イギリスにいってきました(3)

 いよいよウェールズへ。今回最大の目的地へむかう。
 朝食をホテルの食堂でいただく。すぐ横の台所でおばさんが作ってくれる。すますと部屋に戻って荷造り、もう出発である。朝の町を見物しながら駅へ。列車の時間は10時29分。思ったより早くに着いた。
 日本のように町中で自動販売機をみかけることはないが、駅のホームでは結構見かけたような気がする。ここチェスターにもジュースの自動販売機があり時間もあることだし挑戦することにした。
 もっと慎重に行えばいいものだが、あんまり考えずに小銭を入れていく。表示される金額がいまいち分からないのだがどう考えてもおつりが出るであろう十分な額を入れたのにボタンを押してもモノが出てこない。しばらく考えた結果どうやら売り切れらしいことに気が付いた。当初の目的7upをあきらめて他のモノをおす。しかし売り切れが多い。結果出てきたのはよりによってダイエットペプシだった。大きいペットボトルだったのでしばらくダイエットペプシ片手に旅行するはめになってしまった。
 時間が来たがまた列車が来ない。ここだと思っていたホームに違う行き先の列車が到着した。表示では遅れとか出ていないのなぜだろう???。と、思っていたら、なんと行き先が違うと思っていた列車の表示が急に変わったのだ。そう、遅れてもいないしホームを間違えていたわけでもなかった。「急に表示かえるなよ!」あわてて列車に駆けていく。もうちょっとで乗り遅れるところであった。扉を閉めるのを少し待ってくれたみたいで嬉しかったが、そもそも表示をまちがってるのが悪いのだ。感謝することではない。
 今回はクローの駅でお乗り換え。表示をしっかり見てホームで列車を待つ。ここの列車も遅れてはいない。今日は時間通りに目的地に行けそうだ。・・・と思ったら、11時11分の列車はわずか2分前になって6分プラスの17分発に変更された。早くから見て遅れが無いことを確認しても無駄だったのだ。直前になって平気で変更してくる。というか、遅れ無しってのはどこの情報で表示しているのだろう。地下鉄じゃないんだから駅間が2分なんてありえない。いったいどこで遅れたというんだ。しかもその後19分発になり、22分発になり、結局27分にようやく列車がきた。やはりただ者ではない。イギリスの列車は。

 カーディフの駅に着いた。ここは普通に都会だった。駅前には大きなバスターミナル。ショッピングセンターのビル。日本のどこかと変わらないような感じがした。ここでまず観光案内所を探す。ここはホテルを予約していないので、まずホテルを紹介してもらわないと動きづらい。
 案内所にはいると先客がなにやら話していた。同じくホテルなどを探しに来たおばさん2人連れらしいのだが、どうも注文が多いらしくなかなか話が終わらない。かなり待たされた。で、ようやく案内カウンターの2人の女性のうち年輩の方の人の手が空いたようなので話しかけようとしたら、ろくに聴きもせず入り口近くでグッズの販売をしていたおじさんを呼びつけ「あとはこの人と話しして」みたいなことを言うとさっさと自分の荷物を片づけてどこかにいってしまったのだ。明らかに困った顔のおじさんはとりあえずグッズ売り場を放りだして話をきいてくれた。
 今日のホテルを探している。バスとシャワーがついてるところがいい。
 おじさんはわかった、わかったみたいな顔をした後、手元の資料をパラパラと見て、ちょっと待ってと言ってはかかってきた電話は全て対応し、ようやくどこかのホテルに電話した。それから、「シャワーだけの部屋ならある」といってきた。バスタブも欲しかったのだがどうもここはあまりうまくいきそうにないのでそこでいいですとさっさと決めて、部屋を押さえてもらうようにいった。するとこのおじさん、書類の裏でつくったメモ用紙にホテルの名前と連絡先を殴り書きして乱暴にちっぎって渡してくれた。それから客みんなに渡しているのだろう駅周辺の地図のコピーもくれて道順も書いてくれたが、どうにも遠回りで書いてくれている。近道ではなく、わざわざカーディフ城前を通過するように書いているのだ。この辺が観光案内所らしいところか。
 地図を片手に、しかし、教えてくれた道順は無視して最も近そうなルートを通る。で、でてきたのがとっても外見の綺麗なホテル。いや、中だって綺麗。しかし、どー見てもビジネスホテルだ。というか駅にでっかいポスターがあったホテルだ。間違いなくビジネスホテル。いまさら別の宿を探している暇もないし、別にビジネスホテルが嫌なわけでもないのでそのまま入った。ここまでのホテルとも後の予定のホテルとも大きく違うのでそれはそれで面白い。
 フロントでさっき観光案内所から連絡してもらった者ですと告げるときょとんとされた。さらに説明し、ホテルの人も他の従業人に聞いたりして調べてくれたがどこにもそんな予約はないらしい。あのメモを見せて確かにこのホテルであることは確認したが、ないものはないのである。しかし、空き部屋が無いわけではない。予約の件はともかく部屋はあるからそれでいいかということで、部屋を取ってもらって無事荷物を下ろした。
 カーディフ城観光は今日しかない。さっさと出かける。大きなショッピングセンターの中を通り抜ける。ほんとここはふつうの街だ。で、その続きにお城がある。ツアー付きチケットというものをあんまり意味も考えず購入した。どうやらガイドが案内してくれるらしいのだが時間まで待たないといけない。たまたま10分ぐらいで始まったからよかったがちゃんと考えてチケット買わないといけない。
 お城の中を10人ぐらいで順に回っていく。丁寧な説明付きだが、言葉がほとんど分からないので悲しい。ツアーが終わると中庭になぜかいる孔雀と遊んで、塔に登ってと結構楽しんでお城を後にする。
 ホテルの部屋は傾いてもいないし綺麗でよかったのだが、エレベーターだけが止まる直前にゆれて、完全に着く前に開くので怖かった。

 ぐっすり寝て、朝食をとって、ホテルを出る。が、一旦ここの中央駅に戻って来る予定なので鞄はフロントで預かってもらう。
 本日は雨。完全な雨。この旅行中で最もきつい雨。よりによって山登りの予定の今日が雨。真っ暗でやみそうにない雨だ。
 それでもとりあえず出かける。中央駅からではなく隣の駅から。ホテルからではそちらの方がかなり近い。イギリスの鉄道に詳しくも何ともないのでどうにも説明しにくいが、これから乗る列車は今までの旧国鉄路線とはちょっと違うみたいだ。中央駅から3方向に延びている短めの鉄道だ。このあたりでは電車通勤が一般的なのか、朝夕本数の多い路線だった。駅間も短い。この線でタフズウエルまで行く。
 駅は無人だった。平日の午前で雨降り、人通りはほとんどない。自動車通りをおそらく北向きに歩く。めざすはウエールズの山。
 「ウエールズの山」とは同名の映画、小説に出てくる「イングランドからウエールズに入って一番最初に見る山」のことで、これの小説がすっごく好きな私は、もう何年も前からイギリスに行ってウエールズの山に登るのが夢だ!と言い続けてきたのである。そしてその夢はもうすぐそこにまでせまっていたのであった。
 主にインターネットで収集した情報からするとかなりイメージ通りの場所を歩いていた。というのも、その「ウエールズの山」がどこにあるのか、正確にはわからないのである。収集した情報の中の山も本当に「ウエールズの山」かどうかはわからない。それを確かめに行くのも目的の一つなのである。
 脇道に入って、橋を渡る。登山道らしきものの入り口をはいりジグザグ道をのぼる。そして数件の家が並ぶところまでやってきた。木や家の隙間から山が見える。もうすぐだ!・・・・・・・・。
本日は雨。完全な雨。この旅行中で最もきつい雨。よりによって山登りの予定の今日が雨。真っ暗で今もやまない。
 そう、雨なのだ。雷もなっている。ゴールはもうそこに見えているのに届かないのだ。
 低い山なので本当登れそうな感じもするのだが、装備はまるでなく、それどころか薄着で寒いぐらいだった。こんなところで危険を冒してもしかたがないので今回の旅の目的はここで断念することとなった。「ウエールズの山」は逃げない。(開発はされそうなんだけど)そう信じて、いつかもう一度イギリスに、ウエールズに、そしてここにやってくるぞと誓いをたてて、静かに来た道を帰ることになった。

 ホテルで荷物を受け取り、今度は中央駅から、最後の宿泊地ロンドンへ向かう。タフズウエル行きのあった路線は今までのイギリスの鉄道のイメージを覆す、正確でこまめに走る路線だった。もしかして、ここは鉄道が信頼できるところなのか?そう思ってホームまで来たら・・・やっぱりだった。ロンドン行きは遅れるどころか運休だった。風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みか?30分に1本の列車は運休のため1時間に1本になっていた。ホームで待ちぼうけである。ロンドンはまだ遠い。


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