借地上の建物の改築の承諾/許可
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2017.8.31mf更新
弁護士河原崎弘
相談:不動産
現在、私の父が借地権のことで悩んでおり、知人、不動産屋等に相談しましたが、今一つ明確な回答が得られず、困っています。
内容は下記の通りです。
現在住んでいる土地は借地であり、35 年位前から借りています。建物は自己所有で、登記もしてあります。 しかし、建物が老朽化し建て直しをしたいと思っており、何度か地主へ建て直しの話をし承諾を求めたのですが、地主は了解してくれません。
なんとか建て直しをしたく、了解を得られなくても、裁判所の承諾を得れば建て直しできるなどと言うことも聞いたことがありますが、どうしたら宜しいでしょうか。ちなみに、契約期間の残り 18 年あります。
回答
市役所の法律相談では、弁護士は次のような説明をしてくれました。
【平成4年7月31日までに締結された賃貸借契約の場合】
あなたの父のケースは、35年前の契約ですから、借地法が適用されます。
借地法では、
借地上の建物の改築には2種類あります。- 木造から木造に改築する場合です(非堅固から非堅固へ)。
この場合、契約書に増改築禁止の条項がなければ改築は自由です。地主の承諾は不要です。
契約書に改築禁止の条項があった場合は、改築には地主の承諾が必要です。
地主の承諾が得られない場合は、裁判所で改築許可を求める申立てをすると、裁判所が許可してくれます。裁判所は、許可の際、改築の承諾料(借地人が地主に支払う)を決めてくれます。承諾料は更地価格の 5 %くらいです。
トラブルを避けるために、契約書に増改築禁止の条項がない場合でも、裁判所の許可を求める借地人もいます。
- もう1つは、借地人が、木造建物を鉄筋のビルに建て替える場合です(非堅固から堅固へ)。
この場合、地主の許可が必要です。
付近の土地の利用状況が変わった場合(木造から、ビルが立ち並ぶようになった場合)は、借地人は裁判所に対し、条件変更(木造建物所有から、鉄筋のビル所有)許可の申立てをすると、裁判所が許可してくれます。裁判所は、許可の際、(借地人が地主に支払う)改築の承諾料を決めてくれます。承諾料は更地価格の 10 %くらいです。
以上の手続きを借地非訟手続きと言います。
借地非訟手続き
地主が増改築の承諾をしてくれない場合には、地主に代わって、裁判所が増改築の許可をしてくれます( 借地借家法 17 条)。
この場合、裁判所は、鑑定(うまいことに鑑定料は特に必要ありません)をし、増改築の承諾料や新地代を決めてくれます。
いづれにしても、地主の承諾に代わる裁判所の許可を取ってから、改築する方が安全です。
この手続きは 6 か月ほどかかります。
参考:【平成4年8月1日以降に締結された賃貸借契約の場合】
借地借家法が適用されます。
平成4年8月1日施行の借地借家法では、
- 当初の契約期間中の改築
契約書中に、改築や建築を制限する条項があると、前と同じです(借地借家法17条)。
制限する条項がなければ、自由に改築できます。
-
更新後の改築
地主の解除権を認めました。
平成4年8月1日施行の借地借家法には、更新後の建物の建替えに関する規定が設けられました。これによりますと、契約更新後、残存契約期間を越えて存続する建物の建築(通常、改築すれば、これに当たるでしょう)については、賃貸人に対し事前の通知が必要であり、建替えが許されるのは、地主が建替えの承諾をするか、建替え工事に異議を述べなかったときとされています。
更新後、地主の承諾があって、契約期間を越えて存続する建物を建てたときは、その建物に関する借地契約の契約期間は、更新され、その地主の承諾があったとき、あるいは、建替えのとき(築造の日)から20年間存続するとしています(7条)。
これは、建替えについての地主の承諾のある場合のことであり、その承諾がないときは、全く異なります。
地主が承諾していないのに建替えたときは、建替えは違法になり、地主は、その違法な建替えを理由に、当該借地契約の解約できます。その場合は、解除があった日から3か月後に借地権が消滅します(第8条)。
このように、借地借家法では、契約更新後は、建替え(契約期間を越えて存続する建物の建築)は、地主の承諾が必要ということが原則となったのです。
現実に建替えを行う場合には、まず地主に対する建替えの通知を行う必要があります(7条2項)。間違っても、無断で建替えを強行してはいけません。契約を解除される危険があります。
単に、取り壊すのも危険です。取り壊しただけで、地主から承諾が得られないときは、そのまま建てられなくなるからです。
他方、地主には、建替えを承諾する義務はなく、理由なく断ることが許されています。地主としては、契約期間を越える建替えは認めないとすることで、たとえ契約更新がなされても、何回かの更新するうちに、建物が使えなくなるのを待って、借地権自体を消滅させることができるのです。
さらに、火事などによって建物が滅失すると、契約期間内であれば、建て替えることもできますが、あくまで契約期間内において有効とされるだけということになります(参考:借地上の建物滅失後の再築)。更新後の立替は、地主の承諾が必要です。
このように、建替え、特に、契約更新後立替えについては、十分に注意する必要があります。
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