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【病原体ナノセンサー/の考察】 (Twitter/1~49/完) |
トップページ/New Page Wave/Hot Spot/Menu/最新のアップロード/ 担当: ボス= 岡田 健吉 |
2016年 |
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2月12日 |
《 バイオ・メディカル 》 (1)
『病原体ナノセンサー』
S.O.ケリー (カナダ/トロント大学) 「お久しぶりです!」アンが、両手を組んで言った。「生物情報科学/担当の、厨川アン です! <Twitter>での、私達の初仕事になります!」 「ええ…」夏川が、ガウンのポケットに片手を入れた。「バイオハザード/担当の夏川 清一です!」
《 バイオ・メディカル 》 (2)
分野ですね?」 「そうですね…」夏川が言った。「感染症を確定診断するには、時間がかかります。試料 に含まれる病原体DNAはわずかで、検出が難しいのです」
《 バイオ・メディカル 》 (3)
20分で感染症を診断できると?」 「そうです… ナノスケール(/ナノメートルは、1メートルの10億分の1を表す単位)で生じる化学反応を利用した新デ バイスだと、正確な検査結果を、1時間足らずで得られます!」
《 バイオ・メディカル 》 (4)
今年/2016年から、臨床試験も始まる、トップランナーですね?」 「そう…」夏川が、嬉しそうに笑みをつくった。「診断が速ければ、色々なシチュエーショ ン(状況、情勢、事態)で、多くの命が救われます!」 「はい、革新的な技術ですね!」
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2月13日 |
《 バイオ・メディカル 》 (5)
レベルの隔離が必要ですね。 それが、待ち時間20分で確定診断が下せたら、戦略レベルでの包囲網が可能ですわ。 これは、大きな盾になりますね、」
《 バイオ・メディカル 》 (6)
た。「一変して来るでしょう。 <西アフリカでのエボラ出血熱/・・・ジャンプ>(/2014年の西アフリカのエボラ出血熱流行・・・ ギニア、シエラレオネ、リベリアで大流行し、WHOが<緊急事態を宣言>をした。)は、世界を震撼させました。 これが、20分で確定診断が下せるなら、状況は一変します。空輸・船舶・道路でも、スク リーニング検査が可能になります!」
《 バイオ・メディカル 》 (7)
ならなかったと?」 「まあ、そうでしょう…」夏川が、口に手を当てた。「しかし… そもそも、HIV(Human Immunodeficiency Virus/ヒト免疫不全ウイルス/エイズ・ウイルス)やエボラ・ウイ ルスが、人類文明にとって脅威となったのは、“文明のあくなき暴走”による、“生態系 の撹乱”です。20分で診断できても…“根本解決”となるか、どうかは…」
《 バイオ・メディカル 》 (8)
病原体の特定に時間がかかるのは…各感染症に特有な分子が…人体の中で、大量 のタンパク質等に、紛れているからです。1滴の血液試料に含まれる病原菌特有の…
《 バイオ・メディカル 》 (9)
っています。ここから十分な数の標的分子を特定し、警告を発するのは、容易ではあり ません。 高価で複雑な施設で、高度な訓練を受けた、優秀な技師が、慎重に、進めなければなら ないからです」
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2月14日 |
《 バイオ・メディカル 》 (10)
ね?」 「そうです!」夏川が、強くうなづいた。「小さなプラスチック容器に収めた、ナノスケール の検出器です。直径がわずか、数億分の数mの微細なセンサーです…」
《 バイオ・メディカル 》 (11)
「そうです…」夏川が言った。「このプローブ(/測定や実験で、試料に接触または挿入する針/探針。 生化学で、ある物質を検出するために用いる物質。)が、低濃度の病原菌DNAに素早く反応するの は…1つは…DNA分子とサイズがほぼ同じだからです」
《 バイオ・メディカル 》 (12)
反応の速さにつながるわけですね?」 夏川が、うなづいて、言った。 「さらに…ナノ・プローブは、周囲の環境に反応し、大きなセンサーでは気づかなかった コトでも、素早く検知することが、可能です…」
《 バイオ・メディカル 》 (13)
が…研究に取り組んだのは、10年ほど前の事だったと言います。 きっかけは…糖尿病患者の、携帯型・血糖値モニターに着目したのか、始まりだと言い ます」
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2月15日 |
《 バイオ・メディカル 》 (14)
糖の分子が、1部の電子を放出する事で…回路が閉じて、電流が流れます。 これを…細菌やウイルスの、DNA断片やRNA断片の、計測に使えないか…と考えまし た」
《 バイオ・メディカル 》 (15)
病原体の存在を明示する…特異的な目印/マーカーになるわけです。 <病原体の・・・センサー>とするには…血液中に存在するこの病原体由来のDNA 断片を、釣り上げる必要があります」
《 バイオ・メディカル 》 (16)
DNA断片は…相補配列のDNA(/相補的DNAは・・・mRNA から逆転写酵素を用いた、逆転写反応によ って合成されたDNA。)と…“特異的に・・・強く結びつく性質”…がありますわ。 細菌の相補配列のDNAを、設計し、合成する事は可能で…これを使います!」
《 バイオ・メディカル 》 (17)
それを、釣り上げる餌/相補配列のDNA断片を、作れるのです。その菌株にしか結合 しない、特異的な餌です。 これを…<太さ1mm>の、<金のワイヤー>に、くっつけました…」
《 バイオ・メディカル 》 (18)
ワイヤー>に…電子が放出され、電流が生じます。 血糖値モニターと同じですね。<金のワイヤー>を使ったのは、導電体として優れて いるからです」
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2月16日 |
《 バイオ・メディカル 》 (19)
き出さなく…検出可能な電流は生じないのです。 そこで増幅器を加えました。検査試料にルテニウム(/原子番号44の元素。元素記号は Ru。白金 族元素の1つ)という金属を含む分子を混ぜました…」
《 バイオ・メディカル 》 (20)
つくのです。 そして…DNA分子が<センサー>に結合する時、金属ルテニウムも一緒について来 ます。この<金属・DNA複合体>は…
《 バイオ・メディカル 》 (21)
サー>表面につける餌を変えれば…異なる細菌DNAを特定できるわけです」 「はい…」夏川が言った。「が…現実には機能しなかったと…」
《 バイオ・メディカル 》 (22)
しませんでした。 細菌DNAを、大量に含む資料では上手く行きましたが、実際の採血資料の水準では、 上手く機能しなかったのです」
《 バイオ・メディカル 》 (23)
実際の医療現場では、たいがい1000個以下です。そこで、条件を緩め、100万個で 試したそうですが、機能しなかったそうです…」 「うーむ…」夏川が、口に手を当てた。「それでは、使い物にならない…」
《 バイオ・メディカル 》 (24)
別の研究プロジェクトからヒントを得ました。 それも、金ワイヤーを使うものでしたが…1mmではなく、10nm/ナノメートルのワイ ヤーを使うものだったのです」
《 バイオ・メディカル 》 (25)
るスペースしかありません。 万策尽きた状態であり、ダメ元で…<ミリ・ワイヤー>を<ナノ・ワイヤー>に変え、 即席の実験を試みたそうです」
《 バイオ・メディカル 》 (26)
<ナノ・ワイヤー>に変えた事で、<感度が100万倍>に高まったと言います。複 雑で時間のかかる病原体の特定が、<ナノ・ワイヤー・・・ナノ・センサー>で、単純 化できる可能性が開けたのです!」
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2月17日 |
《 バイオ・メディカル 》 (27)
を検出できるのでしょうか。 それは…ワイヤーのサイズが、その形状に大きな影響を及ぼすから、と分かりました。 太いワイヤーの表面は…
《 バイオ・メディカル 》 (28)
なく並びます。でも隙間が無いから、資料の液体も入りにくく、結果的に細菌DNAが結 合しにくいのです。 一方、ワイヤーがナノ・サイズだと…たった5個のDNA分子が載るスペースとは…
《 バイオ・メディカル 》 (29)
の毛です。ギッシリと並んでいないから、空きスペースにも液体が流れ…同じナノ・サ イズのDNA断片ですから…結合しやすいのでしょう」
《 バイオ・メディカル 》 (30)
のプローブ(probe/探針・・・生化学で、ある物質を検出するために用いる物質)は、上手く機能しましたが …これは学生たちの手作業で、1日に10個しか作れません。臨床実験には何千個も のプローブが必要になります。そこで、定石(じょうせき/将棋・囲碁の他、物事をするときの、最上とさ れる方法・手順)のシリコン基盤(/電子デバイスの大量生産を図る、一般的な方法)の登場です…」
《 バイオ・メディカル 》 (31)
が言った。「電極を付けることも、大量生産することも、可能ですね… チップ上に…<10nmの突起/ナノ・ワイヤーの感度を大幅に高めた出っ張り> を、作るわけです。そして半年後、<電気メッキ>…という手法に、行き着きました…」
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2月18日 |
《 バイオ・メディカル 》 (32)
「まず…」アンが言った。「シリコンチップに、マイクロメートル級のやや大きめの構造を 作ります。すると金のドームに多数のスパイクがついた、栗のイガの様な構造ができま す」
《 バイオ・メディカル 》 (33)
「スパイクは…」アンが言った。「栗のイガの様に、様々な方向を向いていて、そこに餌 分子をくっつけると…<ナノ・ワイヤー>と同様の間隙ができます…」
《 バイオ・メディカル 》 (34)
けると構造サイズが大きくなり、使えなくなってしまう様ですね、」 「時間を詰め…」夏川が言った。「ナノ・スケールで終了すると?」 「そうです!」
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2月20日 |
《 バイオ・メディカル 》 (35)
「カナダ/トロント大学のチームは…」アンが言った。「今年/2016年に、臨床試験を 予定しています。 2~3年で…<細菌感染症のマーカー解析>に使え…<病原体の有無を20分以 内に確定>できる…としています」
《 バイオ・メディカル 》 (36)
ますわ。 この<検出センサー>は…<マルチプレックシング/多重性>という特徴もあると 言います。これは…一度に、複数の病原体を、探す能力ですわ」
《 バイオ・メディカル 》 (37)
「これは…」アンが言った。「こういう事です… チップ上に<金のドーム>をたくさん作り、それぞれに異なるタイプの餌分子をつけま す。そこに、資料血液を1滴たらすと、様々な病原体のテストが、同時に可能ということ です」
《 バイオ・メディカル 》 (38)
づつ調べるものですからねえ。莫大な、時間短縮が可能ですねえ…特に、パンデミック (/感染症の世界的大流行)や、大災害のような、複雑な現場では…」 「この検査法では…」アンが言った。「最大20種類の検査が可能で…抗生物質耐性菌 5種のDNAもチェックし…確度99%に、達していると言います」
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2月21日 |
《 バイオ・メディカル 》 (39)
う会社を立ち上げました。“参考文献の著者” の Shana O.Kelley が、最高技術責任者 に就任しています」 夏川が、うなづいた。
《 バイオ・メディカル 》 (40)
し…診断テストに必要となる付属物一切を、<容器に収納する方法>を、開発してい ます」 「すでに、終了していると?」 「そうですね…」
《 バイオ・メディカル 》 (41)
アの1種であるクラミジア・トラコマチス(CT)が尿路や性器に感染することで起こる、性行為感染症。女性不妊だけでな く男性不妊との関連性も指摘されている。)と淋病(りんびょう/淋菌感染症・・・1984年をピークに減少したが、 1990年代半ばから増加しつつある。性器クラミジア感染症と同時感染(/淋病患者中20 ~ 30%)している場合も多 い。)について、<検出の正確さ>を調べるようですわ。 20ヶ所の、異なる病院と診療所が参加します。成功なら、FDA/米食品医薬品局に、 認可申請する運びになる…と言います」 「カナダ/トロント大学なのに、アメリカのFDAですか?」 「はい…そのようですね」
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2月23日 |
《 バイオ・メディカル 》 (42)
ナノテク(/ナノテクノロジー 医療)を利用した有望な検査法は、他にも開発が進んでいる様で すね?」 「はい…」アンが言った。「特定タイプのガン検査でも…開発が進んでいますわ、」
《 バイオ・メディカル 》 (43)
学のマーキン(Chad A.Mirkin)らは… ガン細胞DNAと反応する…<金のナノ粒子・・・を開発し、腫瘍ができる前段階で ・・・ガン細胞を検出する>…ことに、成功しています」 「ふーむ…」夏川が、腕組みした。「その方面のことは、薄々とは聞いていましたが…」
《 バイオ・メディカル 》 (44)
他にも、アメリカ/マサチューセッツ州/タフツ大学のウォルト(David Walt)は… <患者の体内にある・・・疾病マーカー分子を・・・計数するシステム>を、開発して います。これは、ガンの診断と監視に、非常に役立つと期待されていますわ」
《 バイオ・メディカル 》 (45)
「そうですね…」アンが言った。「ただし… これらの方法は、<検査ラボ(ラボラトリー/laboratory=実験室)・・・での利用>を前提に設計 されたものです。<診療所・・・外来患者向け>…のものではない、という事ですわ」 「ふーむ…」夏川が、うなづいた。
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2月24日 |
《 バイオ・メディカル 》 (46)
カリフォルニア州/カリフォルニア工科大学のイズマジロフ(Rustem Ismagilov)のチームは… SlipChip/スリップチップという、無線装置を開発したと言います…」
《 バイオ・メディカル 》 (47)
「これは…」アンが言った。「ケーブル無しで…DNA検出を可能にする装置ということで すが、詳しい説明はありませんね。 あと…ニューヨーク州/コロンビア大学のシア(Samuel Sia)らは…2015年に…
《 バイオ・メディカル 》 (48)
Medicine誌』に報告しています。 これは、HIV(エイズ・ウイルス)に対する抗体の有無によって、HIV感染を診断するもの…だ そうです」
《 バイオ・メディカル 》 (49)
「はい…」アンが、うなづいた。「これらの技術のうち…幾つかは、今後さらに改良され、 医療現場に登場して来るのかも、知れませんわ…」 「はい!」夏川が、深くうなづいた。
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