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2021.12.16mf
クレジット立替金債権の消滅時効期間
弁護士河原崎弘
相談
5年近く前に、
妻名義のクレジットカードで75万円使ってしまいました。10月上旬に、カード会社から自宅に「減額和解のお知らせ」との文書が届きました。妻がこれを見て、クレジットカード会社に明細書を送るよう請求しました。
私は、11月から翌年1月までの3か月の間に、主に、買い物と飲食代金で75万円使いました。買い物や飲食代金は、短期時効消滅期間が決められていますが、私の場合、短期時効消滅を主張できるでしょうか。
今、私も妻も離婚を考えており、カード会社の債務が妻名義となっているため、分割ではなく、一括で返済し清算してから離婚しようと考えています。
早急に、清算したいです。よろしくお願いいたします。
回答
民法に大改正があり、消滅時効も改正されました。
2020
年3月31日まで
売買代金、飲食代金については、短期消滅時効が定められていました。買い物の代金債権は2年(旧民法174条)、飲食代金債権は1年(旧民法173条)で時効消滅しました。
しかし、クレジットカード会社が、立て替えた結果、カード使用者に請求する債権(立替金債権、求償金債権)は、これとの別個の債権です。
したがって、民法の短期消滅時効の適用はありません。
会社は商人です(会社法5条)。カード会社の有する債権は商事債権ですので、消滅時効期間は5年です(旧商法522条)。時効の起算日は、弁済期(カード代金が引き落とされる予定日)の翌日です。
2020年4月1日以降
商事債権の時効は廃止されましたが、立替金債権、求償金債権の時効は、5年です(民法166条1項)。
結論
どちらにしても、
相談者の場合は、5年経過していないので、時効は完成していません。カード会社と和解交渉をし、弁済する必要があります。カード会社は分割弁済を認めるでしょう。
判決
- 東京地方裁判所平成19年11月27日判決(判例秘書)
(5) 抗弁(5)(短期消滅時効)について
ア 抗弁(5)アの事実については,弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
イ そこで,同(5)イについて検討するに,民法174条4号の規定は,客の委託に基づき第三者が同号所定の営業者に立替払した場合における立替金債権には
その適用がないものと解するのが相当である(大審院昭和8年(オ)第902号同年9月29日第二民事部判決・民集12巻2401頁参照)。
そして,弁論の全趣旨によれば,反訴原告は,本件饗応契約アないしコの代金支払については,第三者であることは明らかであるから,本件クレジット契約に係る立替金の債権は民法174条4号所定の債権に該当しないというべきである。
なお,本件クレジット契約に基づく債権は,原則として,商法522条本文により商行為によって生じた債権として消滅時効期間は5年と解される。
- 東京地方裁判所平成18年9月29日判決
前記認定したとおり,原告は,△△△カードがショッピングで利用された場合,被告に対して求償金債権を取得し,被告が売
買代金を支払うのにカードを利用したか飲食代金を支払うのにカードを利用したかにかかわらず,求償金債権の消滅時効は,平成17
年法律第87号による改正前の商法522条により5年である。
従って,原告の債権は,時効消滅していない。
登録 2011.10.19
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161