所在(行方不明)不明の外国人の夫との離婚/国際離婚

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2013.11.10mf更新
相談
私( 32 歳)は、 1994 年 6 月、イラン人の夫( 35 歳)と結婚しました。夫は、週 2 、 3 回、私のアパートに通って来ました。同年 9 月、長女が生まれました。
1995 年 1 月から、私は、子どもを母に預け( 4 月からは子どもを引取り、保育所に預けました)、運送会社に勤めました。そして、私と夫は別のアパートに引っ越し、同居しました。当時、夫は、建築会社に勤め、月給は 15 万円位、私の給料は 17 万円位でした。
同居して当初の 3 ヶ月間は、夫は、月額 9 万円を私にくれましたが、その後は月額 5 万円をくれました。同年 7 月、夫は肉体労働を嫌い、完全歩合の百科事典のセールスマンになりましたが、収入がないので、家庭にお金を入れません。
お金がないので、安いアパートに引っ越しましたが、 1996 年始め頃からは、お金のことでけんかをするようになり、離婚の話をするようになりました。
この年の2月、夫は財布がなくなったことで私を疑い、警察に届けました。この財布には 4000 円入っていたのですが、後から出てきました。
しかし、この事件以後、私は、夫が嫌になり、子どもを連れて家を出て、別のアパートで暮らしました。私から夫に離婚の話をしましたが、夫はビザを取りたいため、離婚に応じませんでした。離婚するにはどうしたら、よいでしょうか。

処理:準拠法
外国人との離婚(国際離婚)は、まず、どこの国の法律が適用されるかが問題となります。これは 法の適用に関する通則法 と言う法律の 27 条で決まります。
  1. 夫婦が属する国が同じ場合は、その国の法律
  2. 上記1.でない場合、夫婦が長期間居住している地が同一の場合は、その地の法律
  3. 上記1. あるいは2.でない場合、夫婦に最も密接な関係ある地の法律
  4. 但し、夫婦の一方が日本に長期間居住している日本人であるときは日本の法律
この場合、相談者は日本に住んでいる日本人ですから上記3.により、日本の法律が適用されます。

調停
相談者は、 弁護士会 の法律相談センターで相談しました。
担当弁護士から、「自分で 家庭裁判所 に対し調停申立てをしてください。調停は自分でできます。調停で離婚できないなら、離婚裁判をしてください。裁判には弁護士が必要ですが、お金がない場合は、 法律扶助協会で相談してください」と、助言されました。
相談者は、 1996 年 6 月、東京家庭裁判所に対し、離婚調停の申立をしました。この時点では、夫と連絡が取れ、 2 回ほど調停期日がもたれました。しかし、夫は離婚を拒否したので、 1996 年 8 月 8 日、調停は不調で終りました。夫は、離婚するとビザがなくなることを心配している様子でした。
通常、相手方(配偶者)が海外に居る場合、相手方が任意に日本の家庭裁判所に出頭すれば調停は進行できます。相手方が出頭しない場合は、調停を省略して、直接訴えを提起します。

法律扶助協会(平成18年、法テラスに引き継がれました)
1996 年 10 月 31 日、相談者は、法律扶助協会を訪れ、「離婚裁判をしたいので、弁護士の紹介と弁護士費用の立替え」を、申込みました。
その後、相談者は、戸籍謄本、収入証明などの書類を揃え、法律扶助協会に提出しました。1997年6月10日、扶助協会は、担当する弁護士を決め、弁護士費用約 20 万円を立て替え払いをしてくれました。相談者は、毎月 5000 円の分割払いで返済することになりました。

裁判:公示送達
弁護士は、1997 年 8 月 4 日、離婚の訴えを提起しました。この頃は、 夫の所在はわからなくなっていました(被告が行方不明)。弁護士は、公示送達の申立をしました。公示送達により、訴状も、判決も送達したとみなすことができますので、所在(行方)不明の相手に対しても裁判ができます(民事訴訟法110条以下)。
相談者は、裁判所に対し、予め陳述書を出しました。陳述書は、法廷での陳述(主尋問)に代えるものです。良い悪いは、別にして、時間を節約するために、最近、裁判所は陳述書を出すよう求めます。
1997 年 10 月 22 日、審理があり、相談者は 5 分ほど尋問を受け、審理はその日に終りました(被告欠席のため、裁判は1回で終りました)。11 月 5 日、離婚判決があり、11 月 25 日(判決から2週間経過)、判決が確定しました。
相談者は、判決と確定証明書を区役所に提出し、離婚できました。

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