。 つまり...宇宙空間という無限の空間が...“膨大な負のエネルギーで・・・ギッシリと満たされ る”...と考えればいいようです。いずれにしても、このあたりのことは、まだよく分かってはいないの です。これから、本格的な研究が始まっていく領域になるようですね」 「うーん...でも、そういうことなんだあ...」 「ま...おいおいと説明しますが... ええ...その意図から類推すると...“漫才定数”というのは...“永田町/政治ストーリイ・結 晶化の・・・強大な変動要因・・・”...具体的には...“ボケ/ツッコミ・エネルギーの・・・ストー リイの偏向動因・・・?・・・”...その強烈な干渉・エネルギーということになるのでしょうか...? しかし、この、“新しい・・・情報科学・・・の力学系”の創設には、幾つもの基盤的・条件整備が必 要になりますねえ...そう簡単にはいかないものがあります。ま、そのために、私や茜さんが、呼ば れたのでしょうが、」 「うーん...」マチコが、腕組みをして、コクリとうなづいた。「そうかあ...あ、もちろん、そうなんだけ どさあ...」 「ハハ...」 「私は... ただ直感的にそう思ったわけだけど...分析的に考察すれば、そういうことになるのかしら。漫才 だから...“ボケ/ツッコミの・・・エネルギー”かあ...でも、確かに、不思議な現象よねえ...ど うして、政治の流れの中に、こうもはっきりと...“ボケとツッコミの現象”...が現れるのかしら?」 「ホホ...」茜が、口に手を当てた。「そうですね... 確かに...誤差や偶然として、無視できるレベルではありませんね。実に、不思議ですを。これに は...伝統的・日本文化や...上位レベル・意識...“霊魂”/“超越的・思念エネルギー”...と いうものが、不可分に関与しているようです...それを、これから見ていきましょう...」 「うーん...」マチコが、大きく肩をかしげた。「あ、そうそう... ヒッグス粒子が発見されたようだけど...“ボケ/ツッコミの・・・エネルギー”もさあ ...“ファイ ンマン・ダイアグラム”(場の量子論において、摂動展開の各項を図示したもの・・・リチャード・P・ファインマン/ノーベル賞受賞/量 子電磁力学の創始者の1人/提唱されたファインマン・ルールにのっとって計算すると、素粒子の振る舞いを記述できる)で表現できる のかしら...?」 「ハッハッハッ!」関三郎が、テーブルを叩いて笑った。「だから...それには...幾つもの条件のクリ アが必要です!」 「うーん...」マチコが、ポン助の方を見た。「分からないエネルギーよねえ... 意識エネルギーかあ...大関/琴奨菊(ことしょうぎく)のイナバウアー(/フィギュアスケート・金メダリストの荒川 静香さんの得意技)はさあ...すごいエネルギーを感じるんだけど、そのエネルギーとも違うわよねえ。鬼 太郎さんなら、髪の毛をピンと立てて...妖気(怪しい気配)を感じることができるのかしら...?」 「しかし...」関三郎が、真面目な顔で言った。「いいですか...コトは、重要で、深刻ですね...」 「うん!」マチコが、大きくうなづいた。
「ともかく... 永田町に...未知の変動値というものが高まり、“危険領域”に突入している、ということは確か です。それが、何者によるもので...どういう意図/構造/背景を持っているか...既存の概念/ 常識を超えた...新しい視点から調べてみる必要があるようですね。国家の一大事と思われます」 「はい!」マチコが、テーブルの上で、両手のコブシを握った。 「が、しかし... ともかく...単純な構造ではないですねえ。それに、時間的に熟成されて来た...まがまがしい モノ を感じます...」 「うん...」マチコが、素直にうなづいた。「そうよね... それが...ミッション/永田町・考/・・・<永田町/妖怪憑依・説>...の原点だけど、それを 現代・物理学的に解釈すると...<永田町/漫才定数・説>になるのかしら...?自分で言ってお いて、何なんだけど、そういうことなのかしら?」 「うーん...」茜が、かしこそうに頭を傾げた。「そういうことなのかしら...? 【量子力学】の成立時(/1925年)のように...当時、ハイゼンベルクの“行列力学”と...シュレー ディンガーの“波動力学”が同等のものであり...それぞれが、別々の側面を表現していたように、で すか? うーん...<妖怪憑依・説>と<漫才定数・説>は...“永田町/政治力学の・・・/漫才項 を加えた・・・新/政治力学”の...別の表現ということかしら...???...どちらのアプローチ も...2つの正しい表現/側面だと...?」
2つの仮説を統合して...1925年(/量子力学の成立)のように...“永田町・・・政治力学”という、 新学問が成立できないかしら... 隣には...マニアック(ある事に、極端に熱中しているさま)だけど...“霞ヶ関・文学”という、新文学の息吹 も、いよいよ認知され始めて来たしさあ...」 「ハハー ...」関三郎が、口をあけて宙を見た。「ウーム... 最近は...“永田町・文学”というのも、台頭してきたようですねえ...衆議院の解散をめぐり... 首相・発言(野田・首相)の、“近い将来”と“近いうちに”の政治・文学的/解釈で、各幹事長のコメントも でそろい...意気盛んな様子ですね...」 「でも...」マチコが言った。「本気で...“永田町/政治力学”の...解明は進むのかしら?」 「進めます!」茜が、キッパリと言った。「もちろん、本気で考えてみましょう」
「肝心なのは...」マチコが言った。「日本の中枢エリアで、“何か・・・異常事態が起こっている”、と いうわけなのよね、」 「そうですね...」茜が、唇の指を当て、宙を見た。「本当に、不思議なことに... “日本の政治が・・・何故か漫才化して行く・・・奇病/難病にかかっている”...という現象/ 病理が...観測されているのは、まぎれもない事実です。ただ、これを定量化し、測定して...再現 性のある科学という方法論的・学問として構築して行くのは、非常に難しいということですわ」 「そうです...」関三郎が、うなづいた。 「もちろん...」茜が、続けた。「そうではあっても... 次世代の...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代には...こうした境界領域の問題こ そ、学問的解明の焦点に浮上してくるのかも知れません。つまり、“意味の世界・・・情報の海”へ切 り込んで行く、突破口となるのかも知れません」 「はい...」マチコが言った。 「そもそも... “私たちは・・・何所にいて・・・何を成し・・・何所へ消えていくのか?”...という大疑問がある わけですわ。“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”の軌道上にあるような、便利なロボットを 作ることに価値を見出すのではなく...新しい価値観のもとでの解決策を探ります...」 「うーん...」マチコが、肩を揺らした。
江戸/東京の結界(霊的バリヤー)は...調べてみると...明治・政府が、新たに東京の守護を、平 将門(たいらのまさかど/平安中期の武将/下総を本拠とした、関東の最強豪族)の霊力ではなく...“明治維新で・・・ 偉業を成した人々の霊” によって...新たに取り行おうとしたらしいのよ。 でもさあ...新しい結界は、関東大震災で破られた様子よね。真偽のほどは分らないんだけど、 以後、B−29 (第二次世界大戦末期から朝鮮戦争期における・・・アメリカの戦略爆撃機)の侵入を許して、東京大空襲な ども受けている、と言うわよね... あ、でも...結界が破れていても...戦後復興期の勢いの旺盛な時代は、大丈夫だったようよね。 それが、衰えて来た頃から...うーん...ちょうど、バブルの絶頂期頃かしら...そのあたりからさ あ、百鬼夜行の棲家(すみか)が復活したようです。あ、これは、“妖怪憑依・説”の方なんだけど...」 「はい...」茜が、ゆっくりと、冷めたコーヒーに口をつけた。 「うーん...」マチコが、肩を大きく沈めた。 < ヒッグス粒子? 宇宙定数?
> C
“宇宙定数”を導入する、宇宙論/重力場方程式とは...誰もが納得する、宇宙物理学という学 問領域での話です。ええ...物理的・宇宙には、“大きく分けて・・・4つの力”が観測されていますね。 いわゆる...“電磁気力”...“弱い相互作用の力”...“強い相互作用の力”...そして、 “重力”...の4つですね。また...素粒子の【標準理論】によれば、前の3種類の力は、統一的に 扱えるのですが、よく知られているように、“重力”は統合されてはいません。 統合されるなら...アインシュタインの【一般・相対性理論】より導かれる重力波を媒介する粒子 として、重力子(Graviton/グラビトン)という、スピン2/質量0/電荷0/寿命無限大の、ボース粒子が発 見されるはずです...」 「まだ、統合されていないのに...」マチコが言った。「分るのかしら...?」 「まあ、【標準理論】では、こうやって新粒子が次々に予想され、発見されてきたわけです」 「あ、そうかあ...」 「“重力”の統合は... これは...【量子力学/標準理論】と、【重力理論/一般・相対性理論】との統合になるわけで すが...実は、もっと大きなもので、統合されていないものがあります。 それは...〔物理学・・・の枠外〕の問題になるわけですが...この世のもう半分を占める、〔心の 領域/精神世界〕と、〔物の領域/物理世界〕との統合ですね。 デカルトが分離した...“物の領域”と“心の領域”が統合されなければ...この世の真理に到達 することはできません。 マチコさんの持ち込んだ...永田町/<妖怪憑依・説>VS<漫才定数・説>は実は...“物と 心の・・・2つの領域”に関わる次世代型問題の側面を持つのです。したがって、これは、“文明の第3 ステージ/意識・情報革命”の時代において...主要テーマに発展して行くものかも知れません」 「うーん...」マチコが言った。「でもさあ... こうした問題は、すぐ私たちの横に転がっている問題よね...常に、私たちと一緒にあって...」 「その通りです...」関三郎が、うなづいた。「しかし、難しすぎて、これまで手がつけられなかった問 題だったのです... 心の問題...心の力学...文化的遺伝子の脈動の経路は...力学系の数量の学問としては扱 われてこなかったわけです。 文化として...感情、芸術、快感などの系譜で...完全分離して扱われてきたわけですね。しか し、いよいよ、そこへの切り込みが始まるのでしょうか...」 「うーん...」マチコが、頭を横に沈めた。
「それは...」茜が言った。「“霊魂の問題”とも、結びついてくるわけですね...?」 「そうですね...」関三郎が言った。「が、当面は、目先の問題を考察しましょう... 【量子論/標準理論】と、【重力理論/一般相対性理論】の統合ですが ...この問題は、まさ に、“相性の悪い夫婦のようだ”と言われます。誰が仲立ちしても、どんなに説得しても、しっくりと丸く 収まることがないわけですねえ。仲立ち・説得とは、つまり、“4つの力を統一” する、ここ数十年間の 全試行錯誤です。 この現代物理学の基盤となる...ダブル・スタンダードと言われるこれらの2つの理論は、そもそも 基盤とする時間・空間そのものが、根本的に違う思想で組み立てられているのです。【量子論】では “絶対的・時空間”で記述し、【相対性理論】では、文字道理に、“相対的・時空間”になるわけです。 それは、どのように違うのかというと...古典力学/ニュートン力学では空間を、“物質の存在か ら独立した・・・空虚な容器”...すなわち“三次元・ユークリッド空間”として記述しました。時間も同様 に、“絶対的な・・・時の流れ”として、理論構築されているわけです。しかし、【相対性理論】では、空 間は時間と不可分であり...“物質の存在の仕方により・・・変化するもの”...としているわけです。 つまり、【相対性理論】では、“四次元・リーマン空間”が導入されたわけですね。しかし、【量子論】 の方は、“絶対的・時空間”で記述しているわけですねえ...波動関数の時空間というものは、そうし た背景のもとに記述されているわけです...」 「はい...」茜が、冷めたコーヒーで、口を湿らせた。 「まあ...」関三郎が言った。「最近は... かつての、統一理論/“超重力理論”の計算が...新しい計算法でアプローチが可能となり、見 直される向きもあるようです。素粒子の散乱を、“ファインマン・ダイヤグラム”で表現していたものを、 “ユニタリー性の方法”とか呼ばれるもので、飛躍的に簡略化できるようになったも言われています」 「はい...」茜が、胸元に手を置いた。「そんなことが、雑誌に載っていましたわね...」
<参考文献: 日経サイエンス/2012.09/・・・特集・ヒッグス粒子・・・>
ス粒子”も発見されたというのに...」 「ああ、はい...」関三郎が、満面で顔を崩した。「それは、全く問題はありません... そうですね...先日、最後の...“未発見粒子・・・ヒッグス粒子”、が発見された様子です。しか し、基本的スタンスは変わりません。【標準理論】の体系が、より完璧に近づいたということでしょう。 ただし...【標準理論】も、究極の理論ではないかも知れないということです。その場合、それを超 える【超対称性理論】が...現実味を帯びてくるということです...」 「うーん...【超対称性理論】というのは、何かしら?」 「そうですねえ... “ヒッグス粒子”については、あと数カ月もすれば、正体がはっきりしてくるでしょう。その時に、《別 のページ》を設け、あらためて考察することになると思います。企画の響子さんも、ニュースを見なが ら、そんなことを言っていましたから、」 「ふーん...」マチコが、うなづいた。「そうなんだあ...」 「が...」関三郎が、白い歯を見せた。「せっかくですから、少し説明しましょうか...ハハ...予備知 識も必要でしょうから...」 「あ、はい...」マチコも、にっこりと笑い、髪をしぼった。
「ええと、ですねえ... “ヒッグス粒子”を発見したのは...スイス/ジュネーブの郊外/レマン湖の近くにあり...スイス とフランスにまたがって位置する、CERN(欧州合同原子核研究機構/)のLHC(Large Hadron Collider/大型ハド ロン衝突型加速器)です。 LHCは...まず中型加速器(PS)と、スーパー陽子シンクロトロン加速器(SPS)で...陽子を“光 速の・・・99.999997%”まで加速します... この針のように細くした、“陽子バンチ・・・濃密な細長い塊”を...周長27km/東京の山手線ほ どの超大型加速器に取り入れ...それぞれ別々の方向へ、さらにエネルギーを10倍ほど高め... 約10時間...正面衝突を起こすわけです。 双方のエネルギーを合わせて、衝突エネルギーは2倍になるわけですね。これが、今回の発表の 段階で4TeV(/TeV=テブ/テラ・電子ボルト・・・1兆電子ボルト)...衝突エネルギーは2倍の8TeVになるわけ です。 もう一度、別の角度から言うと...逆向きに加速した、40億個の陽子の塊/ビーム・バンチを... 正面衝突させるわけですね。リング内では、光速近くまで加速された陽子は...相対論的効果で進 行方向に沿って縮むので...球形ではなく、平たい円盤のようになっているそうです。その円盤と円 盤が濃密に、“検出器”のところで激突し、陽子が破壊されるわけです... この陽子どうしの激突で、陽子が破壊されるわけですが...陽子というのは、3個のクォーク(/陽子 は2個のアップ・クォーク と1個のダウン・クォーク・・・中性子は、1個のアップクォークと2個のダウンクォークからなる )が、グルーオン で結ばれている複合粒子なわけですね。したがって、実際の衝突は...クォーク同士や、クォークと 反・クォーク、グルーオン同士など、様々なケースがあって...ここから、“ヒッグス粒子”も生み出され ると、予測されて来たわけです...」 「はい...」マチコが言った。 「それで...」関三郎が、モニターの方に目を投げた。「発見されたわけですが... “ヒッグス粒子”は...約10−21秒という非常に短時間の間に、“質量の小さな・・・別の粒子”へと、 崩壊して行くわけです。 そして...この“検出器/巨大検出器”には...オール・ジャパン体制で参加している“ATLAS (総重量約7000トン/総工費約600億円)”と...“CMS(鉄を大量に組み込んであるため、総重量は約1万2500トン)”がある わけですね。これらは、違う方法で、同じものを追いかけているわけですが、性能的には互角のようで す...それぞれに参加している国や大学も均等で、双方とも3000人ほどが従事しているようです」 「あ、そうなんですか...」茜が言った。 「そうです...ま、詳しいことは、関係ホームページ等で、確認してください」 「はい...」茜が、頭を下げた。 「さて... この“ヒッグス粒子”の崩壊には...幾つかのパターンがあると予想されて来ました。まあ、その予 想/予測に沿って...崩壊のエネルギー・レベル周辺にあたりをつけ、調べていたようです。 ちなみに、“ヒッグス粒子”は...次の5つのパターンに、崩壊して行くと予想されています...
**************************************************************************
A Z粒子2個に崩壊・・・ Z粒子は、さらに、電子と 陽電子のペア...または、ミュー粒子と 反ミュー粒子 のペアに崩壊する。 B W粒子2個に崩壊・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <ボーズ粒子への崩壊> (ボーズ粒子・・・素粒子の間の相互作用を媒介する粒子/力を媒介する粒子・・・スピンが0か、正の整 数の粒子。光子は・・・電磁力を担うボーズ粒子。Z、W−、W+は・・・弱い相互作用を担うボーズ粒子)
C ボトム・クォークと、反ボトム・クォークに崩壊・・・ D タウ粒子と、反タウ粒子に崩壊・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <フェルミ粒子への崩壊> (フェルミ粒子・・・物質を構成する粒子。スピンが 1/2の粒子。電子、ニュートリノ、クォークがある。 陽子や中性子は・・・クォークやグルーオンからなる複合粒子 ) (ボトム・クォークと、タウ粒子は・・・いずれも、負の電荷をもつ )
**************************************************************************
...ということですね。そして、この陽子/・・・素粒子の崩壊を観測するのが...“巨大検出器” の“ATLAS”と、“CMS”です。それから、この5つの崩壊パターンは、大きく2つに、分けられるとい うことです。 1つは、@ A B で...これらはいずれも、“ボーズ粒子への崩壊”です。そして、もう1方は... C D で、これらは、“フェルミ粒子への崩壊”であり...このボトム・クォークとタウ粒子は、いずれ も、“負の電荷をもつ”...ということです。何故、こうなのかということですね...今後の研究課題に なるのでしょうか...」 「うん...」マチコが、うなづいた。 「そして、いいですか... 2012年7月4日に発表された“新粒子/h”は...“ATLAS”と“CMS”とも、@ A の崩壊パタ ーンに関するデータなのだそうです。そして、今年末までの実験で、世界中の研究者が注目している のは、検出器でシグナルを得るのが難しい... C D の崩壊パターンのデータなのだそうです。この 崩壊を確認したい、というわけですね... ああ、そうそう...“ヒッグス粒子”は...“h” の他に “H−”、“H0”、“H+”が予想されています。 詳しいことは、これから話題になってくると思います」 「うーん...そうかあ...」 「ま... 結果がどの方向へ向くとしても、これが確認されれば、“ヒッグス粒子”というものの実態が分かって 来るそうです。【標準理論】を完全なものにするか...【超対称性理論】に向うものになるかが... はっきりして来るのだそうです...ま、近々分るわけですから、これぐらいにしておきましょうか...」 「あの、三郎さん...」茜が言った。「【標準理論/素粒子の標準モデル】が、予言している“ヒッグス 粒子”は、1種類ではなかったかしら?」 「そうです...」関三郎が、うなづいた。「だから... それを超えるものが、【超対称性理論】に向うわけです。そもそも、CERN(欧州合同原子核研究機構/) のLHC(Large Hadron Collider/大型ハドロン衝突型加速器)は、その“超対称粒子”を発見することが、建設の 目的の1つにあるようです」 「“ヒッグス粒子”ではない、他の“超対称粒子”をも探していると...」 「そのようですね... 今後、2013年に改修工事を行い、2014年からは、これまでの衝突エネルギー/8TeV(8テブ/8 兆電子ボルト)から、14TeVに引き上げ、実験して行くていくそうです...まあ、いずれにしても、“はっき りする”と言いながら、ますます複雑化して行くのが科学です...ハハ...」 「はい...」茜が、大きくうなづいた。「“ヒッグス粒子”は...そんなことになっているのですか、」 「まあ...ザッと、論文に目を通しただけですが...」 「うーん...」マチコが、頭をかしげた。「あ... 重力子(グラビトン)も...まだ見つかっていないのではなかったかしら...?」 「うーむ...」関三郎が、頭をツルリと撫でた。「これも、微妙な問題です... 重力が量子化できるものなら...重力子(グラビトン)が発見できるということです。そして、これも“ヒッ グス粒子”と同様に、力を媒介する粒子であり...ボーズ粒子ですね。 現在、重力子を補足するための、重力波・望遠鏡が稼動しています。“大型低温・重力波望遠鏡 計画/KAGRA計画”が...岐阜県/飛騨市/神岡町/・・・神岡鉱山の地下深くで動き出していま す。したがって、むろん、グラビトン(重力子)を補足するつもりでしょう。 ここはニュートリノで有名な、“カミオカンデ”や“後継/スーパー・カミオカンデ”のある所ですね」 「あ、そうなんだあ...」マチコが、手を打った。「前に、そんなことを言っていたわよね、」 「ともかく... “ヒッグス粒子”についても、これから研究が活発化してきますから、詳しく考察して行きたいと思い ます。が、ここでは、ともかく...“宇宙定数”について、考察しましょう」 「うん!」マチコが、コクリとうなづいた。「そういうことよね...」
<宇宙定数・・・宇宙項の係数とは・・・?>F
いわゆる...現在の人類/人類文明に見えている物質は...全宇宙の質量/エネルギー組成 の、わずか4% にすぎないのだそうです。したがって...96%は、肉眼で捕捉可能な可視光におい ても、科学/技術を総動員した観測装置を使っても、見えていない状態と言うわけです。まあ、現在、 未知のエネルギーを補足する、幾つものプロジェクトが大車輪で動き出している様子ですが。 ええ、ともかく...96%のうち23% は...いわゆる、“暗黒物質”(ダークマター/dark matter/光学的に観 測されず・・・人間が見知ることが出来る物質とは、ほとんど反応しない・・・)であり...あとの73% は、“暗黒エネルギー” (dark energy/・・・真空のエネルギーが、有力候補の1つとされている)と呼ばれるもので...これが、“宇宙定数”に相 当する質量のようです」 「ふーん...」マチコが、「ミミちゃんの頭に指を置いた。「そうかあ...」 「いずれも...正体はまだよく分っていません... 【特殊・相対性理論】で...質量とエネルギーが等価(/同値)であることが導かれているので... これは同じ意味なのです。“暗黒物質”と“暗黒エネルギー”は、日本語では極めて似ていますが、英 語では、“dark matte”と“dark energy”となるわけで、明確に違う分類です。これは、日本語訳のネー ミング(名前付け)が、少々ややこしかったわけですね...ま、それを承知していればいいわけです」 「ねえ...」マチコが言った。「三郎さん... そもそも...“宇宙定数”というのは、何なのかしら...?自分から言い出して置いて、何なんだけ ど...どうも、よく分からないわけよね...詳しく説明してもらえないかしら、」 「ああ、はい...」関三郎が、2度うなづいた。「詳しく説明するには、計算式が必要ですが...まあ、 計算式抜きで、分かりやすく説明してみましょう」 「はい、」マチコが、いすを引いて座り直した。 「これは...」関三郎が、モニターのマウスを動かした。「そもそも、分からないモノなんです... アインシュタインが喝破し...さんざん迷った“宇宙定数”(うちゅうていすう/cosmological constant)というの は...【一般・相対性理論】の“重力場方程式”の中に導入した“宇宙項”(うちゅうこう)の...“係数/ 比例定数”なのです。 つまり...粘性率や膨張率や弾性率などの係数と同様です。宇宙空間に関わる、係数なのです。 したがって、これは...いわゆる、スカラー量(スカラー: 大きさのみを持つ量のこと・・・大きさと、向きを持つ、ベクトルに 対比する概念)です」 「ふーん...」 「いいですか...」関三郎が、椅子の背に片腕を掛けた。「【一般・相対性理論】は、1916年に発表 されたわけですね... そして、1917年の論文では...アインシュタインは、“宇宙項・・・を新たに導入した・・・重力場 方程式”...を発表しているわけです。 ここでは、“宇宙定数”をわずかに“正”とし...“万有・斥力”を導入することで...質量が持つ “万有・引力”に拮抗させ...“= 定常宇宙 =”を導いています...」 「“= 定常宇宙 =”...?」 「そうです...“静かな宇宙/変動のない静的宇宙”のことです... 【一般・相対性理論】の“重力場方程式”は、よく知られているように、“アインシュタイン方程式” とも呼ばれています。この方程式を、素直に解くと、“宇宙は・・・膨張している”、という結果が導か れます。これは、現在では、ごく普通に受け入れられている、一般的概念ですね... ところが、当時...アインシュタインはこの結果に仰天したそうです。“方程式の解は・・・信じが たく・・・受け入れがたい”...ものだったようです。 アインシュタインは科学者ですから、むろん天動説ではなく、地動説を信じていたのでしょう。しかし、 さしずめ...天動説の中で暮らしていた、中世/ガリレオ時代の教皇のような、驚天動地(きょうてんどう ち)だったのでしょうか...ハハハ...」 「うーん...天動説かあ...」 「そこで、アインシュタインは... 自ら作った“重力場方程式”に...“宇宙項”と呼ばれる“項”を付け足すという、改造を加えたので す。そうやって、“膨張しない・・・静的な宇宙・・・定常宇宙・・・”の“重力場方程式”を、再度発表し たわけです。下に示すのは、その2つの...“重力場方程式/アインシュタイン方程式”です...」
最初のアインシュタイン方程式
********************************************************************
「ええ... つまり... 数”...ということですね。 くり返しますが...これは、粘性率や膨張率や弾性率などと同様の、係数になります。したがって、 大きさのみのスカラー量で表現されます。ベクトル量のように、力と方向を持つ量ではないわけです。 では、この正体は何かということになると...それほど膨大なエネルギーとなると...空間自体が 持つ...“真空のエネルギー”...に相当すると推定されるようです。しかし、観測・科学や実験・科 学で、捕捉されているものではないわけです」 「うーん...」マチコが、コクリとうなづいた。「重力子(グラビトン)/重力波と、同じなんだあ...」 「そうですね... 【量子論/標準理論】は...エネルギーというのは、無限に分割できる滑らかなものではなく... “量子/粒子”のように...具体的には電子や光子のように...“1個づつ数えられる・・・集合体”か らなっている、とする理論です。 電気や光のエネルギーは...“粒子性”という立場から細かく見ていけば...電子や光子の集合 体であり...相補性の“波動性”の立場から眺めれば、波/電磁波とも見えるわけですね...ただ し、その両方を、同時には、観測できないという...」 「はい...」 「そして、いいですか... “真空のエネルギー”...真空のもつ“マイナスのエネルギー”というものを考える時...まあ、こ れれは、“量子重力理論”から来るようですが...空間そのものの、量子化/空間の最小単位/プ ランク・スケール(プランク長:10−33/cm)というものも考えられるようですねえ。 さらに...時間も量子化すると...時間子などという時間粒子も想定でき、最小の時間単位(プラ ンク時間:10−43/秒)...というものも、考えられるとか言います。 つまり、物理学の背景となる...時間と空間も量子化すると...最小スケールの時間や空間とい う概念がでて来るようです...参考のために、こういう概念もあるということを、頭に入れておいてくだ さい」 「でも、さあ...」マチコが言った。「空間や時間の最小単位なんて、あるものなのかしら...?」 「私も...」茜が、うなづいた。「思いますわ... 時間や空間というものが、プランク・スケールの粒子のようなものと言われても、違和感があります わ。ここは、その方向へ行くのではなく...“心の領域との・・・親和性”...に向かうべきではない のかしら...」 「さあ...」関三郎が言った。「面白い所かも知れません...」
「ともかく...」マチコが言った。「“= 定常宇宙 =”というのは、さあ...昔からの...静かな宇宙 観だったわけかあ...アインシュタインは、それを求めていたわけね、」 「まあ...」関三郎が、椅子の背に体を引き、うなづいた。「そういうことです... 現在は...“ビッグバン理論/ビッグバン仮説”が有力になっていて...こっちの方が、【標準的・ 宇宙論モデル】、になっています。 したがって、現在は、“= 定常宇宙・論 =”は、“非/標準的宇宙・論”の1つとなっています。こ んな主張を通すために、アインシュタインは“宇宙項”を加えたわけです。おそらく彼の心には、美しく 深遠な静的宇宙が、確固たるものとして描かれていたのでしょう。 アインシュタインは、そうした思いが非常に強かったように思います。そして、若い頃はそれが良い 方へ作用したようですが、その後は、それが仇役(かたきやく)の方向へ作用したようですね。あ、このこ とについては、“漫才定数・説”とも関わってきますので、後で考察します」 「ふーん...」マチコが、ミミちゃんの背中をなでた。 「“= 定常宇宙・論 =”というのは...」関三郎が言った。「ええ... “初期の・・・単純な静的宇宙観”から...天文観測的な観測事実と突き合わせ、時代と共に定義 が変化して来ています。最近では、“宇宙の・・・膨張加速”という予想外の観測結果を受けて、“= 準 /定常宇宙・論 =”というものも、構築されているようです...」 茜が、静かにうなづいた。 「ともかく...」関三郎が言った。「“= 定常宇宙・論 =”というのは... “宇宙は膨張しているが・・・無からの物質の創生により・・・任意の空間の質量は、常に一定に保 たれ・・・宇宙の基本的構造は、時間によって変化する事はない・・・”、とする宇宙モデルになります」 「うん、」マチコが、うなづいた。 「この...」関三郎が、続けた。「“= 定常宇宙・論 =”は... 【一般・相対性理論】のもとでは...“= 定常宇宙/静的宇宙 =”は、存在できないという理論 計算があり... また、“宇宙膨張/動的宇宙”を示す...エドウィン・ハッブル(アメリカの天文学者: ハッブルの法則を発見。アメ リカのハッブル宇宙望遠鏡は、彼の業績にちなんで命名された。ノーベル賞受賞の通知を受ける直前の1953年9月28日に死去。ノーベル賞 は存命者のみに与えられるため、ハッブルは受賞できなかった。死後、受賞者に内定していたことが彼の妻に知らされた。これ以前は、天文 学はノーベル賞の対象外だった・・・)の観測・結果などを受け...新たに考案されたものですね。 それでも、なお、アインシュタインは、“= 定常宇宙 =”を、主張したかったわけでしょう...また、 “観測的に・・・きわめて平坦に近い・・・宇宙空間”...ということも、あったわけですね。“心という ものが・・・分割・排除された・・・物理的・宇宙空間”...では、そういうことになったのでしょうか、」 「うーん...」マチコが、首をかしげた。
「ええ... アインシュタインの没年は1955年です...ハッブルよりは、2年ほど先まで生きたわけですかね。 ともかく、物理学的にも天文学的にも、“原子爆弾を創出した”という意味でも、まさに、〔激動の・・・ 20世紀〕でした...また、“2つの世界大戦”があり、戦争の歴史が集大成された、20世紀でした。 そして今、その時代が終わりを告げ...“文明の第3ステージ/意識・情報革命”の時代が...幕 を上げようとしています。今回の、“ミッション/永田町・考”/“永田町/妖怪憑依・説” VS “漫才 定数・説” は...そうした意味でも、新時代を切り開いていくテーマかも知れません...」 「はい...」茜が、口にコブシを当てた。「“霊魂”を...学問の俎上(そじょう/まな板の上)に上げていくと なれば...当然、そうかも知れませんね」 「その通りです...」関三郎が言った。
「ええと...」茜が、モニターを見上げた。「あまり、話を拡散させないでおきましょう...」 「ハハ...さうですね、」 「つまり...」茜が言った。「宇宙が膨張しているのは認めても... 無から...有/物質の創生が常にあり...膨張はしていても、空間質量は常に一定に保たれて いて...“= 定常宇宙/静的宇宙 =”は、それでも、ここに、存在している、ということですね?」 「そうです...」関三郎が、宙を見て、つるりと頭を丸く撫でた。「“= 定常宇宙・論 =”では... 宇宙膨張にもかかわらず...“宇宙は・・・時間とともに変化しない”...と主張するわけです。そし て、この主張が成り立つためには...“宇宙・密度を・・・不変に保つ必要”があり...そのためには、 “新しい物質が・・・時間ととも・・・絶えず生成されている”...という必要があるわけです...」 「うーん...」マチコが、肩を揺らした。「複雑なことを言うわよねえ... アインシュタインは...ともかく、“= 定常宇宙 =”を導くために...“宇宙項”を、“重力場方程 式”に入れる必要があったわけかあ...」 「ま、そういうことです... 最初は、1917年のことですから、20世紀・初頭の宇宙観です。ところが、その後、クエーサー(準星 /準恒星状天体/大きな赤方偏移を持つ・・・これはクエーサーが、地球から高速で遠ざかっていることを意味する)などの観測によっ て、宇宙膨張が明確になってきました。 アインシュタインは...“重力場方程式”に“宇宙項”を導入したことを...“生涯で・・・最大の過 ちだった・・・と痛烈に後悔した”...いう有名なエピソードがあります。相当に悔しがったのでしょう。 ところが、ハハ...この話には、続きがあるのです。 【標準ビッグバン・宇宙モデル】の初期条件を説明する...“宇宙インフレーション・モデル”、と いうものが考案されました。一度は、耳にしたことがあると思います。これは、“宇宙初期に・・・時空 が指数関数的な・・・大膨張を遂げた”、とするものです。 ところが、その原理は、“宇宙項に相当する・・・莫大な真空エネルギー・・・巨大斥力”、を背景 としているわけです。つまり、ここで再び、“宇宙項”が復活して来るわけです...ハハ...」 「うーん...どういうことかしら...?」マチコが、聞いた。 「つまり...」関三郎が、頭の後ろに手を当てた。「アインシュタインが... “生涯で・・・最大の過ちとして・・・痛烈に後悔した”...と表明したコトが...今度は逆の方が ひっくり返り、さらに裏目が出たということです。つまり、“宇宙項”の導入は、“先見の明があった”と なったわけですね。が...アインシュタインは、それを大いに後悔していたわけです、ハハ... 後半生のアインシュタインの業績は、まさにこうした...“ボケ/ツッコミ・・・のエネルギー”... が強大かつ典型的に作用していた様子です。ま、これは、あとで考察します...」 「“宇宙定数”ではなく...」茜が、アゴを上げて、宙を見た。「...“漫才定数”の方ですか...?」 「うーん!」マチコが、感動して、同意した。 「ハハ...ま...本当に、どうしたものですかねえ... 【量子論】の生みの親でありながら...【不確定性原理】を疑って、まだ発見されていない、“未知 の変数”があると信じ...あるいは、非局所性の“量子もつれ”を嫌い...【ベルの定理】という数学 的/科学的深淵を、結果的に導き出しているわけですね、」 「そうですね...」茜が言った。「あ...【ベルの定理】は、ええと...アインシュタインが没して、9年 後の1964年の発表ですね」 「うーん...」マチコが、椅子の背に上体を倒した。「何を...やっていたのかしら、」 「そこに...」関三郎が言った。「“漫才定数”が作用していたとしても... ともかく、アインシュタインの功績でしょう...ハハ...彼がいなくては、【相対性理論】も、【量子 論】も、ここまでの発展はなかったでしょう。仇役がいて、主役が引き立つわけです。アインシュタイン の場合は、最初は圧倒的な主役を演じ...それが確立されると、圧倒的な仇役に回り...現代物理 学を盛り上げたわけです」 「ふーん...面白いキャラクターよね、」 「そうですね...」茜が、顔をくずした。「人類の、文明史の上でも...」 「うん!」マチコが、大いに納得した。
「はい!」マチコが言った。 「近年... 遠方の超新星の観測結果や...宇宙マイクロ波背景放射(CMB=cosmic microwave background/ 宇宙背景 放射/3K背景放射)の観測結果から...宇宙は、加速度的に膨張していることが明らかになって来てい ます。 この加速・膨張を説明するメカニズムとして...また、“宇宙項”の存在が支持されています。そし て、“宇宙定数”の源の有力候補として...“真空のエネルギー”が挙げられているわけです...」 「ふーん...」マチコが、トン、トン、とテーブルをたたいた。「...“真空”かあ...」 「そうです...」関三郎が、口の上に手の平を当てた。「“真空”です... 宇宙空間は、“超真空”などとも呼ばれますが、“宇宙定数”の導入で...物質の存在しない宇宙 空間にも、“空間自体が持つ・・・莫大な真空エネルギー/dark energy/負のエネルギー”... が充満していることになっています。 膨張している宇宙空間は、膨張そのものが莫大なエネルギーを創生しているわけです。まあ、当 然、【エネルギー保存の法則(熱力学第1法則/ある孤立系の中のエネルギーの総量は変化しない)】には反している わけですが...こうした宇宙論は、孤立系が破れているのかも知れません...」 「ふーん...」マチコが、首を揺らした。「...そういうことかあ...でも、何となく...ヘンよねえ、」
「ええと...」関三郎が、モニターに目を落とした。「ともかく...話をもどしますが... “暗黒物質”(dark matter)ではなく...見えていないエネルギーの73% に当たる、“暗黒エネルギー” (dark energy)の方が...“宇宙定数”のエネルギーに相当すると考えられます。しかし、こんなものを、 宇宙論/【一般・相対性理論】/“重力場方程式”=アインシュタイン方程式 に導入しては...
「それで...」マチコが言った。「アインシュタイン自身が...自分が導入した“宇宙項”を、否定した わけかあ...」 「うーむ...そのようですね... アインシュタインは、ユダヤ人で...“神の存在”...を深く信じていたようです。いずれにしても、 我々よりも何倍も深く...“大宇宙の深淵を見つめ・・・神を信じ・・・大自然の中の美しい秩序”、 を見つめていたわけです...軽々に笑うわけにはいきません...」 「うーん...」マチコが、うなづいた。「何倍も深く...かあ...」 「そして...」茜が、腕組みをし、脚を組み上げた。「このストーリイには...奇妙な所がありますわ」 「というと...?」マチコが、茜の方に肩を向けた。 「ストーリイが...」茜が、額に手を当てた。「アインシュタインの... “霊魂・・・人格・・・人間的ストーリイ”が...【人間原理ストーリイ】の標準関係性の中で...特 殊な高いポテンシャル・エネルギーを示しているということです。それが、間違った方向であっても、高 いポテンシャル・エネルギーが、人類文明に大きな影響を与え続けているということです」 「それが...」マチコが言った。「つまりさあ... “漫才定数”から来る、“ボケ/ツッコミ・・・のエネルギー”...の、1つの実証ということなのかし ら...?」 「いえ...」茜が、首を振った。「もちろん、確証などありません。そうした検証が、始まっていくというこ とです」 「アインシュタインは...」関三郎が言った。「悩んだ末... 確信的に...反対方向へ反対方向へと、舵を切って行ったということです。面白いですねえ。これ は...アインシュタインの、宗教性や、人間性や、人格の特殊性によるものかも知れません。ともか く、面白いです...」 「そうかしら...」マチコが行った。 「ここは...」関三郎が言った。「茜さん... 新理論を創設する立場/【茜・新理論研究所】としても...ただ単に、笑い過ごせる話ではありま せんね。この“ストーリイの・・・創生”は、【人間原理ストーリイ】の大局から、再検討してみる必要が ありそうです」 「はい...」茜が、うなづいた。「それは、次の課題になりますわ、」 「うーむ...そうですね...」 「アインシュタインの人格かあ...」
「ハハ...」関三郎が、顔を和ませた。「アインシュタインは... “神は・・・サイコロを振り給わず”と言って...【量子論】の不確実性 ...つまり、【不確定性原 理】や...局所原因性を否定する“量子もつれ”を、非常に批判したわけです。しかし、どうも“神様” は、ギャンブルをも嗜(たしな)むし...漫才も好きな...砕けた人格のようでした...ハハ... あ...しかし...これはあくまでも、“現・パラダイム”では...アインシュタインにとっては分が悪 いということです。“神の懐”は...もっと、もっと...“はるかに深い”のでしょう...」 「それでさあ...」マチコが言った。「三郎さんは、どう思うのかしら...?」 「ああ、はい...そうですねえ... 私の見解は...【人間原理ストーリイ・・・今の領域の・・・開放系ストーリイ】 は、“過去・現在・ 未来の方向から・・・また別の次元からも・・・多方面の衝撃を受けている”...と、おぼろげに、 感じています。まあ、そう考えているということですね、」 「ふーん...」マチコが、肘を抱いた。 「ハハ... 今頃...アインシュタインは、天国でどう思っているのでしょうか...頑固なようですから、おそら くは、自説は変えてはいないのでしょうか...?」 「うーん...それは、ありうるわよね、」 「ええと...」茜が言った。「それでは...次は、“漫才定数”の方ですね、」 「はい!」マチコが、うなづいた。「その背景にある風景として... “霊魂が介在する座標系の・・・共時性/意味のある偶然の一致・・・過不足のない真理空 間”...を考察します」 「“共時性”(英語: Synchronicity/シンクロニシティ) は...」茜が言った。「ユング心理学に出て来る言葉です ね... したがって...本来なら、< 囲なのですが、表面的なことですので、私が説明します...」 「はい... 沙織さんは、響子と一緒に《軽井沢基地》にいるわよね。私の代わりまに、《万葉集の考察》に参 加しています」 「そうですね...」茜が、コクリとうなづいた。「ええと... “共時性”とは...非因果的な複数の事象の生起を決定する法則原理として...これまで知られて いた“因果性”とは異なる原理として...カール・ユング(スイスの精神科医・心理学者/1875年 〜 1961年/深層心 理について研究・・・フロイトを師とし、ユング心理学を創設)によって提唱されたものですね。 つまり...複数の事象が、“意味・イメージ”において...“類似性・近接性”を見せる時、このよう な複数の事象が...従来の因果性では、何の関係も持たない場合でも、これを、“共時性/シンクロ ニシティの作用”と見なす...わけですね、」 「うーん...」マチコが、うなった。「よく分りませんが、分りました... ともかく...そういう方向で、考察を開始します。あ、ページが長くなってしまったので、 新しいペー ジを作成し、<第2部>とします。ご期待下さい!」
|