「さて...」響子は、カーディガンのポケットに片手を突っ込み、窓の外に目を投げ
た。ポン助たちが、向こうの雑木林の方にいるのが見えた。色づき始めた雑木林の
上に、白い千切れ雲が流れている。
「ええ...」響子は、作業テーブルに目をもどした。「まず...日本人全体の肥満の
動向を、資料をもとに、もう少し詳しく述べておきましょうか...
日本人の平均・体格指数(BMI)は、20年前、10年前、現在、と比較すると、明
らかに増加しています。男性は、全ての年齢層で増加し、現在は全体の21.4%が
肥満度1(BMI:25〜30)に入ります。女性は50歳以上で増加し、全体の16.9%
が肥満度1となっています。
ちなみに、日本人の場合、肥満度2(BMI:30〜35)に相当する“高度肥満者”の
割合は、極端に少なくなります。これは、男性で1.85%、女性で3.0%にすぎませ
ん...アメリカでは逆に、肥満度2の男性は19.5%、女性は25%になります。この
あたりは、アメリカへ旅行された方などは、実感として分かるのではないでしょうか。
何故、このようなことになるのかというと、前にも言いましたように、日本人は肥満
に弱いということです。つまり、肥満度2に達する前に、日本人の場合は、たいてい
肥満症を引き起こし、それ以上は太れなくなるわけです...」
「うーん...なるほどね...」マチコは、膝の上のミケの頭をなでた。ミケは、耳を縮
め、頭をなでると目を細めた。
「ええ...ここに、面白いデータがあります...」響子は、パソコンのマウスを動か
し、クリックした。「1998年の日本人の1日の平均摂取カロリーは、1979kcal、20
年前は2167kcal...その差は、188kcal
。つまり、総摂取カロリーは、むしろ減
少しているわけです。しかし、肥満は、着実に増加しているのです。これは、何故だと
思いますか?」
「お肉を食べるようになったからかしら?」弥生が、あごに指を当てた。
「うーん、それもあるわね...つまり、食生活が、欧米化したということが考えられる
わけです。だけど、このデータを見ると...糖質の摂取量は、62.5%から57.5%
に減少しているのに対し、脂質の摂取量は、22.7%から26.3%に増えているわ
けよ。これは、私たちの食文化の傾向だと考えると、かなりダイナミックな数字だと思
います。
ちなみに、欧米では、総摂取カロリーにしめる脂質の割合は、40%にも達してい
ます。このため、欧米ではだいぶ前から、“糖質が高く、脂質の少ない食事”を推奨し
てきています。そして、そのモデルとなっているのが、日本食なのです。豆腐、寿司、
魚、ご飯、といったものが推奨されているわけです...」
「うーん...そっかあ...」マチコがミケの頭を押さえた。ミケが、スルリとマチコの膝
から、床に飛び降りた。「日本の食文化は、逆に欧米化していたわけよね。欧米では
日本食化していたのに、」
「響子さんが、日本食に帰るべきだと言ったのは、こういうことでしたのね」
「そうねえ、私が言っていたのは、少し意味が違っていたの。結果的には同じことだ
けど、私は日本古来の伝統文化に立ち帰るべきだという意味で、食文化もまた、一
度日本古来の和食に帰り、そこから再度出発してはどうかということだったの...」
「うーん...日本の風土に合った、日本の食文化は、大切よね」マチコが言った。
「その通りです。高杉・塾長は、これからは、未曾有の“食料戦略の時代”がやって来
ると言っていました。歯車が1つ狂うと、このグローバル社会では、飢餓地帯が出現
すると言っていました。
そうそう、この間、津田・編集長も、このことは言っていました。それから、日本は
国家戦略として、“数十年規模の食糧の恒久備蓄”が必要だとも言っていました。津
田・編集長は、日本の食糧自給率の低さを、いつも気にしています」
「でも、響子さん、」弥生が言った。「今でも、飢餓で苦しんでいる国はありますわ」
「ええ、もちろん。現在も、飢餓はあります。でも、それは、別の事情によるもので
す...」響子は、パソコンのキーボードを叩いた。「実際の世界の食糧事情は、実は
かってないほど豊なのです...ただ、高杉・塾長は、それは非常に“危うい豊かさ”
で、やがて現在の頂点から、下降線をたどると言っていました。私も、そうだと思いま
す。それは、例えば狂牛病などの事態を見ても分かると思います...何処かが狂い
始めているのです...
そこにはもう、生態系の持つ復元力、恒常性というものは感じられません。むろ
ん、これは、人類文明にとっての苦難の時節到来ということであって、地質年代的に
見れば、種の繁栄と絶滅は、地球生命圏の歴史そのものです。
ただ、地球における、36億年の生命進化の歴史の中で、現在特筆すべき事態が
起こっているということは言えます。それは、この巨大生命圏において初めて、知的
生命体による巨大な“人類文明が花開いている”ということです。そして、その文明の
中で初めて、“飢餓”という問題が語られているということです。
したがって、それが単なる力による食糧の奪い合いなら、動物と何らかわりはあり
ません...私たちは、“知恵”と“文明の力”で、この苦難の時代を乗り越えていく義
務があるのです。つまり、この地球における生命進化の頂点に立つ、DNA最高モー
ドの種としての責任です...」
「そうね...」弥生が言った。
「うーん...じゃあ、どうすればいいのかしら?」マチコが聞いた。
「出来るなら、津田・編集長が言うように、“数十年規模の恒久備蓄”がいいと思いま
す。特に、日本のように、“摂取カロリーの半分以上を輸入している国”では、絶対に
必要でしょう。食料の備蓄...21世紀の半ばから後半へかけての、食料の大量備
蓄。高度な技術文明による“恒久備蓄”...“永久保存”...これもまた、国家の安
全保障上の大戦略だと、津田・編集長は言っていました」
「うーん...“永久保存”か...そんなことが出来るのかしら?」
「技術はどんどん進歩しています。また、さらにその上の研究も必要です。そして、出
来るなら、国連などの国際機関でも、穀物を備蓄すべきだと思います。
家畜に食べさせて肉を生産するのではなく、私たちが直接穀物を食べれば、相当
量の穀物が、戦略的に備蓄に回せるはずです...問題は、人類の英知が、それを
実行するかどうかです...」
「...」弥生は、黙ってうなづいた。
「...現在の日本でも、そうした方面に、公共投資をするというのなら、国民も納得す
るのではないでしょうか。そうした、バカらしいほどの大戦略なら、大きな夢がもてる
と、私も思います...
でも、そうは言っても、今後大きな飢餓は、必ずやってくるのです。これは、夢や冗
談で言っているのではないのです。ですから、食糧の大量備蓄は、国民の大きな“安
心”になります。そしてこれが、国民の“愛国心”につながるようなら、大きな拾い物だ
と、津田・編集長も言っていました...」
「そうなったら、肥満どころじゃないわよね、」マチコが言った。


「ええと、話を戻します...」響子が言った。「欧米では日本食をモデルにしているの
に、日本では逆に、食文化やライフスタイルを欧米化してきたということでしたね...
だから、まず、日本食に戻ったらどうかとですね...」
「そう、」マチコが、口をすぼめた。
「話を進めましょう...
ええ...ここに、肥満原因の一つとして、面白い指摘があります。それは、糖質の
問題です。最近では、清涼飲料水などに含まれる単糖類(ブドウ糖や果糖)の割合が、以
前よりも高くなっているということです。単糖類は多糖類(米や小麦粉のデンプンなど)に比べ
て、消化吸収が早く、結局太りやすくなるわけです...」
「“オリゴ糖”は、体にいいと聞きますわ」弥生が言った。「オリゴ糖は、どっちなのか
しら?」
「オリゴ糖は、多糖類です。ええと、じゃ、糖について、簡単に説明しておきましょう
か...いちおう、参考として、聞き流しておいて下さい...」
【 最新・“糖鎖”の基礎知識】
<参考文献
: 日経サイエンス/2002年11月号/
糖鎖をあやつる/T.メーダー > 
「まず...タイトルにある“糖鎖”とは、糖の連なった鎖(くさり)のことです...次に、
“単糖”という言葉があります。これは、糖の最も小さな単位(ユニット)です。この最小単
位は、炭素、酸素、水素の3つの元素から構成されています。グルコースやスクロー
スといったものがこれに当たります...
例えば、単糖のグルコースだと、炭素原子を6個含みますから、そこそこの分子量
になります。アミノ酸のグリシンは炭素原子2個ですから、単糖というもののおおよそ
の大きさはつかめるかと思います。
さあ、この“単糖”が2個つながったものを“二糖”といいます。そして、3個以上つ
ながったものを“多糖”というわけです。つまり、“単糖”、“二糖”、“多糖”と分類され
るわけですね。
ちなみ“多糖”の中でも、単糖が3〜6個のものを、“オリゴサッカライド(オリゴ糖)”と
いいます。そして、それ以上の大きな分子は、“ポリサッカライド”といいます。さらに、
糖がタンパク質や脂肪と結合した複合分子は、“複合糖質”と総称されます。細胞表
面などに見られる“糖タンパク質”とか、“糖脂質”などは、この“複合糖質”に含まれ
ることになります。そして、この“複合糖質”こそが、最先端科学の脚光を浴びている
領域です。
ヒトゲノムの解読が終了し、いわゆる分子生物学の関心は、“プロテオーム”へ移
行したと言われます。プロテオームとは、遺伝子が作り出す全タンパク質をさします。
しかし、タンパク質だけでは、むろん生命体は解明できません...
例えば、DNAを読み解いても、膨大な“細胞間の情報伝達”はどのような仕組み
になっているのか、あるいは“免疫系”はどのようなメカニズムなのかといった、様々
な深遠な問題が山積しています。そして、こうした問題に深く関与しているのが、“糖
鎖”なのです。この糖鎖とは、文字通り、糖の鎖ですね。タンパク質、糖鎖、脂質と
も、互いに絡み合って、生体の中で重要な働きをしているのです。
とくに、糖鎖は途方もなく複雑で、かつ驚くべき働きを持っています。かっては、糖
はエネルギーとなるグルコースやグリコーゲンといったものを中心に考えていまし
た。しかし最近では、糖鎖は“新薬開発の決め手”として、最先端科学の脚光を浴び
ています。これは、ファンクショナル・グライコミクス(機能糖鎖解析)と呼ばれていま
す...
実は、“ファンクショナル・グライコミクス・コンソーシアム”という国際的な研究組織
があります。これは世界の54の研究組織からなるもので、アメリカのNIH(米国立衛生研
究所)は、5年間で3400万ドルの研究助成金を決定しているといいます。ここでは、合
成糖鎖のライブラリーを開発して、誰でも利用できるデータベース化を進めています。
これは、ヒトゲノムのデータベース化と似たような機能になるのでしょうか...
さて...くり返しになりますが、糖の最小単位の単糖というのは、炭素、酸素、水
素の3つの元素から構成されています。タンパク質を構成するアミノ酸の場合は、こ
れに“窒素”が加わるのですが、糖の場合は“窒素”は入りません。ただし、糖鎖構造
というのは、核酸(/DNA・RNA)やタンパク質よりも、実は、はるかに複雑なのです。
これは、核酸を構成するヌクレオチドや、タンパク質を構成するアミノ酸は、いずれ
も直鎖構造のため、構造の多様性は大きく制限されます。それに対し、糖鎖の最小
単位である単糖は、分子中に他の単糖と結合する部位が数ヶ所もあります。したが
って、直鎖構造を含め、多種多様な分枝構造が出来るわけです。
もちろん、ここでも、数学的な理論値と、自然界で観測されるものが一致するわけ
ではありません。しかし、桁違いに複雑な風景になりそうだとは言えるわけです。し
たがって、これらのデータベース化というのも、実はこれまでにない大変な作業にな
るようです。
ちなみに、糖鎖の構造と機能を解明する学問分野を、“グライコミクス”と言いま
す。これはゲノムの学問分野を“ゲノミクス”、タンパク質の学問分野を“プロテオミク
ス”と呼称したのと同じです...さあ、今後、どのような流れになっていくのでしょう
か...」
「うーん...響子、」マチコが、頭の後ろで両手を組んだ。「それでさあ、その糖鎖っ
てのは、なんの役に立つわけよ?」
「はい...」響子は、作業テーブルの上で肘を立て、両手を組んだ。「つまり...糖
鎖が現在脚光を浴びているのは...細胞表面の糖タンパク質や糖脂質が、細胞間
の膨大な情報伝達に関与しているからです。こうした免疫系への関与や細胞間のコ
ミュニケーションによって、様々な感染症や、ガン進行の引き金にもなるというわけで
す。したがって、ここが今後、新薬開発の草刈場になると予想されています...」
「響子さん、私たちに身近な話で、何かあるかしら?」弥生が、角度を変えて聞いた。
「そうねえ...うーん...病院で問題になっている、耐性黄色ブドウ球菌というのは
知っているかしら?」
「あ、はい...」
「これは、抗生物質の使い過ぎで、耐性を得た黄色ブドウ球菌ですね。“バンコマイシ
ン”という最強の抗生物質しか効かないという細菌です。最近では、“バンコマイシン”
にも耐性を持つという菌が騒がれているようですけど。それで、こうした菌はどうした
らいいかということで、複合糖質ワクチンというものが、現在研究されています。
これは、病気の原因となる様々な病原体(/微生物)は、“糖”を手がかりにして好み
の宿主細胞を認識し、“糖”を使って細胞と相互作用をしている所に着目したもので
す。つまり、この相互作用をブロックすることで、病原体の活動を阻害することが出来
るわけですね...ええと...分かるかしら?」
「うーん...」マチコがうなった。
「それじゃ...もっと具体的に言えば...“インフルエンザウイルス”が感染する場
合...インフルエンザウイルスはまず最初に、細胞表層にある糖タンパク質上の糖
/シアル酸に結合するわけよ。つまり...インフルエンザウイルスが細胞に侵入し
て、増殖するためには、まず、このシアル酸という糖に結合しなければならないという
ことね...
それから、細胞内で増殖したインフルエンザウイルスが、その細胞から出るために
は、今度はこのシアル酸が邪魔になわけ。そこで、今度は“ノイラミニダーゼ”という
酵素を使って、このシアル酸を細胞から切除するわけよ...そうしないと、出られな
いから...」
「うん...」マチコがうなづいた。
「ちなみに、現在市場に出ている2つのインフルエンザ薬は、この“ノイラミニダーゼ”
の活性部位に強く結合する働きのあるものと言われています。このウイルス活動の
妨害によって、増殖や、他の細胞への感染を防いでいるわけです。
さあ...ここは、肥満の話ですから、インフルエンザウイルスの話は、これぐらい
にしておきましょう。糖鎖の話も、これで打ち切り。最先端科学の話ですので、これか
らもしばしば話題に上ってくると思います」
「はい」弥生がうなづいた。


「あ、響子...」マチコが言った。「ミミちゃんの方が、準備ができたみたいよ」
「そう...」響子は、ミミちゃんの方に目を流した。「それじゃ、ミミちゃん、いいかし
ら?」
「うん!」ミミちゃんは、振り返り、しっかりとうなづいた。
「ええと、倹約遺伝子“β3-アドレナリン受容体遺伝子”と “ ヒトUCP1遺伝子”でし
たかしら?」
「うん!」
《
ミミちゃんガイド...No.1 》 
倹約遺伝子: β3-アドレナリン受容体遺伝子
/ ヒトUCP1遺伝子
「ええと...よく知られている倹約遺伝子の、“β3-アドレナリン受容体遺
伝子”と “ ヒトUCP1遺伝子”について説明します...」
【β3-アドレナリン受容体遺伝子】
「まず、“β3-アドレナリン受容体遺伝子”ですが、アドレナリン受容体に
は、幾つかのタイプがあります。そうした中で、このβ3-アドレナリン受容
体は、褐色脂肪組織と、白色脂肪組織にだけ存在します。この受容体に
アドレナリンをはじめとする神経伝達物質が結合すると、褐色脂肪組織で
は“熱産生”、白色脂肪組織では“脂肪分解”が始まります。
“熱産生”の場合は、エネルギー消費を通じて減量します。“脂肪分解”
の場合は、直接体脂肪の減量につながります。
ヒトでは、この受容体が機能不全になると、肥満の一因になるといわれ
ていました。そしてそれが、1995年、米国アリゾナ州に住むピマ族の遺
伝子変異の報告から、実態が明らかになってきました。
これによると、受容体タンパク質を構成している64番目のアミノ酸がトリ
プトファンからアルギニンに変わっていたといいます。また、この遺伝子タイ
プを持つ人は、内臓脂肪型の肥満になりやすいことも判明したといいま
す...」
「ええと...それから、参考文献に、こんなデータがあります...
両親から、1つずつもらう遺伝子のうち、1つでもこの倹約タイプを持つ患
者では、安静時代謝量が、標準タイプの人よりも、1日あたり200kcal
近
く低下します。つまり、安静時においても、これだけのエネルギー消費を倹
約しているわけであり、これが肥満として蓄積されていくわけです。
ちなみに、日本人では、この倹約遺伝子を持つ人(/1つ、または両方)は、
34%にも達しています。これは、カナダやアラスカに住むイヌイット、米国
アリゾナ州に住むピマ族に次いで現在世界第3位の高頻度になっていま
す...」
「それから、“β3-アドレナリン受容体遺伝子”に関連して、“β2-アドレナ
リン受容体遺伝子”というのがあります。これは、倹約遺伝子の能力を相
殺するような働きがあるようですが、今後さらに研究が進んでいくものと思
います...」
【 ヒトUCP1遺伝子 】
「もう1つの、よく知られている倹約遺伝子は、UCP1(脱共役タンパク質;
Uncoupling Protein
1)の遺伝子です。このUCP1は、交感神経が興奮した時
に、褐色脂肪組織における熱産生の中心的役割を果たしています...え
えと、ヒトUCP1遺伝子でも、倹約タイプの遺伝子多型が確認されていま
す...
これも、まだ研究途上の話だと思いますが、この遺伝子の場合も、標準
タイプの人よりも、1日平均80kcal
ほど代謝カロリーが減少しています。
したがって、当然この分だけ、減量効果が鈍くなるわけですね...」
「はい、」響子が言った。「ええ、ミミちゃん、どうもありがとうございます。日本人に
は、倹約遺伝子を持つ人が多いことが、よく分かりました。結局、肥満を解消するに
は、その分だけ余計にカロリーを制限しなければならないということですね。
さて、この章の最後に...これは、ミミちゃんの説明した倹約遺伝子にも関連して
いるのですが、基本的なことを1つ指摘しておきます。それは、人体の総合的なバラ
ンスの問題です。人体は非常に高等なバランスの上に成立していているわけで、1つ
や2つの遺伝子で左右されるものではないだろうということです。
つまり、倹約遺伝子を持つ人は、基礎代謝量が低いわけですが、そのことによっ
て全ての人が肥満になるというわけではないということです。それにプラスして、やは
り、食いしん坊であるということ、運動量不足等が、重要なファクターになるということ
です。
ちなみに、ミミちゃんは、米国アリゾナ州に住むピマ族の話をしましたが、実は同等
のピマ族は、メキシコにも住んでいます。そして驚いたことに、メキシコのピマ族の方
は、肥満者は殆どいないといいます。
これは、アリゾナのピマ族は、食事やライフスタイルまですっかりアメリカ式になっ
たのに対し、メキシコのピマ族は、今も昔ながらの農耕生活のままでいるからだと言
われています...」

「ええ...響子です...
このピマ族の話は、まさに私たち日本人にも、よく当てはまります。日本人の食文
化やライフスタイルが欧米化し、まさにこのあたりから、日本人の肥満が始まったわ
けです。
したがって、日本人はやはり、“日本本来の食文化やライフスタイルへの回帰”が
必要だと思います。そして、“日本人としてのアイデンティティー”を取り戻た上で、もう
一度世界を眺め直してみる必要があるのではないでしょうか...
この章は、ここで終了とします...」
