『キャンディ・キャンディ』レビュー

最終更新日: 2016/12/23

マスコットキャラのクリンと       ♪緑のドレスも大好き

 1975〜79年に「なかよし」に連載されたマンガのアニメ化で、雪室俊一さんと城山昇さんが二人で脚本を担当しています。 原作もアニメも大ヒットしましたが、原作者間の係争の影響で出版、再放送、メディア化など全てストップする形になり、現在は幻の作品になってしまっています。 「封印作品の謎」(安藤健二、太田出版、2006年)によれば、1995年に原作者と東映アニメとの著作権契約が切れたということなので、それ以降再放送ができなくなっていると思われます。 原作は「なかよし60th名作総選挙」でもトップになるべき作品だったのでしょうが、画像などが全く使えなく復刊も不可能な現状では、候補から除外されるのも仕方ありません。

 過去に劇場用再編集版がVHSで国内発売されていたようですが、再放送の録画を自分で録った人を除いてはTVシリーズ全話を見る道は閉ざされています。 海外では全話収録のDVDが発売されており、以前は台湾版「小甜甜」DVD-BOXが比較的入手容易だったので、その日本語音声で見てみました。 海外版は国内とは異なる権利関係でDVD化されているのでは…と思って入手したのですが、原作者の片方が無断で許諾した説もあり、正規品である確証はありません。 ともあれ、著作権切れを待っていては確実に死んでしまいますのでお許しください。

 入手した海外版にはOP、EDが省かれており、スタッフが不明でしたが、2015年に日本コロムビアから発売されたサウンドトラック「キャンディ キャンディ SONG & BGM COLLECTION」(COCX-39246〜8)のライナーノーツにサブタイトルと脚本、演出、作画監督の全話放映リストが掲載されていました。 サウンドトラックCDに放映リストが付くというのも前代未聞ですが、おかげさまでようやくレビューを書くことができました。 このサウンドトラックを企画してくれた方には感謝です!


ラガン家のイライザとニール     アンソニー アーチー ステア
動物好きのアルバート            不良のテリー

 舞台はアメリカのシカゴの近く。 キャンディは、キリスト教のシスターが運営する孤児院「ポニーの家」に捨てられ、ここで明るくワンパクに育ちます。 投げ縄と木登りが上手なのは主題歌で皆さんご存じですね。 同じ日に拾われたアニーとは大の仲良しでしたが、10歳?で別々の家に引き取られます。 キャンディは大金持ちのラガン家に、娘のイライザの話し相手として引き取られましたが、イライザと兄のニールは兄妹ともにひねくれた性格で、徹底的にキャンディをいじめます。 いや、「いじめ」と呼ぶレベルは超えています。 ラガン氏(父)はこの娘たちを何とかしようと、カンフル剤としてキャンディを連れてきたのでしょうが、その目的は果たされることはありませんでした。

 一方で、ラガン家のお隣には親族の本家、名門アードレー家の邸宅があり、そこに暮らす青年ステア、アーチー、アンソニーの3人(イライザのいとこ?)はキャンディと親しくなり、特にアンソニーとはラブラブになってしまうのでした。 また、謎の放浪者アルバートもキャンディのピンチを救ってくれます。 ロンドンのセントポール学院に行ってからは、やはり富豪と女優の息子であるテリー(テリュース)と仲良くなったりと、良家の男性にモテモテなのでした。 余談ですが、身近にTeliusという製品名の装置があり、メーカの略称「TEL」を冠した名前ではありますが、この名前を発案した人は「キャンディ・キャンディ」を見ていた気がします(笑)。

 キャンディは結局アードレー家の養女として迎えられることになり、わらしべ長者的な結末を迎えるのかと思いきや、数々の体験や不幸を経て、金持ちの家の片隅に身を置くことを拒み、自分で自分自身の人生を切り開くのでした。 1910年頃のアメリカとイギリスを舞台にした作品で、第1次世界大戦も深い影を落とし、思い通りにならないことが多い人生を明るく、力強く進んで行くキャンディに、見た人は励まされると思います。

 一方で、「それをやったらイライザの罠に…」「それは学校の校則に…」など、キャンディの思慮の足りない行動にフラストレーションのたまる展開も多くて、あまり安心して見ていられる作品ではありません。 看護学校に行ってからも(第61話〜)ストレートな性格はあまり成長せず、「ちゃんと仕事を優先しろよ」と、ややイライラ(笑)してしまいました。

 原作は読んでいませんが、ほぼ原作通りのストーリーであるらしく、脚本家のカラーはあまり強く出ていません。 正直スタッフリスト無しで、「サザエさん」のように雪室さんと城山さんの脚本を見分けるのは難しいです。 脚本はストーリーの一貫性を重視してか、5〜6話ずつ連続して担当してもう一方に交代するという、あまり他には例のない分担になっています。 第102話〜第108話(グレータウン鉄道病院編、雪室さん)と第109話(ジミー編、城山さん)がアニメオリジナルらしいのですが、鉄道病院編は少し雪室さんっぽいです。

 作画では、キャンディや他のキャラクターの服の種類がものすごく多彩なのに驚きました。 まあ、富豪の家にいるのでドレスを着たりする機会も多いのですが、平服もいろいろ変わって、この時代のアニメとしてはかなりすごいと思います。 他方で第45話はBパートの作画とセリフが全く合っていなく、最初DVDプレーヤーが壊れたかと思いました。 この回はおかしな作画も多く、制作の最後に修正を入れる時間が取れなかった、今で言うところの作画崩壊だと思います。

 それから渡辺岳夫さん作曲のOP・EDはアニメ史に残る名曲であることは疑いもありませんが、劇伴音楽もすばらしいです。 時々、「魔法のマコちゃん」の「♪どこから来たの」をモチーフにしたドラマチックな音楽も聞こえてきて、同じ作曲家の劇伴G-8の流用ではないかと思います。

 雪室さんは「キャンディ・キャンディ」と並行して、自らの原作・全話脚本による「若草のシャルロット」(1977〜78年放送)を書いていますが、これは間違いなく「キャンディ・キャンディ」の影響を受けたものと思います。 女性の波瀾万丈記としては、内面描写の比重が高く、イライラする場面の少ない「シャルロット」の方が自分は好きです。 雪室さんファンのみならず、キャンディのファンにも見てほしい作品ですが、今のところメディア化されていなく、CSの再放送くらい(10年に1回レベル)しか見るチャンスがありません。



第1話「投げなわ上手のすてきな子」(1975/10/01放映)〜第5話「今日からお嬢さま?」(10/29放映)

ストーリー: ある冬の雪の夜、ポニーの家に二人の女の子、キャンディとアニーが別々に捨てられます。 傍らに置かれていた人形に「Candy」と書かれていたため、ポニー先生とレイン先生は安直にCandis Whiteと命名しました。 成長した二人は10歳?になり、そろそろ里親を探さなくてはなりませんが、二人は離れたくありません。 キャンディはずっとポニーの家に居たかったのですが、アニーは実は、パパとママがほしいと思っていたのでした。 森で川に落ちた二人は、近くに別荘を構える富豪のブライトンさんに助けられます。 ブライトンさんは、娘を亡くして悲しんでいました。 アニーはブライトン家の養女として引き取られていくことになりました。 キャンディもポニーの家を離れる決心をして、ラガン家に赴いたのですが、イライザとニールはとんでもないいじめっ子で、キャンディは娘として引き取られたわけではないことがわかります。

感想: 第1話では二人が拾われたところから、10歳まで一気に進んでいますが、原作者から性急すぎるとクレームが付いた話はコラム(エッセイ集「テクマクマヤコン」にも収録)で紹介されています。 しかし、第1話終盤からは一転して、ポニーの家の男の子トムが牧場の跡取りとしてもらわれていったり、優しいブライトンさんに助けられたりする中で、性格の対照的なキャンディとアニーの気持ちが変わっていき、ついにはキャンディもポニーの家を離れる決心をするまでが、丁寧に描かれていると思います。 5話の最後にラガン家に着くまでは、これからこんな苦しい話になるとは思っていなかったのですが…。



 脚本リストは「キャンディ キャンディ SONG & BGM COLLECTION」(日本コロムビア)の冊子から引用しました。本冊子には、放送日、サブタイトル、脚本、演出、作画監督が記載されています。 台湾版DVDの付録に入っていたEDは城山さんのバージョン(おそらく第9話と第61話)だけでした。

話数脚本
第1話〜第5話 雪室俊一
第6話〜第9話 城山 昇
第10話〜第14話 雪室俊一
第15話〜第19話 城山 昇
第20話〜第25話 雪室俊一
第26話〜第30話 城山 昇
第31話〜第35話 雪室俊一
第36話〜第41話 城山 昇
第42話〜第47話 雪室俊一
第48話〜第53話 城山 昇
第54話〜第59話 雪室俊一
第60話〜第65話 城山 昇
第66話〜第71話 雪室俊一
第72話〜第77話 城山 昇
第78話〜第83話 雪室俊一
第84話〜第89話 城山 昇
第90話〜第95話 雪室俊一
第96話〜第101話 城山 昇
第102話〜第108話 雪室俊一
第109話〜第115話 城山 昇


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