消費者契約法が認める遅延損害金の金利
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2022.12.19mf
弁護士河原崎弘
相談
私は、平成14年6月に T 銀行から90万円を借りました。このとき、大手の消費者金融会社 A 社が保証人になりました(信用保証委託契約)。
その後、私は、返済を遅滞したため、A 社が、87万4842円(元金80万円と遅延損害金7万4842円)を支払いました。その後、A 社は、私に対し、内容証明で請求してきました。問題は支払った87万4842円に利息として年26.28%を請求しているのです。これだと、私は、利息の支払いに追われ、元金の支払いができないのが現状です。
この方は、弁護士会が設置しているサラ金専門の法律相談所を訪れました。
回答
問題は、代位弁済に基づく求償につき利息制限法が適用されるか、消費者契約法が適用されるかです。担当した弁護士は、判例を調べました。- 利息制限法の定めと消費者契約法の定めが異なる場合は、利息制限法の定めが優先する。
平成13年4月1日、
消費者契約法
が施行されました。消費者契約法(9条2号)では、遅延損害金の最高利率を14.6%としています。しかし、消費者契約法11条では、民法、商法以外の法律に消費者契約法とは別段の定めがあるときは、その定めによるとして、他の法律の定めを優先しています。
遅延損害金の最高金利は、消費者契約法では14.6%、利息制限法では26.28%(貸主が金融業者の場合は20%)です。どちらが優先するのか問題です。
消費者契約法の立法者は、利息制限法を優先させると解釈しています。金銭の貸し借りの契約では、利息制限法が適用され、遅延損害金の最高金利は26.28%です。
-
ところで、A社とあなたが締結した信用保証委託契約は、利息制限法適用対象である「金銭を目的とする消費貸借上の債務」といえるかです。
信用保証委託契約は、利息制限法で言う「金銭を目的とする消費貸借上の債務」ではないと解釈するのが一般的です。そこで、信用保証委託契約には利息制限法が適用されないのです。そうすると、消費者契約法が適用され、最高金利は、14.6%となります。
従って、あなたには、26.28%の遅延損害金を支払う義務はありません。
この金融会社は、利息制限法の最高金利を請求しているのです。この場合は、消費者契約法の金利14.6%が適用されます。下に判例もあります。
(注)利息制限法は,金銭の貸主による暴利や搾取から債務者である消費者を保護するために,金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律
(注)消費者契約法は、事業者の一定の行為より、消費者の擁護を図る法律
判例
- 東京高等裁判所判決平成16年5月26日判決(出典:判例タイムズ1153号275頁)
1 当裁判所も,本件保証委託契約については,消費者契約法が適用され,同契約中遅延損害金についての定めのうち,同法9条2号所定の14.6パーセントを超え
る部分は無効であるから,控訴人の本件請求は,被控訴人に対し,求償金元金191万9515円及びこれに対する平成15年9月25日から支払済みまで年14.6
パーセント(年365日の日割計算)の割合による約定遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余の請求は,理由がないものと判断する。そのように判断
する理由は,下記2に付加するほか,原判決が説示するとおり (原判決3頁16行目〈編注本号278頁左段6行目〉から26行目〈同278頁左段21行目〉まで)
であるから,これを引用する。
2 控訴人は,当審において,まず,本件保証委託契約は,被控訴人が全国八葉物流株式会社の事業の資金融通のために締結したものであるなどと主張し,本件におい
ては,被控訴人が消費者契約法に規定する消費者(すなわち同法2条1項の個人)ではなく,したがって,消費者契約法は本件保証委託契約に適用されない旨を主張す
るが,被控訴人が事業として又は事業のため本件保証委託契約を締結したことを認めるに足りる証拠はないから,被控訴人が消費者ではない旨の控訴人の主張は,採用
することができない。
また,控訴人は,当審において,代位弁済に基づき取得する原債権と本件保証委託契約に基づく求償権とが実体的に同じものであって,保証人と債務者の特約といえ
ども利息制限法による制約を排除できない旨主張するが,控訴人は,そもそも,本件保証委託契約に基づく求償金元金及び約定遅延損害金請求債権に基づいて本件請求
をするものであるところ,保証人と債務者の特約といえども利息制限法の制約を排除できない旨の控訴人の主張は,本件保証委託契約に基づく求償金元金及び約定遅延
損害金請求債権の法律的性質に根ざさない,独自の見解といわざるを得ず,かつ,消費者契約法9条2号の規定の効力をないがしろにするものといわざるを得ないので
あって,到底採用することはできない。
その他,本件においては,本件保証委託契約につき消費者契約法の適用が排除され,利息制限法が適用されると解すべき事由の主張立証は存しない。
2006.9.24
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