6色クレヨンの島

 今読んでいる本のタイトル「6色クレヨンの島」。その懐かしい響きに感動しながらページをめくっている。

 つい先日、友人と飲んでいるときにラジオの話題になった。テレビっ子の私はほとんどラジオを聞かずに育った。昔はラジオのチューニングの仕方がわからなかった。テレビのチャンネルはわかりやすいのに。そんな私でも何度かラジオを聞いていた時代があった。ある時期は「二人の部屋」というラジオドラマを聞いていた。それがいつ頃だったか、どこの局でやっていたかはもう忘れてしまったが「6色クレヨンの島」というのをやっていたのを覚えていた。

 「6色クレヨンの島」タイトルは鮮明に覚えていた。内容が良かった、面白かったという記憶もある。なのに、じゃあ、どんな話なのと聞かれると情けない話ほぼなんにも覚えていなかった。

 「あぁ、よかったはずなのになぁ。もうどんな話なのかもわからない。」

 そういうと友人は俺が探してやろうといいだした。友人は本好きの図書館司書。彼も「二人の部屋」という番組を覚えていて、その番組はオリジナルのシナリオではなく既存の小説やショートショートを題材にやっていたという記憶があったのだ。タイトルが確かならその本が探せるというのだ。もちろんそのタイトルで実在すればのはなしだが。

 彼には前にも一度、感動の再会をさせてもらったことがある。本のタイトルは「午前2時に何かがくる」。小学校の頃、図書の時間というのがあって1クラスで図書室に移動して1時間好きな本を読むという時間であった。本を読むのが面倒で嫌いなテレビっ子はこの時間が嫌だった。高学年の3年間を通して私がこの時間に読んだ本はたった2冊。「空飛ぶ教室」と「午前2時に何かがくる」だった。この2冊を何度も読んだ。読みたいのは「午前2時に何かがくる」なのだが借りられて無いときもある。そのときの保険が「空飛ぶ教室」だった。とても児童文学とは思えない内容の「午前2時に何かがくる」が好きだったのだが、小学校の図書室でしか見たことが無く、本の探し方など知らない私はもう2度とあの本は読むことが無いものだと思っていた。ところがあるとき今の友人と本の話題になったときそのことをいうと探してやるといい、本当に図書館の蔵書から探し出してくれたのだった。十ん年ぶりの再会に喜んで読み返したそのお話しは今でもとても面白い作品であった。

 1週間もした頃、彼は今回も見事に探し出してくれた。本は実在したのだ。

「6色クレヨンの島*サモアの蚊日記   一盛和世   (文化出版局)」

 そうそう、蚊の話だったんだ。記憶が少しずつ蘇る。主人公はカシアこと一盛和世。著者本人である。女性蚊学者の著者が世界保険機関のフィラリア・コントロール・プロジェクトに参加し、西サモアで過ごした悪戦苦闘の2年間の記録が綴られている。日本人から見ればかなり不思議なサモアの人々、風習、ファア・サモア。向こうから見ればかなり奇妙なパパラギ(白人もしくはサモア語以外で話す人)。異文化同士の奇妙な生活と研究所でのお仕事。のんびりした南の島の景色が浮かんでくる。

 ぜひ面白いので読んで欲しいと思うのですが、皆さんは図書館を便利に利用できるのでしょうか。もちろんどこの図書館にも必ずあるというわけでもないでしょうし。

 最後に素晴らしき再会を2度までも与えてくれた友人、浜部氏に感謝します。

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