租税回避目的、利益操作目的があると真実の譲渡とは扱われない
弁護士(ホーム) > 税金
>
2015.12.18mf更新
相談
当社は、平成6年に7000万円で買い、社宅として使っていました。現在、このマンションは時価約4000万円です。
この際、社長である私がマンションを買いたいと思います。私がマンションを4000万円で買うと、会社には3000万円の売却損が出ます。
当社は、今期、7000万円の利益が出ます。7000万円の利益から3000万円の損失をマイナスすることができますか。
当社の決算期は今月です。今期の利益が大きいので、できたら今期で譲渡損失を出したいのです。また、所有権移転登記はせずに契約だけしておくことはできますか。
弁護士の回答
会社がマンションを譲渡した時点で3000万円の譲渡損失が出ますので、これを利益からマイナスすることはできます。会社の利益は4000万円になります。
しかし、租税を回避する目的で、マンション売った場合は、譲渡はなかったものと扱われます。利益操作を目的とした場合も同じです。そこで、会社が何のためにマンションをあなたに売るのか明確にする必要があります。例えば、手持ち資金が少なくなり、資産を譲渡して手持ち資金を増やす目的があれば合理的と考えることができます。
譲渡の時期が問題になるようですので、契約日を明確にするために公証役場で確定日付印を押してもらうなどし、譲渡の日付の証拠を確保する必要があります。
また、これは真実の契約でなくてはなりません。契約書だけ作成し登記をしないと、なぜ登記しないか、理由が問題となります。真実の契約か否かも、問題となります。租税回避のために契約したと疑われます。
譲渡の価格も問題となりますから、不動産鑑定士の鑑定書など、不動産の価格の資料を残しておく必要があります。
判決
- 名古屋地方裁判所平成5年3月24日
判決(出典:家庭裁判月報46巻12号67頁)
右の事実によれば,本件公正証書は,いずれも特段の必要がないのに作成されたものであり,しかも,原告,浩一及び浩夫は,いずれも所有権移転登記をすること
に何ら支障がなかったにもかかわらず,一夫の死亡に至るまでこれをしなかったというべきところ,原告らは,別紙四記載の不動産の贈与については,公正証書を作成し
ておらず,一夫から贈与を受けると間もなく所有権(持分)移転登記を経由しているのであるから,本件不動産につき,わざわざ公正証書を作成しながら,所有権移転登
記をしなかった合理的な理由を見出すことができず(原告本人は,別紙四記載の不動産の贈与について登記をしたのは,共有関係となって権利関係が複雑になるので,登
記をしなければはっきりしなかったからである旨供述するが,納得することのできるものではない。),本件公正証書は,いずれも租税の負担を免れるための方便として
作成されたものであり,真実は一夫が死亡した場合には本件不動産をそれぞれ原告,浩一及び浩夫に贈与することを約したのであるが,相続税の課税を回避するため,あ
たかも即時に贈与したかの如き条項にしたものと認めるのが相当である。本件公正証書作成当時,既に原告らが本件不動産に居住するなどして,無償でこれを使用してい
たことに鑑みれば,原告らが本件不動産に係る固定資産税等,火災保険の保険料及び修繕費等を負担してきた事実があるからといって,右認定を覆すには足りないという
べきである。
そうすると,本件不動産は「贈与者の死亡により効力を生ずる贈与」(遺贈)によって取得した財産に当たるので,相続税の課税財産に含まれるというべきである。
以上のとおりであるから,原告の本訴請求は理由がなく棄却を免れない。
虎ノ門3丁目 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03−3431−7161