離婚の場合私(母)が娘の親権者になれますか
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2015.5.11mf更新
弁護士河原崎弘
親権の相談
私たち夫婦は離婚になりそうです。当地は、封建的な土地柄の田舎で、夫は当地では有力者の家です。夫の父親は、この地方で力のある弁護士を知っています。
調停に出ても、私が娘(3歳)の親権をとれますか。夫に娘をとられてしまうのではと心配で、離婚の決意ができずにいます。
現在、私が娘を育てています。私は、娘の親権を取れますか。
回答
親権者は、離婚の際、当事者の協議または調停で決まらなければ、 家庭裁判所 が審判で決めます。家庭裁判所調査官が父親、母親の生活情況を調査し、裁判官が、父母の子どもに対する愛情、父母の生活状況、経済状態、子どもの意思を基準に決めます。
裁判所は、子どもが幼い場合は、母親を親権者に指定し、子どもが自分の意思を持てるようになると(10歳以上)子どもの意思を尊重して親権者を決め、大きい子どもの(15歳以上)場合は、子どもの意思の通りに親権者を決める傾向にあります。子どもが15歳以上の場合、裁判官は、子どもの陳述を聴かなければなりません(家事事件手続法169条2項)。
子どもが3歳なら、調停や審判では母親が親権者に決まるでしょう。
理由は、幼児の人格形成には母親が必要との心理学の理論のようです。
例外として、母親が、監護しない場合、子供を施設に預けるとか、夜間、子供を寝かしてから、飲酒のため遊びに出るような場合は、父親が親権者に指定されています。
実際に、父親の方が愛情がこまやかであり、父親に引き取られた方がよいとの印象をうけるケースでも母親が親権者に指定されるのが現実です。
裁判官は神様ではありません。裁判官に事実認定について特別な能力があるわけではありません。そこで、どうしても形式的な裁判になるのです。特に、裁判官は、組織に属している公務員ですから、前例などを重視せざるを得ませんし、他から批判されない判決を書くよう心がけます。
現在、養育している者が、その養育が暴力など違法に始まったものでない限り、現在、養育している父または母が親権者に指定されるでしょう。
なお、親権者を父親、監護者を母親と指定したことが過去にあったようです。
親権と監護権をわけると、監護者は、監護、教育などの身上監護権を有し、親権者は、子の財産の管理および代理する権限、子の身分行為についての代理権を有することになります。これは、法律関係を複雑にしますので、現在、このような指定は、ほとんどありません。
あなたのケースの場合、現在、あなたが子供を養育していますので、母親であるあなたが親権者に指定されるでしょう。
相手の弁護士に力があるとの点は心配することはないでしょう。あなたもよい弁護士を選んでください。
弱気にならずに頑張ってください。
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平成7年の統計ですが、調停成立事件、24条審判事件では、83.5%が母親が親権者、11.7%が父親が親権者、4.8%が双方(子どもが複数居る)が親権者でした(家裁月報1997-1-51)。
平成10年の、親権を行う子の数別にみた離婚統計では、「母親が全児の親権を行う場合」79.2%、「父親が全児の親権を行う場合」16.5%となっている。
- 公務員である裁判官が裁判をすることは、多くの事件を、ある一定水準で、大量に処理するするとの観点からは、効率の良いシステムです。しかし、難しい裁判などでは"粗"が出てしまいます。
民間人が参加する陪審制とか、裁判員 の制度は、それなりのメリットはありますが、良い人を得ないと無責任な裁判になります。
どのような制度でも、絶対的ではありません。
判例
- 横浜家庭裁判所平成21年1月6日審判
以上認定した事実によれば,申立人は,相手方との同居時から未成年者らの日常の世話を専ら行っていたもので,母親としての監護能力に問題はなく,相手方との別
居後は申立人の両親の補助を受けながら,未成年者らは安定した生活を送っていると認められること,未成年者C及び同Dはいずれも申立人と暮らすことを希望している
こと,未成年者Eは,未だ3歳の幼児で,身辺の十分な監護を必要とする年齢であり,女児であることからも母親の下で養育されるほうがより適切であること等の事情を
考慮すれば,未成年者らの監護については現時点では母親である申立人に任せるのが未成年者らの福祉に適うものである。
しかしながら,申立人は,消費者金融から多額
の借入れをなし,高額商品をクレジットカード等で購入して質入れ等して換金しているが,入手した金の使途は不明である(その多くの部分を消費者金融の返済やクレジ
ットカードの支払いに充てるという自転車操業に陥っていたものと推認される。)。申立人は上記のような行動を取ったのは生活費に窮したためと主張するが,相手方は,
平成16年ころから,住居費,光熱費,未成年者らの授業料・教育費は相手方の銀行口座からの自動引落しとし,家族旅行や外食などの臨時の出費のほか住宅ローンも負
担しており,申立人が必要としていた生活費は,食費(米は申立人の両親から譲ってもらっていた。)や衣類・日用品,医療費,稽古事の費用などであり,申立人の主張
によっても,相手方は平成12年ころからは少なくとも月7万円程度の費用を負担しているにもかかわらず,申立人は,月々の生活費の不足のために安易に消費者金融か
らの借入れに頼り,さらには多数回の高額商品の購入・質入れという通常の日常家事債務の域を超えた方法による現金の入手(実質的には金利について法的規制のある消
費者金融からの借入れよりもはるかに高利を負担する借入れ)という方法を取るなど,申立人の金銭管理能力に大きな不安がある。親権者の職務には財産管理も含まれる
ことを考慮すれば,未成年者らの親権者を父親である相手方とし,監護権者は申立人とするのが相当である。
親権者変更の申立ては,とくに反対の意思がうかがわれない限り,監護者変更の申立てを内包しているものと解されるので,以上の理由により,本件申立てについて
は,親権の内容の一部である監護権のみを申立人に行使させることとして,未成年者らを監護すベき者を申立人に変更し,その余は理由がないから却下することとして,
主文のとおり審判する。
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