車を譲渡した後の名義上の所有者の責任:保有者責任があるか

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2025.1.31mf

相談

私は 2ヶ月前に、自分の乗用車(所有者が私の父親で、使用者が私名義になっていますが、私が使用していました)を、友人に売りました。引渡しは完了していますが、車両の名義変更などの手続がまだ完了していません。
私は、友人が事故を起こした場合のことなどを考え、覚書きを取り交わしておこうと考えています。
彼が、万が一、人身事故を起こした場合は、私が損害賠償責任を負うのでしょうか。彼が運転することを考えると、心配です。
相談者は、弁護士会無料電話相談で相談しました。

回答

運転者、運航供用者に責任ある

事故に責任があるのは、民法の不法行為、 自動車損害賠償保障法により、責任がある人です。
自動車損害賠償保障法により責任があるのは、車につき、運航支配、運航利益がある人です。 あなたは車を譲渡したことにより、運航支配も、運航利益も有していません。運航供用者ないし保有者でなくなっています。あなたに、事故につき責任はありません。
ただし、その車が事故を起こした場合、既に所有者でないこと、すなわち譲渡したことはあなたが証明しなければなりません。そこで、譲渡の際は売買契約を作るべきだったのです。契約書を作らなかった場合は、相手から、下記のような、譲渡を受けたので以後事故の場合は、自分が責任を負う旨の文書をもらっておけば良いでしょう。

  
念書
〇〇〇〇殿
私は、2017年12月3日、貴殿から、トヨタ製クラウン(登録番号品川け34〇〇〇〇)1台の譲渡を受けました。以後、事故などにつき私が保有者として責任を負い、貴殿には迷惑をかけません。
2017年12月3日
住所
                      氏名         

この文書は譲渡を証明することに意味があります。「私が保有者として責任を負い、貴殿には迷惑をかけません」は、それほど意味はありません。
譲渡の際に買主が名義書き換えせずに、後で、自動車税の納税通知が名義上の所有者に来たり、後でトラブルが起こることはよくあります。譲渡の際は、名義書き換え手続きを業者などの第三者に依頼するなどし、さらに、免許証等で買主の住所、氏名を確認しておく必要があります。

判決

下記2つの東京地裁の判決でも、単なる名義人の責任を否定しています。車に対する運航支配、運航供用者の責任がないからです。

法律

自動車損害賠償保障法
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

虎ノ門 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161