弁護士河原崎弘

年上の女性に付きまとわれて、就職にも差し支える

相談
私（ 22 歳、学生）は、昨年、夏、友人がアルバイトで忙しいので、友人に代って、友人の知人の女性（ 30 歳、小学校の教師）を東京で案内しました。その後、私は、私のアパートで女性と肉体関係を持ちました。
その後、その女性は月に 1 度くらい大阪から上京し、私たちは ５ か月ほど交際しました。女性は、「私はあなたを絶対に放さない。他の女性にはあげない」などと言い、私のアパートに、机やかばんなどを送ってくるのです。私は恐くなり、アパートを移り、電話番号も変え、番号は電話帳に載せませんでした。住民登録は実家に移転しました。

ところが、女性は、突然、私のアパートに尋ねて来たのです。丁度そのときは、私は、栃木の実家に帰っていて留守でした。翌日、女性から電話があり、私に、「私からは、逃げられないのよ」と、言うのです。女性は、電話番号から、私の住所を調べたようでした。
私は、今、土曜、日曜は友人の家に泊めてもらっています。女性は、実家にも「就職のことで」と言って、電話をしてきました。私は、就職も決まりましたが、この女性に会社に電話をされ、邪魔をされたらと心配です。どうしたら、良いでしょうか。
学生は、学生相談室を訪れ、弁護士に相談しました。

回答
相手の性格にもよりますが、まず、相手から遠ざかることが必要でしょう。住民票は、窓口で嘘を言えは、簡単に取れます。そこで、住民登録は実家において置くか、東京に移す必要があるなら、親戚の家か、会社の寮などに置くと良いでしょう。
電話番号を電話帳に載せていないのに、女性は、あなたの電話番号と住所を調べたようですが、ＮＴＴは警察には番号を教えます。また、ＮＴＴ内部の者は調査が可能です。従って、女性が何かのつてを使い、以前の電話番号がどの番号に移転したかを調べ、住所も調べた可能性はあります。
そこで、現在の電話番号は一旦売却し、新しく、電話を引いたらいかがでしょうか。そうすれば、電話の移転を調べても、あなたの住所はわかりません。より安全にするには、大屋さんの了解を取って友人とかの名義で電話を引けば完全でしょう。

それでも、相手があなたの身辺を騒がせ、あなたの身が危険とか、会社での仕事に影響が出る場合には、弁護士などに依頼し、調停を申立てる、面会強要禁止の仮処分の申立、金銭を請求されている場合は債務不存在確認の訴えを提起する、あるいは慰謝料請求の訴えを提起してもらうとよいでしょう。そこで、話合いのルートができますので、相手の気持ちを聞きながら、相手を説得するとか、適切な対処ができます。
管轄権を持つ裁判所は事件により異なります。
調停、（サラ金あるいはストーカー対策に使う）面会強要禁止等不作為を求める仮処分を、あるいは債務不存在確認の訴えを提起する場合は、相手の住所地の裁判所が管轄を持ちますので、相手の住所地に居る弁護士に依頼する。慰謝料請求の訴えを提起する場合はあなたの住所地の裁判所が管轄を持ちますので、あなたの住所地に居る弁護士に依頼すると都合が良いです。
債務不存在確認の訴えは、相手から嫌がらせ的に金銭を請求されるが、相手が執拗な電話とか嫌がらせをし手段として合法的な手段を使わないような場合によく使われます。

債務不存在確認の訴えを使用する場合の例

• 交通事故で任意保険で損害賠償を支払ったが、被害者はさらに、執拗に金銭を請求してくる。
• サラ金業者に利息制限法に基づく債務を銀行振込みで支払ったが、サラ金はさらに金銭請求してくる。
• 交際中の女性を妊娠中絶させ、医療費等を支払ったが、相手はさらに金銭を請求してくる。
• 交際していた相手と別れたが、結婚の約束もしていないのに、相手は執拗に慰謝料を請求してくる。

弁護士がこの事件の相談を受けたときには、ストーカー規制法がありませんでした。今では、この法律により、警告、禁止命令を出してもらうことが有効でしょう。なぜなら、相手は、学校の教師という、社会的地位がある人だからです（参照、ストーカー対策）。