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2015.4.1mf更新
弁護士河原崎弘
会社の名義株の権利者は、実際にお金を出した人ですか、名義人ですか
相談:真実の株主は、誰か
私の父は紙製品を販売する株式会社を経営していました。父は会社の株の相当部分を母と兄と私と姉の名義にしていました。
昨年父が亡くなり、私たちは、遺産分割について協議してきました。会社が不動産を持ち、遺産の大部分は株です。兄は、まず、現在の株主が持っている株はそのままにし、残りの父名義の株が父の遺産だと言います。そうすると、一番多く株を持っている兄が有利になります。
母が言うには、会社の株は皆父が自分のお金を出し、母や私たちの名前を借りて、会社を作ったそうです。
この場合、株の権利者は父だったのですか、それとも、名義人ですか。真実の株主は、誰ですか。
相談者は、会社の顧問弁護士の意見を聴きました。
回答:資金を出した人が真実の株主
かっては、
会社設立の際、株の引受人は、7 人ないし、8 人必要でした。そこで、1 人がお金を出し、他人の名前を借りて会社を作ることはよく行われています。
この場合、真の株主はお金を出した人か、名義人かについては議論がされ、両説それぞれ主張されてきました。これにつき、最高裁は、実際にお金を出した人が株主であると判決しています(昭和 42 年 11 月 17 日判決)。
従って、遺産分割では、全株お父さんが株主であった、すなわち、全株式が遺産であると扱って良いと思います。
当初は、お父さんが、株主であった。その後、贈与があれば、受贈者が株主です。要するに、株主としての実体があるかです。
以上は、遺産分割手続きだけではなく、相続税申告手続きにおいても同じです。
会社は、税金申告時に、同族会社の判定に関する明細書を提出します。税務署が現在の真の株主構成を、同族会社の判定に関する明細書に記載された株主構成と同じと見ている場合は、税務署に対し、全株を遺産として申告する必要はありません。現在の名義上の株主構成を前提に、遺産分割協議で不平等を直すことが、相続税法上も有利でしょう。
判例
- 京都地方裁判所平成27年6月12日
判決
また,被告Y2自身,上記増資の際に,Hらが社員(出資者)として残っている理由として,被告Y2が功労に対する対価としてHらに贈与した旨供述して
いることからすると,仮に,被告Y1らが供述するとおり,Hらの当初の出資金が一旦被告Y2により清算されたとしても,その後再び,被告Y2の贈与によって,H
らが出資者になったというのであるから,Hらの株式が単なる名義株であるなどということはできない。
- 東京地方裁判所平成23年7月22日判決
以上によれば、本件原告名義株式は、原告の役員報酬の一部を原資とするものではなく、亡Aが自らの財産を基に原告名義を用いて購入したいわゆる名義株
であり、亡Aに帰属していた相続財産であると認めるのが相当である。
-
最高裁判所昭和42年11月17日判決
他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわ
ち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である。
ただし、商法第201条は第1項において、名義のいかんを問わず
実質上の引受人が株式引受人の義務を負担するという当然の事理を規定し、第2項において、特に通謀者の連帯責任を規定したも
のと解され、単なる名義貸与者が株主たる権利を取得する趣旨を規定したものとは解されないから、株式の引受および払込につい
ては、一般私法上の法律行為の場合と同じく、真に契約の当事者として申込をした者が引受人としての権利を取得し、義務を負担
するものと解すべきであるからである。
登録 2009.6.17
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