高収入者高額資産家の財産分与
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2015.5.16mf
弁護士河原崎弘
相談:高収入者高額資産家の財産分与
離婚の際の
財産分与の趣旨には、
、@婚姻中の夫婦共同財産の清算(清算的財産分与)、A離婚後の弱者に対する扶養(扶養的財産分与)、B離婚による
慰謝料の3つの要素があると説明されてきました。
婚姻中の夫婦の財産は、次の3つに分けることができます。
夫婦の財産
特有財産 | 婚姻前から持っていた物 婚姻中に、相続や贈与で取得した物 およびこれらの収益 |
共有財産 | 夫婦の共有する家、家具 |
実質的共有財産 | 名義は、夫婦の一方に属するが、実質的に共有に属するもの 家、預金、退職金、年金 |
清算的財産分与の対象は、共有財産と、実質的共有財産です(上記黄色部分)。
但し、清算的財産分与でも、特有財産を、事情によって、考慮し、特有財産維持管理に片方が、寄与していた場合は、
1 割程度を財産分与として認めた例があります。また、扶養的財産分与では、特有財産も対象となります。
文献によると、
財産分与、特に、清算的財産分与の場合、妻の清算割合(財産形成に対する寄与度)については、5 割から 3 割との調査結果がありました。また、専業主婦は、4 割から 3 割、共稼ぎ主婦は、5 割との調査結果もありました。
しかし、最近は、家事労働を通常の労働と同じく評価し、さらに、夫婦平等の考えから、常に、5 割の寄与度を認める判例が増えています。
この考えからは、特有財産を除いて、結婚から、破綻までに夫婦が獲得した、家、預金、退職金、年金など財産分与対象財産の5割を、分与します。
この財産分与割合、50 %の原則(2分の1ルール)は、高額な資産があった場合、高収入者の場合も同様です。ただし、裁判所は、
特別な事情があるときは、この割合を変えます。特別な事情とは、次のような場合です。
財産分与割合(寄与度 5 割、2分の1ルール)を変える要素
- 夫が、医師、弁護士のように特別の技能、資格を持っていたため、夫の資産が高額である場合、夫の寄与度は
大きくなる。
下記大阪高裁の判決では、夫(医師)名義の財産を、財産(夫の母名義の医療法人に係る出資持分を含み,債務を控除した後の金額)は4億2000万円,同金額 から控除すべき(特有財産(債務等控除後)1億2000万円を差し引いた金額は3億円,これに妻名義財産678万円を加えた対象財産の総額は3億円になるとし、3億0678万円を財産分与の対象とした。
そして、夫の寄与度を6割、妻の寄与度を4割とし、医療法人の出資持分を財産分与の
対象とし、医療法人の純資産評価額の7割を出資持分総額としている。参考になります。
- 妻が会社を経営し、資産を築き、夫は、女に溺れていた場合、妻の寄与度
は大きくなり、夫の寄与度は小さくなる
- 夫が、年収7000万円〜9000万円の会社経営者の場合、妻が家事をしたから、夫は、仕事に専念できたとしても、夫の仕事での収入が大きいので、夫の寄与度は大きい
- 妻の収入、生活費負担割合も多い場合、妻の寄与度は、大きい
- 莫大な特有財産(220億円)を持つ夫の場合、妻の寄与度はないが、扶養的
財産分与として、妻への財産分与額を 5 %とした
高額資産、高収入者の財産分与割合(寄与度)についての判例
- 福岡高等裁判所昭和44年12月24日判決
一審被告
(夫)は、医療法人の理事長、月収
45万円、不動産9810万円を所有していた。
財産分与の額であるが、前示の一審原、被告の婚姻継続期間、本件離婚に至った経緯、一審原告の年令、双方の財産状態、婚姻中にお
ける一審原告の医業への協力の程度、子の扶養関係(この点は後記第四、に認定のとおり)等諸般の事情を考慮して、金2000万円が相当で
あると認める。
この点に関し、一審原告は、財産分与の額は夫である一審被告の財産の二分の一を原則とすべきであると主張する。なるほど、財産分与の本質
は夫婦間における実質的共有財産の清算を中核的要素とするものと考えられるから、例えば、夫の財産が全部夫婦の協力により取得されたもので
しかも双方の協力の程度に甲乙がないような場合であれば、財産分与の額を定めるにあたり夫の財産の二分の一を基準とすることも確かに妥当で
あろうが、本件においては、一審被告が前示の如き多額の資産を有するに至ったのは、一審原告の協力もさることながら、一審被告の医師ないし
病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるうえ、一審原告の別居後に取得された財産もかなりの額にのぼっているの
であるから、これらの点を考慮すると財産分与の額の決定につき一審被告の財産の二分の一を基準とすることは妥当性を欠くものといわざるを得ず、一審原告の主張は採用できない。
-
松山地方裁判所西条支部昭和50年6月30日判決
原告(妻)は、子供2人を育て、プロパンガス販売事業をおこなって、別居までに、約3400万円の財をなした。被告は、酒、女に溺れ、家庭外に子供を1人を作り、原告に暴力を振るい続けた。
約3400万円の資産のうち、原告(妻)の分与割合を 7 割とした。
- 東京高等裁判所昭和55年12月16日
判決
(一)控訴人は、被控訴人と結婚した昭和四一年五月当時においては見るべき資産を有していなかつたが、現在、控訴人名義の積極財産としては、(1)昭和43年9月父から譲り受けた本件借地権、(2)同45年ころ新築した本件建物、(3)同47年2月買い入れた本件八丈島の土地及び(4)同年6月買い入れた本件今市市の土
地並びに(5)王子信用金庫赤羽支店に対する預金債権約143万円とがある。
本件借地権の価格は、約2765万円(更地価格3・3平方メートル当り約100万とし、借地権はその7割とみた金額相当額)、本件建物の価格は、建築後既に10年余を経過しているが、現在少くとも約300万円、本件八丈島の土地は少くともその取得当時の379万円、本件今市市の土地は700万円の各相当額の価格をそれぞ
れ有している。
他方、控訴人の消極財産としては、王子信用金庫赤羽支店に対する借入債務560万円(前掲乙第15号証には借入債務額は710万円と記載されているが、当審第7回口頭弁論期日において、控訴人は、右期日現在においては、右債務残額は560万円となつた旨陳述した。)及び控訴人の兄訴外Aに対し300万円の借入債務がある。
(二)本件借地権は、控訴人が昭和四三年九月父から無償で譲り受けたものであるから、その取得そのものに被控訴人の寄与、貢献があつたとはいえないが、その維持
のために被控訴人が寄与したことが明らかであり、また、その余の前記積極財産の形成・維持、消極財産の発生は、控訴人及び被控訴人の婚姻生活中における両当事者の
協力又は責任のもとに生じたものである。そして、既に認定した二2に記載の事実のほか、昭和43年から同44年にかけて控訴人が脳脊髄膜炎を患い、約3月入院して
いた間はもとより、退院後約1年にわたつて通院していた間も被控訴人が自ら従業員を指揮し、前示家業の経営に当たり、また、昭和50年ころには短期間ではあるが、
控訴人の要求に応してバーのホステスとして働く等し、別居までの婚姻生活期間中真摯な努力を重ね、家計に多大の寄与をした。
以上の事実を認めることができる。
2 右認定の事実に照らすと、被控訴人(妻)が控訴人名義の前示積極財産の形成・維持に寄与し、消極財産の発生に責任のあることが明らかであるところ、その割合は、本
件借地権についてはその価格の 1 割、その余の積極財産及び消極財産については、控訴人と同等と認めるのが相当である。
- 東京家庭裁判所平成6年5月31日審判
申立人(妻)は、童話作家、相手方は、画家。
申立人と相手方は、18年間同居、9年間の家庭内別居、1年間別居後離婚した。
申立人の昭和62年の申告所得額は425万8740円,昭和63年は742万6594円,平成元年は1359万5000円,平成2年は400万200
0円である。
相手方の昭和63年の申告所得額は127万4313円,平成元年は218万1393円,平成2年は252万5265円である。
申立人の平成2年4月30日の預金残高は,2178万3081円であり,相手方のそれは226万3688円である。
次に,前記財産(本件土地本件建物の45パーセント)を清算するに当たり,これを形成するに際しての当事者双方の寄与割合を検討する。本件清算的財産
分与の清算割合は,本来,夫婦は基本的理念として対等な関係であり,財産分与は婚姻生活中の夫婦の協力によって形成された実質上の共有財産の清算と解するのが相当
であるから,原則的に平等であると解すべきである。
しかし,前記認定の申立人と相手方の婚姻生活の実態によれば,申立人と相手方は芸術家としてそれぞれの活動に従
事するとともに,申立人は家庭内別居の約9年間を除き約18年間専ら家事労働に従事してきたこと,及び,当事者双方の共同生活について費用の負担割合,収入等を総
合考慮すると,前記の割合を修正し,申立人(妻)の寄与割合を 6 ,相手方のそれを 4 とするのが相当である。
- 東京高等裁判所平成7年4月27日判決
これまで認定した婚姻中の双方の生活状態,特に,被控訴人が控訴人の特有財産及び夫婦共有財産の維持管理に当たって貢献を果たしているものの,ゴルフ等の遊興
に多額の支出をしていて,夫婦財産の形成及び増加にさほどの貢献をしていないこと,夫婦共有財産形成には控訴人の特有財産が大きく貢献していること,別居後の双方
の住居その他の生活状態,特に,別居中の生活費は双方でそれぞれ負担したほか,功平の養育費を被控訴人が負担したこと,財産分与の対象としてはいないが,被控訴人
が本件以外にも夫婦共有財産とみなすべき財産を所持している可能性が疑われること等本件の諸事情を考慮すると,財産分与の対象となる金額の約3割6分に相当する2
510万円を被控訴人に分与し,その余を控訴人に分与するのが相当である。
-
東京地裁
平成15年2月25日判決(判例秘書)
原告(夫)は、従業員約2000名のビル清掃、管理会社の社長、年収は、7000万円〜9000万円
預金額は不明
合計資産は、1億4420円(固定資産税評価額)
原告と被告の婚姻期間は,34年間に及んでいること,その間,原告は,A,Bの監護養育を被告に全て委ねて,C,Dと世帯を持
ちながら,仕事に専念した結果F等の会社を順調に発展させたものと認められ,これらの事情に照らせば,被告(妻)は財産分与の対象財産の形成に少なくとも 3 割程度は寄与
しているものと認められる。
さらに,被告は本件不動産1においてA,Bとともに居住していること,被告には固有の財産や将来の安定した収入も見込まれないのみなら
ず,引き続き社会的自立の難しいBの監護をせざるを得ない状況にあることを考慮すると,原告は,被告に対し,離婚に伴う財産分与として,被告に本件不動産1を分与
することに加え,1 億円(この額を定めるについては,本件不動産1について別件で係争中であることも考慮した。)の金員を給付するのが相当であると認められる。
- 東京地方裁判所平成15年9月26日判決
しかし,他方,前記認定のとおり共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと,その運用,管理に携わったのも原告であること,被告が,具体的
に,共有財産の取得に寄与したり,A1社の経営に直接的,具体的に寄与し,特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると,被告が原告の
共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。
そうすると,原被告の婚姻が破綻したのは,主として原告の責任によるものであること,被告(妻)の経歴からして,職業に携わることは期待できず,今後の扶養的
な要素も加味すべきことを考慮にいれると,財産分与額は,共有物財産の価格合計約220億円の 5 %である10億円を相当と認める
。
- 大阪高等裁判所平成26年3月13日判決(判例タイムズ1411号177頁)
「(8) 以上によれば,本判決別紙認容額計算書のとおり,控訴人名義の財産(控訴人の母名義の本件医療法人に係る出資持分を含み,債務を控除した後の金額)は4億2531万7175円,同金額
から控除すべき特有財産(債務等控除後)1億2413万0235円を差し引いた金額は3億0118万6940円,これに被控訴人名義財産678万0824円を加えた対象財産の総額は3億0796
万7764円になる。」
(8) 原判決21頁16行目から19行目までを次の文章に改める。
「(10) そうすると,本判決別紙認容額計算書のとおり,対象財産の総額である3億0796万7764円に被控訴人の寄与割合(4割)を乗じた金額(1億2318万7105円)から被控訴人が
取得済みの財産(被控訴人名義の本件医療法人に係る出資持分を含む。)の金額を控除した金額である1億1640万6281円が,控訴人において被控訴人に分与すべき金額となる。」
2 本件医療法人につき何を財産分与の対象財産とするか,その評価のあり方及び財産分与金の支払時期いかんについて
(1) 被控訴人は,本件医療法人の保有資産そのものが財産分与の対象財産になるものと解すべき旨主張する。
しかしながら,証拠(乙15ないし23,26,32の1,36ないし44,48の1〜4,49の1〜4,50,57の1〜3,58,64,68ないし72)及び弁論の全趣旨によれば,本件医療
法人は,法人としての実体を有する医療法人であって,多数の通院患者を擁し,従業員を雇用するなどして対外的な活動をしていることが認められるところ,医療法(平成18年法律第84号による改正
前のもの)が,医療法人がその業務を行うに必要な資産を有しなければならない旨を定め(同法41条1項),医療法人の資産に関して必要な事項を厚生労働省令で定めることとするとともに(同条2項)
,剰余金の配当をしてはならないものと定めており(同法54条),同法41条2項に基づいて制定された医療法施行規則30条の34が,医療法人は,その開設する病院,診療所又は介護老人保健施設
の業務を行うために必要な施設,設備又は資金を有しなければならないとしていることを考慮すれば,本件医療法人の保有資産を控訴人と被控訴人という個人間ですべて清算して分配するかのごとき取扱
いをすることは相当とはいえない。
したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 控訴人は,控訴人の母名義の出資持分は財産分与の対象財産にはならない旨主張する。
しかしながら,原判決を補正,引用して判示したとおり本件医療法人が控訴人と被控訴人の婚姻届出後に開設され,控訴人が経営してきた旧診療所を引き継いだ本件診療所を法人化して設立されたもの
であることなどを考慮すると,控訴人の母名義の出資持分をも財産分与の対象財産とするのが婚姻届出後別居時までに形成された婚姻共同財産を清算するという財産分与制度の趣旨目的に副うものという
べきである。したがって,控訴人の主張は,採用することができない。
(3) 控訴人は,出資持分を被控訴人に譲渡する方法を採用すべき旨主張する。
しかしながら,原判決を補正,引用して判示したとおり,本件医療法人においては,社員の議決権は1人1議決権とされているほか,社員の退社には理事長の同意が必要なことから,控訴人と控訴人の
母による多数決によって被控訴人の意向に副わない経営方針を決定することも可能であるし,被控訴人が退社して出資持分の払戻を請求しようとしても,控訴人が理事長としての同意をしないことによっ
てこれを事実上阻止することも可能になり得る。こうしたことを考慮すれば,出資持分を被控訴人に譲渡する方法によって財産分与をすることは相当とはいえない。したがって,控訴人の上記主張は,採
用することができない。
(4) 控訴人は,控訴人に現時点で本件医療法人に対して払戻を請求し得る権利はない旨主張する。しかしながら,控訴人の主張は,控訴人が本件医療法人において医師としての仕事に従事する意向
であることから事実上払戻を請求することがあり得ないということを意味するものにすぎず,実体法上払戻請求権が存在しないものとはいえない。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
なお,本件医療法人が実体を有する医療法人であり,医療法の規定の趣旨に照らして事実上被控訴人による権利行使が抑制され得ることについては,原判決を補正,引用して判示したとおり純資産価額
の7割相当額をもって出資持分の評価額とすることによって考慮済みである。
(5) 控訴人は,将来,本件医療法人が解散する際の価値はほとんどなく,控訴人に対して支払うことを検討している退職金支払債務額や清算所得に対する法人税額を控除するほか,中間利息をも控
除すべき旨主張する。
しかしながら,清算的財産分与は,別居時の財産を対象とし,時価評価すべきものがあれば,事実審の口頭弁論終結時をその基準時とするのが相当であるところ,法律的には控訴人が医師の資格を有す
る者に出資持分を有償譲渡して退社し,理事長等の地位を承継させることによって出資持分の現金化をすることも可能であることを考慮すれば,控訴人の主張するような本件医療法人の解散時の残余財産
分配の見込額から清算所得に対する法人税額,控訴人に対して支払うことを予定する退職金支払見込額及び中間利息を控除した金額をもってそのまま出資持分の評価とすることは相当でないし,上記のと
おり出資持分を譲渡して退社する時期を現時点において具体的に認定し得るものでもないことを考慮すれば,その時点において控訴人に対して支払うことを予定する退職金見込額を考慮して算定した出資
持分の払戻見込額から中間利息を控除した金額をもって出資持分の評価とすることも相当とはいえない(清算所得に対する法人税額の控除や退職金支払見込額の控除を否定したものとして,最高裁昭和5
0年(オ)第326号同54年2月23日第二小法廷判決・民集33巻1号125頁参照)。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。
なお,将来の流動的な要素については,前記(4)で説示したとおり,本件医療法人の純資産価額の全額をもって出資持分の評価額とするのではなく,7割相当額をもって出資持分の評価額と解するこ
とによって考慮済みである。
3 寄与割合について
控訴人は,被控訴人が婚姻届出後別居時までに就労して得られたであろう収入を試算し,その金額を踏まえて被控訴人の寄与割合はせいぜい3割である旨主張する。
しかしながら,民法768条3項は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ,離婚並びに婚姻に関する事項に関しては,
法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば,原則として,夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当であるが,
例えば,T 夫婦の一方が,スポーツ選手などのように,特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが,加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり,通常の労
働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など,高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するよう
な意味合いが含まれるなどの事情がある場合,U 高額な収入の基礎となる特殊な技能が,婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて,婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成さ
れたような場合などには,そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ,財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい。そうすると,控訴人が医
師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや,医師の資格を有し,婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して,控訴人
の寄与割合を6割,被控訴人の寄与割合を4割とすることは合理性を有するが,被控訴人も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると,被控訴人の寄与割合をこれ以上減ずる
ことは,上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたい。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
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