Menu環境.資源.未来工学環境・生態系(高杉・海洋研究所)メタンハイドレート巨大・メタンプルーム
                巨大・メタンプルーム       

          上越市沖 (/ 新潟県)               

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード               担当 : 里中 響子(代理)

    INDEX                    wpeA.jpg (42909 バイト)    index292.jpg (1590 バイト)     

プロローグ   2006. 8.18
No.1 〔1〕 日本海・上越市沖巨大メタンプルーム 2006. 8.18
No.2 〔2〕 解明されてきた実態 2006. 8.18

   

   参考文献   日経サイエンス /2006 - 08

              < NEWS SCAN >   

              見えてきたメタンハイドレートの実像     

                    メタンハイドレート とは、“ 大量のメタンを内包した深海底の氷 ”です

  プロローグ                 

「お久しぶりです。里中響子です。残暑、お見舞い申し上げます...

  ここは、【軽井沢・基地局】...私は、例年のように、ここで静養しております。他の

スタッフのみなさんは、大変お忙しそうですね。そんな折、私の担当する“企画・総合

管理センター”に、メタンハイドレートのニュースが入って来ました。

  もちろん、これは一連企画として、やらなければならないものです。責任は、私にあ

ります...あ、私のいつも居る“危機管理センター”は、“企画・総合管理センター”

の下に位置ていします...

  ええ...“メタンハイドレート”のページは、堀内秀雄白石夏美の担当なのです

が...お二人とも、“海洋の激変”の仕事で、お忙しそうです。したがって、今回は特

別に、私が引き受けることにしました...

  それから、長野県・白馬村にいた、“第2編集室/国際部・担当”北原和也さん

にも、急遽、軽井沢まで来てもらいました。ええ、今回は、私たち2人で行いますので、

よろしくお願いします。

  ええと...北原さん、よろしくお願いします。白馬村はどうでしたか?」

「夏休みに入ったので...」北原は、日焼けした額の汗をぬぐった。「何処へ行って

も、子供たちが目につきますね...」

「そうですね、軽井沢も同じです...ええ、では、始めましょうか、」

「はい!」

 

〔1〕 日本海・上越市沖巨大メタンプルーム

               

 

「ええ...」響子が、壁面スクリーンを見上げながら言った。「日本海...新潟県...

上越市の沖...このあたりですね...」

  響子は、スクリーン上で、ポイント・マーカーをくるりと回した。

「そうですね...佐渡能登半島の中間あたりですか...」北原が言った。

「はい...この上越市沖の深海底で...“巨大メタンプルーム”が何本も発見されま

した」

  響子は、コントローラーで、モザイク画像を拡大した。

「これは...魚群探知機がとらえた、“巨大なメタンの気泡の柱”の画像です...

900〜1000mの暗黒の海底から立ち昇っています...直径数十m高さは

600mにも達し...水深300mのあたりで消滅しています...」

「すごいですね...こんなものすごい気泡の柱が、上越市沖で発見されたわけです

か?」

「そうです...

  気泡は、10本近く確認されているようです。うーん...まさに大ニュースですわ。

壮大な話ですね...オホーツク海で見つかったメタンプルームは、高さ500mと言

われていますから...それよりもさらに巨大なものということですね...」

メタン/CHは確か...」北原が言った。「二酸化炭素/COよりも、はるかに強

力な温室効果ガスではなかったでしょうか?」

「そうです...

  CHCOよりも、“20倍も強い温室効果”をもたらします。ただ、これは自然界

で発生しているもので、文明が関与しているものではありません...」

「しかし、これだけ大規模に発生していると、実質的に、地球温暖化にも影響してくる

と思いますが、」

「確かに、そうですわね...

  この“巨大メタンプルーム”は、水深300mほどで消滅しています...実際に、ど

の程度が海水に溶け込みどの程度が大気中に放出されているのか、本格的な調

査が進むのは、これからなのでしょう...地球規模で、どのぐらいの総量になるのか

も、大問題になります...

  メタンハイドレートは、既存の化石燃料の2倍以上の埋蔵量があると推定されてい

ますが、急速な温室効果の元凶として働くかも知れません...

  これは、以前、“メタンハイドレート”担当の堀内さんから聞いた話ですが...地

球生命圏の“ホメオスタシス(恒常性)が、文明を排除する方向に傾いたら、これも1つ

の有効な手段になると言っていました...」

「手段...ですか?」

「そうです...

  文明の拡大と、過度なグローバル化によって、人類にとっては新興感染症存亡

のカギを握るほどの脅威になっています...エイズインフルエンザエボラ出血熱

新型肺炎・SARSなどです...こうしたものは、今後も続々と出現してくることが予想

されています。

  こうした生態系の“ホメオスタシスアイテム(品目)の1つとして、眠っている巨大

メタン”もあるというのです...バランスとしては、“非常に微妙な結晶体”として、

地球の深海底で安眠状態にあります...その膨大な量が問題ですわ...」

「ふーむ...」

「高杉・塾長も...この地球という、“生命圏の成立そのものに深く関与”しているの

かも知れない、と言っていました...そう言えば、この地球生命圏は、確率論的に言

えば、存在しないと思われる...まさに、“奇跡的な場”です...

  でも...その“奇跡的な場”が...まさにここに存在するという事実から...全て

が始まっているのです...それだけが、動かしがたい事実なのですわ...分るかし

ら?」

「はい、分ります...

  塾長から、直接聞いたことがあります...“人間原理”の立場ですね...このホ

ームページの名前の説明の折りに、しっかりと聞きました...十分に理解できてい

るかどうか、分りませんが...」

「そう...」響子は、窓のむこうの、高原の夏空を眺めた。真白な入道雲が、眩しく輝

いていた。「それが分っていれば、大丈夫です...次第に、理解が深まって行くでしょ

う...」

「はい...しかし、地球には、大変なものが存在するんですねえ...」

「うーん...そうですね...」

「こんなものが...深海底の不安定な地形に、大量にあるとしたら...まさに、問題

でしょう...温暖化ガスとして、大問題ですね」

温暖化ガスとしての効果は...」響子が、少し首をかしげた。「メタンとして、大気中

に放出された場合ですね...いずれにしても、メタンハイドレートは、地球温暖化を促

進する要因として、今後、地球環境問題重要なテーマになって来るでしょう...

  5500万年前の、新生代/古第三紀暁新世(ぎょうしんせい).../その“始新世・温暖

化極大”...この時に、メタンの大放出が起こったと推定されています。この時に起

こったメタンの大放出は...現代文明が吐き出している、二酸化炭素/CO量的

速度に匹敵する...と堀内さんが言っていました...」

「それで...その時、地球環境に、どのような事変が起こったのですか?」

地質学的痕跡から...深海を熱波が襲ったようですね...水温は、6℃も上昇し

たようです。当然、非常に多くの生物種が死にました...有孔虫などです。私は、これ

以上の詳しいことは知りませんが...」

「ふーむ...」

「堀内さんが言っていました...私たちが参考にしたいのは、この急激な温暖化が、

“どのように収束したのか”ということだそうです...それが、現在の温暖化の暴走を

食止めるカギになると言うことです...」

「うーむ...何とも、膨大な話ですね」

「そうですね...

                

  ええと...本題の、巨大メタンプルームの話に戻りましょう...」

「はい、」

「最初に、上越市沖で巨大メタンプルームを確認したのは、調査船“海鷹丸”です。こ

れは、魚群探知機でとらえました...東京大学松本良・教授らによるものです。

  それ以後、“産業技術総合研究所”“海洋研究開発機構(JAMTEC)なども

参加し、大掛かりな調査が始まっています。無人潜水艇“ハイパードルフィン”が、近

くにある“ポックマーク”からメタンハイドレートを採取しています...」

“ポックマーク”というのは、何でしょうか?」

「はい...

  この、“ポックマーク”というのは、巨大メタンプルームの近くで発見された大きな丸

い凹みのことです。これは、メタンの大規模噴出によってできると考えられます。“ポッ

クマーク”は、ノルウェー沖の北海でも確認されています。でも、この上越市沖のもの

は、それよりもはるかに大規模なものです...」

「はい、」

「この上越市の臨海部は、直江津と呼ばれている所です。私も、訪れたことのある海

岸です...また、ボス(岡田)が若い頃によく登山した妙高山からは、その直江津の海

が、藍色のクレヨンで、強い弧を描いたように見えたと聞いています...

  うーん...その海は、まさに...メタンハイドレートに関する活動が、リアルタイム

で非常に活発な...特異な海だったわけですね、」

              

「里中さん...」北原が言った。「今回は、メタンハイドレートは2回目の特集と言うこと

ですが...そもそもメタンハイドレートとはどういうものなのでしょうか...もう1度説

明してもらえますか。私は、あまり詳しくはないもので...」

「あ、はい、そうですね...

  メタンハイドレーとは、“ 大量のメタンを内包した深海底の氷 です。メタン分子

水分子が結びついてできた、シャーベット状の物質です。これに火をつけると燃えるこ

とから、“燃える氷”とも呼ばれます。ちょうど深海底のような、低温高圧の状態で、

定的に存在するようです...」   (詳しくは、こちらへ)

「そんなものが...既存の化石燃料の、2倍以上も存在するかも知れないということ

ですね?」

「そうです...

  日本の近海では、太平洋側の各地で確認されています。しかし、日本海側で発見

されたのは、今回が初めてです...それから、日本以外では、太平洋大西洋

に近い所の深海底に、膨大な量が埋もれていることが、最近分ってきています...」

「うーん...日本周辺に多いわけですか...“人類が未利用の化石燃料”が、日本

周辺の海域に、大量に眠っているわけですか?」

エネルギーとしては有望ですけど...いずれにしても人類は、これ以上の化石燃

料の消費は、何としても控えるべきです」

「そうですね...しかし、現実に、日本は大量の原油天然ガスを輸入しているわけ

ですし、急速には、難しい所でしょうね、」

「そうですね...それは、政治的な課題だと思います...明確な、国家戦略が必要

な時だと思います」

「はい!」

〔2〕 解明されてきた実態  

              

 

「ええ...」響子が言った。「先ほども言ったように、メタンハイドレートは、これが2回

目の特集になります。前回は、2000年の3月でした。今は、2006年の8月ですから、

あれから6年余りが経過しているわけですね...

  その間に、相当にメタンハイドレートの実態も分って来たようです...担当の堀内

さんに代わってではありますが、私が簡単にそれを説明します...」

「はい...」北原が、作業テーブルの上の、壁面スクリーンのコントローラーを拾い上

げた。

 

メタンハイドレートを形成する、メタンのもとは...」響子が言った。「陸域から運ばれ

有機物です。陸近くの深海に堆積した有機物は、深海底下・数百mぐらいまでは、

微生物の活動によってメタンに変わります。それが、低温・高圧という条件下で、水分

と結びついて、メタンハイドレート/“燃える氷”になるのです...」

「うーむ...そうなんですか...」

「これが...“微生物分解起源・メタンハイドレート”です」

「はい、」

「一方、深海底下・2〜3kmまで埋まった有機物は、地熱によって熱分解され、メタン

が発生します。これが、深海底近くまで上昇し、そこでメタンハイドレートを形成します。

これが、“熱分解起源・メタンハイドレートです」

「うーむ...はい、」

「これら区別するには...メタンが含む、炭素同位体の比率を調べれば、すぐに分り

ますわ...

  ええと...炭素には、C12C13という安定同位体があります...そして、“微

生物分解起源・メタンの方は、“熱分解起源・メタンに比べて、12の比率が大きく

なります...それで、その、過去の履歴が分るわけですね」

「うーむ...なるほど、」

「量的には、“熱分解起源・メタンハイドレートの方が多いと推定されています。でも、

これまでに確認されているものの多くは、“微生物分解起源・メタンハイドレートなの

です。

  ところが、です...上越市沖のものは、意外にも、“熱分解起源・メタンハイドレート

なのですわ...この点でも、非常に特異な場所となっています...」

「うーむ、そういうことですか...」北原は肩を上げ、壁面スクリーンの、海原の写真を

眺めた。「それにしても、何故ここで、“巨大メタンプルーム”が発生しているのでしょう

か?理由があるわけでしょう?」

「そうですね...もちろんです...

  現在、分っている事は...この地域は大陸のユーラシアプレートと、東北日本が

載っている北米プレートがぶつかり合う、“境界”に近いのです。そのために地層が大

きく褶曲(しゅうきょく)していて、山や谷ができているわけです。

  巨大メタンプルームが発見された場所も、まさに深海底でも周囲よりも300mほど

盛り上がっている、山の部分でした...」

「ここは、海溝の斜面というわけではないのですね?」

「うーん...詳しいことは、このデータからは分りませんが...そのようですね...

  でも、この地域は、両プレートがぶつかり合い...その激しい褶曲で、地下深部

で、相当の“ひび割れ”が入っていると考えられます...この“ひび割れ”をつたわっ

て、深い所にある“熱分解起源メタンが上昇したのでしょう...」

「うーむ、」

「そして、深海底付近低温・高圧の環境下で、水分子メタン分子が結びつき、メタ

ハイドレート/“燃える氷”が形成されたものと考えられています...」

「なるほど...そうですか...」

新潟から秋田あたりの、日本海沖合...それから内陸部もそうですが...油田

ス田がありますね」

「そうですね...」北原が、壁面スクリーンの周辺地図を眺めながら、うなづいた。

“新潟地震(1964.6.16/M7.5/死者26)は...ボスも比較的近くで体験したと聞いて

います...あの地震の地面の液状化の原因の1つが、“石油の汲み上げ”だったと

言われています...

  つまり、これらの石油天然ガスも、褶曲による“背斜(はいしゃ)構造”に存在してい

るわけです。  “背斜構造”というのは、褶曲の山の部分ですね。メタンハイドレート

は、“ひび割れ”を深海底まで上昇してきて形成されているので...いわゆる“背斜

構造”に存在しているわけではありません...

  でも、この地域は、こうした化石燃料が存在している所だということですね...」

「はい...それで、中里さん...メタンハイドレートというのは、どのくらいの時間経過

で形成されているのでしょうか?メタンの形成から含めて、」

「うーん...難しい質問ですわ...

  “微生物分解起源・メタンハイドレートと、“熱分解起源・メタンハイドレート”安定

同位体の炭素の比率が異なるというのは、形成要因ばかりでなく、その時間経過も異

なるということでしょう...今後、様々な研究成果が発表されて来るのではないでしょ

うか」

「はい...この“未利用エネルギー”は、まさに研究途上だということですか?」

「そうですね...

  “音波”を使った地下探査データによると、巨大メタンプルームの近くにある“ポック

ーク”の下には、直径500m・厚さ120〜130m円盤状のメタンハイドレート層

が確認されています。どうやら、その層の下に、上昇してきたメタンガスが溜まっている

らしいですね...」

「それは、どういうことではょうか...メタンハイドレート層が、現在、まさに形成途上

にあるということでしょうか?」

「うーん...そう考えていいと思いますが、まさに今、研究の方も開始されたばかり

のようです。何も、断定できるような状況ではないと思います...

  でも...ともかく、地下深部から上昇してきたメタンは、この円盤状のメタンハイドレ

ート層に邪魔され...そこから少し横にそれたあたりから、巨大メタンプルームとな

って、何本も海底から噴出しているようですね...」

「うーん...まさに、非常に活発に活動している場所ですね、」

「そうだと思います...

  この巨大メタンプルームは、水深300mあたりで...樅(もみ)の木のてっぺんのよ

うに細くなり...海水の中で消滅しているわけです。いったい、どの程度が大気中に

放出されているでしょうか...

  仮に自然のサイクルのものであれ...大問題になると思います...CHCO

20倍温暖化ガスなのですから、」

「うーむ...これを、押さえ込むだけでも、相当な効果がありますね」

「うーん...そうですね...

  最終的には...堀内さんたちが現在進めているように...人類文明は、地下都

市空間に創設する、“人間の巣”へシフトして行くのだと思います...

  結局、文明形態を、生態系と協調する方向へ持っていかなければ、この問題は基

本的に解決しないからです。でも、今は、COを地中へ埋めてでも、減らそうとしている

時ですわ...この巨大メタンプルームは、何とかしたいものですね...

  でも、まず、実態を研究することですわ...」

「そうですね、」北原は、口にコブシを押し当てた。

「それにしても...疑問は幾つもあります...

  大気中への拡散比率だけでなく...この“ポックマーク”は、何時ごろ形成された

のでしょうか?きっかけは、何だったのでしょうか?巨大メタンプルームは、何時まで

続くのでしょうか?他にも、このような場所は、多数あるのでしょうか?」

「まだまだ、分らない事ばかりですね」

「そうですね...メタンハイドレートは、今後も地球規模での調査が進んで行くものと

思います」

「はい」

                

「ええ、里中響子です...堀内秀雄さんの代理でしたが、うまく説明できたでしょう

か...今回のレポートは、これで終ります。ありがとうございました。

  いよいよ、日本が騒然としてきましたが、どうぞ、今後の展開にご期待ください!」

                                                         <軽井沢より...響子>

 

 

                                                                       輸入天国ドット来夢   MID FLAVOR