弁護士(ホーム) > 刑事法インデックス > 刑事法の争点 >
弁護士河原崎弘

メモの証拠能力

質問
日常生活でつけるメモや、手帳は、証拠能力がありますか。メモは伝聞証拠ではありませんか。

回答
英米法のメモの理論
2つの場面があります。1つは、記憶を喪失した場合、メモを示して証人の記憶を喚起する。証拠になるのは、メモではなく、メモのよって喚起された記憶です。
2つ目は、記憶が完全に喪失された場合、供述者が、メモの内容が正確であり、記憶が新しい時点で書きとめた旨を証言し、反対尋問を受けたことを条件に、メモが証拠となるのです。

刑事訴訟法には、メモの証拠能力について直接規定した条文はありません。メモは、非供述証拠であるとする見解もあります。しかし、メモも、知覚、記憶、表現の各過程が問題で、各過程につき反対尋問が必要す。だから、供述証拠であり、伝聞証拠でしょう。
メモが作られた状況(正確に記載されたものであること)につき反対尋問されたことを条件に証拠能力を認める考えが普通です。
なお、尋問に際し、刑事訴訟法規則199条の11に基づき、メモを記憶喚起のために使うことができます(東京高等裁判所昭和40年7月29日判決)。
メモの証拠能力の根拠は、以下のとおりになります。

適用条文理由判例
判例刑事訴訟法321条1項3号記憶の喚起不能を供述不能とみなす
<323条3号書面は、2号書面、戸籍謄本、商業帳簿に準ずる書面>
<321条3項、4項の書面は専門家の書面>
最高裁判決昭和31.3.27
通説刑事訴訟法323条3号大阪高裁昭和26.11.22/上記判決の原審
少数説刑事訴訟法321条3項、4項準用内容を記憶することは困難であり、記憶よりも、書面の方が正確である

登録 2006.6.9