相続人不存在の場合の相続/特別縁故者

河原崎法律事務所ホーム遺言、相続法律相談
2015.7.30mf
弁護士河原崎弘

質問:相続人がいない場合、遺産は

私が面倒を看ている方(92歳)は、子供はいません。兄弟もいません。この方は家(土地、建物)を持っています。
相続人がいない場合、この家はどうなるのですか。
相談者は、デパート内で弁護士会が開いていた法律相談所を訪ね、弁護士に相談しました。

回答:相続財産管理人の選任、特別縁故者に分与

被相続人が死亡して相続が開始したが、相続人がいないときや、誰が法定相続人が明らかでない場合は、相続財産は法人とされ、特別の手続きがとられます(民法951条)。相続人が全員相続放棄をしている場合や、相続人となるべき者が相続欠格事由に該当していたり、相続人の廃除をされている場合も同様です(遺言により包括受遺者がいる場合は、別です)。
  1. 利害関係人又は検察官が、家庭裁判所に対し、相続財産管理人を選任するよう申立ます。
    申立ての際、予納金が必要です。予納金の額は、事件内容、裁判所により違います。普通は、50万円〜100万円くらいです。遺産の中に、その程度の預金があれば、予納金は不要です。
  2. 家庭裁判所は、相続財産管理人を選任し、公告します。
  3. 前項の公告後2か月以内に相続人が現れない場合は、財産管理人は、相続債権者や受遺者に対して、2か月以上の期間を定め、請求するよう公告します。
  4. この清算のあと、まだ財産が残っていれば、家庭裁判所は、もう一度、6か月以上の期間を定めて公告し、相続人の出現を待ちます。この期間が経過すると、相続人、受遺者の権利は失効します。
  5. 前項の期間満了後3か月以内に、「 特別縁故者 」からの請求によって、家庭裁判所は、その者に対して相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3)。
    特別縁故者とは、次の者を言います。
    • 被相続人と生計を同じくしていた者
    • 被相続人の療養看護に努めた者
    • その他被相続人と特別の縁故があった者
    内縁の妻や夫、事実上の養子がその例です。
    特別縁故者もいない、あるいは特別縁故者に与えられなかった相続財産は、最終的には国庫に帰属することになります。
療養看護に献身的に尽くした場合は、特別縁故者に当たるという審判例がいくつかあります。あなたも特別縁故者として認められる可能性がありますので、分与の請求をしてください。

祭祀承継人に指定された人や、(押印のない遺言は無効ですが)無効な遺言で遺産を与えられた人は、この特別縁故者の分与の申立をしてください。その場合、全額は無理ですが、遺産の一部(多くは、10%〜20%)の分与が認められます。
1審で裁判所から、(一部の分与をする旨の)和解を勧められますから、これに応じることもよいでしょう。
1審で却下された 場合は、即時抗告を申立て、2審の判断を求めてください。分与が認められるでしょう。

判決

民法
第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
前項の請求は、第958条の期間の満了後3箇月以内にしなければならない。

港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 03-3431-7161