婚約者と性的関係を持った第三者に対する婚約破棄の慰謝料請求
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2015.7.15mf
弁護士 河原崎弘
相談
私は、半年ほど交際していた女性と2か月前に婚約し、婚約指輪(60万円)を贈り、結納金70万円を渡し、新居の家具なども約80万円出して揃えました。さらに、結婚式場の申込金10万円も支払いました。結婚前ですが、同居しました。
ところが、彼女は、10日間ほどで家を出てしまいました。彼女の様子が変でしたので、私は、興信所で調べてもらったところ、彼女は、会社の同僚のマンションに出入りしている関係であることがわかりました。当然、性的関係もあります。
私は(ひどく衝撃を受けました)、彼女に対して損害賠償請求ができますか。彼女と交際していた同僚に対してはどうでしょうか。
回答
婚約破棄は、不法行為であり、債務不履行であるので、不当に破棄された場合は、損害賠償請求できます。あなたは、彼女に対して、婚約指輪代(60万円)、結納金70万円、新居の家具代約80万円、結婚式場の申込金10万円などを損害賠償請求できます。さらに、慰謝料も請求できます。婚約期間が2か月と短いので、150万円くらいでしょう。
問題は、婚約者と関係していた同僚に対して損害賠償請求できるかです。あなたと彼は、競争関係に立っていますから、責任は彼女にあるのであって、同僚には、責任がないとも言えます。
しかしながら、同僚が、彼女とあなたの婚約を知っているのなら、その関係を破壊してはいけない義務があるでしょう。そのような場合、慰謝料を認めた判例があります。しかし、婚約破棄について主なる責任は婚約者にあり、同僚の責任はそれほど重くないでしょう。
実際の裁判でも、婚約者に対しては、慰謝料100万円、性的関係をもった同僚に対しては30万円(30万円の限度で婚約者と連帯責任)の慰謝料を認めたものがあります。
あなたの受けた衝撃はよく理解できます。しかし、多くの人が同じ目に遭い、乗り越えています。あなたも頑張れば、あとは、時間が解決してくれるでしょう。
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判決
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東京地方裁判所平成17年3月17日判決
被告(同僚)は,その供述によれば,8月3・4日の件の後も,被告(婚約者)との交
際を続けており,その真意はともかく,結果的に,被告(同僚)と被告(婚約者)の交際が,被告(婚約者)の本件婚
約の履行と両立しないものであって,本件婚約を破棄に至らせるものであることを認識して
いたと評価せざるを得ず,それにもかかわらず,8月3・4日の件に関与した後も,被告(婚約者)と
交際を続けたことは,本件婚約の破棄と因果関係がある,被告(同僚)の原告に対する不法行為とな
ると認めることができる。
原告の慰謝料については,本件婚約の成立前とはいえ,平成15年2月までの間,原告が被告(婚約者)と頻繁に旅行するような交際す
る一方,Hとも男女としての交際をしていたこと,本件婚約の継続期間が約3か月程度とそれほど長い期間ではないことに照らし,100万円が相当であると認められる。
ただ,被告(同僚)が,本件婚約の履行を前提に,原告が被告(婚約者)にした金銭の交付に関与した
ことを認めるに足りる証拠はないので,被告(同僚)が原告に対し,賠償すべき損害額は,本件婚約
の破棄への被告(同僚)の関与により,原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料にとどまるというべ
きである。そして,上記3の事実の経過を合わせ考えれば,本件婚約を積極的に破棄に至らせ
ているのは,主に被告(婚約者)の行動にあり,被告(同僚)の関与は,補充的なものであると考えられるか
ら,被告(同僚)が原告に賠償すべき慰謝料額は,30万円を限度とすべきである(なお,被告(婚約者)の行為と被告(同僚)の行為との関連性から見て,被告(同僚)の原告に対する支払義務は,30万円の限度で,被告(婚約者)の原告に対する支払義務と連帯責任となると考えられる。)
2008.6.2
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161