分単位の残業手当て請求

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2015.8.13mf
弁護士河原崎弘

相談:残業手当の計算

飲食店で働いています。
終業後、毎日、義務としての約20分〜30分の清掃業務があります。これは勤務時間とされておりません。 残業手当を請求することができるでしょうか。
なお、本給も、時間給で、就業規則では、30分単位で労働時間(就業時間)を計算するとなっています。30分に満たない勤務時間は切り捨てるとなっています。
このような、就業形態は労働基準法に違反しませんか。

弁護士の回答:残業手当は、分単位で計算します

義務として清掃業務があるのですから、これは、当然、残業として仕事であり、25%以上の割増賃金の対象となります(労働基準法37条1項)。

残業時間を計算する際に、分単位で計算します。勤務時間の切捨てについては、通達があります。
通達では、「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることができる(基発150号昭和63年3月14日)」となっています。
通達の趣旨は、残業時間を計算するときは、1分単位で計算し、その時間を月で合計する際、30分未満を切捨て、30分から60分を 1時間に切り上げることは許されます。
30分未満を切り捨てる場合は、30分以上は1時間に切り上げねばなりません。
1日の残業時間を計算する際、5分以内は切り捨てるとか、15分以内は切り捨てる計算は許されません。切り捨てることができるのは、月の合計を計算する際であり、その場合、30分以上の端数は1時間に切上げねばなりません。

以上は、残業手当(休日給、時間外手当)の計算の方法であり、基本給を計算する際は、上記通達のような切捨ては許されません。
残業手当の請求ができるのは、上司(ないし会社の)の指示がある場合です。自分の意思で、勝手に残業しても、残業手当は認められません。 相談者の例のように 就業後の清掃が義務付けられていれば、指示があったと言えます。

相談者の例は、労働基準法に違反していると言えます。 しかし、通常、このような職場では、勤務しているときは、一人だけで残業手当の請求することは難しいです。トラブルを抱えての勤務は難しいからです。
そこで、タイムカードがあるなら、それを写真に撮る、タイムカードがない場合は、勤務時間を手帳にメモして証拠を確保することが大事です。退職後、過去の残業手当を請求する方法が良いでしょう。
過去の残業手当ては、過去2年分を請求できます。それより前は時効となります。

判決

2013.1.21