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2015.4.1mf更新

取込み詐欺対策

弁護士河原崎弘

相談:取込み詐欺1/初めは少額取引、次の大量注文

私は、主に洗剤などを扱っている会社を経営しています。
平成10年8月、突然、ある卸売り会社から電話で洗剤の注文を受けました。当社は、この会社とは、初めての取引きでした。これは、2回ほど20万円ほどの注文でしたが、その度に振込みがあり、私は、良い顧客と思っていました。
1ヶ月ほどして、その会社は移転し、大きな事務所を構えたようで、移転の案内が当社にも来ました。そのとき、私は、偶然、求人雑誌でその会社が女性事務員を6人募集しているのが名に入り、「景気の良い会社だな」との印象を受けました。
その直後、その会社から、今度は、400万円ほどの金額の注文があり、私は、少し心配になりました。私が会社を訪問したところ、社長は不在でしたが、女性事務員が3人、男性社員が2人ほどいました。倉庫には家庭用品が山積みされていました。私は部長の肩書きを持った人と名刺を交換し、会社案内などのパンフレットをもらいました。その会社は平成3年の設立でしたので、私は、安心し、その注文に応じることにし、9月2日、商品を送りました。
すぐ書留めにて、期日12月10日の400万円の手形が送られてきましたので、私は安心していました。ところが、その手形は、期日に落ちず、不渡りで帰ってきました。驚いた私は、その会社に電話をしましたが、誰も出ません。私は、すぐ、その会社に行きました。会社は、事務所を閉めており、誰もいません。
私が、会社へ行くと、やはり、同様に被害に遭った人が居て、取込み詐欺で会社の役員を警察が追っているが、逃げてしまったそうです。私は、会社の謄本を取り、登記されている代表者の住所に行ったところ、その人は、その住所に居ませんでした。今後、どのようにしたら良いでしょう。

回答
典型的な取込み詐欺ですね。連中は、電話帳を使って(ホームページを見て)、取引きの相手を探し、初めは小額な注文を出し、現金で支払い、安心させます。その後、大量の注文をして手形を発行し、期日までに、商品は処分し、逃げる典型的な詐欺です。
代金の一部を支払ったりすることもありますので、詐欺の故意の証明が難しいのです。この連中は、常に場所を変え、取込み詐欺をしている常習的なグループでしょう。
そこで、初回の取引き、あるいは、大量の取引きの場合は、相手の会社を調べる必要があります。取込み詐欺を働く会社は、大抵、休眠会社を買って利用していますから、古い会社であっても、安心できません。そのような場合には、従前の代表者に会って話を聞く必要があります。安心できなければ取引きしないことです。
大体、相手の様子で相手が詐欺犯か否かはわかります。危険な場合には取引額を小さくするとか、現金取引にする方法もあります。 ここで、あなたが有能な経営者であるか否か、経営者としての能力、判断力が試されます。しかし、不況のため売上げを伸ばそうとして、詐欺の被害に遭う人は多いです。
なお、常習犯ではありませんが、普通の人が会社の倒産間際に大量の注文を出して取込み詐欺をすることもあります。従前の取引きに比べて急に大きな注文が来た場合は、(現金払いの外は)簡単に応じない方が良いでしょう。
弁護士に依頼し、警察へ詐欺の 告訴状 を出した方が良いでしょう。しかし、お金が返ってくる可能性は低いでしょう。

レッスン
知らないところからの注文は現金取引きに限ります。 現在、取込み詐欺の被害に遭ったのでないかと不安がある方は、相手の会社に行き、よく事情を尋ねると良いでしょう。できたら、数か月遡って調べるとよいでしょう。
取込み詐欺犯が経営する会社の従業員は、詐欺の手伝いをしていることに気付いてない人もいます。その人と話しをし、証拠を確保すること、会社の謄本を取り、社長が本人かどうか確認すること等をして、おかしかったら、警察に行くべきでしょう。犯人が逃げる前なら、犯人は犯行をカムフラージュするために代金を払う可能性があります。最近(平成14年)は、ホームレスを名義上の社長にしている例がありました。
何も調べずに警察に行っても、警察は取り上げてくれません。まず、自分で、調べて下さい。

2:代金を支払ってないのに、追加注文

はじめまして。取り込み詐欺にあってるのではないかと心配し、インターネットで検索してこちらを読み、「やっぱりそうか」と、確認できた気がします。

私どもは貴金属加工をおこなう会社(主にジュエリーなどの修理やリフォーム)を営んでおります。かたわら、アメリカのあるメーカーのジュエリー製品の輸入・卸の仕事もしております。
昨年11月にある会社から、輸入しているジュエリーのカタログ請求があったので送付しました。それから、特に連絡はなかったのですが、3月になって、商品を見せてほしいと連絡がきました。
近くなので、商品を持って行きました。
相手は、「ケミカル関係の製造・卸をしていたが、その関係から、さまざまな商品を扱う様に卸し先に言われるので、ジュエリーも今後扱っていきたい」と言うのです。そのために、増資(1000万円から2000万円に)し、社名も〇〇ケミカル株式会社から、〇商事株式会社に変更したそうです。
その際、代表取締役も変わってました。
相手はジュエリー製品について全くの素人で、知識もありません。私は、「これでは商売はなかなか難しいと思いました。相手は、「取り急ぎ、先方(その会社の取引先)に商品を見せたい。貸して欲しい、必ず売れる」と言うので、私は、商品を貸してしまいました。
その後、相手は、何かの企画で「18金の指輪を100本オーダーしたい」と言うので、私が「現金でないとできない」と言いました。相手は、「1/3のみ現金で払い、あとは、末締めの翌月末」と言います。私は、怪しいと思いながらも、承諾してしまいました。当社は、1/3の現金を受け取り、商品を納品しました。
その数日後、相手は、さらに、「追加で、100本オーダーしたい」と言うのです。
私は、「まだ、残金ももらってないし、そんなに多量の注文を、いきなり受けられないから、とりあえず残金全額入金になってからにして欲しい」、告げました。私は、「上司に相談して、連絡する」と言って、ゴールデンウイークを迎えました。

私どもは、一応、その会社の登記簿謄本を取り、社長の住民票を取ろうと、社長の住む町の役所に行きました。調べましたら、社長は、その住所に代表取締役就任の少し前に引っ越してきて、3か月後には別の町のアパート(○○○○荘となっていた)に引っ越していました。 その先、追っておくべきか、弁護士にでも相談したほうがいいか、考えてたところ、先方より連絡があり、「今回の注文が受けられないなら、前回の商品もすべて返品する」と言われました。
どうしたものかと思いましたが、不安なので返品してもらうことにし、初めに支払ってもらったお金は返却しました。先に貸していた商品もすべて返品してもらえました。
従って、当社には実害はありませんでした。商品を引き取りに行ったときに、別の会議室で、ヘルスメーターか何かを扱ってる業者の人に、私に言っていた同じせりふ、「ある企画があって、大量に商品が欲しい」と持ち掛けているのを聞いて、「やっぱり詐欺に違いない」と、確信しました。
きっと、今月か、来月末に、とんずらするんじゃないかと 思います。今の時点では、きっとどうすることもできないんでしょうか? 警察も被害がでてからでないと動かないんでしょうか?

今回はつくづく、いろいろ勉強になりました。不況のおり、やっぱり、景気のいい話についつい乗ってしまいます。もし、この会社に現在ひっかっかってる会社があれば教えてあげたいけど、どうすることもできませんか? みすみす、見過ごすには悔し過ぎると思っています。

3:「うちの経理はうるさい」との、もっともらしい言い訳をする

うちの会社は、どうやら取り込み詐欺をしている人から 狙われやすいようで、今回、また、同じような事がありました。

きっかけは、私どもの会社が今(2000)年の1月の末に東京ビッグサイトで行われている国際宝飾展へ出展したことからはじまります。国際宝飾展は一般ではなく、いわゆる業者向けの展示会で、そこで多くの会社同士で取引を行います。あえて、実名でメールいたしますが、そこに「〇〇〇プランニング」という、会社の営業部長という方が見えて、私どもの出展している「ジュエリーが大変気に入った」と言い、「後日商談を持ちたい」と言って、名刺を置いて行きました。
後日、連絡があり、この月曜日(2月21日)に、私が行って参りました。

会社に入った途端、「ああ、前と同じだ」という、印象でした。
以前のときとの類似点を簡潔にあげてみます。
  1. まず、いきなり「インターネットで見た」とか、「何々で知った」とか言って、取引を申し込む。会社案内を送ってくる(またはFAXしてくる)。
  2. 会社案内の内容は、よく見ると何をやってる会社かわからない。いろいろなことをしている。また、取引銀行がマイナーな銀行。
  3. 営業年数がけっこうある、または社員数がけっこういるにもかかわらず、オフィスはさっぱりしていて、パーデーションで区切った商談スペースがいくつもある。
  4. 先方の取引先が不透明。具体的なことは言わず、やたらと「商品が必要だ」と言うのみ、強調する(しかも、「早急に・・・」と、言ったりする)。
  5. 取引の前に「契約書」を求める。「契約を取り交わしてから取り引きしよう」と言う。
  6. 扱う商品をあまり吟味しない。
  7. 初めは小額(100万円以内くらい)で、支払もある程度応じる。
  8. 断ると、深追いはしない。あっさり引き下がる。
今回はガンとして、「現金取引(COD)以外は応じない」と言いましたら、相手は初めは「買いたいのは山々だが、会社の経理が駄目だと言うので、そちらの方でなんとかならないか」と言っていました。私が、「こちらも現金でないとどうにもできない」と言うと、「わかった」と言って、すんなり引き下がりました。
以前の千葉県柏市の会社の件が取り込み詐欺の被害届けが出たと昨年9月の読売新聞に載っていたので、今回は何かつながりでもないかと、一応柏警察署に連絡しました。
本当にこの不況下に人の弱みにつけ込むような卑劣な犯罪を許せないと思いました。私どもも、前回のことがなければ先方の口車に 乗っていなかったとは言い切れませんでした。

コメント
貴社は、換価しやすい商品を扱っているから狙われ易いのでしょう。「会社の経理がだめだ」などは、もっともらしい理由ですね。あっさり引き下がるのは、大仕事(大犯罪の)前にトラブルを起こしたくないのです。柔らかい物腰は詐欺犯人に共通です。

取り込み詐欺4:電話帳を見てきた客

昨年、「〇〇建設株式会社と名乗り、電話を使って畳、タイルなどの工事を注文し、代金を支払わない」ケースがありました。これは電話帳を使っているようでした。
被害額は1件30万円未満でしたが、相談者が、支払い督促申立てのために、武蔵野簡易裁判所に行くと、そこでは評判になっていました。被害は100件位あるようでした。
犯人は吉祥寺に家を借り、会社の登記をし、3、4人で、組織的に詐欺行為をしていました。電話帳を見て来た(見知らぬ)業者の(現金払いでない)注文には気を付けましょう

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