精神障害がある(異常な)ストーカーに対処する

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2015.6.9mf更新
弁護士河原崎弘
相談
20歳の女子学生(短大から4年生の大学に編入した)は、元短大時代の同級生から、在学中に執拗に交際を迫られていましたが、相談者はこれを何度も断りました。以来、この男から、頻繁に手紙が来たり、相談者の周囲に悪口を言ったりされた。
短大卒業後、ある日、この男から(男は偽名を使っていた)、実家に相談者の現住所を尋ねる電話が入り、うっかり、家人が住所を教えてしまった。以来、女子学生は不安になって相談室を訪れた。
男は、たまたま、郷里が近いということだけで、相談者に近づいたので、相談者と、話をしたとか、交際をしたわけはありません。
男は、在学中に、壁に、相談者を中傷することを書いたことがありました。教師に注意され、消すよう指示された際に、この男は、壁に書いた文字を黒く塗りつぶし、横に謝罪文と、自分の名前を書いたそうです。このように、このストーカーには、奇行が多くあります。

対策
スト−カ−が、次に、どのような行動に出るか予測することは難しいです。従って、ストーカーに対応するには、相手に応じ臨機応変にする必要があります。
法的対処が有効なストーカーは法律が効果を挙げうる相手です。罰せられることを嫌がる、ある程度の知的レベルにある人です。ストーカーが精神障害者である場合は、法的対処には、限界があります。
このケ−スでは、相手は、低い知的レベルにある精神障害者ではないかとの印象を持ちました。心理のカウンセラーも同意見で、「パラノイア」と推測しています。異常なストーカーは、殺人、傷害などの重大犯罪に発展する危険があります、ストーカー規正法を使っただけの法的対処では不十分です。
そこで、弁護士は、相談者に対し、次のことを勧めました。 精神障害者が一人住まいの女性のところへ来る状況があれば、十分危険です。
異常性格(精神病質)を含め、精神に障害がある者が他人に危害を加えるか否かの判断は、難しいです。相手がそのような場合は法的に守る手段がありませんので、相手から逃げて、自分自身で自分を守るとよいでしょう。
逃げることができない場合は、相手を刺激しないように、話し合いをする場所も、自宅などにしないで、公衆の目の届く場所がいいでしょう。

ストーカー規正法に基き、警察の介入を求める方法もありますが、限界があります。警察が警告しても、加害者の4人に1人は、付きまといを続けたとの統計もあります。

それでも被害を受ける場合は、最後は正当防衛をするしかありません。正当防衛は、認められることが(特に、警察の段階で)難しいです。喧嘩、相互に加害行為をしたと扱われてしまう可能性が大きいです。
そこで、正当防衛である証拠を確保しておく必要があります。警察に事情を説明することも必要です(当り前ですが、警察官職務執行法5条により警察官は犯罪の予防のため警告し、制止する権限があります)。2000年11月24日以降は、ストーカー行為等の規制に関する法律 7条に基づき、ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出ををすれば、正当防衛である情況が1つできます。
できれば、危害を受ける直前に警察官に正当防衛をしてもらうとよいです。

ストーカー行為等の規制に関する法律7条に基づき、国家公安委員会が定める援助には、次のものがあります。DV防止法3条3項3号が規定するDVシェルターのように、被害者を一時的に保護する施設もあります。
ストーカー行為等の規制等に関する法律施行規則
(平成十二年十一月二十一日国家公安委員会規則第十八号)

(警察本部長等による援助)
第九条  法第七条第一項 の国家公安委員会規則で定める援助は、次のとおりとする。 一  申出に係るストーカー行為等をした者に対し、当該申出をした者が当該ストーカー行為等に係る被害を防止するための交渉 (以下この条において「被害防止交渉」という。)を円滑に行うために必要な事項を連絡すること。
二  申出に係るストーカー行為等をした者の氏名及び住所その他の連絡先を教示すること。
三  被害防止交渉を行う際の心構え、交渉方法その他の被害防止交渉に関する事項について助言すること。
四  ストーカー行為等に係る被害の防止に関する活動を行っている民間の団体その他の組織がある場合にあっては、 当該組織を紹介すること。
五  被害防止交渉を行う場所として警察施設を利用させること。

六  防犯ブザーその他ストーカー行為等に係る被害の防止に資する物品の教示又は貸出しをすること。 七  申出に係るストーカー行為等について警告、禁止命令等又は仮の命令を実施したことを明らかにする書面を交付すること。
八  その他申出に係るストーカー行為等に係る被害を自ら防止するために適当と認める援助を行うこと。
July 17, 2000
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