貸金返済がないので慰藉料請求したい
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Last updated 2023.1.4mf弁護士河原崎弘
相談
昔、交際していた彼に少しずつ貸したお金が200万円を超えていました。彼は、「必ず返す」と言い、借用書も書いてくれました。しかし、返してくれたのは10万円にもなりません。
最後は、携帯番号も変えて行方をくらましました。
そんな彼の行動で、私は人間不信になり、苦しみました。
最後には、弁護士さんに頼んで、昔の携帯番号から古い住所を調べ、居所がわかりました。
そこで、質問ですが、私がこれまで苦しんだ精神的苦痛があります。貸金230万円に上乗せし、慰藉料を請求したいのです。100万円くらいの慰藉料を請求できますか。
回答
慰藉料は、精神的損害に対する損害賠償です。
金銭債務の不履行による損害賠償は民法が決めており、法定利率によると法律が決めています(民法419条)。法定利率は3%です(2020.3.31までは、商事上の債務には年6%の遅延損害金が付きます)。
従って、これ以外の慰謝料などは認められません。
法律
(法定利率)
民法第404条
- 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
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法定利率は、年3パーセントとする。
- 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
(金銭債務の特則)民法第419条
- 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
- 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
- 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
判例
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京都地方裁判所平成25年9月27日判決
また、金銭債務の履行遅滞による損害賠償について、同法419条1項は、その額は法定利率
又はそれを超える約定利率によって定める旨規定し、同条2項は、同条1項の損害については損害の証明を要しない旨規定する反面、それ以上の損害が生じたことを立
証しても、その賠償を請求することはできないと解される(なお、最判昭和48年10月11日集民110号231頁参照)のであって、金銭債務の履行遅滞に伴うそ
れ以上の損害を法が保護する趣旨とは考え難い。
これらに加え、不法行為法は、契約関係を問わない一般市民間において、権利や利益を保護することを本来的な目的と
していると考えられるため、特定人間における契約によって生じた債権債務関係が直ちに不法行為法上の義務の根拠になるとはいい難い。
これらのことに照らすと、金銭債務の不履行に該当する行為が、契約上の義務の不履行の範疇を超えない単純な債務不履行であって、他の権利ないし法益の侵害を伴
わない場合には、不法行為は成立しないと考えるのが相当である(なお、大判明治44年9月29日民録17輯519頁参照)。
- 最高裁判所昭和48年10月11日判決
民法四一九条によれば、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の定めがある場合を除き、約定または法定の利率により、債務者はその
損害の証明をする必要がないとされているが、その反面として、たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできないものというべく、
したがって、債権者は、金銭債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできないと解するのが相当である。
登録 2010.3.5