酒気帯びで、死亡事故を起こした者の刑事責任

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2015.5.27mf更新
弁護士河原崎弘

相談
3日前、私の息子は、普通乗用車を運転し、夜11時頃、道路幅約7m(車道)の道路を、時速約50kmで走行していました。ところが、道路を横断中の歩行者に気付くのが遅れ、ブレーキを踏んだが間に合わず、道路中央付近で、衝突し、死亡させてしまいました。
息子は逮捕されました。アルコール検査で、「呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールが検出された」そうです。
どうしたらよいですか。どのような判決が予想されるでしょうか。これは危険運転致死罪に当たりますか。
相談者は、法律事務所を尋ね、弁護士に相談しました。

回答
酒気帯びに加えて、「酒に酔って正常な運転ができない状態での事故」なら、酒酔い運転ですので、危険運転致死罪になります。まだ、確定していませんが、酒酔いではないようですので、危険運転致死罪にはならないでしょう。酒気帯び運転(2002年5月末までは、呼気中アルコール濃度0.25 mg 以上、同年6月1日以降は、0.15 mg以上)と自動車運転(旧業務上)過失致死です。
死亡という重大な結果が発生し、前方注視義務、酒気帯びが重なっていますので、責任は極めて重いです。実刑判決が予想されます。
被害者の遺族と示談が成立し、被害者から嘆願書をもらえれば、執行猶予が付く可能性は, 少しあります。
現状では、示談の努力をし、情状をよくする努力が必要ですね。

関連質問
私は横浜に住む29歳の会社員です。
今年の5月に、私の社長と知人とで食事の後、飲食店でお酒を飲み、その後私が車を運転し、社長を自宅まで送る途中に、横断歩道がない道路上を歩いていた男性に衝突し死亡させてしまいました。
私は、その場で逮捕された後、現場検証や取調べを受け、二日後に釈放されました。先日、検察庁に出頭命令が出たのですが、私の罪(自動車運転過失致死・酒気帯び運転)は重いので、起訴はされるとは思うのですが、このようなケースは確実に実刑確定なのでしょうか。 ちなみに検察庁出頭時に、「平成20年に酒気帯びで、略式起訴も以前にあるな」と言われました。
示談は、相手のご子息に、一度こちらから、保険会社との交渉状況を聞くのにお電話させて頂いたところ、「こちらがどうなってるか聞きたいぐらいだ」と、言われてしまいました。「早く事を進ませて欲しい(保険金の事だと思います)」とも、言われましたので、保険会社に連絡したところ、「検事調書」ができていない時点では、過失割合が分からないので保険金は出ない」と、言われてしまい、まだ示談は成立していない状況でです。
母と二人暮しで、私が母を養っています。自分が犯した罪は重大なので、当たり前なのですが、検察庁に出頭した後、「もし判決が実刑だと」と、考えて、数日間、ノイローゼ気味です。

回答
この場合、実刑になるか否かは事故の状況にもよります。 一般論して、被害者に過失のない通常の死亡事故では、示談が成立すれば(ないし、金額無制限の対人賠償保険に入っているなど、示談成立の可能性があれば)、執行猶予が付きます。 被害者が道路の中央を歩いていたとか、飛び出してきたとか、被害者に過失があると、あなたの責任は軽くなります。あなたに酒気帯びと言う著しい法規違反がありますので、これは、刑を重くします。同種前科(酒気帯びで罰金)があるので、これも刑を重くします。
そこで、執行猶予が付く可能性は極めて低いです。唯一考えられるのは、被害者の減刑嘆願書をもらった場合です。嘆願書があれば、非常に低い確率ですが、執行猶予が付く可能性があります。
日本の裁判官は、官僚ですから、具体的に妥当な刑より、前例に従うとどのくらいの刑になるかを考えます。

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