刑事事件の場合、最高裁へ上告する意味がありますか

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弁護士河原崎弘

ケース1:刑事事件で上告したい

窃盗で懲役1年6月の実刑判決を受けました。窃盗の前科はあったのですが、執行猶予の期間は経過しており、まさか、実刑判決とは、弁護士も意外だったようです。
私は、上告しようと考えていますが、最高裁で、2審判決が、覆る可能性はありますか。

ケース2:上告で判決の確定時期を延ばせますか

窃盗で懲役1年執行猶予3年の判決を受け、執行猶予期間中に、再び、窃盗で捕まり、懲役1年6月の実刑判決を受けました。あと2か月経てば執行猶予期間が終わり、前の判決の刑は消えるのです。そこで、上告して、判決の確定を延ばすことを考えています。
できますか。

お答え:最高裁で、2審判決が、覆る可能性は、ほぼ、ない

上告理由は制限されている

上告理由は、制限されており、原則として、憲法違反、判例違反です。従って、最高裁(上告審)において、控訴審(二審)判決が、覆る(破棄される) ことは、極めてまれです。下記統計を見てもわかります。通常は、上告することに意味がありません。

判決の確定時期を延ばす目的の上告

刑は、判決が確定してから執行されます。そこで、刑務所に入る前に、準備することがあるので、判決の確定時期を延ばす目的とか、判決の確定時期を延ばし、別件の刑事事件の執行猶予期間が経過することを狙う目的がある場合は、意味があります。
あと、2か月くらいで執行猶予期間が終わりそうな場合が、これに当たります。有罪判決が確定すると、別件の執行猶予が取消されるからです(刑法26条、執行猶予の必要的取消し)。執行猶予が取消されてしまうと、2つの判決の刑が執行されることになります。

刑事裁判の上告についての統計

平成22年において、2,148人が上告しましたが、控訴審判決が破棄されたのは3件です。

終局区分 総数破棄自判破棄差戻し・移送棄却公訴棄却取下げ
終局人員 21481217096430

出典: 最高裁判所における訴訟事件の概況

法律

刑法 第26条
一 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一  猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
二  猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
三  猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

判決

2017.9.25
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 3431-7161