民事訴訟事件の記録は誰でも閲覧ができるか

弁護士河原崎法律事務所ホーム法情報 > 民事事件の記録は誰でも閲覧ができるか
2015.5.22mf
弁護士河原崎弘

質問:民事訴訟事件の記録

慰謝料(慰藉料)を請求されています。相手の弁護士が、「もし訴えを提起したら、新聞記者が裁判所で書類を見て、記事にするでしょう。示談の方がよいですよ」と言ってきました。
脅しとも取れるのですが、新聞記者や、週刊誌記者が、裁判所に出された書類を閲覧することができるのでしょうか。

回答:閲覧、謄写が可能です

(閲覧)
裁判の公開の原則(憲法82条)を徹底するため、誰でも民事訴訟事件の記録を閲覧できることになっています(民事訴訟法91条1項)。そこで、新聞記者も、訴訟記録を閲覧できます。

裁判がある日は、裁判所の受付には、当日の裁判の法廷表が置かれるか、張り出され、法廷の前の廊下の壁には、当時者名、事件名が書かれた開廷表が張り出されます。通常は、誰であるか気が付かれないでしょうが、ある程度名が知れた人は、裁判をしていることが知られるでしょう。
そこで、興味を引かれれば、前述の訴訟記録(訴状、答弁書、準備書面、尋問調書、和解調書、判決書)を閲覧するでしょう。興味ある人は、受付または、法廷の前の廊下の壁に張ってある開廷表から、事件の事件番号、原告と被告の氏名をメモしておき、通常は、裁判所内にある記録閲覧室で記録を閲覧します。
しかし、普通の人が裁判をしていることを知られることは、あまりありません。

(当事者 名 )
当事者名(原告、被告の氏名)がわかる場合は、裁判所の訟廷事務所で、事務官が、パソコンを使い、係属部、事件番号を調べ、教えてくれます(パソコンを使わせてはくれません)。電話でも、教えてくれます。その後、記録閲覧室で、記録を閲覧します。

記録の保存期間は、判決原本(刑事事件を除く)は50年、和解調書は30年、事件記録は5年です。廃棄期間満了間近の場合は、理由を書いて「保存して欲しい」との上申書を提出すれば、裁判所は、保存期間を超えて記録を保存しておいてくれます。

(謄写)
当事者及び利害関係人(疎明する必要あり)は、訴訟記録のコピーを請求することができます(91条3項)。
なお、秘密保護のため、申立により、裁判所が、訴訟記録の閲覧・謄写などを制限することがあります(92条)。

参考法律
【民事訴訟法】 第91条(訴訟記録の閲覧等) 
@何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。
A公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り、前項の規定による請求をすることができる。
B当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
C前項の規定は、訴訟記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
D訴訟記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
登録 2010.6.18
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 弁護士河原崎法律事務所 電話3431-7161